近年、ICTという用語をよく聞くようになった人も多いでしょう。世界中でICTが浸透しており、日本でも幅広い分野でICTの導入が進められています。企業が戦略的に事業に取り組むには、ICTの活用が不可欠です。本記事では、ICTの意味や特徴に触れたうえで、導入事例や推進のポイントなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
ICTとは?意味や特徴を簡単に解説
ICTとは、どのようなものでしょうか。ここでは、ICTの意味や特徴などを解説します。
ICTの意味
ICTは「Information and Communication Technology」を略した用語であり、日本語に訳すと「情報通信技術」です。通信技術を用いたコミュニケーション方法の総称として、ICTという用語が使用されています。また、通信機器やソフトウェアを活用したさまざまなサービスを表す言葉として、ICTが使われるケースも多いです。
ICTの特徴
ICTの導入により、ネットワークを介してさまざまな情報をやり取りし、複数の媒体や人同士で共有することが可能です。たとえば、メールやSNSなどのコミュニケーションツールに加え、ECサイトをはじめとするWebサービスも活用されています。
ICTの歴史
情報通信技術の概念は、1980年代頃から存在しました。ただし、ICTという言葉が生まれて世間に定着した時期は、1990〜2000年頃といわれています。ICTの歴史をまとめると、以下のとおりです。
・1980年代:自動車電話が登場する
・1990年代:デジタル回線のサービスが開始する
・2000年代:折りたたみ式携帯電話が一般に広がる
・2010年代:スマートフォンが普及する
ICTとは異なる用語との違い
ICTと似た用語が複数存在するため、迷う人も多いでしょう。ここでは、ICTとそれ以外の用語の違いを解説します。
ICTとITとの違い
ITとは「Information Technology」の略であり、日本語に訳すと「情報技術」です。ITは情報技術そのものを表しています。それに対してICTは、情報技術の使い方を表す言葉です。たとえば、パソコンやスマートフォンなどは情報通信のために開発された技術であり、ITに該当します。一方、SNSやECサイトなどはITを活用する方法であり、ICTです。
ITとICTはほとんど同じ意味で用いられるケースも多いものの、国際的にはICTの方が定着しています。また、民間企業はIT、政府や国際機関はICTを使う場合が多いです。
ICTとIoTとの違い
IoTとは「Internet of Things」の略であり、日本語では「モノのインターネット」と表現できます。あらゆるモノとインターネットをつなぐ技術や、それぞれがつながっている状態を表す言葉として使われる場合が多いです。
それに対してICTは、ネットワークを通じて人とインターネット、または人と人をつなぐ技術や方法を指します。IoTはモノ、ICTは人を対象としており、違いは何をつなぐかです。
ICTとDXとの違い
DXとは「Digital Transformation」の略であり、日本語で表すと「デジタル変革」です。デジタル技術を活用し、生活やビジネスモデルを変えることをDXと呼びます。ICTは情報通信技術全般を表す言葉であり、DXはICTを活用してよりよい状況を生み出すための変革を目指す概念です。
ICTが求められるようになった背景
なぜICTが求められるようになったのでしょうか。ここでは、その背景について解説します。
労働人口の減少
少子高齢化の影響により、近年の日本は労働人口が減少傾向にあります。特に中小企業を中心として人手不足が深刻化している状況です。しかし、ICTを活用すると少人数でも業務を無理なく遂行できるため、今後のビジネスを支えるとして注目する企業が増えています。
グローバル化
世の中のグローバル化が進んでおり、国の垣根を超えてさまざまなビジネスが行われるようになっています。複数の国の人同士が参加し、オンライン会議が行われるケースも珍しくありません。遠く離れた人同士がスムーズにやり取りするには、オンラインを活用する情報の交換や共有が不可欠です。
ライフスタイルの変化
働き方の多様化やテレワークの浸透などにより、人々のライフスタイルは大きく変化しました。そのような状況で業務を進めるために、Web会議やWebチャットなどをはじめ、ICTが頻繁に活用されるようになっています。
ICTとSDGsの関係性
ICTはSDGsと深いかかわりがあるため、関係性について詳しく解説します。
SDGsにはICTで解決できる目標が多い
SDGsではICTの活用が重視されており、目標を達成するにはデジタル技術を積極的に活用する必要があります。SDGsで掲げられている17の目標は、ICTの利用により解決を目指せる内容が中心です。また、9番目の目標は「産業と技術革新の基盤をつくろう」であり、ICTに関連する機器や技術の活用による産業のデジタル化について、具体的に言及されています。
「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」に利用できるICT
ICTを活用すれば、SDGsの1番目の「貧困をなくそう」や、4番目の「質の高い教育をみんなに」などの目標達成を目指すことが可能です。たとえば、教育分野では、ICTを活用した通信教育やeラーニングなどの提供がすでに始まっています。地域や収入による教育の格差を最小限に抑える方法のひとつとして、ICTの活用が有効です。
「ジェンダー平等を実現しよう」に利用できるICT
SDGsの5番目の目標である「ジェンダー平等を実現しよう」の解決にもICTが貢献できます。女性は男性よりも教育を受けにくい傾向があるものの、ICTを活用すれば女性が教育を受ける機会を増やすことが可能です。時間や場所の制限により希望通りに働けていない女性も、ICTを活用すればリモートで無理なく働きやすくなります。
「つくる責任つかう責任」に利用できるICT
ICTは、SDGsの目標の12番目である「つくる責任つかう責任」にも役に立ちます。ICTを活用すると、持続可能な消費と生産を実現できるからです。具体的には、以下の取り組みを実現できます。
・インターネットや機器の活用によりペーパーレス化を推進できる
・AIで販売数を予測し、無駄な発注を抑えられる
・AIカメラでゴミを分別し、資源をリサイクルにつなげられる
ICTをビジネスに活用するメリット
ICTをビジネスに活用すると、以下のようにさまざまなメリットを期待できます。
情報共有の強化
ICTを導入すれば情報共有のために紙媒体を使用する必要がなくなり、オンライン上でやり取りや確認を済ませられます。たとえば、スマートフォンやタブレットを利用すると、必要なときに必要な情報をスムーズに共有することが可能です。リアルタイムで情報発信を行い、顧客のエンゲージメントを高める効果も期待できます。
意思決定のスピード化
ICTの活用により社内の情報共有を強化できれば、意思決定のスピード化にもつながります。たとえ決定権を持つ人が外出していてもICTを通じて連絡でき、素早く意思決定できます。また、Web会議は対面で行う会議よりも準備に手間がかかりません。必要なタイミングでスピーディに開催しやすく、迅速な意思決定を後押しできます。
コミュニケーションの向上
ICTを活用すると、その場にいない相手ともコミュニケーションをとれます。たとえば、外出中に顧客から急ぎの連絡が入っても、問題なく対応可能です。また、文字で表現しにくい内容についても、Web会議を利用すれば資料を見せながら説明でき、齟齬が生じるリスクを抑えられます。
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ヒューマンエラーの防止
ICTの導入により業務を自動化すれば、ヒューマンエラーが生じにくくなります。人がルーティン作業を続けていると集中力が低下しやすく、ミスも多発しがちです。業務を自動化するとそのようなミスが起こる心配はなくなり、業務効率化にもつながります。
ビジネスチャンスの獲得
積極的にICTを活用すれば、国内外を問わず多くのステークホルダーと接触しやすくなります。たとえば、SNSを使用すると不特定多数の多くの人に情報を届けることが可能です。未開拓地や新たな客層に対するアプローチも容易になります。
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ICT活用の生活における身近な事例
ICTに対して難しいイメージを持つ人もいますが、普段の生活のさまざまな場面で活用されるようになってきました。ここでは、ICTの身近な活用事例を紹介します。
テレビ・ラジオ
テレビやラジオでは、さまざまな言語に対応できる自動文字起こしAIを活用し、効率的に翻訳を行っています。生放送に対して正確な字幕を表示できる技術も開発されました。また、テレビやラジオ番組の放送終了後は、インターネット上で一定期間無料で視聴できるサービスも提供されています。
パソコン・タブレット・スマートフォン
多くの人が日常的に使用しているパソコン、タブレット、スマートフォンなども、ICTに含まれます。通話、メール、SNS、Webサイトなどによるコミュニケーションは、日々の生活に欠かせないものです。また、パソコン、タブレット、スマートフォンなどを活用した多様なサービスや教材も提供されています。
SNS
SNSとは「Social Networking Service」の略であり、インターネットを通して人と人をつなげるサービスです。SNS自体がICTであり、コミュニケーション投稿、共有、拡散といったコミュニケーションに役立つ幅広い機能を持っています。
クラウドシステム
メールサービス、オフィスソフト、オンラインストレージ、マネジメントシステムなどのクラウドシステムも、普段の生活で多くの人が利用しています。ICTにより、パソコンとスマートフォンなど、異なるプラットフォーム間のアクセスも容易になりました。
ICTの業種・目的別の活用事例
ICTは、ビジネスにおいてどのように活用されているのでしょうか。ここでは、ICTの業種・目的別の活用事例について解説します。
飲食・サービス
飲食・サービス業では、予約管理システムや顧客管理システムなどが利用されています。たとえば、POSシステム搭載のレジはデータを集計してサーバーに送信し、本部で受信することが可能です。また、オンラインを活用したクーポンの配布や、キャッシュレス決済システムなどの導入により、顧客満足度や利便性の向上を実現しているケースも増えています。
製造
製造業では、資料のペーパーレス化や業務の自動化により、作業量や業務量の軽減を実現しています。ICTにより業務の属人化や管理不足の問題を解決すれば、品質を高めつつ、安定した供給を目指すことが可能です。たとえば、生産管理システムを活用すると、廃棄や修正にかかるコストを抑制したり、ミスを削減したりできます。
農業・漁業
農業では、クラウド型農業生産管理ツールを活用し、生育記録をデータ化する方法が取り入れられています。農機の自動走行やセンサーを活用した水位情報の取得などにより、作業を効率化するケースも増えてきました。漁業では、水温管理、資源管理、漁場予測などにICTが活用されています。
医療・介護・看護
医療・介護・看護の分野でも、ICTの活用が進んでいます。たとえば、勤務シフト自動作成システムや医療・介護記録ツールを導入したり、問診票やカルテを電子化したりしているケースも多いです。
遠隔医療システム、オンライン診察、通院予約システムなども一般的になりつつあり、患者にとっての利便性も向上しました。医療・介護・看護の分野における業務効率化は、患者の待ち時間の短縮にもつながります。
教育
教育現場では、パソコンやタブレットなどの教材の活用が広がっています。また、成績や出欠などの生徒情報の管理や授業で使用する資料作成などにも、ICTが導入されるようになりました。学校に来られない生徒についても、クラウドの利用により学習の支援が可能です。
土木建築
土木建築には多くの人がかかわっており、スムーズな情報共有が特に重要です。そのためにICTが活用されています。たとえば、人の出入りが難しい場所では、点検や調査にドローンを使用するケースも増えてきました。また、ビデオ会議システムを通して遠方の現場と打ち合わせを行い、効率的に業務を進めています。
防災
防災にもICTが有効活用されています。たとえば、緊急を要する情報を知らせるJアラート(全国瞬時警報システム)も、ICTの活用事例のひとつです。また、自動架電システムにより、従来は数時間かかっていた電話連絡を数分で行えるようになりました。災害予測システムや避難所管理システムなどの活用も広がり、災害リスクの低減につながっています。
地域活性化
ICTは、地域活性化にも役立てることが可能です。地方は雇用や教育の機会が少ないという課題があり、ICTの導入により解決が目指されています。また、地域観光情報をデジタル化すれば、地方の魅力発信や観光振興をより効果的に進められる可能性が高いです。
政府が推進するICT政策
政府や行政機関も、さまざまな分野でICTの活用を推進しています。2018年には「世界最先端デジタル国家」の創造を掲げ、ICT化の計画を示しました。たとえば、行政サービスの100%のデジタル化や、地方のデジタル改革などが目指されています。
また、ICT人材の不足に備えるための人材育成や、キャリア支援プログラムなども用意されました。ICTの推進を目指す企業を対象とする補助金制度もあります。
ICTの推進ポイント
自社でICTを推進するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、ICTを推進するうえで意識したいポイントを解説します。
ITリテラシーを強化する
企業としてICT化を目指しても、すべての社員が同じレベルで使いこなせるとは限りません。着実にICTを導入するには、社員のITリテラシーの強化が必要です。ツールの使い方を理解するだけでなく、情報セキュリティに対する知識も深められるようサポートしましょう。
社員の意見を取り入れる
ICTの推進においては、現場の声に耳を傾けることも重要です。現場の状況を理解しないままICT化を進めようとすると、生産性が下がる恐れがあります。優れたICTを導入しても社員が使いこなせなければ意味がないため、社員の意見を積極的に取り入れるべきです。
効果測定や改善を実施する
ICTを導入したら、効果測定も行いましょう。思うような効果が出なければ、目標を達成できません。効果測定により効果が低いとわかった場合は、ICT機器、ツール、運用などの見直しが必要です。自社の状況を踏まえて改善し、ICTの効果を最大限に高めましょう。
ICTを導入する際の注意点
ICTの導入においては気をつけたいこともあるため、具体的な注意点を挙げて解説します。
習熟度に差があることを考慮する
すでに触れたとおり、すべての社員が想定どおりにICTを活用できるとは限りません。習熟度の差が生じることを前提とし、どのような社員でもICTを使いこなせるようにする必要があります。場合によっては、マニュアルの整備や社員研修の実施も検討しましょう。
情報モラルの重要性を周知する
近年は企業が管理しているSNSでトラブルが発生するケースが増えています。トラブルを防ぐには、社員に情報モラルの重要性を十分に理解してもらうことが必要です。そのためには、情報モラルに関する研修も有効といえます。ソーシャルメディアポリシーやSNS投稿ガイドラインなどを作成し、情報を共有する方法も確立しましょう。
チェック体制を整える
インターネット上で確認できる情報のすべてが正しいわけではないため、チェック体制の整備も必要です。誤った情報をSNSで拡散した結果、いわゆる「炎上」してしまう恐れもあります。業務上の秘匿事項を誤って公開すれば、訴訟に発展する可能性もないとはいえません。規定の制定、ダブルチェック、第三者の視点での内容確認など、チェック体制を強化しましょう。
まとめ
ICTの活用は身近なところで広がっており、ビジネスにおける重要性も増しています。ICTを活用すると、意思決定のスピード化やビジネスチャンスの獲得など、さまざまなメリットにつなげることが可能です。そのため、実際に多くの企業がICT化を積極的に進めています。
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