研修費用の5つの勘定科目や仕分けをする際の注意点を徹底解説


研修費用の5つの勘定科目や仕分けをする際の注意点を徹底解説

研修にかかった費用は、研修費以外に他の勘定科目に振り分けるべきケースがあります。適切な勘定科目に振り分けることで、経営戦略上だけでなく税務上でもメリットがあります。本記事では、研修費用に関する勘定科目や、仕分けの際の注意点、付随費用などについて解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「研修費用は全て経費にはできないの?」

「勘定科目がいくつかあるみたいだけどよく分かっていない」

「お金の出入りをしっかり確認して、必要な研修と不要な研修を振り分けたい」

という方は多いのではないでしょうか?


人材育成のためには研修はとても大事です。社員が新たな技能や資格等を取得することで企業にとってもメリットが大きいでしょう。しかし、限られた研修費の予算のなかで、効果を出すためには「本当に必要な研修なのか」を見極めることが大切です。そのためには、勘定科目ごとにお金の出入りについてしっかりと確認する必要があります。


そこで本記事では


  • 研修費に関する勘定科目
  • 勘定科目に仕分ける際の注意点
  • 研修に付随する費用の扱い


について解説します。


「社員に適切な研修を受けさせて社内全体の業務効率アップを図りたい」という方のお悩みを解決できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。


研修費とは仕事に関する技能や資格などの取得のための費用のこと

研修費とは、社員が業務を行う上で直接関係のある知識やスキルの習得、資格や免許の取得のために受ける講習費等のことです。


基本的に、社員の利益となる費用は「給与」として扱われますが、業務遂行のために必要とされる費用については「研修費」として計上できます。研修費の具体例は、以下のとおりです。


  • 電話応対のためのマナー講習の費用
  • エンジニア向けのプログラミング研修の費用
  • 研修等で使用したテキスト代


人材育成のために実施されるので、企業によっては教育訓練費などの別の名称でも呼ばれます。


勘定科目はお金の出入りをカテゴリーに分類したもの

勘定科目は、日々の取引について帳簿に記載する際、会社に出入りするお金をカテゴリごとに分かりやすく記録したものです。


取引について誰が帳簿に記載したり、誰が帳簿を見たりしても同じように理解できるよう、勘定科目があります。勘定科目ごとに管理するメリットは、以下のとおりです。


  • 何に対してどれくらいの費用がかかったのかが分かる
  • 収入はどれくらいになるのかが分かる
  • 無駄な出費が発生していないかが把握できる


このように、勘定科目に分類することによって経営上の判断に役に立つだけでなく、税金を計算したり経営状況の開示をしたりするのにも役立ちます。


研修費に関する5つの勘定科目

ここでは、5つの勘定科目について説明します。


  • 研修費
  • 前払費用
  • 福利厚生費
  • 新聞図書費
  • 雑費


これらの勘定科目について、1つずつ詳しくみていきましょう。


研修費

研修費には、研修で用いたテキスト代や研修のための準備費なども含まれます。


研修費に該当するためには以下の3つの条件を満たす必要があります。


  • 日常業務を行う上で、その研修が必要であること
  • 業務と直接関係のある知識・スキルの習得または資格・免許の取得のための講習を受けるための費用であること
  • かかる費用が研修費用として適切な金額であること


「業務に直接関係のある知識・スキル・資格・免許」とは、例えば運送業務を行う社員が大型免許を取ったり、経理部の社員が簿記の資格を取得したりする場合などです。


(具体例)社員が受講した簿記検定の講座費用40,000円を研修費として現金で支払った。

借方

貸方

研修費

40,000円

現金

40,000円

前払費用

前払費用は、研修が長期間に渡って行われる場合、まだ行われていない研修分の料金も含んだ全額を先に支払った場合に使用する勘定科目です。


研修のカリキュラムが数ヶ月に渡って実施される場合が該当しますが、その研修が同じ事業年度内に終了すれば全てを経費として計上できるため、前払費用にする必要はありません。


しかし、研修が複数の事業年度にまたがって実施される場合、前もって費用を支払っていれば前払費用として計上します。


(具体例)複数の事業年度にまたがって行われる研修を社員が受講するため、前もって費用250,000円を現金で支払った。

借方

貸方

前払費用

250,000円

現金

250,000円

期間の短い研修の方が費用は安くつきますが、業務内容によっては長期間の研修が必要なこともあります。研修のスケジュールについて詳しく知りたい方は、別記事「研修スケジュール」をあわせてご確認ください。


福利厚生費

福利厚生費は、業務とは直接関係ないものの、社員が社会人として持ち合わせるべき知識やスキルを磨くための研修等を受ける場合に、補助的に支給されるものです。


例えば社員が、自己啓発のために業務とは無関係の英会話学校に通ったり、マーケティング講座を受講したりといったような場合の費用を福利厚生費として仕分けられます。


福利厚生費として仕分けるためには、その研修に全社員が自由に参加でき、研修に要する費用の補助額が社会通念的に常識の範囲内である必要があります。


(具体例)社員の自己啓発やスキルアップのための資格取得費用の補助として、15,000円を現金で支給した。

借方

貸方

福利厚生費

15,000円

現金

15,000円

新聞図書費

新聞図書費は、業務に関連する新聞や雑誌、書籍などの購入に要した費用のことです。


社員が使用することを前提に、随時読めるように社内の本棚などに置いてある場合もあります。研修で用いたテキスト代は、新聞図書費と研修費のどちらでも処理が可能です。


研修費とテキスト代を厳密に区別したい場合には、新聞図書費としての計上がおすすめです。


(具体例)業務に関する書籍を8,000円で購入し、社員が自由に読めるよう本棚に立てかけた。

借方

貸方

新聞図書費

8,000円

現金

8,000円

雑費

研修費がほとんど発生せず、額も少額で重要度が低い場合には雑費として処理をします。また、雑費はどの勘定科目にも当てはまらない場合に計上します。


雑費で処理をすると、他の勘定科目とは違って何に使ったのかが分かりにくくなるのが特徴です。今後従業員が増えたり、研修の頻度が増えたりして費用が高額になったときには、研修費として計上する必要があります。


(具体例)社員が業務に関する研修を受け、2,800円を現金で支払った。

借方

貸方

雑費

2,800円

現金

2,800円

研修費の仕分けをする際の3つの注意点

ここでは、研修費の仕分けをする際の注意点について解説します。


  • 研修費として計上できない研修がある
  • 研修に取引先が参加すると交際費として計上できる場合がある
  • 税務調査でのトラブルにならないよう資料を残す


これらのことを理解することで、あらかじめトラブル等を回避できるでしょう。


研修費として計上できない研修がある

研修を受けても、研修費として計上できない場合もあります。研修費として計上できない場合の具体例は以下のとおりです。


  • 独立開業ができる資格の取得にかかった費用
  • 独占業務が行える資格の取得にかかった費用


個人に帰属する国家資格の資格などは研修費用としては計上できません。例えば、税理士や社会保険労務士は独占業務を行えるため、たとえ業務と関連があったとしても、これらの資格取得のための費用を会社が負担した場合には研修費とはならず、給与になります。


研修に取引先が参加すると交際費として計上できる場合がある

研修に取引先の人間が参加する場合には、交際費として計上できる場合があります。国税庁の「交際費の定義は以下のとおりです。

交際費や機密費、接待費、その他法人が得意先や事業に関係のある者等を接待、供応、贈答、慰労またはこれらに類する行為をするために支出する費用


研修の内容や業務との関連性や必要性を考慮し「研修」という名目であっても取引先の人間の慰労が主な目的である場合には交際費として扱われます


参照元:国税庁 交際費等の範囲


税務調査でのトラブルにならないよう資料を残す

税務調査があったときに指摘を受けないための対策が必要です。税務調査で、研修費として計上していたものが実は給与に該当するという場合があります。


その場合、給与について源泉徴収をしていないことになり、源泉徴収義務違反であると指摘を受ける可能性があるのです。源泉徴収義務違反になると、不納付加算税と延滞税が課されることとなり会社に負担が生じてしまいます。


トラブルを避けるためには、社員の受けた研修内容を客観的に示せる資料を保管しておく必要があります。資料としては、研修を受けた社員が提出した日報などの報告書や、研修で使用したテキストなどを保管しておくことが大切です。


研修の日報に書くべき内容について詳しく知りたい方は、別記事「研修日報」をあわせてご確認ください。


研修や講習に付随的にかかった費用の扱い

ここでは、研修等に付随する費用について解説します。


  • 食費
  • 交通費や宿泊費
  • 文房具などの消耗品


研修費として計上できないものもあるため、必ず確認しましょう。


食費

研修を受けた日に昼食に弁当が出た場合は研修費として計上できます。弁当代は昼食代として一般的な範囲内の額に限られます。高額なお弁当などの場合には研修費とはみなされず、交際費となる点に注意しましょう。


交通費や宿泊費

研修が数日かけて行われたり、遠方で開催されたりする場合には、宿泊が必要になりますが、その際にかかったホテルなどの宿泊費は研修費として処理できます。


ただし、社員が自分で宿泊先のホテルを予約した場合、旅費交通費として処理することもできます。

研修費として扱うか旅費交通費として扱うかは、企業によって異なりますが、旅費交通費は、普通の交通費とは区別され、宿泊費や移動のための交通費、日当なども含んでいるのが特徴です。


文房具などの消耗品

研修で使用する文房具や名札などの備品は消耗品費として計上します。消耗品費とは、使用するうちに消耗していく備品などを指し「1年未満の使用可能期間であるか、10万円未満である什器備品の購
入日かかった費用」と定義されています。

研修費用勘定科目のまとめ

研修費は社員が新たな技能や資格等を取得するためには欠かせないものです。研修にかかった費用を全て「研修費」として計上はできず、場合に応じて適切な勘定科目に振り分ける必要があります。


社員個人に帰属するような資格取得に関する研修費用は給与の扱いとなり、注意すべき点もあります。税務調査が入ったときには、研修費とそれ以外の費用の違いについて根拠を持って答えられるようにしておくことが大切です。


また、そもそも費用をかけて行った研修の効果を高めるには、普段から社員とのコミュニケーションが大切です。社員が何を考え業務に合っているのかや、社員がどのような業務を得意としているかを知ることで、社員に必要な研修について把握しやすくなります。


そのためには、タレントパレットのサービスがおすすめです。タレントパレットのサービスを導入することで、人事情報の一元化ができ、適切な人事配置や人材育成が可能になります。タレントパレットのサービス導入によって、以下のようなメリットが得られます。


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  • 時系列ごとに人材データを蓄積し、社員が入社してから配属先での活躍等を見える化できる
  • 社員の受けた研修やeラーニングの受講記録から、おすすめのコンテンツを確認できる


社員一人ひとりについて理解し、適切な研修を受けさせることで、企業への還元率が高くなり業績アップにもつながるでしょう。ぜひ、タレントパレットのサービスをご検討ください。


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