地方銀行で進む人事改革
市場環境が大きく変動し業界再編が進む今、地方銀行(地銀)では大きな変化が訪れています。
特に人事領域では企業活動の中でもとりわけデータ活用が進んでいない領域です。人材という資産を有効活用するためには、人材にもとづくあらゆるデータを見える化し、施策に活かせる環境を整えることが重要です。
柔軟性に欠けた人事制度や他業種に比べて進みづらいペーパーレス化、経営層や現場の支店長・行員間での意思疎通の壁など、地方銀行の人事部門は様々な困難に直面しています。一方で業界再編が進む中、先進的な取り組みを始める地方銀行が増えているのです。
例えば人事異動においては従来、取引先との癒着を防ぐため一定期間に行員を異動させるのが一般的でした。
しかし、このような体制では取引先との強固な関係を築くことは難しく、また地方に密着した取り組みにも繋がりづらくなってしまいます。このため金融庁は2019年12月に監督指針を変更し、地方銀行が柔軟に営業担当期間を決められるようにしました。
これに伴い、第二地銀の長野銀行は「通常3年を目安にしてきたが4〜5年に延ばす」などの対応を明らかにしており、他の地方銀行もこうした取り組みに続くものと思われます。
タレントマネジメントとは
こうした状況で注目されているのが人材データを活用するタレントマネジメントです。
社員一人ひとりの力を伸ばし、組織の力を最大化する人事施策として欧米で発達したタレントマネジメントは、日本企業にも続々と導入され始めています。
「タレントマネジメント」という言葉の「タレント」の部分には、才能や素質などの意味合いがあります。この点から、人材配置や人材教育などにおいて、タレントとは「優秀人材」や「企業に貢献できる人材」などの定義で使われるケースが多く見られます。
企業が長期的な目標を実現し、成長し続けるためには、自社の社員が持つタレント(才能、スキルや能力)を正確に把握しておくことが欠かせません。そのため、社内に蓄積された人材データを活用し、それぞれの能力や資質などを考慮しながら適材適所の人材配置(最適配置)を行ったり、適切な人材育成を用いたりすることは非常に重要です。個人の能力を正しく評価したうえで、その発揮能力を最大化させる取り組みが、タレントマネジメントの手法といえます。
地方銀行(地銀)にタレントマネジメントが必要な理由
地方銀行では各支店に所属する行員のスキル教育やDXが進みづらく、業務や行員の実態を把握するのが困難と言われています。特に人事領域は顕著であり、人事担当者の経験による人材育成や人事異動に頼らざるを得ません。
この状況を是正するためにタレントマネジメントが求められているのです。
トップダウンによる人材管理には限界があり、従来の経験に基づいた手法では偏りがあったり、属人的な施策となってしまう可能性もあります。競争力を高めるという意味合いからも、組織を横断的に捉えながら人材活用ができるよう、人材管理を行う必要性が生じてくるといえるでしょう。
例えば、銀行では非常に豊富な種類の商品を扱います。その中のどれが売上の主要素となるかは各支店のエリアごとに異なります。ビジネス街であれば法人顧客が多く、住宅街であればリテールサービスの売上比が高いなどの特徴が出てくるのです。特に地域密着型金融では、こうした各エリアの特徴に沿う形での取り組みが求められています。
そうした中で限られた人材で最大限のパフォーマンスを行い、成果をあげるには、個人の強みや弱みをしっかりと把握しておくことが大切です。タレントマネジメントで行員一人ひとりの適性や保有スキル、研修履歴などを把握することで組織の力の最大化がはかれます。それによって地域との連携がより強くなり、ひいては売上の貢献につながっていきます。
横浜銀行でのタレントマネジメント実践事例
行員の見える化
約1万人弱の行員を抱える株式会社横浜銀行は、経営戦略と人事戦略がお互いに相乗作用を発揮し、より高い生産性を実現していけるようタレントマネジメントを導入し、取得した資格やこれまでの異動履歴、研修受講履歴やそのレポートなど、集約されたデータを目的別に俯瞰することが可能になりました。組織内に蓄積されていた膨大な数の人事データをすべて一元化し、見える化することによるメリットは計り知れません。
サクセッションプラン(後継者育成)
また株式会社横浜銀行は、そうしたデータの一元化や人事異動などの人事施策だけではなく、「経営戦略の実現に必要な人財を確保する」という目標を掲げています。採用から育成、配置までを組織横断で考えていくことで人財ポートフォリオを見える化し、どんな人財が足りないのか、育成のためにはどうすればいいのかまで考察し施策に落とし込んでいます。
このように株式会社横浜銀行では人事データのデジタル化にとどまらず、経営戦略と連動した人材育成など具体的な人事施策につなげていくタレントマネジメントを行っています。
京葉銀行でのタレントマネジメント実践事例
株式会社京葉銀行でも、同じくタレントマネジメントによる人材活用を始めています。
従業員満足度調査
従業員満足度調査は、近年重要性が高まっている「社員エンゲージメント」の測定・向上を目的として実施されます。
一般的には仕事のやりがいや職場環境への満足度を回答する設問を作成し、全体的な傾向や改善が必要な項目を洗い出します。
行員の人材データと満足度調査の結果を照らし合わせることで、行員の適性によって活躍しやすい職種を分析するなどの活用が可能になります。
※eNPS℠はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの役務商標です。
サンクスポイント
企業と行員の間だけではなく、行員同士のエンゲージメントを高めることも重要です。
「サンクスポイント」を代表とするコミュニケーション活性化施策は、従業員同士の感謝を気軽に伝え合うことでコミュニケーションを促進する目的で実施されます。
こうした社内企画は従来紙のカードを使って行われていましたが、ITシステムを活用することで手軽に実施できるだけではなく、コミュニケーションが少ない組織や組織同士のつながりを可視化することができるようになります。
地方銀行で進むタレントマネジメント施策
その他、地方銀行で行われているタレントマネジメントには以下のような施策があります。
組織と人材のマッチング
蓄積されたスキル、資格、業務経験等の人材情報から、組織に必要な人材をマッチングができることによるミスマッチ防止やより人材活用を最大化することが可能になります。また現在だけでなく、今後マッチする人材プールを把握できることで必要な人材育成や採用など、中長期目線での要員計画に役立てることも可能にします。
行員の自律的成長支援
金融業界は変化するビジネスに対応するべく、スキルの見える化が大きなトレンドになっており、スキルに応じた人材育成の見直しも急務となっています。また同時に社員が自律的に成長できる仕組みも必要とされており、社員が目指したいキャリアに対するギャップを可視化し、自身で研修の受講や資格取得を意欲的にできる仕組みづくりを実践されています。これにより人事や経営が存在するマッチ人材を活用するだけでなく、将来に向けた次世代人材の育成を促進することが可能になります。
人事業務のDX推進
人事部門ではどうしても資料作成や集計業務に時間を取られがちです。こうした業務はバラバラのファイルを統合したり、どの情報が正しいかを逐一検討しなければならないことがひとつの阻害要因となっています。タレントマネジメントシステムを導入することで、自動集計やグラフ化、ダッシュボードの構築と共有などが可能になり、大幅な業務効率化によるDXが期待できます。
タレントマネジメントならタレントパレット
以上のように、地方銀行はタレントマネジメントを導入し様々な取り組みを始めています。
「タレントパレット」は金融業で最も導入されているタレントマネジメントシステム(※)で、人材データの一元化はもちろん、人事評価のデジタル化や人事異動シミュレーション、資格管理など地方銀行の人事戦略施策に必要な機能が搭載されています。
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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「HR Techクラウド市場の実態と展望」2020年度