こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
近年、上司が部下をケアする手段として、多くの場面で1on1が利用されています。しかし、社員が1on1を苦痛に感じている場合、思ったような人材教育の効果は見込めません。
この記事では、人事担当者に向けて1on1が苦痛に感じる理由や失敗例、課題、解決策などを解説します。人事課題の現状を知るためにも、ぜひ参考にしてください。
1on1の課題
多くの企業で取り入れられている1on1ですが、社員の時間を奪うばかりで中身のない取り組みになっているケースも少なくありません。
1on1が苦痛になってしまうケースも
1on1のメリットは、上司と部下の間でコミュニケーションの機会を設け、部下の育成を促進することです。メリットの一方で、1on1を導入しても上手く機能しないケースが多々あります。1on1が苦痛になってしまうと本来の目的が達成できず、効果が発揮できないばかりか、逆に組織にとってのデメリットになりかねません。
1on1を苦痛に感じてしまう理由
なぜ社員は1on1を苦痛に感じてしまうのでしょうか。考えられる主な理由を3つ解説します。
話す内容が思いつかない
1on1の導入時は話す内容に困らなくても、実施回数が増えるにつれて話題が尽きてしまう場合があります。話す内容が空虚なものになると単なる時間の浪費になり、社員のモチベーション低下を招きかねません。1on1が始まってから話す内容を考えることは困難です。あらかじめテーマを考えておき、社員同士で共有しておくとよいでしょう。
忙しくて1on1をする時間がない
優先度の高い業務があると、1on1は後回しになりがちです。繁忙期では特に、1on1を実施する余裕がないケースも考えられるでしょう。忙しさを理由にスケジュールの変更を続けて先延ばしにすると、結果的に立ち消えになってしまうおそれもあります。1on1を経営の最重要項目に位置づけ、企業全体で注力することが重要です。
1on1の意義が見出せない
1on1は手間や時間がかかるうえ、目に見える効果が短期的には現れない傾向にあります。成果がすぐに実感できないと1on1の時間をムダと感じ、意義を見出しにくくなる場合もあるでしょう。1on1の意義や目的、中長期的な視点をもって取り組む必要性などを社員同士で共有し、理解することが重要です。
1on1が苦痛な場合に起こること
社員にとって1on1が苦痛な場合、組織にさまざまな不都合が発生します。以下で詳細を解説します。
部下との間に溝ができてしまう
1on1が苦痛になった場合、上司と部下の間に溝ができてしまいます。たとえば、1on1の目的や会話の中身を間違えるなどは、上司と部下の関係性が悪くなる原因の1つです。関係が悪化すれば、業務に支障が生じるケースもあるでしょう。最悪の場合、部下の離職につながることも考えられます。1on1の過程を記録に残し、改善を繰り返すことが重要です。
心理的な負担が生じる
1on1は定期的に実施する必要があります。実際のやりとりにかかる時間だけでなく、テーマの検討やスケジュール管理などの手間もかかる点に注意が必要です。多くの部下がいる上司にとっては、毎週のように一定の時間を1on1に割くだけでなく、全員と円滑にコミュニケーションとる必要があるため、特に心理的な負担になりやすいでしょう。
1on1の失敗例
1on1が失敗に終わってしまった事例には、一定の要因があります。以下では、1on1の失敗例を解説します。
1on1の目的が明確でない
1on1の目的が明確化されていない場合、社員のモチベーションが上がりにくくなります。「なぜ1on1を行うのか」「1on1を実施し、企業としてどうしたいのか」など、上司と部下の双方でしっかりと目的を共有することが必要です。同時に、1on1で期待できる効果やメリットも部下に伝えると、より前向きにミーティングに参加できるしょう。
業務の話が中心になっている
1on1は上司が部下の話を傾聴する場です。部下をサポートする場でもあるため、業務の話をするだけでは部下の育成にはつながりません。部下の設定目標や不達成の理由を確認するだけでも不十分です。上司が話をする前に、まずは部下の話に耳を傾けるのはもちろん、雑談や相談、キャリアパスに関するアドバイスなども対話中に取り入れましょう。
上司が一方的に話してしまう
1on1は上司の施策の場ではなく、基本的に部下をサポートする場です。上司が一方的に話をすると、部下の悩みに共感する時間になりません。上司は部下の話に耳を傾け、共感することが大切です。ボディーランゲージを使う、相手の目を見て話を聞くなど、非言語的な部分も配慮し、意識的に部下が話しやすい雰囲気をつくりましょう。
前回の内容を覚えていない
部下が前回話した内容を上司が覚えていないケースでは、部下からの不信感につながりかねません。やりっぱなしでその場限りになってしまうと一貫したアドバイスができず、部下のモチベーションは下がります。同じ話を何度もすることになれば、部下にとっては苦痛に感じられるかもしれません。1on1の後は要点や反省点など上司側が記録し、継続的に改善しましょう。
1on1の苦痛を解消するポイント
1on1を効果的に実施するには、ミーティングそのものの苦痛の解消が必要です。以下では3つのポイントを解説します。
1on1の目的を伝える
上司だけでなく、部下も1on1の目的を明確に知ることが重要です。目的がわからないまま実施しても、単なる時間の浪費と受け取られかねません。効果やメリットを理解できれば、自然とモチベーションも上がりやすくなります。1on1導入によって社員やチーム、企業全体にとってどのような意義があるか、広く社員に周知しましょう。
話題をあらかじめ決める
1on1は、目的に応じて事前に決めたテーマやアジェンダに沿って進めます。たとえば、部下の育成が目的の場合、以下の話題が有益です。
・モチベーション向上
・業務や組織の課題解決
・目標設定
・キャリア支援
また、社員のエンゲージメント向上が目的の場合は、以下の話題が適しています。
・プライベートの相互理解
・心身の健康チェック
・会社としての方針や戦略の伝達
事前のテーマ共有によって話す内容を考えておけるため、途中で話す話題が尽きる状況も防げます。企業内で1on1を推進することが多い人事側がテーマを事前に示すとよいでしょう。
「1on1アジェンダを3つのカテゴリーに分類│注意点や話題の具体例も解説」
1on1の時間を短く設定する
1on1の実施時間は、長すぎると苦痛に感じられやすい傾向にあります。短時間かつ高頻度で行うことが望ましいでしょう。たとえば、週に1回、30分程度の頻度で行うと、ストレスなく継続できます。適切な時間と回数を確保できれば、話す回数を重ねるほど上司と部下の心理的な距離が縮まり、コミュニケーションがスムーズになるでしょう。
1on1を進めるうえでのポイント
1on1を進めるうえで、どのような点に配慮すべきなのでしょうか。主なポイントを3つ解説します。
中長期的に取り組む
1on1の効果は、短期間では現れにくい傾向にあります。即効的な効果を期待しすぎると、実施する意義の喪失や、モチベーション低下につながります。1on1を行う際には、中長期的な視点で取り組むことが必要です。目先の業務だけでなく、数年後のビジョンなどについても話題にしながら継続的に実施し、記録することで社員の成長を可視化できます。
スケジュールを決める
1on1は、スケジュールを決めて継続的に行うことが大切です。「毎月◯日の△時△分から30分実施する」という感じで1回ごとの日程をあらかじめ決めておけば、忘れずに取り組めます。スケジュールは目に見える形で管理しておくと抜けを防げます。どうしてもスケジュール通りにいかない場合は、予備日を設けるとストレスなく対応できるでしょう。
1on1の振り返りを行う
ミーティング終盤、5〜10分になったら全体を振り返ります。これまでの話を振り返ってまとめたり、次回までのアクションを決めたりするとよいでしょう。振り返りはアンケート形式でもかまいません。話しやすい雰囲気だったか、言いたいことが話せたかなどをヒアリングします。頭の中で要点が整理され、お互いにとって意味のある1on1の時間にできるでしょう。
1on1のメリット
1on1での苦痛が解消でき、上手く機能すれば多くのメリットが得られます。以下では主なメリットを解説します。
上司と部下の信頼関係ができる
1on1がうまく機能すると、上司と部下の信頼関係が築けます。対話による信頼関係の構築には、上司が部下に対して話しやすい雰囲気を醸成し、親身になって傾聴することが大切です。
職場の風通しがよくなると、余計なストレスを感じずに仕事ができるようになるため、双方のモチベーション向上だけでなく、結果として生産性の向上にも役立ちます。
部下の変化に気づきやすくなる
日々の業務の様子だけでは、部下の変化や悩みに気づきにくい傾向があります。しかし、1on1で普段からコミュニケーションが取れていれば、変化を早めに発見できます。業務から離れて会話する場を設けることで、部下の新たな一面や素質などに気づけるかもしれません。仕事へのモチベーションや本質的な悩みなど把握できれば、離職率の抑止にも役立つでしょう。
まとめ
1on1には、部下のモチベーション向上や社員同士の信頼関係の構築など、さまざまなメリットがあります。しかし、部下が苦痛に感じるようなミーティングしかできないと、モチベーション低下や早期離職などのデメリットを招きかねません。1on1の明確な目的を共有し、中長期的な視点で定期的に1on1を実施することが重要です。
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