コンピテンシー評価とは?|用語の意味から導入のポイントまで詳しく解説


コンピテンシー評価とは?|用語の意味から導入のポイントまで詳しく解説

コンピテンシー評価とは、優秀な社員の行動特性を基準とする「人事評価の手法」です。客観的で公正な人事評価や人材育成を実施して、企業の業績アップを目指します。 この記事では、コンピテンシー評価の意味や必要とされる理由、導入の手順などについて詳しく解説します。効果的な人事評価や育成の仕組みを探している人は、ぜひ参考にしてください。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー(competency)は、英語で「能力」を意味する単語です。ビジネスシーンで使われるときは、「優れた成果を収める人に共通する行動特性」という意味になります。たとえば、「仕事に責任を持つ」「指示がなくても行動できる」といったものです。 コンピテンシー評価は、コンピテンシーを基準とする、客観的で公正な人事評価の手法です。優秀な社員への聞き取りと分析によって、可視化したコンピテンシーを人材育成や採用活動に活用し、生産性や業績の向上を目指します。

コンピテンシー評価が求められる理由

コンピテンシー評価が求められる2つの理由について解説します。

事業競争の加速

1つ目の理由は、ビジネスを取り巻く環境の変化によって、企業間の生き残りをかけた競争が激化していることです。少子化や労働者不足に歯止めがかからず、新入社員の早期退社や転職も増えています。人材採用のミスマッチや、優秀な人材の流出を防ぐとともに、社員一人ひとりの生産性を高める組織づくりが急務となっています。

成果実力主義への転換

2つ目の理由は、成果主義・実力主義へシフトする企業が増えていることです。年功序列の時代に有効だった従来型の「職能資格制度」は、上司がスキルや能力を評価するため、主観が入りやすく、現代の成果主義には適していません。成果をあげた人が正当に評価される、具体的で客観的な人事評価の仕組みが求められています

コンピテンシー評価のメリット

ここでは、コンピテンシー評価のメリットを4つ紹介します。

公正な評価が行われる

メリットの1つ目は、明確で具体的な基準による、公正な評価ができることです。人事評価に個人の主観が入り込むことを防ぐだけでなく、評価に際して人間関係や周囲の評判などに、気を配る必要もありません。評価を受ける側の理解や納得を得やすいため、不満の抑制や離職率の低下にもつながります。

適材適所を実現できる

メリットの2つ目は、社員それぞれの強みや弱みにあわせた、適材適所が実現できることです。社員の適性にあわせた人材配置を行って、生産性の向上や社員のモチベーションアップが狙えます。サポートが必要な部署に適切な人材を配置して、企業全体の底上げを図ることも可能です。

人材育成を効率化できる

メリットの3つ目は、社内でコンピテンシーを共有することによって、人材育成の効率化が図れることです。コンピテンシー評価では、実在する優秀な社員がモデルとなるため、評価の判断がしやすくなります。評価を受ける側にとっても、自分に不足している部分や、目指すべき目標が明確になり、キャリアアップに活かせます

採用のミスマッチを防ぐ

メリットの4つ目は、採用のミスマッチを防げることです。企業が求めるコンピテンシーを採用基準に加えることで、ニーズにあった人材を集めやすくなり、望ましい人材の特定も容易になります。採用担当者の主観が入らない公正な人材採用や、採用コストの削減に期待できる点も見逃せません。

コンピテンシー評価のデメリット

ここでは、コンピテンシー評価のデメリットを3つ紹介します。

導入が難しい

デメリットの1つ目は、優秀な社員への聞き取りや評価基準の策定に、多大な手間と時間がかかることです。コンピテンシー評価は企業ごとに異なるオリジナルの指標であり、標準的なテンプレートが存在しません。職種や役職によって求められる基準は変わるため、それぞれに最適な評価基準を策定する必要があります

変化に適応しづらい

デメリットの2つ目は、変化に弱く柔軟な運用が難しいことです。コンピテンシー評価では、多数の評価項目を細かく設定する必要があり、ビジネス環境が変わって内容が不適切なものになれば、見直さなくてはなりません。変化のたびに時間やコストがかかるのに加え、社員の混乱を招くおそれもあります。

評価モデルや基準の策定が難しい

デメリットの3つ目は、評価モデルの選定や基準の策定が難しく、間違った定義をするおそれもあることです。根本的にコンピテンシー評価に向かない業種や職種も存在し、抽出したコンピテンシーに汎用性がない場合もあります。策定したコンピテンシー評価が適切かどうかを、繰り返し検証することが特に重要です。

コンピテンシー評価導入の流れ

ここからは、コンピテンシー評価導入の流れについて解説します。

1.優秀な社員からのヒアリング

優れた業績や成果をあげている社員を複数人選定し、ヒアリングを実施します。「成果をあげるために、どのような行動をとっているか」に加えて、行動につながる考え方や価値観を洗い出すことも、重要なポイントです。聞き取ったデータをもとに、行動や思考パターンを分析して、優秀な社員に共通する行動特性を抽出しましょう。

2.目標とする人物像のモデル化

共通する行動特性をもとに、自社が求める理想的な人物像を具体的にモデル化します。モデル化の方法には、主に3つの種類があります。

実在型モデル

実在型モデルとは、社内に実在する人物をモデルにする方法です。現実的でより具体的な基準が作りやすいのがメリットですが、ほかの社員にとって、再現が難しいケースも少なくありません。

理想型モデル

理想型モデルは、企業理念などをもとに作る理想の人物像です。モデルに適した人材が自社内に存在しない場合にも利用できるため、モデル化の作業は比較的容易ですが、現実的ではない基準が設定されるおそれがあります。

ハイブリッド型モデル

ハイブリッド型モデルとは、実在型モデルに自社の理想像をプラスするモデル化の方法です。実在型モデルと理想型モデルの良さを兼ね備えた、最も優れたモデルで、優秀な社員のさらなる成長も期待できます。

3.評価項目の策定

モデル化が完了したら、具体的な評価項目を策定していきます。6つの領域と20の項目から構成される「コンピテンシーディクショナリー」を、”たたき台”として活用すると効率的です。評価を数字化するため、各項目に3~5段階程度のレベルを設定しましょう。 クラスター項目達成・行動達成志向秩序・品質・正確性への関心イニシアチブ情報収集援助・対人支援対人理解顧客支援志向インパクト・対人影響力インパクト・影響力組織感覚関係構築管理領域他者育成指導チームワークと協力チームリーダーシップ知的領域分析的思考概念的思考技術的・専門的・管理的専門性個人の効果性自己管理自信柔軟性組織コミットメント

4.テスト・運用

完成したコンピテンシー評価を社員に適用して、現実的な評価が得られるかどうかを検証します。調整の必要が生じた場合は、個人の主観が入らないように、複数人で対応しましょう。運用後も、検証と更新を継続的に実施します。

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コンピテンシー評価導入を成功させるポイント

コンピテンシー評価の導入を成功させる4つのポイントについて解説します。

完璧を目指さない

ポイントの1つ目は、企業のニーズをすべて満たす、完璧な人材を求めないことです。コンピテンシー評価は、完璧な人材づくりを目的とするものではありません。社員一人ひとりの意識改革を促して、業績アップを目指すものという点を理解する必要があります。設定した理想像が完璧すぎると、誰も手が届かない”絵に描いた餅”になりかねません。

成果と業績に基準をおく

ポイントの2つ目は、実際の成果や業績につながるかどうかを重視することです。コンピテンシー評価は、人材配置や採用にも活用できる指標ですが、目的はあくまでも生産性向上や業績アップです。コストと労力をかけてコンピテンシー評価を導入しても、成果につながらなければ意味がありません。

長期的運用を目指す

ポイントの3つ目は、長期的な運用を目指すことです。コンピテンシー評価を実際に運用するまでには多くの時間と手間がかかり、導入後も調整が必要になるケースが少なくありません。導入しさえすればすぐに効果が出るものでもないため、長期的視点で人材の育成や採用に、じっくり取り組んでいきましょう

定期的に見直しを行う

ポイントの4つ目は、定期的な見直しを欠かさないことです。社会のICT化が急速に進むなか、ビジネスに求められるニーズも、刻々と変わる時代を迎えています。コンピテンシー評価は変化への適応が難しいため、導入する場合は、定期的にモデルや基準を見直しながら、適切に運用することが求められます

まとめ

コンピテンシー評価は、優秀な人材の行動特性を基準とする人事評価の仕組みです。成果実力主義に即した客観的評価が可能ですが、導入や変化への対応が難しい点に注意が必要です。 プラスアルファ・コンサルティングのクラウド型人材管理システム「タレントパレット」なら、コンピテンシー評価をはじめとする、複数の人事評価データを一元管理できます。適性検査や分析機能を標準搭載しており、採用活動や離職防止にも役立ちます。タレントパレットのデモや体験版を上手に利用して、人事業務を高度化しましょう。