三菱UFJフィナンシャル・グループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、コンサルティング、グローバル経営サポート、政策研究・提言、経済調査、人材育成支援等、国内外にわたる幅広い事業分野において多様なサービスを展開している三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社。マーケティング&DX企画室の田中健治氏に組織人事コンサルタントが考えるタレントマネジメントの始め方について、お話を伺いました。
タレントマネジメントとは「組織を機能させること」
はじめに「タレントマネジメント」とは何か?ということについてお話できればと思います。「タレントマネジメント」の意味は人材マネジメント協会や人材開発機構などで定義されていますが、私なりに説明していきたいと思います。
両団体の定義を整理すると、企業の戦略や目標、あるべき組織状態の実現に向けた戦略的・計画的な人材に対する包括的な取り組みであると言えます。これを、もう少しかみ砕いてお伝えするならば、タレントマネジメントとは「組織を機能させること」だと思っています。企業が目指す方に向かって、戦略的計画的に行う人事の取り組みすべてがタレントマネジメントとも言えるでしょう。ここでポイントとなるのは、「現在」と「未来」それぞれで組織を機能させるということです。
まず、現在という軸で組織を機能させるとは、各組織に求められる役割を適切に果たせている、その組織に求められていることをきちんと実行できる体制になっているということです。例えば、中小企業を中心に事業を展開してきた会社があったとしましょう。しかし、今後は大企業向けに展開していこうと思っている。そのような場合、今まで中小企業に対して営業していた社員を、大企業向けの営業部署に異動させたとしても同じように力を発揮できるとは限りません。大企業向けの営業をしていくためにはそのためのノウハウを持っている人材が必要です。つまりそういった人材を外部から採用したり、専用のトレーニングプログラムで大企業向けの営業ができるような社員に育成できる体制を作らなければいけません。
一方で、将来という軸で組織が機能するとは、会社が目指す組織状態、例えば数年後の組織構造や新しい風土などを実現するための取り組みを指します。具体的な例を挙げると、「将来的に社員数を今の2倍にしていきたい」「こんな人材をもっと増やしていきたい」ということを決めて、そこに向けて採用や育成に取り組んでいくというイメージです。
したがって、タレントマネジメントの施策を検討する際は、現在のための施策なのか、将来のための施策なのかを分けて考えることが非常に重要です。
タレントマネジメント施策における3領域
次にタレントマネジメントの具体的な施策をご紹介します。ひとえにタレントマネジメントと言っても様々な施策があり、何に取り組めばよいのか混乱する場合があります。そこで、タレントマネジメントの施策を3つの領域に分けて、ご説明します。
まず1つ目は、HRM(ヒューマンリソースマネジメント=人的資源管理)です。HRMとは、あるべき人材ポートフォリオを量と質の両面から実現する仕組みです。イメージとしては、「今後こういう組織体制にしていきたい」「こういう人材をもっと増やしたい」というビジョンに向けて、施策を打つことを言います。
例えば、ポスト別の人材要件を明確化した上で、最適な配置ができているか。または空いているポストを充足できるように計画的に育成していく仕組みがあるか。その前提として、そもそも今、どんな人材が社内にいるかを把握する必要があります。
2つ目はPM(パフォーマンスマネジメント=評価管理)です。これはMBOやOKRなど、会社の業績目標や取り組みに社員を方向付ける仕組みを指します。人事評価としての評価だけでなく、会社が定めたスキルマップなどを活用してパフォーマンス向上に取り組みます。例えば、ある人が直面している課題の解決に一部のスキルが欠けているとしましょう。そこに対して最適な研修をジャストインタイムで受けられるようにすることで、パフォーマンス向上に繋げる、といったケースが挙げられます。
3つ目はPpM(職場管理)になります。これは職場を活性化するための仕組みです。1on1の導入や、パルスサーベイの結果をフィードバックすることで、コミュニケーションの円滑化を図ります。さらに人材アセスメントに基づいて、どのようなコミュニケーションを取るのが有効かを考えてもらうことなどが具体的な施策となります。
また、タレントマネジメントシステムの文脈で置き換えますと、HRMヒューマンリソースマネジメントを使うユーザーは人事や経営、パフォーマンスマネジメントは人事と現場マネージャーが主となります。そして、ピープルマネジメントは現場のマネジメントに活用されます。
タレントマネジメントを始めるにあたっては、まずこれら3つの領域の中で、自社としてどこに課題があるか、どこから取り組むかを考えることが大切です。また、システムを導入する場合、どの施策に注力するかで誰(経営、人事、現場マネージャーなど)がシステムを使うかが変わってきます。そのため、社内で主にシステムを使う人にとって使いやすいかがシステム選定の重要なポイントになります。取りあえずシステムを導入するのではなく、自社の課題や会社の方向性からタレントマネジメント施策を検討したうえでシステム選定に入ることをお勧めしています。
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