企業におけるチューターの役割とは?導入のメリットや手順を解説


企業におけるチューターの役割とは?導入のメリットや手順を解説

企業におけるチューターの役割は新人や若手従業員の教育です。得られるメリットは多岐にわたります。本記事ではチューター制度が注目されている背景や導入のメリット、導入の手順を解説します。実際の導入事例も併せて紹介するため、ぜひ参考にしてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

チューターとは、新人の教育のために導入されることの多い制度です。本記事では企業におけるチューターの役割や必要な理由、導入例などを解説します。

本記事を読むことで、チューター制度の導入手順から得られるメリットまですべて理解できます。チューター制度の導入を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。

企業におけるチューターの役割とは?


企業でのチューターの役割は、新人および若手従業員に対する教育係です。チューターが教育係としての役割を果たすことで、新人は仕事の流れを素早く理解できます。また、分からないことがあった際の質問の窓口をチューターにすることで、誰に聞けばいいか分からないという状況を減らすことも役割の一つです。

新人からすると、質問はチューターにできるということで安心感を得られます。チューターは教育担当という役割だけではなく、新人の心の支えという重要な役割も担っているのです。年齢やキャリアの離れた上司からは、なかなか判断しづらい新人の心理状態や仕事の習得状況を、チューターから聞くことで素早く理解できるというメリットもあります。

また、仕事そのものに関する理解が進むだけではなく、チューターがいることで職場の人間関係に溶け込むまでにかかる時間の短縮が可能です。このように、企業におけるチューターは、新人に対する教育係や精神的な支柱という役割を持ち、企業と新人の橋渡し的な役割を担います。

チューター制度と似た制度


チューター以外にも、企業で導入されている教育に関する制度はいくつかあります。ここでは紹介するのは、以下の3つです。

  • メンター制度
  • ブラザー・シスター制度
  • エルダー制度


似たような教育に関する制度ですが、それぞれ役割や目的が異なります。違いを理解することで、チューター制度の導入に役立てましょう。

メンター制度


メンター制度とは、先輩従業員が後輩従業員の心理的な不安やキャリアプランに対する悩みなどを解消し、成長を促すことを目的に導入されています。チューター制度と似ていますが、異なる点は目的です。チューター制度は仕事上の成長を目的としています。

とはいえ、チューター制度もメンター制度と同様に不安や悩みを聞いて解決することがあります。メンター制度は、チューター制度よりも深く後輩従業員と関わり、コミュニケーションを取り、目指すべき姿を示すことが役割です。

メンター制度には導入する難しさがあります。それは、先輩従業員と後輩従業員の相性です。両者の相性がよくないと、メンター(指導者)とメンティー(指導される側)としての良好な関係が築けません。対してチューター制度は、先輩従業員が仕事内容を教えることが目的であるため、ある程度の経験があれば務まります。

このように、両方の制度は立場や関係性としては同じようなものですが、主な役割が仕事内容を教えることか、メンタルケアやコミュニケーションであることかの違いがあります。

ブラザー・シスター制度


ブラザー・シスター制度とは、新人が早期離職せず定着することを目的として導入される制度です。年齢が近い先輩がブラザー・シスターとなり新人のケアを行います。この点はチューター制度と同様といえるでしょう。

両者の違いは目的です。チューター制度は仕事内容や業務に早く対応できるようになることを目的としています。対して、ブラザー・シスター制度は、新人が組織に早めに馴染むことで、早期離職を防ぐことが目的です。ただし、チューター制度も職場に溶け込むサポートを行う側面もあるため、ブラザー・シスター制度の役割を担っているといえるでしょう。

ブラザー・シスター制は、メンター制度と同様に先輩従業員と後輩従業員の相性が重要です。そのためブラザー・シスターを選ぶ難しさがあります。相性の悪い人材を掛け合わせてしまうと、双方の離職を促す結果となってしまう可能性があるため、注意が必要です。

エルダー制度


エルダー制度は先輩が後輩をサポートすることを目的とした制度です。主に新人を対象としており、配属先の先輩がエルダーとなります。直属の上司ではなく身近に感じられる先輩が実際の仕事内容や質問に答えるといったサポートを行うことで、新人が会社に溶け込みやすい環境を作れることがメリットです。

また、エルダーとなった先輩のマネジメントスキルの向上を期待できる点も、この制度のメリットです。マネジメントスキルは、座学やセミナーより、実践で培われることが多いため、新人のサポートを通じてスキルを磨くことができます。このように、エルダー制度はチューター制度の中の実際の仕事に関する部分のサポートに特化した内容となっています。

企業以外でのチューターの役割


チューターは、企業以外に様々な分野で使われている言葉です。ここでは大学や予備校などの教育機関でのチューターの役割を解説します。大学では、授業のサポートや留学生のサポート役がチューターの役割です。また、予備校や塾では生徒の学習サポートを担います。

それぞれの分野でのチューターの役割を詳しく確認しましょう。

大学におけるチューター


チューターは、大学で授業のサポート役と外国人留学生のサポート役を担うことが多くあります。大学でのチューターは学生にとって重要な存在です。特に外国人留学生にとっては、チューターがいることで日本での生活の質が大きく向上します。大学ではどのようなサポートが行われているかを知り、企業におけるチューターの役割に使えるポイントがないか確認してみましょう。

<h4>授業のサポート</h4>


授業のサポート役としてのチューターは、教授のアシスタントとしての役割を担います。授業の準備や理系の実験における機器の取り扱い方法の解説、レポートへのコメントなど活躍の範囲は幅広いです。特に、実験においては特殊な薬品や機器を取り扱うことが多く、誤った使い方をすると危険な場合があります。安全で適切な使い方をサポートすることは、チューターにとって重要な役割です。

チューターがいることで、教授や講師が1人ではまかないきれない範囲をサポートできます。チューターの存在により、授業の質が向上するほか、学生は身近な先輩へ質問やアドバイスを求めることができるという点がメリットです。関係性においては、企業におけるチューターと新人との関係に近いものがあります。年齢が近いからこそ、気軽に質問ができる環境を提供できるのです。

将来、大学の教授や講師を含めた教育関係の職を目指す学生にとって、教育の現場を体験できるよい機会となっています。

<h4>外国人留学生の様々なサポート</h4>


外国人留学生にとって、チューターの存在は大きいです。慣れない日本での日常生活では、サポートなしに有意義な時間を送ることは難しいでしょう。日用品・食品の買い出しやゴミの出し方、行政手続きなど、外国人留学生にとって1人では困難な場面が多々あります。

こういった日常生活のサポートも、大学におけるチューターは行います。もちろん大学での授業や日本語の習得の手助けもチューターの役割です。外国人留学生は、チューターのサポートを受けることによって、日本での学生生活に徐々に慣れていくようになります。

企業においても、入社したばかりの新人は外国人留学生同様、会社や仕事のことを何も知らない状態です。その際に、チューターがいれば質問できたりアドバイスを求めたりできるため、大きな存在となります。学生から社会人になることは、外国に留学することと同等と考えれば、企業にもチューター制度の導入を検討するべきと感じる方も多いのではないでしょうか。

予備校や塾におけるチューター


予備校や塾では、自習室にチューターがいるケースも多いです。ここでのチューターの役割は、学習のサポートやアドバイスを生徒に行うことなどがあります。小学生や中学生に対しては、勉強方法や勉強を習慣にする方法をアドバイスするのも役割の一つです。

高校生や予備校生に対しては、大学受験の対策方法だけでなく、大学選びや進路相談を行う場合もあります。年齢の近い先輩から、受験生の時の実体験や効果的だった勉強方法、実際に通っている大学のことを聞くことで、学生はモチベーションを高めることができるでしょう。

また、自習室でのアドバイスだけではなく、予備校や塾の運営サポートを担うこともあります。運営サポートとは、出欠の確認や記録、提出物の確認、テストの採点、保護者の対応など様々です。このように、予備校や塾でのチューターの役割は幅広く、生徒や運営側にとっても頼れる存在となっています。

なぜ企業にチューターが必要なのか?


なぜチューターは、企業にとって必要とされているのでしょうか。ここではチューターの企業における必要性について解説します。

必要とされている具体的な理由は、主に以下の3点です。

  • 離職対策につながるため
  • 課題の解決につながるため
  • 新人が働きやすくなるため


それぞれの理由を詳しく確認していきましょう。

離職対策につながるため


従業員の離職の原因は様々ありますが、人間関係や仕事に関する教育不足による離職が多くなっています。チューター制度を導入することによって、これらの問題の解決が可能です。チューターがいることで、入社したばかりの従業員が社内に溶け込むまでの時間を短縮できます。社内の人間関係やどのような点に注意すればいいかなど、規則として明文化されていないことを直接教えてもらえるためです。

また、教育不足を防ぐことも可能です。新人は、分からないことがあればチューターに質問できます。いつ誰に質問していいか分からない状況だと、新人は問題を先送りにしてしまうかもしれません。逆に、チューターから問題がないか確認をすることで、どの段階でつまずいているかを把握でき、アドバイスを送ることができます。

このように、チューター制度を導入することで、人間関係の問題や教育不足による新人の早期離職の防止につながります。採用した新人を早期離職によって失うリスクを避けるためにも、チューター制度の導入を検討しましょう。

課題の解決につながるため


チューターがいることで、組織内の課題を発見しやすくなります。例えば、新人の教育システムの課題を早期に発見できれば、解決に向けてシステムの改善が可能です。システムを改善することで、人材育成の効率が上がり、離職率を下げる効果が期待できます。実際に教育をするチューターがいるからこそ、課題を発見して解決につなげることができるのです。

ほかにも、まだ会社に慣れていない新人だからこその視点から、課題を発見することもできます。新人が疑問に思っていることを、チューターが聞き出すことで課題を定義し、会社として解決策を考案することが可能です。

そのためにも、新人が発見した課題をチューターに報告しやすい環境作りが重要です。課題を報告しづらい環境だと、課題がそのまま放置される可能性があります。

チューター役の従業員が上手く機能するために、さらに上のチューター的な存在を設けることも一つの選択肢です。そうすることによって、風通しのよい環境作りができやすく、メンバー全員が報告や相談をしやすくなります。

新人が働きやすくなるため


新人にとっては、チューターがいるといないとでは働きやすさが大きく異なります。何が分からないかすら分からない状態の新人に、的確なアドバイスを送ることもチューターの役割です。新人の現状に目をかけながら適切な指導を行うことで、新人が仕事に慣れるスピードを上げられるでしょう。チューターとのコミュニケーションを通じて、会社の一員という自覚を感じてもらえる点もメリットの一つです。

チューターという役割がなければ、先輩従業員は日々多忙な業務に追われ、新人にまで目が届かない場合もあります。役割を与えられた先輩従業員は、多忙な中でも新人の世話も仕事の一つとして考えることができるでしょう。

また、新人が不安を抱えながら自分だけで判断をして、ミスを犯してしまう事態を防ぐことも期待できます。相談する相手が見つからず、そのまま放置してしまうと会社にとっても新人にとっても悪い方向に進みやすいです。

新人のミスを防ぐためにも、チューターに対して報告・連絡・相談をこまめにできる環境にすることが大切です。

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チューター制度が注目される背景


チューターが、日本の企業において注目されている背景にはどのようなものがあるのでしょうか。複数の背景から注目を集めていますが、ここでは以下の2点に関して解説します。

  • 日本の雇用制度の変化に対応していく必要があるため
  • 仕事を楽しめるようになることが求められているため


これらの理由からチューター制度が注目されています。それぞれの理由を把握して、自社でも導入するべきか検討してみましょう。

日本の雇用制度の変化に対応していく必要がある


現在の日本では、従来の雇用制度から変化しようという動きが見られます。その変化に対応するために注目を集めているのが、チューター制度です。

従来の日本では、年功序列や終身雇用が一般的でした。しかし、終身雇用の限界、年功序列の廃止など、企業の在り方は変わりつつあり、従業員個々人も組織全体でも変化に対応していくことが求められています。

年功序列による出世や昇進の道がなくなれば、従業員は自律的にキャリアを形成する必要があります。企業にチューター制度を導入することで、従業員の人材育成が強化され、自律的なキャリア形成の促進につながるでしょう。

また、チューター制度でチューターの役割を果たすことで、新人や後輩に指導をする機会の獲得が可能です。そこでマネジメントの経験を積み、スキルがあることをアピールすればキャリアアップへの道が見えてきます。

このように、自律的なキャリア形成が必要な社会に変化を遂げていることが、チューター制度が注目を集めている背景です。

仕事を楽しめるようになることが求められている


報酬以外にも、仕事へのやりがいを感じる必要性が求められていることが、チューター制度が注目されている背景の一つです。報酬や人事評価など、外から評価として与えられることを求めることは、仕事に対するモチベーションになりやすいと考えられます。

しかし、それだけでは仕事にやりがいを感じられず、早期離職やモチベーションの低下による業務の効率の低下などの課題が発生します。このような課題を解消するための方法として挙げられるのが、「仕事を楽しむ」という価値観をモチベーションとするという考え方です。

チューターが仕事の手順やノウハウだけではなく、仕事の楽しさや楽しみ方、やりがいを伝えることで、指導される側はそれらを意識できます。仕事はさせられるものではなく、自発的に動くことで楽しさややりがいを見出せものであることを伝えられるのは、年齢やキャリアの近いチューターならではの指導法です。

チューター制度導入で企業が得られるメリット


チューター制度を導入することで、企業は様々なメリットを得られます。代表的なメリットは以下の4つです。

  • 従業員のメンタルケアとスキルアップが同時にできる
  • 管理職育成に活用できる
  • 社内コミュニケーションの健全化につながる
  • 教育制度が確立する


自社導入の際の検討材料とするために、それぞれのメリットを確認しましょう。

従業員のメンタルケアとスキルアップが同時にできる


チューター制度は、新人や若手従業員の仕事に関するスキルアップを目的としています。また、スキルアップだけではなく、新人や若手従業員のメンタルに変化がないか確認も可能です。スキルアップとメンタルケアを同時に行えるため、人手と時間を有効活用できます。

日々の業務に追われていると、新人や若手従業員の精神状態にまで目が届かないことが多々あります。放置してしまうと、メンタルの不調によって休職や離職につながってしまうでしょう。そのような事態を防ぐためにも、チューター制度が役に立ちます。

チューター制度を導入すれば、チューター側の先輩従業員は役割を果たすために、新人や若手従業員とのコミュニケーションを仕事の一貫として取り組めます。スキルアップのために指導するのはもちろん、毎日コミュニケーションを取ることで、顔色や声のトーンなど些細な変化を見逃さずに済むでしょう。

チューター制度でなく、先輩と後輩の関係という距離があると、先輩従業員は教育やメンタルケアを自分の任務として捉えられません。制度として導入することで、メンタルケアとスキルアップを同時並行できるため、従業員と会社どちらにもメリットがあります。

管理職育成に活用できる


チューターに選ばれた従業員は、管理職の疑似体験ができるといえます。チューターの経験をすることで、管理職という一つ上の視点を持てる点がメリットの一つです。新人や若手従業員の指導やメンタルケアは、管理職になった際に必要なスキルになります。

先輩従業員は、チューター制度で後輩に様々な指導を行うことで、管理職になった際の具体的なイメージを掴みやすく、出世や昇進への意欲向上にもつながります。意欲向上につながれば、仕事に対するやりがいやモチベーションアップが期待できるため、会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。

また、モチベーションの高い従業員がチューターとなれば、教育される新人や若手従業員によい影響を与えられます。将来的にチューター、そして管理職へと成長することが期待できるでしょう。

このように、チューター制度を導入することで得られるメリットは大きく、管理職の疑似体験や管理職への意欲、育成にまで活用できるのです。

人材育成は多くの企業で解決するべき課題です。管理職育成にリソースを避けない場合は、チューター制度の導入を検討することが解決の近道となるでしょう。

社内コミュニケーションの健全化につながる


チューターがいることで、新人や若手従業員でもほかの従業員とコミュニケーションが取りやすくなる点がメリットです。社内でのコミュニケーションが健全化すれば、発言や提案、質問がしやすい環境となります。

特に、新人には報連相を意識しもらうことが大切です。報告や相談をするまでもないと思って放置したことによって、問題が大きくなってしまう可能性があります。些細なことでも報告や相談をできる環境を作れば、問題が起こった際に深刻化することがありません。

社内のコミュニケーションの健全化によってメリットを得られるのは、新人や若手従業員だけでなく、一般の従業員から管理職まで社内全体に及びます。活発なコミュニケーションが行き交う環境では、新しいアイデアが浮かんだ際に提案しやすいです。

社内が重苦しい雰囲気では、せっかく浮かんだアイデアが誰にも話すことなく消えてしまいます。そうならないためにも、チューター制度をきっかけとして、社内のコミュニケーションの健全化を図りましょう。

教育制度が確立する


新人の教育において、チューターを導入するメリットは大きいものがあります。新人の教育係はチューターが行うという取り決めを行えば、教育制度が確立するためです。新人は誰に相談すればよいのか迷ってしまい、困り事や問題を自分の中にとどめてしまうことが多々あります。

そのような時にチューター役の先輩従業員がいれば、新人はすぐに相談できます。困り事や抱えている問題、分からないことなどを、チューターである先輩従業員にいつでも質問できる環境があるだけで、新人は安心して仕事を覚えていけるでしょう。その都度質問やアドバイスを求められるため、スキルアップの時間短縮も可能です。

また、直属の上司が、チューターの存在によって新人教育にだけ時間や労力を割く必要がなくなるという点もメリットの一つです。本来の業務に集中でき、作業効率を落とす心配がありません。チューター制度を導入して教育制度を確立できれば、新人にメリットがあるだけでなく、会社全体にメリットがあります。

チューター制度導入の手順


チューターの役割や注目されている背景、導入のメリットを解説してきました。ここからは導入の手順を解説します。チューター制度の導入方法は以下の手順です。

  • チューターを教育する
  • 仲介役を設置する
  • 適切なマッチングを行う
  • 従業員の成長に合わせた指導を行う


導入を検討する際は、どのような手順が必要になるのかを確認しておきましょう。

チューターを教育する


まずは、チューター役となる従業員の教育を行います。教育を受けないままチューターに任命してしまうと、チューター役の従業員と新人の双方に負担となり、チューター制度導入のメリットを得られません。

チューターの教育では、新人に対して仕事の流れ・アドバイスを伝える方法や適度な距離感を保ったコミュニケーションの取り方など、指導面で必要なスキルを学ぶ場を設けましょう。場合によっては研修制度の利用も検討します。

チューターには向き不向きがあるため、あらかじめ社内で教育係に向いていそうな従業員を探しておくとよいでしょう。事前にチューター役を見つけておくことで、新人が入社する前に教育を終えられます。教育に関するスキルはすぐに身につくものではありません。時間をかけて準備しましょう。

仲介役を設置する


チューターと新人の関係を見守る仲介役を設置することも大切です。チューターは教育担当としてスキルを得ていますが、若手従業員に変わりはありません。

その上の先輩や上司が仲介役となり、チューターのサポートが必要です。仲介役を設置しなければ、チューター役を請け負った従業員の心理的負担や業務効率の低下などを見逃してしまいます。また、チューターと新人の関係性や相性を見極めるためにも、仲介役は必要です。

チューターは、困ったことがあれば仲介役に相談ができます。チューターの相談先を一本化することで、誰に相談すればいいか判断に迷うことがなくなり、問題をスムーズに解決可能です。仲介役を通じて社内全体でチューターを支えることで、新人の教育制度の確立も進むでしょう。

適切なマッチングを行う


チューターである従業員と新人の相性は、教育において重要です。適切なマッチングがされていなければ、逆効果となる可能性があります。最悪の場合、チューターが原因で新人が早い段階で離職してしまう可能性も考えられるでしょう。そうならないためには、教育が順調に進んでいるか状況を把握しておく必要があります。

状況を把握するのは主に仲介役となりますが、一人ですべての状況を判断することはできません。仲介役一人に任せきりにするのではなく、社内全体でチューターと新人の関係性やコミュニケーションがうまく取れているかを観察しましょう。

あらゆる視点から観察することで、微妙な変化や問題を早期に発見・解決できます。問題が発覚した場合は、再度チューターの教育を行うか、担当の変更という選択を検討しましょう。

従業員の成長に合わせた指導を行う


チューターによる新人や若手従業員の指導は、成長や理解度などに合わせた対応が必要です。成長の速度は人それぞれで、得意分野と不得意分野も異なります。新人や若手従業員の適性を考えつつ、時間をかけて指導を行いましょう。自分が新人の頃にできていた内容が、相手にはできないかもしれません。そうであったとしても、焦ることなく指導に当たる必要があります。

教育のペースを無理に上げるのは逆効果です。新人が十分に業務を理解できていないまま独り立ちしてしまうと、仕事で問題を起こしてしまうでしょう。そうならないためにも、相手が何を理解していて何が分かっていないのか、常に把握しておくことが大切です。チューターは新人や若手従業員の成長を見守りながら、ペースを合わせた適切な指導を心がけましょう。

チューター制度導入の事例


チューター制度を実際に導入して成功した事例を紹介します。紹介するのは以下の4つの企業や施設、学校での事例です。

  • SONY
  • NTTファイナンス
  • あそか苑
  • 大阪病院附属看護専門学校


ここで紹介するのは、新人の離職防止やメンタルケアで導入の効果を得られている事例です。それぞれの導入事例を参考に、チューター制度の活用方法を検討してみましょう。

SONY


SONYでは、以前からチューター制度が導入されています。同じ部署内の新人と少しキャリアが上の先輩従業員の間で、チューター制度による教育が行われ、ビジネスパーソンとしての基礎を身につけることが最終目的です。

基本的なビジネスマナーの指導やメールの文面が正しいかを送信前にチェック、業務における技術的なことの教育など、新人にとって仕事を進める上で必要なスキルをチューターがすべて指導します。

SONYのチューターが徹底しているのは、質問を受けたら即答することです。新人にとってはその場で問題を解決できるメリットがあります。チューターにとっても、自分の業務を止めることなく、新人の教育を進められる点がメリットです。

また、コミュニケーションを頻繁に取ることも徹底しています。日々の会話量を意識して、仕事に関することだけではなく、プライベートなことや雑談をする時間も設けることで、お互いの信頼関係の構築が可能です。

また、チューターと新人の間だけで会話を完結させるのではなく、周りの従業員も巻き込んでコミュニケーションを取り、新人が話しかけやすい雰囲気を作っています。コミュニケーションの健全化はチューター制度の大きなメリットです。SONYでは、新人を独り立ちさせることを目標にしつつも、部署全体でのコミュニケーションによるメンタルケアや離職防止も意識しています。

NTTファイナンス


NTTファイナンスでは、入社2年目の従業員がチューター役として新人の教育に当たっています。2年目の従業員だからこそ、入社した時の気持ちを忘れておらず、親身になって教育をしたり相談に乗ったりなどが可能です。

研修期間を終える10月頃にチューターが教育担当となり、実務に関する指導を開始しています。営業職の場合は、チューターに同行することで、営業方法やビジネスマナーを直近で学べるため、実際に自分が営業を行う姿を想像できるでしょう。

電話営業では、新人の通話内容を隣でチューターが聞きます。その内容に対してチューターはアドバイスを送りますが、ダメなところを指摘するだけではなく、よい面を褒めることでモチベーションを落とすことなく教育が可能です。

チューターによる新人教育で大切なことは、新人が仕事に慣れることです。NTTファイナンスでは、入社2年目の従業員をチューターに任命することで、仕事のスキルに加え、コミュニケーションやメンタル面のケアを重要視しています。

あそか苑


社会福祉法人のあそか苑では、入社後の早期離職を防止するためにチューター制度を導入しました。新人が所属する部門だけではなく、事業所全体として新人と積極的に関わることで、コミュニケーションを活発化させています。

あそか苑のチューター制度の特徴は、新人と他部署の先輩が交流する機会を毎月設けていることです。同じ部署で働く先輩には伝えづらいことでも、他部署の先輩になら話せるケースがあることから制度化しました。

また、チューター制度を導入したことで、新人ならではの悩みが多岐に渡ることが浮き彫りになったため、その悩みを新人で集まって悩みを共有する機会を設けました。新人だけではなく、チューターだけが集まって情報を共有する研修や、新人とチューターが同時に集まって一年を振り返る機会も設けています。

チューター制度を導入したことによって、入社一年以内の離職がほぼゼロになったという実例があります。部署内だけでコミュニケーションを完結させるのではなく、部署外とのコミュニケーションを活発化させることで、風通しのよい環境を実現させました。

大阪病院附属看護専門学校


大阪病院附属看護専門学校では、学生を一定の人数のグループに分け、各グループに一名の教員をチューターとして割り当てています。一対一ではなく一対複数人であることが特徴です。

チューター制度を導入したことによって、看護の学習だけではなく、生活面や進路相談、就職活動の相談など個人的なことにも耳を傾け、早急に対応が可能となりました。

この学生のグループは、同学年だけで形成されるものではありません。一年生から三年生までの各三名の生徒を集めて作られるグループです。他学年の学生で作ったグループをピア・サポート制度と呼んでいます。

他学年を集めたグループを作ることにより、他の年代の学生と交流を深め、よりよい学校生活を送ることを目的としています。この制度を導入したことで、後輩は学年が上の先輩に、看護に関する学習方法や課題への取り組み方など、具体的なことを相談できるようになりました。

まとめ


人手不足の昨今では、新人や若手従業員の教育の必要性が高まっています。とはいえ、直属の上司からの指導だけでは行き届かない点もあるでしょう。新人の指導や教育が不十分になれば、早期離職につながるかもしれません。

その際に役に立つのがチューター制度です。チューター制度を導入することで、新人や若手従業員の仕事面での指導やスキルアップのほか、メンタルケアも行えるため、業務の効率化を期待できます。

従業員の離職防止策を検討している場合は、タレントパレットにお任せください。タレントパレットは、離職防止に役立つタレントマネジメントシステムを提供しています。

また、人材の最適配置をシミュレーション可能なため、チューターに合う人材を見つけ出すことが可能です。

ほかにも様々な機能がございますので、詳細は無料の資料請求でご確認ください。

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