離職率の概要
そもそも離職率とは何なのでしょうか。離職率の概要と計算方法を解説します。
離職率とは?
離職率とは、企業でどのくらいの社員が辞めているか示す割合のことです。離職率は求人情報や人事部門で注目される数値です。離職率が高いと、働きにくい環境というイメージを社内外で持たれかねません。採用場面では人材が集まりにくくなる原因にもなります。
人材不足が深刻化する昨今では、採用現場で優秀な人材獲得の競争が激化しています。安定した経営戦略や人材確保のためには、離職率を下げることが大切です。
離職率の出し方
厚生労働省は離職率の計算方法を以下のように定義しています。
「離職率」=「一定期間の離職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)」×100(%)
上の計算式でいう「常用労働者」とは、期間を定めずに雇われている人や、1か月を超える期間を定めて雇われている人のことです。
離職率の数値が全国平均より高いと、社員が定着しにくい会社とわかります。一方で離職率の数値が低い会社は、辞める社員が少ないことを示します。
日本における離職に対する考え方
従来の日本企業では、勤続年数の長さで人事評価が決まる傾向にありました。終身雇用や年功序列が一般的だった時代のキャリアパスは、1つの企業で勤め上げることを重視していたためです。
しかし近年では、転職のハードルが下がり、離職率が上昇傾向にあります。その離職理由は、ネガティブな内容ばかりではありません。「より成長できる職場環境に身を置きたい」、「今までの経験を活かして、新しいことにチャレンジしたい」など、ポジティブな動機も多くあります。
日本企業の離職率
日本企業の離職率について、全国平均や学歴別・規模別・産業別・性別ごとに解説します。
離職率の平均
厚生労働省が2021年に公表した「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、日本企業の平均離職率は以下のとおりです。
ここでいう離職率とは、年度の開始時に社員として働いていた人が、その年度内に退職する割合を指します。
西暦 | 全国の平均離職率 |
2011年 | 14.4% |
2012年 | 14.8% |
2013年 | 15.6% |
2014年 | 15.5% |
2015年 | 15.0% |
2016年 | 15.0% |
2017年 | 14.9% |
2018年 | 14.6% |
2019年 | 15.6% |
2020年 | 14.2% |
過去10年間では、約15%の労働者が、何らかの理由で離職しているとわかります。
【新卒(大学卒)】離職率
厚生労働省が2021年に公表した「学歴別就職後3年以内離職率の推移」によると、日本企業の新卒(大学卒)の離職率は、以下のとおりです。
西暦 | 新卒(大学卒)の平均離職率 |
2011年 | 32.4% |
2012年 | 32.3% |
2013年 | 31.9% |
2014年 | 32.2% |
2015年 | 31.8% |
2016年 | 32.0% |
2017年 | 32.8% |
2018年 | 31.2% |
2019年 | 21.5% |
2020年 | 10.6% |
2019年と2020年を除き、新卒(大学卒)の社員が3年以内に離職する割合は、30%程度で横ばいの推移を見せています。
【新卒(高校卒)】離職率
厚生労働省が2021年に公表した「学歴別就職後3年以内離職率の推移」によると、日本企業の新卒(高校卒)の離職率は以下のとおりです。
西暦 | 新卒(高校卒)の平均離職率 |
2011年 | 39.6% |
2012年 | 40.0% |
2013年 | 40.9% |
2014年 | 40.8% |
2015年 | 39.3% |
2016年 | 39.2% |
2017年 | 39.5% |
2018年 | 36.9% |
2019年 | 26.3% |
2020年 | 15.0% |
大学卒の新卒と比較すると、高校卒の新卒の離職率は少し高い傾向があります。しかし、年度ごとの平均離職率の推移の動きは、大学卒も高校卒もおおむね同じです。
【規模別】離職率
厚生労働省が2021年に公表した「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、企業の規模別離職率は以下のとおりです。
企業規模 | 平均離職率 |
1,000人以上 | 14.0% |
300~999人 | 13.3% |
100~299人 | 17.4% |
30~99人 | 14.7% |
5~29人 | 13.6% |
平成の初期では、事業規模が1,000人以上や300~999人の、大企業の離職率が低い傾向にありました。
近年では、上の数値のとおり、離職率の高さと企業規模は比例しません。企業規模が299人以下の中小企業の離職率より、離職率が低いとはいえないとわかります。
【産業別】離職率
厚生労働省が2021年に公表した「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、2021年上半期の産業別の離職率は以下のとおりです。
産業名 | 平均離職率 |
金融業、保険業 | 4.3% |
複合サービス事業 | 4.7% |
情報通信業 | 5.0% |
建設業 | 5.0% |
製造業 | 5.1% |
運輸業、郵便業 | 5.20% |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 5.80% |
電気、ガス、熱供給、水道業 | 6.70% |
卸売業、小売業 | 6.90% |
不動産業、物品賃貸業 | 7.40% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 7.60% |
医療、福祉 | 8.60% |
サービス業(他に分類されないもの) | 9.70% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 11.00% |
教育、学習支援業 | 12.40% |
宿泊業、飲食サービス業 | 15.60% |
産業によって、離職率には大きな差があります。たとえば、離職率が最も低い「金融業、保険業」と、離職率が最も高い「宿泊業、飲食サービス業」では、離職率に3倍以上もの差があるとわかります。
※参考:― 令和3年上半期雇用動向調査結果の概況 ― |厚生労働省
【男女別】離職率
厚生労働省が2021年に公表した「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、2020年の男女別の離職率は以下のとおりです。
性別 | 平均離職率 |
男性 | 12.8% |
女性 | 15.9% |
直近15年間において、女性の離職率は男性の離職率を超えています。育児や出産などのライフイベントによる生活の変化で、仕事を続けることが難しくなり、離職するケースが多いためです。
離職率の改善方法
離職率はどうすれば改善できるのでしょうか。特に大切な3つのポイントを解説します。
採用時のミスマッチを防ぐ
希望していた業務内容と、実際の仕事が違っていたことにより、退職するケースは少なくありません。採用時のミスマッチの主な原因は、社員と企業相互の理解不足です。
このようなミスマッチを防ぐには、求人の段階で入社1~3年までの職務内容を、偽りなく明確に伝えることが大切です。就職前の職場体験やインターンをできるだけ実施し、業務内容をより具体的にイメージできる状態で入社すると、離職率低下につながります。
ワークライフバランスの改善
ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和です。長時間労働や休日出勤が常態化し、ワークライフバランスが保たれないと、一般的に離職率が上がりやすくなります。ワークライフバランスを改善すれば、社員の健康が維持増進され、生産性向上にもつながります。社員個人の価値観や生き方を認めると、個人の意欲や能力の向上も可能です。
たとえば、短時間勤務や裁量労働、フレックスタイム制度など柔軟な働き方の導入も、社員のワークライフバランスを改善するうえで有効です。
コミュニケーションの活性化
人間関係のトラブルやハラスメントは、離職の大きな原因になっています。人間関係のトラブルやハラスメントを防ぎ、離職率の低下を目指すためには、社内のコミュニケーションの活性化が重要です。
コミュニケーションが密になると、人間関係が改善され、離職率低下につながります。また社内SNSやチャットツールの導入、社内イベントの開催などを通し、社員同士で交流を深めることも有効です。
まとめ
離職率の平均とは、企業でどのくらいの社員が辞めているか示す割合のことです。離職率が高いと、働きにくい環境というイメージを社内外でもたれ、採用時に優秀な人材が集まりにくくなります。
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