研修期間とは?期間の長さや労務・給与に関する注意点を解説


研修期間とは?期間の長さや労務・給与に関する注意点を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

会社に入社した後、従業員に対して一定の「研修期間」を設けている会社があります。研修期間の労務や給与について、どのように設定すればよいのか頭を悩ませている担当者の方もいるでしょう。

本記事では研修期間の長さや労務・給与に関する注意点について解説します。

研修期間とは

研修期間とは、業務を遂行するために必要となる知識や技術などを習得するための期間です。採用した従業員を育成する期間といえるでしょう。

研修施設や他の会社など特別な施設で研修することもあれば、通常業務を行う中で業務内容を教えることもあります。

研修期間について、法律上規定などはありません。そのため、会社で独自に設定することが可能です。その上で、研修期間を設けるべきかどうか悩んでいる企業もあるでしょう。ここでは、研修期間を設けるメリット・デメリットについて解説します。

期間を設けるメリット

採用面接では、各個人の表面的な対応しか見ることができません。そのため、各個人本来の適性や特徴・強みなどを全て理解するのは困難といえるでしょう。

研修期間を設けることで、実際に従業員が業務を行う様子がわかります。その中で各人の特徴・強み・特技などの確認が可能です。現場で研修を行うOJTであれば、上司や先輩、同僚との相性についても確認できます。

また、研修期間は従業員にとっても多くのメリットがあるといえるでしょう。特に新卒者の場合は、社会人としての基本的なマナーや仕事の進め方などを把握できます。中途入社の従業員にとっても、その会社の独自の仕組みや社風について理解する、貴重な機会となるでしょう。

期間を設けるデメリット

研修にはコストがかかります。また、研修中の従業員は多くの場合、会社に貢献するような売上などを上げることはありません。そのため、従業員が研修期間ですぐに辞めてしまった場合、会社にとってはコストだけがかかってしまう点はデメリットといえるでしょう。

試用期間との違い

研修期間と似た言葉に「試用期間」というものがあります。

試用期間は、業務に携わりながら従業員がどの程度仕事ができるか、業務に対する適正があるかなどを見定めるための期間です。

試用期間は、本採用前のお試し期間といえます。そのため、従業員が同意した場合、試用期間中の給与は本採用時よりも低くすることも可能です。ただし、就業規則や労働契約書に使用期間についての内容を明記しなければなりません。

研修期間の長さの定義と延長の可否

研修期間の長さには、法的な決まりはありません。会社で独自の長さを定めることが可能です。一般的な研修期間の長さは数週間から1カ月程度となります。ただし、大企業や技術系などは、研修期間が長くなるケースも珍しくありません。

技術系の業務で研修期間が長いのは、実際の仕事を行う前に技術を身につけなければならないケースが多いためです。特に、現場での失敗が許されない高度な専門職などの場合、しっかりと技術を身につけた後に配属されます。

一方、大企業が長く研修期間を取るのは、従業員に対して会社に馴染んでもらうためというのが理由の1つです。また、多くの従業員を適材適所に配置するためには、長い時間をかけて各個人の適性などを見定めなければなりません。

また、一度に指導する人数が多いため、現場で一人ずつ指導するよりも、まとめて指導した方が効率が良い点も研修期間が長い理由の1つといえるでしょう。

研修期間を延長するケースは少ない

一般的に、研修期間を延長することはありません。多くの企業では、事前に通常業務を開始するスケジュールを組んでおり、研修期間は終了次第通常業務に移ります。

試用期間の延長は認められない場合がある

試用期間は、事前に企業と従業員が合意した契約書に基づき実施されます。そのため、企業側の都合による一方的な延長は認められません。

なお、一般的な試用期間は1~6カ月です。

研修期間と試用期間における労務上の注意点

ここでは、研修期間と試用期間の労務上の注意点について見ていきましょう。特に各種保険、時間外労働の扱いは法令違反とならないためにも知っておかなければなりません。

各種社会保険への加入義務がある

研修期間と試用期間では、雇用・健康・労災・厚生年金など各種社会保険に加入しなければなりません。
ただし、日雇い労働者など加入義務の適用除外の条件に当てはまる場合は例外となります。

時間外労働に対し割増賃金を支払う義務がある

研修期間・試用期間は共に、本採用の従業員と同じように時間外労働があった場合は割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働とは、法定労働時間である「週40時間、1日8時間」を超えた時間を指します。

有給休暇を付与するケースもある

有給休暇の付与条件は次の2つです。

  • 雇い入れから6カ月以上経過
  • その期間、全労働日の8割以上出勤した


条件を満たした場合は、研修期間・試用期間中であっても有給休暇を付与しなければなりません。仮に付与しなかった場合には、労働基準法違反となります。

ボーナスの査定期間に含むかは企業による

試用期間・研修期間をボーナスの査定期間に含むかどうかは法的な基準はなく、企業の裁量に任せられています。

一方的な解雇はできない

試用期間・研修期間は、簡単に労働者を解雇できるわけではありません。本採用が前提のため、企業側からの一方的な解雇はできません。なお、「従業員が無断欠勤を重ね全く仕事に出てこない」など、客観的な視点から正当性があると判断できる場合は、解雇できることもあります。

ただし、解雇を行う場合は少なくとも30日前に解雇予告を行わなければなりません。解雇予告を行わなかった場合、解雇予告手当として30日以上の平均賃金の支払いが必要です。

従業員側から不当解雇と見なされると係争に発展する可能性があります。不当解雇と見なされないためには、解雇理由の説明や解雇理由証明書の発行などの対策が必要です。研修期間の解雇で気をつけなければならない注意点や対策に関する記事は、こちらをご覧ください。
「研修期間解雇」については、こちらの記事をご確認ください。

労務管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な労務課題と向き合えます。

・ペーパーレス化で労務管理、手続きを効率化
・入社手続きや身上届などスマートフォンでも申請可能
・自動チェックで入力漏れ確認も不要
・データをタレントマネジメントに活用

タレントパレットの資料を見てみたい

研修期間と試用期間における給与の注意点

ここでは、給与の注意点を見ていきましょう。本採用時よりも低い給料に設定する場合は、申請が必要になるケースもあります。

本採用よりも低く設定できる

研修期間や試用期間中であっても、給与は支払わなければなりません。ただし、どちらも本採用より低い給料に設定できます。

しかし、会社の判断だけで一方的に給与を安く支払うことはできません。トラブルを避けるためにも、面接や採用時に、具体的な金額を明示しておきましょう。

最低賃金を下回る場合、申請書の提出が必要

都道府県が定めた最低賃金を下回る場合は、労働基準監督署に「減額の特例許可申請書」を提出しなければなりません。

試用期間中、次の条件を満たした場合は、最低賃金より最大20%の減額が可能となります。

  • 試用期間の詳細を就業規則や労働契約などで定めている
  • 本採用後の賃金水準が最低賃金額程度
  • 試用期間中の労働者の給与額を低額にする慣行がある
  • 試用期間の長さは最大6カ月
  • 職務内容を勘案し、定められた率で減額した給与額


給与は企業と従業員間でトラブルになりやすいため、事前に両者の合意が必要です。本採用よりも給与を低く設定する場合、詳細を説明しなければなりません。企業が独自に支給する手当の対象外となるケースもあるでしょう。

給与トラブルを発生させないためにも、就業規則や契約書に詳細の記載が欠かせません。研修期間の給与に関する注意点を詳しく知り、対策を講じたいと考えている方はこちらの記事をご覧ください。
「研修期間給与」については、こちらの記事をご確認ください。

期間中に従業員が退職してしまう理由

試用期間・研修期間中に従業員が退職してしまうケースも想定されます。人材採用費や研修費用を負担している企業にとっては、ダメージが大きいためできれば避けたい事態といえます。ここでは、期間中に従業員が退職する大きな理由を2つ見ていきましょう。

入社前のイメージと実際の業務にギャップを感じる

入社前のイメージと大きく異なっていた場合、従業員が退職するケースも想定できます。例えば「思っていた業務内容と違った」「想像していた仕事と違っていた」というような場合、従業員が研修中に退職する可能性が高まるといえるでしょう。

退職者を減らすためには、入社前のイメージと実際の業務にギャップが生じないよう、事前にしっかり説明しておくことが大切です。

労働環境が合わなかった

「職場の人間関係が合わなかった」「通勤が思ったよりも大変だった」「勤務形態が合わなかった」など、労働環境が合わないために退職に至ることがあります。

事前の想像と実際の労働環境が大きく違っている場合は、研修期間中に退職に至ることもあるでしょう。

期間中に従業員が退職する場合の注意点

研修期間中に従業員が退職を申し出た場合、どのような点に注意すればよいか頭を悩ませることも少なくありません。退職後にトラブルに発展させないためにも、次の2点については配慮しておきましょう。

給与の支払い

試用期間や研修期間は、企業の売上には貢献していないことが多く、「給与の支払いに応じなくてもよいのでは?」と考える担当者もいるでしょう。

しかし、試用期間・研修期間中も自社の従業員であることに変わりありません。そのため、給与の支払いが必要です。

退職までの期間

従業員が自ら退職するためには、2週間前に申し出なければなりません。一般的に急な退職は認められていないとされていますが、実際は期間中に従業員が突然出社しなくなるトラブルが生じることもあるでしょう。

このような退職のトラブルを回避するためにも、期間開始前に退職手続きの方法を口頭で伝え、書面に記載することが大切です。しかし、研修期間といっても、できるだけ従業員の退職は避けたいと考える担当者は少なくありません。研修期間における退職の回避方法や注意点について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「研修期間退職」については、こちらの記事をご確認ください。

まとめ

研修期間の長さに法的な定めはなく、企業が自由に決められます。また研修期間・試用期間の給与は本採用時よりも低く設定することも可能ですが、一方的に決めることはできません。就業規則への定めや労働者への丁寧な説明が必要です。

時間外労働を行った場合は、残業代を支給する必要が生じます。研修期間中も、一定の条件を満たせば有給休暇を付与しなければなりません。健康保険や厚生年金をはじめとした各種保険の対象となることも多いので、漏れがないように対応しましょう。

タレントパレット」を導入すると、労務管理をはじめ、さまざまな人事管理の一元化が可能になります。採用管理や人事データ分析、キャリア分析、労務負荷分析などを1つのシステムで行うことができ、人事データを幅広く活用できます。従業員1人ずつの研修管理もできるので、導入を検討してみましょう。

タレントパレットのHPはこちら