せっかく時間をかけて育てた人材が辞めてしまえば、会社にとって大きな損害です。働きやすい環境や働きがいのある会社では、社員の離職率も低く、社員が定着することで事業の発展にもつながります。どうして社員が辞めてしまうのかを考える指針として、注目を集めているのが「従業員満足度調査 (ES調査) 」です。そこで、「従業員満足度調査」の結果からどんなことがわかるのか、その種類や効果について詳しく解説します。
「従業員満足度調査」を行う目的
「従業員満足度調査」は自分の会社や仕事などに対する従業員の満足度を調べたものです。「従業員満足度調査」を行えば、その時点で実際に従業員の満足度がどのくらいなのかがわかります。現状分析ができれば、組織の課題も浮き彫りになるはずです。場合によっては、社員と経営者側との間で認識がずれていることも考えられます。従業員の満足度を下げているポイントがあれば、それをふまえて対策を取ることもできるでしょう。対策を施すことで現場を改善し、従業員満足度を向上させることができます。人事面や組織面でも同様に、「従業員満足度調査」の結果を経営指標として活用し、人事戦略や経営戦略を立てるときに役立てることが可能です。
従業員満足度を向上させることで得られる効果
社員が仕事をする目的のなかには、もちろん給料を得るためという理由もあるでしょう。また、従来は、地位や肩書きを得て、出世することを重視する考え方も多くありました。しかし、時代が変化して価値観が変わったことや、新しい世代が社会で活躍するようになったこともあり、お金を得ることや出世よりも、働きがいを求めている社員も増えています。
従業員満足度が向上すれば、日常での仕事に向けるやる気など、モチベーションも上がるはずです。また、働きがいを創出し、仕事にやりがいを求めている社員のニーズを満たすこともできます。もちろん、モチベーションが向上し、働きがいがでてくれば、結果的に社員の生産性を上げることにもなります。会社や会社が扱う商品・サービスなどにも愛着が持てるようになるはずです。社員としての誇りも持てるようになる可能性が高まり、強制されなくても会社にとって望ましい行動を自ら実行に移せるようにもなります。そうして仕事の質がよくなれば、それが結果的に顧客満足度の向上や業績アップにもつながるのです。
ほかにも、従業員満足度を向上させることができれば、さまざまな面でプラスの影響が出てきます。会社に対して不満がなく、愛着が持てるようになれば、社員も会社のために仕事を頑張ろうという気持ちが強くなるはずです。そうなれば、遅刻や欠勤が減る、仕事をさぼることがなくなるなど、勤務態度の向上も望めます。また、社員としての自覚が高まることで、会社にマイナスになる行動を起こさないようなモラル、倫理観の醸成にも役立つのです。
さらに、ストレス社会といわれる現代では、社員のメンタルヘルス対策も重要になってきました。従業員の満足度調査のなかにはメンタルヘルスに影響を及ぼす原因となり得る項目も含まれています。仕事量や社内の人間関係など、結果を把握して対策を施すことも可能です。人間関係で問題があるならば、改善することで雰囲気のよい組織になります。
終身雇用制が崩れた現代では、一度就職した会社に一生尽くすということが当たり前ではなくなりました。そのため、入社してダメだと思えば、すぐ離職してしまうという人も増えています。また、せっかく仕事を安心して任せられるようになったところで、もっと条件のいい会社に転職してしまうことも珍しくなくなりました。そのため、社員が定着しないという問題を経営面での大きな課題としている会社も多いのではないでしょうか。従業員満足度を上げることができれば、社員の定着率向上にもつながります。もちろん、従業員満足度が高い会社は仕事を探している人にとって魅力的に映るため、採用力が向上することも期待できるはずです。
「従業員満足度調査」の項目とは
「従業員満足度調査」の項目については、まず、仕事そのものに関する項目があります。仕事の内容は充実しているか、目標に対して納得できているかなどがその一例です。また、仕事量は適切かどうか、仕事で身についた知識や成長を実感しているかなども、仕事に関する項目に含まれます。調査項目では業務負荷に関する項目もポイントのひとつです。仕事をすることでストレスになっていることがあるか、仕事量のコントロールができているかなどが問われます。
さらに、人事制度など、働く条件にまつわる項目も「従業員満足度調査」では重要な役割を持つ項目です。人事の評価が妥当なものか、教育制度が充実しているかなどが質問されます。また、残業が多すぎないか、給与に満足しているかなど、処遇に関することも満足度を調べるうえでは大切なポイントです。
職場や上司など、環境や人間関係に関する項目も入っています。職場ではチームワークがとれているか、コミュニケーションが取りやすい風土があるか、職場の目標がスタッフで共有されているかなどです。また、切磋琢磨できる雰囲気や社員同士で尊重できる職場かどうかも項目に含まれることがあります。上司に関してはコミュニケーションが取れているかという質問や、部下の指導や意思決定、方針の提示が適切であるかなども質問の一例です。
会社の経営理念や戦略、姿勢、将来性など会社自体に関する項目もあります。ほかにも、会社にまつわる項目には、情報伝達のためのインフラ整備が整っているか、将来性や市場変化に適切な対応ができているかなどです。さらに、総合的な項目も含め、会社が抱える問題や調査したい問題に合わせて項目がセットされています。
「従業員満足度調査」を行う際の流れ
「従業員満足度調査」を行う流れとしては、まず調査目的の明確化がスタートです。「従業員満足度調査」は、単に現状を分析・把握するだけではありません。得られた結果にもとづき、問題点があれば解消するための施策を施すところまで道筋を考える必要があるからです。企業によって、従業員の満足度が低いところを知りたいのか、人事に役立てたいのかなど、目的には違いもあるでしょう。目的の違いによって調査に必要な項目も異なるため、調査目的を明確化するのは大切なポイントです。
次に、対象を選定し、調査の目的に合わせて調査項目を検討・設計する段階に入ります。「従業員満足度調査」は社員全体に対して広く行い、属性と結果を比較して問題点を探ることも可能です。ただし、調査の目的が離職率が高い原因を知りたいということならば、特に離職する社員が多い部署や離職率の多い年齢層などを対象に、的を絞って調査することもできます。また、調査項目の検討の際、社員の本音を知りたいと考えると、あれこれ質問を増やしたいと考えることもあるでしょう。しかし、調査の目的を明確にしておけば、直接関係のない項目は入れず、目的に合わせて質問項目を絞ることもできるのです。
調査は紙媒体の調査票やWeb、システム上でのアンケートなどで調べる方法が一般的ですが、社員に直接面接やインタビューをして調査することも可能です。 調査票やWeb、システム上でのアンケートは調査に手間や時間がかからないうえ、匿名ならば本音が現れやすくなります。システムであれば調査の自動集計が可能ですし、期間設定やリマインドメール機能を活用することで手間を削減しながら実施できるというメリットがあります。 一方で、直接聞き取る調査方法では社員の反応を直接目にすることができるものの、時間がかかり、場合によっては本音を言えないケースがある点がデメリットです。自社にとって、どの方法を選ぶのが最適かを考えて調査方法を決定する必要があります。
調査項目の検討・設計が終われば、いよいよ調査の実施です。そして、調査結果を集計して、なにが社員の満足度を下げているかなどを分析します。また、結果は蓄積していけば傾向をうかがうデータにもなり得るため、管理しておくと後々役に立つこともあります。さらに、調査から得られた結果や、そこから導き出された対策を経営者や社員に知らせ、調査結果を活用しながら会社の業績アップや環境改善に生かすことが大切です。
「従業員満足度調査」を実施する際のポイント
「従業員満足度調査」を実施する際には、いくつか気をつけておくべきポイントがあります。せっかく調査を実施しても、社員があまり調査に関心がなく、回答をしてくれないと正確な状況の把握ができません。そのため、調査の目的を社員に知ってもらう努力をしたり、調査の必要性を伝えたりなど、回答率を上げる工夫をする必要があります。また、会社に繁忙期があるならば、その時期は避け、社員がストレスなく回答できるような配慮も大切です。また、本音を聞き出せるように、匿名の調査票やアンケートを使うほうがいいこともあります。
会社のなかで起こる問題のなかには、上司と部下の間で生じる行き違いが原因となることもあるはずです。上司は十分部下を思いやり、正しく指示を出していると考えていても、部下にとってはわかりにくかったり、適切な指導をしてもらえないと感じていたりすることもあります。「従業員満足度調査」では、そのような「上と下」のギャップを浮き彫りにすることも可能です。また、社員のなかには優秀な人もいれば、それほど業績を上げられない人もいます。そのため、パフォーマンス別に分析し、それぞれに有効的なモチベーションアップの方法や離職を避ける方策を考えることも大切です。
「従業員満足度調査」は自社で行うことも可能ですが、専門の調査会社を活用することもできます。専門の調査会社ならば、「従業員満足度調査」に関するノウハウがあることはもちろん、基本となる調査項目をすでに有していることもあります。デメリットは費用と設問等が自社に合わない可能性があることです。
従業員満足度の構成要因とは
従業員満足度には6つの構成要因があります。①ビジョンへの共感と②マネジメントへの納得感、③会社や業績への参画度、④権限委譲をしているかどうか、⑤企業風土の快適さ、⑥職場環境の快適さという6つのポイントです。
会社が掲げているビジョンが社員にしっかり共感されていれば、社員も目指すべき目的を把握しながら仕事に従事することが可能です。また、実際に仕事をしているなかで、上司が部下の考えを汲んだ対応をしてくれたり、上司に認められたと感じられたりなど、マネジメントへの納得感があることも従業員の満足度につながります。 さらに、自分が会社に貢献できていると実感できれば満足感を得られ、やる気も増すでしょう。
社員は上司や先輩などの指示のもとに仕事をすることが多いですが、ただ指示に従って仕事をしているだけでは主体性が失われ、やる気も起こらないことがあります。やり方は細かく指示せず部下に任せるなど、各自にある程度は権限委譲できる環境が整っていれば、社員に承認感を与え、働きがいを感じさせることも可能です。
働きやすい企業風土が培われているかどうかも、従業員満足度に影響します。社員同士でコミュニケーションが取れていない会社や、あまりに業務の負担が大きすぎる会社などの場合、会社の雰囲気が悪くなり、社員の離職につながる可能性もあります。また、労働条件や福利厚生などを含めた職場環境が快適かどうかも、従業員満足度に影響を及ぼすポイントです。そもそも、就職先を選ぶとき、労働条件や福利厚生が充実している会社かどうかをチェックするという人も多いかもしれません。
「従業員満足度調査」で分析するべき項目とは
「従業員満足度調査」で分析する際の視点として、会社全体の現状認識をすることが大切です。会社の強みと弱みを把握し、従業員の満足度を上げる(または下げる)要因となっているものを明らかにすることで、会社が取るべき施策の優先順位もわかります。年代や性別、職種などの属性で違いがあるかどうかの分析もしておくと、より詳細な現状把握が可能です。自由回答も項目に入れておけば、選択肢を選ぶだけでは現れないような結果を得られることもあるでしょう。
「従業員満足度調査」では、自社の水準や特徴を把握するための分析をすることもできます。単に会社の現状を把握するだけではなく、他社との比較をすることで自社の水準を把握することも可能なのです。また、何度も調査を行っていれば、蓄積された過去のデータと比較することで、どれだけ問題点が改善されたかなど、毎年の変化を把握することもできます。
さらに、「従業員満足度調査」では、マネージャー層のマネジメント課題の把握を明らかにすることも可能です。上司の自己評価と部下の上司に対する評価を付き合わせることで、両者にギャップがあるかどうか、あるならどこがどの程度違っているのかが浮き彫りになります。
「従業員満足度調査」で士気を高めよう
「従業員満足度調査」を有効活用することは、各社員の仕事や職場に対する満足度を高めることにつながります。また、チームや組織に対しても、プラスの影響を与えて組織的改善につなげることが可能です。調査で得られた回答をしっかりと分析して現状の問題点を洗い出し、それに対する施策を考えることも重要になります。さらに、定期的な調査を続けて変化をチェックしながら、従業員の士気を高めることに生かすようにしましょう。
従業員満足度調査を実施・分析するタレントパレット
「タレントパレット」は企業が持つあらゆる社員情報を人材データとして集約し、分析することで科学的人事戦略を実現するための人材プラットフォームです。 社内アンケートのテンプレートを複数搭載しており、人事や部門内で手軽に「従業員満足度調査」を実施し、集計することができます。 また,フリーコメント項目は、テキストマイニング機能によって、ひとつひとつ読み込むことなく定量的な把握や発言傾向、社員の分析などが可能です。