従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは、従業員の自社に対する貢献度を把握するための指標のことです。従業員エンゲージメントが高い従業員ほど、企業理念や経営ビジョンへの共感が高く、企業成長などに貢献する行動につながります。
似た言葉に「従業員満足度(ES)」がありますが、従業員エンゲージメントの意味や方向性はまったく異なります。
従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い
従業員満足度とは、従業員が自社に満足しているかを評価するための指標のことを指します。たとえば、給与と業務量がマッチしているか、福利厚生は充実しているかなどが挙げられます。あくまでも、従業員から企業に対する一方向による評価方法です。
一方、従業員エンゲージメントは、従業員の企業に対する貢献度をもとに、企業と従業員の双方向の関係性を問うための指標です。
従業員エンゲージメントを構成する3要素
従業員エンゲージメントでは、従業員の「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つが評価されます。企業は、経営理念やビジョンを明確にしたうえで提示し、従業員はそれらの理解を深める必要があります。
従業員が共感しやすくなるように、企業は日頃から従業員とのコミュニケーションを積極的にとることが大切です。「企業の一員」であることに誇りをもたせることができれば、従業員は自発的に勤務先に貢献できる行動を起こそうと考えるようになります。
日本企業の従業員エンゲージメントが低い理由
米・ギャラップ社の調査結果によると、日本企業の従業員エンゲージメントは139カ国中132位でした。日本企業が海外企業よりも従業員エンゲージメントが低い理由の1つに、従業員の自主性の低さが挙げられます。
日本企業では従来から、部下は上司の指示どおりに従うことが当たり前とされてきました。そのため、従業員の自主性が育たず、仕事のやりがいや企業への愛着度が低下しています。
従業員エンゲージメント向上で得られるメリット
従業員エンゲージメントが向上することで得られるメリットについて解説します。
従業員のモチベーションアップにつながる
従業員エンゲージメントの向上で得られるメリットは、従業員のモチベーションの維持や向上につながることです。愛社精神が培われることにより、勤務先の企業に所属する自分や業務に対して誇りをもてるようになります。さらに、「会社に貢献したい」という気持ちが強まるため、自己成長やスキルアップが促されます。
ハラスメントや人間関係のトラブルを減らせる
従業員エンゲージメントの向上は、同僚に対する信頼関係の構築をもたらします。それにより、従業員同士の仲間意識やチームワークが高まることで、ハラスメントや従業員間の人間関係によるトラブルを減らすことも可能です。さらに、互いに協力し合えることから、業務の遂行もスムーズに行えるようになります。
人材の流出を防げる
企業に対する評価が高まれば離職率が低下するため、優秀な人材の流出も防げます。また、離職率が低い企業には多くの人材が集まりやすいことから、優秀な人材も確保しやすくなるでしょう。離職率の低さは、健全な経営をする企業として認識される傾向が高いため、社会的な評価もアップします。
顧客満足度(CS)の向上が期待できる
従業員のモチベーションや業務への意欲が高まるため、従業員のサービスの質も上がります。質の高いサービスに満足した顧客が増えることで、結果として顧客満足度(CS)の向上も期待できます。従業員が企業から正当な評価を受けることで、従業員のモチベーションはさらに高まり、サービスのレベルアップも図れます。
業績アップにつながる
売上アップなどの業績に反映されるケースも少なくありません。従業員エンゲージメントが高まることで、従業員一人ひとりのモチベーションやチームワークなどが上がるため、営業利益や翌年の売上伸び率などの上昇につながります。つまり、従業員エンゲージメントを高めることは、企業の業績に直結する効果が得られるのです。
従業員エンゲージメントの向上による業績アップの可能性が高い業界
従業員エンゲージメントが業績に顕著にあらわれる業界は、人材の確保と業績が直結する小売・サービス・介護・飲食業などです。また、従業員のサービスの質で差別化を狙う必要がある不動産・人材・保険業なども挙げられます。
従業員が多い業界は、末端の従業員にまで愛社精神を浸透させることが重要です。人材の不足が顕著な業界ほど、従業員エンゲージメントの重要性は高く、得られるメリットも多くなります。
従業員エンゲージメントを向上させるためのコツ
従業員エンゲージメントを向上させるには、以下の7つのコツを意識することが大切です。
適切な人材配置を行う
人材配置が適切に行われなければ、従業員やチームの生産性に影響を及ぼしかねません。そのため、従業員のスキルや能力を最大限に活かせる人材配置を行うことが重要です。適切な人材配置を行うためには、あらかじめ従業員の経歴やスキル、パフォーマンスの傾向などを分析する必要があります。多角的な評価が可能な人事管理システムの導入も有効です。
人事評価・インセンティブ制度を整備する
正当な評価は従業員の仕事への意欲やモチベーションを高めます。自分の働きが認められるからこそ、従業員は「会社に貢献したい」という意識をもつようになります。企業が従業員を正当に評価するためにも、透明性のある人事評価制度やインセンティブ制度を整備しておきましょう。
ワークライフバランスを考えた環境づくりをする
従業員がワークライフバランスを充実させられる職場環境を整備することも重要です。仕事とプライベートの両立が難しくなれば、従業員がストレスをためたり、体を壊したりする可能性が高まります。育児休業・介護休業などの取得率アップの推進や、フレックスタイム制の導入なども検討すると良いでしょう。
明確な企業の理念・ビジョンを提示する
自社の従業員エンゲージメントを向上させるには、経営陣や幹部だけでなく、従業員への企業理念やビジョンの共有も欠かせません。従業員の業務が、企業にとってどれほどの役割や価値があるのかを明確に示すことが大切です。また、従業員が理解を深められるように、企業側は日頃から従業員に伝えるための努力が求められます。
人材の発掘・育成を推進する
優秀な人材を発掘して育成することは、企業の未来を託すリーダーを育てることにつながります。自ら考えて行動できる次世代のリーダーを育成するためには、研修プログラムの整備が不可欠です。研修を通して気づきや学びを得られるのは、受講した従業員だけではありません。指導や教育した側の従業員も、自己成長の機会を与えられます。
コミュニケーションを重視する
業務上の「報・連・相」とは別に、普段から気軽なやり取りができる職場環境であることも重要です。職場内の人間関係が良好であれば、ストレスの軽減はもちろん、ハラスメントの防止にもつながります。また、リモートワークをする従業員がいる場合は、社内にいた時よりも密なコミュニケーションを心がけるようにして、孤立させないように注意しましょう。
定期的に現状把握を行う
従業員エンゲージメントの向上は、ゴールではありません。さらに、向上した従業員エンゲージメントを高いまま維持し続ける必要があります。そのためには、定期的に従業員エンゲージメントを調査し、その都度、現状を把握して対策を練ることが大切です。
PDCAサイクル(「Plan(計画)」「Do(実施)」「Check(評価)」「Action(改善)」)を半年・1年の期間を設けて回していきましょう。
従業員エンゲージメント導入の成功事例
従業員エンゲージメントを向上させた企業の成功事例を紹介します。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
コーヒーショップで人気が高い「スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社」では、あえて従業員にマニュアルを徹底させるようなことはしていません。その代わり、従業員には企業理念やビジョンを明確に提示し、共有しています。
従業員の8割以上がパートタイマーやアルバイトスタッフですが、それぞれが理念やビジョンに基づいた自主的な行動をとっています。それにより、企業の一員としての自覚や誇りをもって業務にあたる従業員が多いです。
株式会社 小松製作所
大手の建設機械メーカーの「株式会社 小松製作所」は、従業員エンゲージメントを33%から70%にまで引き上げることに成功しています。経営者だけでなく、現場と密接にかかわるマネージャーを含む管理職の意識改革に取り組みました。
管理職を対象にした研修やワークショップを開催するほか、チームごとに従業員エンゲージメントを測定して、それに対するフィードバックを徹底させます。管理職の意識の強化により、半年間の工場のパフォーマンスが9.4%も向上しました。
株式会社オリエントコーポレーション
信販業界のパイオニアである「株式会社オリエントコーポレーション」では、アフターコロナを見据え働き方改革を促進。テレワーク率50%、フリーアドレス制、週休3日制の導入などニューノーマル構築の観点で施策を実施しています。
そうした人事戦略の中で、社員同士で感謝を伝え合う「サンクスポイント」機能を搭載したタレントマネジメントシステム「タレントパレット」を導入。社員同士のコミュニケーションを活性化することで、社員エンゲージメント向上にも寄与しました。
まとめ
従業員エンゲージメントが向上すると、従業員の離職率の低下や働きやすい職場環境、顧客満足度の向上などが期待できます。そのためには、適切な人材配置を行う必要があり、従業員のスキルや能力などの分析や把握が欠かせません。
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