こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
雇い止めは、ニュースなどでもよく耳にするように、雇用契約の場において、問題になりやすい問題の一つです。トラブルを避けるためにも、企業は有期契約労働者への正しい対応を理解しておかなければなりません。
この記事では、派遣切りとは何か、雇い止め法理とは何かに加え、雇い止めの際に注意すべきポイントなどを解説していきます。
雇い止めとは
雇い止めとは、一定期間の雇用を契約した労働者に対して、契約期間が満了した際、雇用契約の更新をしないことです。
雇い止めの対象となりやすいのは、期間を定めて契約している派遣社員などの労働者です(ただし、学生の夏休み期間など、特定の期間だけ一時的に働くパート・アルバイトは雇い止め対象には含まれません)。
雇い止めは、たびたび社会問題にもなっており、2020年ごろから社会に大きな影響を与えたコロナ禍では、およそ8万人が雇い止めをされました。コロナ禍で最も雇い止めが多く見られたのは製造業で、小売業、飲食業、宿泊業なども雇い止めが増加したようです。
雇い止めを行った際の退職扱いについては、下記の記事でも詳しく扱っています。
「雇い止め」については、こちらの記事をご確認ください。
解雇との違い
雇い止めは、解雇とどのように違うのでしょうか?
解雇は、雇い主(使用者)からの都合で労働契約の解約・解除・解消を指します。一方、雇い止めは有期労働契約の更新を行わないことによる契約終了です。
雇い止めは不当な解雇に近く問題にも
雇い止めと解雇を比較すると、解雇の方が厳しい対応に思えるかもしれませんが、実際は、雇い止めも解雇に近いと言えます。
例えば、1年ごとの有期雇用の契約を何年も更新している場合、労働者は「今年も更新されるもの」と認識しているかもしれません。ある年に、突然契約を更新しないと言われれば、突然解雇されるのと同じ状況になるでしょう。
こうした雇い止めは、派遣社員などが対象になりやすい傾向にあります。これは、「派遣切り」などと呼ばれ、たびたび社会問題になっています。
有期雇用の契約を結んで働いている場合でも、その仕事で生計を立てている労働者が大半です。突然契約更新がされず職を失えば、難しい状況に立たされるでしょう。
経営側(使用者側)が人件費の削減に着手する際は、まずは派遣社員や有期雇用の契約社員を削減することから始めるのが一般的です。
無期雇用契約の従業員と比較して、立場や労働条件が悪い傾向にある派遣社員や契約社員は、契約更新に関して、常に不安を抱えながら仕事をしているケースも少なくありません。
雇い止め法理とは
雇い止めは、有期労働契約のもとにある労働者にとっては、不当な解雇に近い状況とも言えるため、雇い止めの際は「雇い止め法理」が適用されます。
雇い止め法理とは、合理的な理由がないにもかかわらず、有期労働契約の更新が行われないのは違法だという考え方です。法理とは、判例に基づく考え方のことで、これまでに行われた裁判の結果から見て、違法性の有無を判断する基準になります。
この雇い止め法理は、有期労働契約が一方的な不利益をかぶる雇い止めに、一定の制限をかけるものです。
雇い止め法理の対象となる契約
雇い止め法理の対象となる契約は、以下のようなものです。
・過去に反復して更新されたことがある有期労働契約で、その雇い止めが無期労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められるもの(労働契約法第19条第1号より引用)
・労働者において有期労働契約の期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの(労働契約法第19条第2号より引用)
前項で例として挙げたような、1年間の有期労働契約を複数回更新しているケースでは、無期労働契約を結んでいる従業員と同じ扱いがされるべきという考え方が示されています。ただし「反復して更新された」に関しては、具体的な年数や回数が定められているわけではありません。
また、労働契約法第19条第2号では、過去において複数回の契約更新が行われているかどうかにかかわらず、雇用の継続が合理的であるかどうかが問われます。
ここでいう「合理的」とは、有期労働契約を結んでいる従業員が携わる業務の内容、性質、当事者間のやり取りなどが含まれるでしょう。
例えば、派遣社員が職場で重要な役割を担っており、「もうすぐ更新だけど、また1年よろしく」と話をしている場合が考えられます。この場合に、「突然だけど次の契約更新はしないことになった」と雇い止めになるのは、合理性に欠けると判断されるかもしれません。
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雇い止めができる条件
ここからは、雇い止め法理の適用も考慮に入れながら、経営者側が適法に雇い止めを行えるケースをご紹介します。
雇い止めができるのは、以下のような労働者です。
- 有期労働契約の更新を3回以上している
- 1年以下の有期契約契約の更新(または反復更新)を行っており、初回の労働契約締結から通算1年以上経過している
- 1年以上の有期労働契約を締結している
- 有期労働契約の上限である3年または5年が経過している
- 期間を設けていない労働契約を結んでおり、その契約が満了している
雇い止めには予告が必要
雇い止めの対象となる労働者に対して、労働契約を更新しない場合は、その旨を予告する必要があります。雇用する側(使用者)は、雇い止めをする労働者に対して、契約期間満了の30日前までに、面談や書類で予告をしてください。
書類で予告する際は、以下のようなもので通知します。
もし「職務怠慢が多く見られる」「指導にもかかわらず改善が見られない」といった雇い止めの合理性を強化する理由がある場合は、通知書に追記することも可能です。
雇い止めのトラブルを回避する方法
ここからは、雇い止めの際にトラブルが起きないよう、どのような点に注意すべきかをご紹介していきます。
不更新条項を契約に規定する
有期労働契約を締結する際の契約書に、契約を更新しない場合について明記しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
原則として、契約期間が終われば雇用契約が終了することを最初の段階で契約内容に盛り込んでおけば、「更新がなければ退職」という合意のもとで雇用できるでしょう。
注意しておきたいポイントは、労働者本人がその内容を認知しているかどうかです。本人に十分な説明がされておらず、雇用契約の終了を認知できない場合は、契約書の効力が認められないこともあります( 平成22年5月18日 京都地裁第6民事部 事件番号:平成20(ワ)4184 より)。
また、契約内容は認知しているものの、本人が明らかに契約更新を望んでいる場合も注意が必要です。この場合、「最初の契約で更新しないことになっている」だけでは、合理性に欠けると判断されるかもしれません(名古屋地裁平成7年3月24日の判例より)。
面談を行い理解を求める
雇い止めは、権利があるからといって配慮する必要がないわけではありません。トラブルを避けるためには、次回の契約更新がないことや、その理由について、丁寧に説明する必要があるでしょう。
契約書に更新をしない旨を記載した上で、従業員へ丁寧な説明をしていたことで、経営側に有利な判決が下ることもあります。30日前までに予告を行うことや、契約更新の回数をあらかじめ定めておくことも大切です。
また、契約更新をしない旨を説明する際、「契約不更新の合意を強制させられた」と言われないように注意が必要です。説明の場では、誠実な態度で臨みましょう。
契約終了に際して妥協案を提案する
契約不更新に関して、労働者が不満を持っていたり、難しい事情を抱えていたりする際は、可能な範囲で妥協案を提案してみましょう。
たとえば、退職金にあたる一時金を出したり、契約終了期間に融通を利かせたりできるなら、労働者も会社側の誠意を感じ、トラブルには発展しにくくなるでしょう。
まとめ
雇い止めは、企業がしっかりと予告をし、丁寧な説明を行わなければトラブルに発展します。契約書の内容を整えるだけでなく、労働者に対して真摯に対応する必要があるでしょう。
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