タレントマネジメントとは
タレントマネジメントシステムを詳しく見ていく前に、まずはタレントマネジメントとは何なのか確認しておきましょう。
タレントマネジメントとは?意味と必要性や国内事例、実践ステップを解説
タレントマネジメントの意味
タレントマネジメントは社員の能力(タレント)を発揮させるため、人材をマネジメントすることです。具体的には社員の能力やスキルを引き出したり、人材の採用や配置、育成に生かしたりすることに役立てられます。人材の定着率を上げ、リーダー候補を見つけ出すのもタレントマネジメントの役割です。
タレントマネジメントが注目される背景には、価値観や働き方の多様化があります。近年では企業も各社員に目を向けるようになり、働きがいを重視する考えも広まってきました。現代の企業に求められる在り方を実現するために、タレントマネジメントが効果的といわれています。
タレントマネジメントシステムとは
タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントの実施をサポートするためのツールです。自社が社員のプロフィールはもちろん、どのようなスキルや能力を持っているのかを一元管理し、検索や分析ができるようになっています。
社員の特性を考慮した適材適所の人材配置や育成管理を行えるため、人材管理の効率化が可能です。タレントマネジメントを効率的に行うことで人的リソースを軽減しつつ、企業の組織力向上にも役立ちます。
タレントマネジメントシステムの"これだけは外してはいけない"選び方と必要な思考
タレントマネジメントのメリット
タレントマネジメントを実施することで、企業は主に以下に挙げる7つのメリットが得られます。
人材・チームの能力向上
タレントマネジメントは社員のデータに基づき、効果的に能力を引き出して育てることに役立てられます。また、社内のポジションは求められるスキルが違うため、個々の社員が持つ能力やスキルを把握できれば適材適所の配置が可能になり、チームとしてのバランスも取れるでしょう。各社員の能力が上がれば、チーム全体の生産性も上がります。
人材育成の推進
人材育成を積極的に進めていくうえでも、タレントマネジメントが効果的に活用できます。社員の能力や適性を見える化することで、各社員に合わせた効果的な育成方法が見えてくるでしょう。たとえば、伸ばすべき部分や、足りない部分を伸ばすのに必要な要素を明確にできます。育成データの蓄積により、さらなる育成計画や引き継ぎなどにも活用可能です。
人材代謝に役立つ
人材代謝とは、社内での人材の流動を指します。タレントマネジメントによって優秀な人材を確保しつつ、一方で自社に合わない人材は整理できるということです。企業を取り巻く状況や環境が大きく変化する現代において、近年の労働市場では人材の経験やスキルが重視されるようになりました。その分、人材の代謝は力を入れるべき点の1つだとされています。
採用基準の確立
人材の採用では、自社に必要な能力やスキルを見極めることが重要です。タレントマネジメントで人材のデータが一元管理できるようになると、社内のスキルや経験のデータが把握しやすくなります。同時に不足している要素も分かるようになるため、自社が求める人材、適性のない人材を踏まえながら、明確な採用基準を確立するのにも役立つでしょう。
エンゲージメントが高まる
タレントマネジメントは、社員のエンゲージメントを高められるのもメリットです。タレントマネジメントで社員各自の適性に応じた配置ができると、社員にとっても自分の能力やスキルを発揮できると感じやすくなるでしょう。その分、仕事へのやりがいや意欲、職場への満足度がアップして定着率が高まり、結果としてエンゲージメントも向上します。
社員のキャリアパス構築に役立つ
タレントマネジメントで収集したデータは、社員に公開できます。社員にとっては見える化された適性や能力を確認し、自分の強みや弱みを客観的に理解できる機会になるでしょう。タレントマネジメントの実施によって道筋が見えると、キャリアパス構築に取り組みやすくなるなど、社員がキャリアパスを考えるためのサポートとしても役立ちます。
ハイパフォーマー・ローパフォーマー両方を特定できる
可視化されて社員の成果が比較できるようになると、ハイパフォーマーとローパフォーマーの両方を特定できる点もメリットです。
ローパフォーマー(低い・成果を生み出す人)とは、企業が求める水準の仕事ができていない社員のことを指します。該当するのはミスを繰り返す人や営業目的を達成できない人、期日を守れない人などです。ローパフォーマーに足りていない能力などが把握できるため、的確なフォローやサポートがしやすくなります。
反対に大きな成果を上げ、企業の生産性に貢献している人がハイパフォーマーです。成果を上げている社員の特徴を把握できれば、採用や昇進などに生かせるだけでなく、組織としてのパフォーマンス向上にもつながりやすくなります。
タレントマネジメントのデメリット
タレントマネジメントにはメリットばかりではありません。以下の5つのデメリットも把握しておいてください。
コストが発生する
ツールを導入してタレントマネジメントを実施しようとすれば、ある程度の費用が発生します。かといって何のシステムも利用しないとなると、人的資本が必要です。データの収集や管理、分析から活用までには多くの作業が生じるため、タレントマネジメントに取り組むための時間を割かなければなりません。
目的を具体化しにくい
タレントマネジメントは漠然と実施しても、実は目的を具体化しづらい側面があります。実施目的や目標がきちんと定められていなければ、自社が必要とする成果を十分に得られない可能性があるからです。社員も自分のすべきことや改善することが明確に把握できず、コストをかけても結果的に費用対効果が悪くなってしまうでしょう。
情報の収集・管理が難しい
タレントマネジメントを実施するためには、社内で情報収集をしなければならないうえ、集めただけになってしまっても意味がありません。まずは人材情報を収集するために適切な手段を確立し、時間もかける必要があります。
手順や体制が確立していない状態では、情報の収集や管理が困難になる可能性が考えられ、せっかく集めた情報も活用しきれないでしょう。タレントマネジメントを実施する際は、収集した情報を適切に管理できる体制を築くことが求められます。
データの活用方法が分からない
タレントマネジメントを取り入れたとしても、収集したデータの活用方法が分からない場合も少なくありません。現場で効果的にデータを活用するためには、分析や課題を可視化するためのノウハウが必要です。また、タレントマネジメントを導入する最終的な目標が決まっていなければ、データを活用する方向性も定まりません。
社内の理解が必要
社員によっては、能力の優劣を比べられていると感じることもあるため、実施するには社内で理解を得る必要があります。自分に合うポジションへの配置やキャリアパスに役立つなど、タレントマネジメントが社員にメリットのあることだと周知しましょう。そのうえで協力を得ることが重要です。
タレントマネジメントシステムの機能
タレントマネジメントシステムには、さまざまな機能が備わっています。主な機能を3つ挙げて解説します。
社員情報の一元管理
タレントマネジメントシステムを活用すると社員のデータベースが構築でき、社内の能力やスキル、経験などが一覧として把握できます。社内の人材情報を一元管理することで、必要なタイミングで素早く正確に確認することが可能です。社員の能力やスキルだけにとどまらず、満足度や研修の状況なども含め、幅広い情報を閲覧できます。
データ分析・評価
タレントマネジメントシステムは、社員の情報を資源として戦略的に活用できるツールです。システムによっては、社員の経験や成果をスコアとして数値化できるタイプもあるなど、人材データを分析・評価できる形に整えられています。データがグラフやレポートとして出力できるシステムなら、より分かりやすい可視化が可能です。
目標の進捗管理
タレントマネジメントシステムは、社員の強みはもちろん課題も明確化できるため、フィードバックすることで成長のサポートに役立ち、目標の進捗管理もできます。チームやグループ全体としての目標も同様に、達成までの進捗を評価・管理することが可能です。目に見える形で客観的に情報を示せれば、企業の戦略に沿う目標も立てやすくなるでしょう。
タレントマネジメントシステム導入のメリット
タレントマネジメントシステムを導入すれば、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、実際にタレントマネジメントシステムを導入するメリットを5つ解説します。おすすめの資料も参考にしてください。
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効率的にデータを管理できる
社員数が多くなればなるほど、人材データも膨大になります。少人数の企業であれば専用のシステムがなくても管理しやすいものの、人数が多くなると人の手による管理は難しくなるでしょう。タレントマネジメントシステムを導入すれば効率化できるため、データ管理の難しさを解消し、担当者の業務負担も減らすことが可能です。
適切な人材配置が可能
人の目だけでは、なかなか人材情報をすべて把握しきれません。しかし、タレントマネジメントシステムがあれば情報を抽出しやすくなるため、社員の適性を把握するとともに、組織の状態も可視化が可能です。各自の適性に合ったポストに配置するなど人材配置の最適化にもつながり、社員のパフォーマンスや定着率を向上させられます。
人材発掘に役立つ
タレントマネジメントシステムは、社員が持つ潜在的な適性やスキルの発掘に役立つのもメリットです。人の目で管理していると見落としがちな情報も、タレントマネジメントシステムならば発見できる場合があります。これまでは単に配置がマッチせずに力を発揮できていなかった社員でも、生かされていない能力を発掘して成果につなげられる可能性があるでしょう。
計画的に人材育成を進められる
タレントマネジメントシステムによって社員の能力を客観的に把握し、計画的な人材育成に役立てられるのもメリットの1つです。なかには、育成計画に特化した機能を搭載しているタイプもあります。人材の育成計画に特化したシステムなら、将来リーダーになり得る人材の素質を見抜き、成長をサポートすることも可能です。
事業展開を加速できる
タレントマネジメントシステムを活用すれば、人が判断を下してきた人事における意思決定を効率化させられます。市場の変化が激しい近年では、時間をかけている余裕がありません。タレントマネジメントシステムを活用すれば、事業展開をスピーディにできるでしょう。
タレントマネジメントシステム導入のデメリット
タレントマネジメントシステムの導入にもデメリットはいくつかあります。導入を検討する際は、以下の3点を把握しておいてください。
導入に費用がかかる
基本的にタレントマネジメントシステムは月額料金が発生するため、導入時の初期費用に加えて継続的なランニングコストも必要です。とはいえ、タレントマネジメントシステムを導入することで業務の効率化が図れ、生産性の向上にもつながるのなら、必ずしもデメリットとはいえません。費用対効果を考えることが重要です。
運用開始に時間がかかる
タレントマネジメントシステムを効果的に運用できるようになるまでには、ある程度の時間を要します。運用にあたっては、人材データなどの入力作業もしなければなりません。社内で効果的に運用するためには、ルールや体制を設ける必要もあり、運用開始までには時間と手間がかかることを心得ておいてください。
効果的に運用できないリスクがある
なかには期待したほどの成果につながらず、せっかく導入しても効果的に運用できないリスクもあります。そもそも社内で運用のためのフローが確立されていなければ、かえって業務負担が増えるかもしれません。タレントマネジメントシステムを活用する場合は、導入前から運用方法を具体的にイメージし、課題があれば解消しておく必要があります。
タレントマネジメントを活用した人事
最後にタレントマネジメントを活用した人事として具体的な例を3つ挙げます。タレントマネジメントを実施する際の参考にしてください。
社員と業務のマッチング
適切な人材配置を実現するためには、社員の適性や能力と業務とのマッチングが重要です。単なるスキルだけではなく行動特性なども含め、さまざまな側面から社員の適性を捉えられるタレントマネジメントは、精度の高いマッチングに役立ちます。
マッチングがうまくいけば社員は能力を発揮しやすくなり、結果的に部署や企業全体のパフォーマンス向上にもつなげられるでしょう。企業にとっても人事上の判断がスムーズになるのはもちろん、環境の変化にも対応できるため、スピーディかつ効率的な人事が可能です。
育成・採用の効率化
タレントマネジメントは人事に大きな影響を及ぼし、その種類もさまざまです。ただ、人事の主な役割が、人材の活用や採用であることに違いはありません。人材の育成や採用を効果的に進めるためには、まず社内情報の正確な把握と理解が重要です。
タレントマネジメントによって、企業が必要とする能力も洗い出せます。各社員の目標やキャリアビジョンを踏まえた最適な研修を提案するなど、適性に合わせた育成が可能です。採用時においても、自社に不足している人材を獲得しやすくなるでしょう。
エンゲージメント・リテンション
せっかく採用した社員を失うことは、企業にとって大きな損失です。タレントマネジメントによって社員のエンゲージメントを高められれば、リテンション(離職防止)につなげられます。
タレントマネジメントシステムにはアンケート機能が搭載されているため、満足度や社員の人間関係、健康状態などのコンディションも短いスパンでチェックすることが可能です。状況に応じてヒアリングや配置換えを実施するなど、何らかの対策を施すことで、離職を事前に防止できます。
まとめ
タレントマネジメントシステムは社員の基本情報はもちろん、能力やスキルなどをデータベースとして蓄積し、人材配置や人材育成に役立てられるシステムです。適切に取り入れることで、社員自身にとっても企業にとってもプラスになるでしょう。
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