こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
近年、人材の多様化や柔軟な働き方の浸透により、組織内の価値観が複雑化していますす。上司の何気ない一言が、部下や周囲のメンバーにネガティブな影響を及ぼし、生産性やモチベーションが低下してしまうケースも決してめずらしくはありません。
こうした状況を生み出す原因となるのが、「アンコンシャスバイアス」と呼ばれる無意識の偏見や思い込みです。今回は、アンコンシャスバイアスの基本的な意味や種類、具体例について詳しく見ていきましょう。
アンコンシャスバイアスとは?
「アンコンシャスバイアス」とは、「自覚がない状態で生じる、物事のとらえ方や見方の歪み・偏り」のことです。自らの経験や知識、価値観をベースにして、無意識に偏った視点で物事を判断してしまう状態を指すことから、「無意識の偏見」と表現されることもあります。
ここではまず、アンコンシャスバイアスの種類を、6つの項目に分けて解説します。
ハロー効果
ハローとは、聖人の頭上に表れる「後光」を指します。「ハロー効果」は、「後光効果」とも呼ばれ、物事を評価するにあたり、一部の特徴的な印象に引っ張られて正当な見方ができなくなってしまう状態を指します。
ハロー効果の具体的な例としてあげられるのが「広告」です。商品広告に有名人を起用することで、ユーザーは商品とその人物のイメージを関連づけて考えるでしょう。
なお、ハロー効果には一部の良い印象が全体の評価を押し上げる「ポジティブ・ハロー効果」と、一部の悪い印象によって全体の評価を低く見積もってしまう「ネガティブ・ハロー効果」の2種類があります。
ステレオタイプバイアス
「性別」や「年齢・世代」、「国籍」、「職業」など、特定のグループや属性に対する先入観を「ステレオタイプバイアス」と呼びます。
「ステレオタイプバイアス」が作用すると、物事に対する客観的な思考が失われ、先入観にとらわれたまま発言したり判断したりしてしまいます。また、相手の個性や多様性を無視することにもつながります。
確証バイアス
「確証バイアス」とは、自身の仮説や考え、価値観などの正しさにこだわるあまり、反証にあたるデータや意見を無視してしまう状態を指します。確証バイアスが作用すると、自分の思い込みを支持する情報だけを重視してしまうため、誤った意思決定が行われる原因となるでしょう。
正常性バイアス
「正常性バイアス」とは、危機的な状況に陥っているにもかかわらず、都合の悪い情報を無視したり過小評価したりしてしまう状態のことです。正常性バイアスは、個人だけでなく組織全体でも陥る可能性があるのが特徴であり、社会心理学や災害心理学などの分野でも使われる用語です。
正常性バイアスは、外的な変化やストレスに対して過剰に反応するのを防ぎ、心の平静を保つために必要な働きでもあります。しかし、過度に作用すると異常事態の認識が遅れ、被害を拡大させてしまう原因にもなります。
集団浅慮
「集団浅慮」とは、集団が持っている圧力によって、無意識のうちに同調傾向に陥ってしまう現象を指します。
一般的には、1人で物事を考えるよりも、集団で検討するほうが優れた発想や結論を導きやすいと期待されます。しかし、組織内の同調圧力などによって集団浅慮が起こると、個人の正常な判断能力が損なわれてしまい、かえって誤った結論に至るリスクが高まるのです。
特に、組織の閉鎖性・秘密性が高いときや個人へのプレッシャーが強いとき、強力なリーダーがいるときなどには、集団浅慮が起こりやすいとされています。
慈悲的差別
「慈悲的差別」とは、少数派に対して、好意的ではあるものの一方的な思い込みをしてしまう状態を指します。具体的には、自分よりも立場が弱いとされる相手に対して、本人に確認をとらないまま先回りし、不要な配慮や気遣いをしてしまうことが該当します。
ビジネスにおいては、「女性にはきつい仕事を任せないほうがいい」など、特に女性へのポジティブな偏見が、結果として無意識の差別につながってしまうケースが見られます。
アンコンシャスバイアスの問題点
アンコンシャスバイアスは、物事の認識や判断といった基礎的なプロセスで起こる現象であるため、様々な意思決定に大きな影響を及ぼします。ここでは、主な問題点を「個人と職場」「組織全体」の2つの視点に分けて見ていきましょう。
個人や職場などに対する影響
上司や管理職者がアンコンシャスバイアスにとらわれてしまうと、従業員に対して正当な評価ができなくなります。その結果、従業員のストレス増大やモチベーション低下が起きやすくなります。。日常的なコミュニケーションにも影響を及ぼすため、上司と部下の関係性が悪化してしまうことも十分に考えられるでしょう。
また、メンバーに対する評価を誤り、能力を活かせる機会を奪ってしまったり、昇進を遅らせてしまったりするリスクもあります。さらには、チーム内の意思決定を担う人物がアンコンシャスバイアスにとらわれることで、少数派の意見が無視されてしまう恐れもあるのです。
その結果、軌道修正の機会を損失したり、メンバーの主体性が奪われたりするのも重大なデメリットといえます。
組織に対する影響
経営層や部門のトップがアンコンシャスバイアスを持っていると、組織全体にも影響を与えてしまう可能性があります。たとえば、人事領域を担う部門のトップが物事の認識を誤れば、優秀な人材を見逃してしまったり、採用された社内メンバーの価値観に偏りが生まれたりするリスクが高まります。
その結果、組織全体の生産性が低下するなど、大きな損失につながるケースもあるのです。また、経営層がアンコンシャスバイアスに陥れば、無意識のうちの偏見や差別意識が、組織風土として定着してしまう恐れもあるでしょう。
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アンコンシャスバイアスの管理は、あくまでも組織の環境を整えて、パフォーマンスを向上させる取り組みの1つです。人事が抱える課題は多岐にわたるため、幅広い視野で解決できる仕組みを整えることが大切です。
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アンコンシャスバイアスの具体例
これまで見てきたように、アンコンシャスバイアスには様々な種類があります。ここでは、それぞれがビジネスの現場でどのような影響を及ぼすのか、具体例を通して確認していきましょう。
ハロー効果の具体例
人材採用の場面で、「学歴が高い人は優秀であると思い込んでしまう」という現象は、ポジティブ・ハロー効果の代表的な例といえます。有名大学を卒業していることと、自社の業務を遂行するうえで優れているかどうかは、本来関係のないテーマです。
しかし、学歴によって全体の印象まで良く見え、細かな確認をしないまま優れたビジネスパーソンとして評価してしまうのがハロー効果です。また、人事評価においては、「趣味の近い相手を高く評価してしまう」「自分を慕ってくれる部下や後輩は優れているように見てしまう」といった現象を引き起こします。
一方、ネガティブ・ハロー効果の具体例としては、「容姿が冴えないことでビジネスパーソンとしての資質も低く見積もってしまう」といったものがあげられます。
ステレオタイプバイアスの具体例
性別によるステレオタイプバイアスが作用すると、「力仕事は男性が行うと決めつける」「医師や裁判官は男性の職業であると考える」「ファッションや家事に関するテーマは女性のほうが向いていると考える」といった現象が起こります。また、世代に関するバイアスの具体例としては、「シニア世代はITに苦手意識を持っている」「ゆとり世代は根性がない」といった考え方があげられます。
ほかにも、「外国人は自己主張をハッキリする」といった認識も、国籍に関するステレオタイプバイアスの代表例です。
確証バイアスの具体例
確証バイアスは、自分の信念や思い込みを正当化するために、反証を無視してしまうという現象です。たとえば、ある上司が「長時間働かないと十分な成果が出ない」と考えていたとしましょう。
もし、この人物に確証バイアスが強く作用すれば、たとえ「労働時間の長さと生産量は正比例しない」というデータが出ていたとしても、その情報を無視してしまいます。その結果、部下に長時間労働を推奨したり、業務効率を見直すきっかけを損なったりしてしまうのです。
また、特定のアイデアに対してマイナスイメージを持っていた人物が、メリットには目を向けないままリスクやデメリットだけをリサーチして、自分の考えは正しいと思い込んでしまうような現象も確証バイアスの代表例です。
正常性バイアスの具体例
正常性バイアスは、災害の現場で発生するケースが多く見られます。たとえば、「災害警戒情報が出されているにもかかわらず、自宅は大丈夫だと思い込んで避難が遅れてしまう」といった状況は、正常性バイアスの代表例といえます。
また、ビジネスにおいては、「どれだけ景気が悪化していても、自分の会社は潰れないと決めつける」「自社の主力産業を脅かすような技術が開発されていても、大した影響はないと思い込む」といった例があげられます。
集団浅慮の具体例
組織内で集団浅慮が作用すると、「権威ある専門家の意見を鵜呑みにしてしまう」といった現象が起こりやすくなります。たとえ個人には小さな疑問や反論が生まれていても、周囲の誰もが反対意見を述べない様子を見て、やはり専門家よりも自身が間違っているのだと判断してしまうのです。
また、ビジネスの分野では、「トップの無謀な拡大政策を止められずに経営破綻に陥ってしまう」という状態も決してめずらしくはありません。これは、はたから見ていれば明らかに分が悪いと判断できるような意思決定であるにもかかわらず、集団浅慮によってそのまま実行に移してしまうのが原因です。
慈悲的差別の具体例
慈悲的差別の具体例としては、「小さな子どもがいる女性に負荷の高い仕事を任せられないと考える」「育児中の女性従業員は出張をしたがらないだろうと決めつける」といったものがあげられます。これらは、いずれも相手に対する配慮から生まれる考えではあるものの、実際に確認しないまま判断を進めてしまう点に問題があるといえます。
仮に、対象の従業員が子育て中でもキャリアアップを目指したいと考えていた場合には、モチベーションを損なう原因となるでしょう。
男女で起こるアンコンシャスバイアスもある
アンコンシャスバイアスのなかには、男女間で起こるものも数多く存在します。2021年の9月に内閣府が行った「性別による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に関する調査研究」によれば、無意識に性差別をしてしまう割合は、女性と比べて男性のほうが高いといったデータが検証されました。
また、世代別では50~60代の男性、役職別では役員や部長クラスにおける性別役割意識が強いという結果が出ています。ここでは、女性に対する特有のアンコンシャスバイアスについて、詳しく見ていきましょう。
代表的なものは慈悲的差別
女性に対するアンコンシャスバイアスのうち、代表的なものは慈悲的差別です。これは、主に「女性は男性が守らなければならない」という無意識の感覚によって、差別的な発言や振る舞いをしてしまう現象です。
慈悲的差別の大きな問題点は、ときとして善意に基づいて行われてしまうというところにあります。そのため、当事者の女性としては、不快に感じていてもその事実を指摘しにくくなってしまう傾向があるのです。
職場でのアンコンシャスバイアス
職場は、女性に対するアンコンシャスバイアスが強く表れやすい環境といえます。たとえば、「同じ立場であっても女性より先に男性が発言するのが前提になっている」といった状態は、性別によるアンコンシャスバイアスの典型といえるでしょう。
それ以外には、「飲み会などの席で食事のとりわけを女性に任せている」「女性というだけで会議の準備や資料の配布を担当させている」なども、女性を対象としたアンコンシャスバイアスにあたります。また、「育児中の女性従業員は管理職やリーダーを担いたがらないと決めつける」のは、気遣いのつもりであっても、慈悲的差別にあたる可能性があります。
日常的なアンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアスは職場だけでなく、日常生活にも大きな影響を与えます。典型的な例としては、「家事や育児は女性が担当すべきであるという前提」があげられます。
共働き世帯の割合が増え、結婚後の女性が働くことも一般的になっている一方で、女性は家庭を優先するのが当然であるといった考え方も根強く残っているのが現状です。また、普段のコミュニケーションにおいて、「女性は感情的になるから話し合いが進まない」と性別だけで考えてしまうのも、日常的なアンコンシャスバイアスに該当します。
アンコンシャスバイアスを改善する方法
ここまでの内容を通して、アンコンシャスバイアスは組織やチーム、さらには個人のレベルにまでネガティブな影響を与えることがわかりました。会社組織においては、人間関係の悪化やモチベーションの低下、ひいては離職率の増加を引き起こす原因にもなり得るでしょう。
これらの悪影響を防止するためには、企業が主体となってアンコンシャスバイアスの解消に取り組むことが大切です。
アンコンシャスバイアスに関する研修を行う
アンコンシャスバイアスの改善においては、まず正しく「知る」ことが取り組みの第一歩となります。先ほども参照した内閣府の「性別による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に関する調査研究」によれば、アンコンシャスバイアスという言葉を知っている人の割合は21.6%となっており、そもそも認知度自体が低いことがわかります。
そのため、まずは研修を実施し、アンコンシャスバイアスの意味や実態を学べる場を持つことが大切です。
認知テストを実施する
アンコンシャスバイアスは言語化が難しく、研修によって学びが得られたとしても、実際の取り組みとしてすぐに落とし込めるとは限りません。そこで、自身の日常的な発言や振る舞いを振り返り、潜在化しているアンコンシャスバイアスに「気づく」というステップが重要となります。
具体的には、認知テストを実施して、無意識の偏見や思い込みに気づくきっかけをつかんでもらうといった方法があげられます。また、自社の業務における影響なども話し合える機会を用意すれば、従業員それぞれが取り組みの方向性をイメージしやすくなるでしょう。
自己認知力を向上させる
アンコンシャスバイアスを自覚するには、自分を客観的に見つめる能力(メタ認知)が重要なカギとなります。特にリーダーにメタ認知の能力が欠けていると、何気ない一言で部下にストレスや不安を感じさせたり、モチベーションを低下させてしまったりする可能性が高くなります。
そのため、特に組織をまとめる管理職ポジションの従業員には、普段から自己認知力を向上させるための取り組みを意識してもらうことが大切です。
まとめ
アンコンシャスバイアスは、部下からの信頼低下やコミュニケーション不全、モチベーションやパフォーマンスの低下など、組織に様々な悪影響を及ぼします。組織の健全な運営には、マネジメントポジションにおけるアンコンシャスバイアスへの気づきと対処が必要不可欠なのです。
アンコンシャスバイアスの実態を明らかにし、対応策を立てるには、「タレントマネジメントシステム」の活用が有効です。
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