離職率の改善のためにできることは?離職の原因や改善する方法を解説


離職率の改善のためにできることは?離職の原因や改善する方法を解説

企業の離職率が高いと社員のモチベーションが下がったり、生産性が落ちたりといったさまざまな損失が発生します。この記事では離職率の概要や、離職率を改善しないことで発生するリスク、離職率が増加する原因を解説します。離職率を改善する方法や、改善できた事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

離職率の概要

まずは離職率とは何か、なぜ改善が必要なのかについて詳しく解説します。

離職率とは何か

離職率とは企業の社員数に対して、一定期間でどのくらいの人数が離職したかという割合のことです。離職率を計算する際の期間は決められていませんが、1年間とするのが一般的です。離職率は企業の働きやすさの指標とも見なされるため、企業は離職率低下のために努力することが望ましいといえます。

離職率の改善はなぜ必要か

企業にとっては、労働人口が減少しつつある現代で人材確保が難しくなってきました。新入社員の離職率が高い現状では、社員が辞めてしまうと、求人や教育にかけたコストが無駄になってしまいます。また、転職が一般的になり離職のハードルが下がったことも、人材流出の増加の一因です。企業は労働力を安定的に確保するため、離職率を改善することが求められています。

関連記事:人事担当者が知っておくべき「離職率」と「定着率」の計算方法

離職率を改善しないことのリスク

離職率が高いと企業にどのようなリスクをもたらすのでしょうか。離職率を改善しないことのリスクについて解説します。

優秀な人材の流出

離職率が高いと優秀な人材の流出につながります。知識やスキルを持つ社員が退職すれば、企業の競争力が下がってしまうでしょう。人材の採用や教育には費用がかかりますが、社員の離職によってコストが無駄になってしまいます。特に、能力のある人材は他の企業からの需要も高く、待遇や労働環境に不満がある場合に離職を決断する可能性が高まります。

採用が難しくなる

採用が難しくなることも離職率を改善しないことのリスクの1つです。企業の離職率が高いと、求職者から働きにくい職場とみなされやすくなってしまいます。たとえ企業に落ち度がなくても、いわゆるブラック企業の印象を持たれる場合もあるでしょう。近年は働き方の多様化によって、労働環境に懸念のある企業は人が集まりにくくなっています。

企業イメージの低下

離職率が高いと求職者からだけではなく、消費者や取引先からのイメージも下がりやすくなってしまいます。近年の投資家は業績だけでなく、企業の持続可能性にも注目しているため、離職率も投資の判断材料となり得るでしょう。社員を大切にしない企業は、投資による運営資金を集めにくい可能性があります。

離職率が上がる主な原因

なぜ離職率が上がってしまうのでしょうか。ここでは、離職率が上がる主な4つの原因について解説します。

労働条件への不満

離職率が上がる主な原因の1つは労働条件への不満です。労働条件に下記のような不満があると、社員は退職を検討しやすくなります。

・長時間労働や休日出勤が多く、休暇が取りにくい
・給与や賞与といった待遇面に納得していない
・テレワークやフレックスタイム制が導入されておらず、柔軟な働き方ができない

人間関係の問題

人間関係におけるストレスは退職の大きな要因です。パワハラやセクハラといったハラスメントが生じていると、社員は働き続けられずに離職を選ぶでしょう。

近年ではマタハラやパタハラ、ケアハラなども問題となっています。マタハラとは働く女性が妊娠・出産・育児を理由に嫌がらせを受けることです。同じ理由で男性が嫌がらせを受けた場合はパタハラとなります。ケアハラとは介護をしている社員が受ける嫌がらせのことです。

やりがいが感じられない

仕事にやりがいがなく、意欲を感じられないと社員は退職しやすくなります。また、キャリアアップの展望が開けない場合や、希望する仕事に携われない場合なども離職につながるでしょう。社員教育が充実していないと、知識やスキルの向上が感じられないことを理由に、社員のモチベーションも低下します。

企業の将来性への不安

企業の業績が安定していないと、社員は企業の将来性への不安を感じ、離職することがあります。特に新卒の社員は、企業の将来性に不安がある場合、早めに転職した方が得だと感じることもあるでしょう。社員が感じる不安の原因は、企業を取り巻く外部環境の変化の速さや、新しい価値創造における企業の力不足などがあげられます。

離職率を改善する方法

離職率を改善するためには、事前にしっかりと対策を立てる必要があります。ここでは離職率を改善する7つの方法について解説します。

離職理由の聞き取り

退職を希望する社員に聞き取りをすることで、現場の声を拾いあげて自社の問題点を明らかにできます。退職後にヒアリングをすると利害関係が薄いため、より本音に近い意見を聞きやすいでしょう。反対に退職前にヒアリングしてしまうと、引き止めるための面談だと勘違いされてしまう恐れがあり、率直な意見を聞けない可能性があります。

ワークライフバランスの改善

離職率を下げるためには、ワークライフバランスの改善が大切です。まずは労働時間や業務量を見直し、社員の負担が大きすぎないか確認しましょう。過重労働は離職率が上がるだけでなく、生産性を低下させる要因ともなります。近年の労働者は仕事だけでなく、プライベートも大切にする傾向があるため、自分の時間が持てない職場では離職しやすくなります。

柔軟な働き方を可能にする

離職率の改善には柔軟な働き方の導入が有効です。社員にはそれぞれの事情やライフスタイルがあり、それに合わせた働き方ができることで業務効率を上げられます。

社員によっては育児や介護によって退職を余儀なくされる場合も少なくありませんが、柔軟な働き方ができれば勤務し続けられます。リモートワークや時短勤務などの働き方を可能にすれば、離職率の低下につながるでしょう。

コミュニケーションを増やす

社内のコミュニケーションを増やすことで、人間関係の問題の解決につなげ、離職率を低下させられます。たとえば、社内イベントや交流会の開催、社内SNSやチャットツールなどの導入がおすすめです。1on1の面談やチームディスカッションなどの機会を設けることでも、社員の交流を促せます。

待遇の改善

離職率の低下のためには、待遇の改善も効果的です。まずは給与や賞与、福利厚生などを見直してみましょう。賃金が労働量や成果に見合っていないと、社員の仕事へのモチベーションが低下してしまうため、正確に見極めることが大切です。ニーズに合った福利厚生を提供できれば、社員の満足度を上げられ、離職率の改善につなげられます。

人事評価の見直し

社内の人事評価を見直すことでも、離職率の改善が期待できます。努力が報われないと社員が感じてしまうと、業務へのモチベーションやエンゲージメントが低下してしまいます。たとえば、上司などが公正に評価していなければ、社員は頑張る意義が見出せず生産性も落ちてしまうでしょう。

社員の能力や成果のどの部分を評価しているのが基準を明確にし、評価の根拠を可視化することが大切です。

社員教育を充実させる

離職率の改善のためには、充実した社員教育も必要です。研修やワークショップなどの機会を積極的に設け、社員が意欲的にスキルアップできる環境を整えましょう。仕事での成果が上がればモチベーションが向上すると同時に、企業への愛着も生まれ、人材の定着につながります。新人教育は特に力を入れ、手順などはマニュアル化して統一することが望ましいでしょう。

離職率を改善できた事例

企業としてはせっかく採用し、時間をかけて育てた人材を失うのは避けたいのではないでしょうか。実際に離職率を改善できた事例について解説します。

人事制度の見直しで離職率減少

某ソフトウェア開発会社では離職率が約30%と高い状態だったため、人事制度を見直すことにしました。具体的な施策は在宅勤務制度、ウルトラワーク制度、副業の自由化など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を認める「選択型人事制度」の導入です。社員のそれぞれが適した働き方を選択できるようになったことで離職率は改善され、約4%と7分の1以下にまで下がりました。

社内改革で業界平均を下回る離職率に

某大手不動産会社では離職率が業界水準よりも高い状態だったため、定着率を上げるために社内改革に着手しました。具体的な施策は、意識改革による長時間労働の是正と、ヒアリングや部門・立場別の社員研修などの実施です。より快適な労働環境が整備されたこと、社員の意見が反映されたこと、研修が充実したことによって、業界水準と比べても低い離職率の実現に成功しました。

採用の見極めで高い定着率を実現

某飲食チェーンでは、選考会議の導入によって中途採用の基準を高め、精度の高い見極めをすることで、業界内で離職率の低い状態を保っています。部門を超えた連携によって早期離職者減少に取り組むとともに、無断残業・休日出勤も禁止にしました。採用でのミスマッチを減らすとともに、働きやすい環境づくりに力を入れることで、社員の離職を抑えています。

まとめ

離職率とは企業の社員がどのくらい離職するのかについての指標です。離職率が高ければ、企業には無駄なコストが発生する、労働力の確保が難しくなるなどのデメリットが生じます。社員の離職の主な理由としては、労働条件への不満や人間関係のトラブルなどがあげられます。
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