タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、社員(タレント)が持っているスキルや資質を最大限に発揮するための採用活動や人員配置・育成を指す言葉です。SHRM(米国人材マネジメント協会)、ASTD(全米人材開発機構)、リクルートワークス研究所など、複数の機関が、さまざまな定義付けをしています。
タレントマネジメントシステムとは
タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントを効果的に進めるために、人材に関する情報やデータを一元管理するシステムです。比較されることが多い「人事評価システム」は、勤怠状況や給与など、より広い情報を取り扱うため、タレントマネジメントシステムとは性質が異なります。
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タレントマネジメント導入の目的
タレントマネジメントを導入する際は、目的を決めることが大切です。ここではタレントマネジメントの目的を4つ、解説します。
評価業務を効率化するため
タレントマネジメントの目的のひとつとして、評価業務の効率化が挙げられます。社内の人材評価をまとめて実施して、情報を一元管理できるため、管理職の負担が軽減されます。
人材を育成するため
タレントマネジメントにより、社員一人ひとりのデータや全体的な傾向をまとめたデータを蓄積することで、人材育成の効果が高まります。必要に応じて、別のプログラムを社員に与えて経験を積ませる手法も用いられています。
人材を戦略的に配置するため
人材とポジションのマッチングにより、社員一人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮することも目的のひとつです。適材適所に人員を配置することにより、個人にも会社にも最大の成果がもたらされます。
離職を防ぐため
上司や会社の主観による人事評価ではなく、適切なシステムで公正な評価をすることで、社員の満足度が向上し、評価制度に対する不満を減らせます。結果として、社員の離職防止にもつながり、定着率がアップします。
タレントマネジメント導入が注目される背景
近年、なぜタレントマネジメントに注目が集まっているのでしょうか。ここでは、タレントマネジメントが必要とされる背景について解説します。
労働力が不足している
日本では少子高齢化が大きな社会問題のひとつとなっています。その影響で国内の労働人口が減少し、労働力全体が低下しています。そのような状況から、会社がパフォーマンスを伸ばしていくために、人材の有効活用をする方法が求められています。
働き方改革が求められている
政府が進めている働き方改革においては、長時間労働の是正が求められています。限られた時間のなかで最大の成果を挙げるためには、タレントマネジメントが有効です。
タレントマネジメントと関連性のある「エンゲージメント」とは、会社に対する社員の愛着心を意味する言葉です。社員のエンゲージメントを向上させることで、生産性や利益率の上昇が期待できます。
グローバル化が進んでいる
日本で慣例化されている人事評価システムによって、世界的規模での競争についていけなくなる可能性があります。従来のシステムから切り替えることで競争力を強め、個々の力を活かす環境をつくるためにタレントマネジメントが必要とされています。
HRテクノロジーが進化している
人材に関わる評価基準は、これまで曖昧なものでしたが、HRテクノロジーの進化で、人事分野の定量化が可能となりました。これにより、タレントマネジメントが活かされる土台が整いつつあります。
タレントマネジメントシステムの種類
タレントマネジメントシステムには、目的別の種類があります。ここでは、代表的な4つのタイプについて解説します。
多目的タイプ
多目的タイプは、評価や育成など、人事に関わる事柄すべてに活用できるタレントマネジメントシステムです。さまざまなデータを多角的に切り取れるため、全体的な管理に役立ちます。
評価業務支援タイプ
評価業務支援タイプは、業務の効率化に特化したタレントマネジメントシステムです。紙ベースの管理をやめたい場合や、事務処理をより効果的に進めたい場合に用いられます。
目標管理支援タイプ
目標管理支援タイプは、社員の育成に力を発揮するタレントマネジメントシステムです。社員一人ひとりが具体的な目標を立て、その目標を達成するために何をすべきなのかという点を明確にします。
人材活用支援タイプ
人材活用支援タイプは、データや客観的な事実に基づいた人事評価の支援をするタレントマネジメントシステムです。それぞれの社員の特性を把握することにも適しています。
タレントマネジメント導入の流れ
タレントマネジメントは、単に「有能な人材を選んで育成する」という取り組みではありません。導入にあたっては、段階を経て着実に進めることが重要です。ここでは、タレントマネジメントの導入手順について解説します。
1.導入目的を明確化する
必要とされる人材は、企業の経営戦略や理念によって異なります。そのため、タレントマネジメントの導入にあたっては、「何のためにタレントマネジメントを実施するのか」を明確にする必要があります。目的を明確化せずに人材を育成・採用すると、十分に活かすことができません。
導入目的としては「売上を増やしたい」「会社や組織の課題を解決したい」「生産性を高めたい」などが挙げられます。
2.タレントを把握する
導入目的が明確になり、組織や部署が求める人物像が決まったら、それに適した人材を探したり、育成したりする必要があります。
人材を発掘するためには、社員に関する情報を収集してデータベース化しましょう。必要な情報とは、社員のプロフィール、勤務状況、経歴、保有資格、技術、実績、キャリアプランなどです。
3.育成・採用計画を立てる
目的に適した人材を選び出しても、すぐに業務を遂行できない場合もあります。たとえば、選ばれた人材に十分な知識やスキルがあるものの、新しい業務に資格が必要であれば、資格を取得させなければなりません。資格取得までの期間を含め、実際に業務に就くまでの育成計画を綿密に立てましょう。
社内の人材が不足しているなら、社外の人材を採用することも有効です。その場合も、新卒・中途、採用人数、採用コスト、採用時期などを盛り込んだ採用計画を策定します。
4.タレントを配置・活用する
人材の配置は、人材に関するデータや育成計画に基づいて、適材適所であることが重要です。また、配属先の管理・責任者は、人材がスキルや能力を発揮しているか、モチベーションを維持しているか、成長がみられるかを、常にチェックする必要があります。
配属された人材が必要とされるスキルに、現状のスキルが追いついていないケースも少なくありません。現場の管理・責任者は、スキル不足が解消されるように指導をします。
5.モニタリングをする
タレントマネジメントにおいては、定期的なモニタリングの実施が重要なポイントです。配属された人材の育成は順調に進んでいるのか、設定した目標に対してどのくらい達成できているのかといった点をチェックします。モニタリングの結果により、必要に応じて育成計画の見直しや調整をします。人材の成長に対して育成計画のスピードが速すぎる場合には、前のステップに戻るといった措置も必要です。
6.評価・フィードバックをする
モニタリングの結果に基づいて、配属先の管理・責任者や上司が人材を評価し、本人にフィードバックをします。公正な評価をして、業績や人事に適切に反映させ、人材のモチベーション向上にもつなげることが重要です。
フィードバックの際には、結果を伝えるだけではなく、本人からのヒアリングも行います。仕事に対する考え方や、思い描いているキャリアプランなどを確認しましょう。
タレントマネジメント導入の注意点
タレントマネジメントを円滑に導入し、成果をあげるための注意点について解説します。
導入する目的を社員に周知する
タレントマネジメントを円滑に導入するためには、全社員が導入目的や内容を理解していなければなりません。新しい制度の導入は、人事や管理部門に労力や負担がかかり、現場においては業務の流れが変わる可能性があります。
そのため、社員に対して導入前に周知する取り組みが必要です。社員向けの説明会、研修を実施し、運用マニュアルやシステムの操作マニュアルなども整備しましょう。
「手段の目的化」に陥らないようにする
タレントマネジメントは、課題解決や事業拡大といった目的を達成するための「手段」です。しかし、運用しているうちに、タレントマネジメントの実施そのものが目的になってしまう場合があります。
人材育成の状況、目標達成の進捗、成果などに目を向けず、決められた作業をこなすだけでは、会社や組織の成長は望めません。タレントマネジメントの導入目的と、目指すゴールを常に意識して取り組むことが重要です。
人材データの管理を徹底する
タレントマネジメントは、収集・整理したデータをもとに人材を選定し、配置・育成へと進めていきます。長期的に運用する制度であるため、人材データの更新が欠かせません。社員の入退社、異動、昇給・昇格のほか、資格を取得した場合も情報の更新が必要です。常に最新のデータを保持できるように、情報収集やアップデートの方法など、データ管理を徹底しましょう。
タレントマネジメントシステムを選ぶ際の比較ポイント
タレントマネジメントシステムを選ぶ際にチェックすべき7つのポイントについて解説します。
使いやすさ
タレントマネジメントシステムを選ぶうえで重要なのは、使いやすさです。リリースされているシステムによって、デザインや使用感が異なるため、自社に合ったものを選びましょう。
自社の人事評価制度への対応
人事評価制度にはさまざまな手法があり、会社によって採用している方法も異なります。導入を検討しているタレントマネジメントシステムが、自社の人事評価に対応しているかを慎重に見極めましょう。
柔軟性・拡張性
タレントマネジメントシステムは、システムが決まっているもの、あるいはカスタマイズが可能なものなど、内容が異なります。組織の変化に対応できるように、システムの柔軟性や拡張性も確認しましょう。
サポート内容
タレントマネジメントシステムは、リリースしている会社によって、導入後のサポートの有無や体制はさまざまです。後々のリスクを回避するためにも、導入前にサポート範囲を確認することが重要です。
分析機能の有無
タレントマネジメントシステムを用いて、人事評価に絡めた企画立案や経営戦略なども進めたい場合には、より高度な情報分析ができるシステムがおすすめです。人事情報の分析が可能かを確認するとよいでしょう。
適切な機能の有無
タレントマネジメントシステムは、目的に応じて先述した「多目的タイプ」「評価業務支援タイプ」「目標管理支援タイプ」「人材活用支援タイプ」に分けられます。社内で重視したい機能でシステムを選ぶと、導入後の齟齬もありません。
費用対効果
タレントマネジメントシステムの導入に際しては、初期費用や利用料金など、コスト面を検討することも大切です。導入によって何が得られるのかといった費用対効果も、考慮しましょう。
タレントマネジメントの導入事例
ここでは、タレントマネジメントシステムの導入事例として、3社の取り組みを紹介します。
KDDI株式会社
KDDI株式会社は、新たな働き方の変革を目指して、タレントマネジメントシステムの活用に取り組んでいます。システムを導入することによって、社内のコミュニケーションが活性化し、一人ひとりの社員がより高いパフォーマンスを発揮できる体制の構築に成功しました。
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、数多くの社員を有する大手企業ということもあり、人材に関わる情報が一元化されていないという課題を抱えていました。タレントマネジメントシステムの導入により、情報を一つに集約し、効率よく情報を運用するための体制を実現できました。
日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスは、国内だけではなく海外にも視点を向けて、グローバルな取り組みを推進しています。そのために、グローバル経営に携わる人材の候補者を、100人から200人に増やすことを目指しています。タレントマネジメントシステムで人材データを可視化させ、あらゆるデータを紐付けする管理体制を整えています。
多目的型タレントマネジメントシステムの活用方法
評価や育成など、多岐にわたり活用できる多目的型タレントマネジメントシステムの代表的な機能は、社員の顔によって情報をまとめる機能や多角的なデータ分析機能などです。
前者は、文字による情報だけではなく、顔もデータに含めることによって、社員の特徴を対外的にわかりやすく示しています。後者は、スキルだけではなく、考え方や希望なども内包し、データ分析をする機能です。また、人材データの可視化に特化した機能もあります。
評価業務支援型タレントマネジメントシステムの活用方法
評価業務支援型のタレントマネジメントシステムの機能としては、目標設定や個別評価項目の設定、評定値算出、面談といった、人事評価の流れを、クラウドで一括してできる機能が挙げられます。
また、クラウドを活用して、Excelなどを用いている従来の人事制度やワークフローを、自動システム化できる機能、社員数100名以下の管理に特化した機能などもあります。
目標管理支援型タレントマネジメントシステムの活用方法
社員の育成に焦点をあてた目標管理支援型タレントマネジメントシステムには、目標管理フレームワークを簡単にシステムに反映できる機能があります。この機能により、社内の各部署や社員一人ひとりの関係性が体系的に示されて、個々の目標がわかりやすく明示されます。
また、多彩なアプリのなかから、自社に必要なアプリを選択して活用できる機能もあります。
人材活用支援型タレントマネジメントシステムの活用方法
社員が高いパフォーマンスを発揮できるようにする、人材活用支援型マネジメントシステムには、社員のデータをさまざまな観点から可視化する機能が備わっています。経歴や保有資格、考え方、対外的・対内的な評価などを一元管理できるため、最適な配属先の検討に役立ちます。
また、顔写真付きで情報を管理する機能や、海外での事業展開に特化した機能などもあります。
まとめ
この記事では、社員のパフォーマンスを伸ばし、会社の業績を上げていくために有用な、タレントマネジメントシステムについて解説しました。タレントマネジメントシステムの種類や活用方法、比較ポイントを、ぜひ参考にしてください。
タレントマネジメントシステム「タレントパレット」は、会社の人事戦略やタレントマネジメントへの取り組みを支援しています。大手企業をはじめ、数多くの導入実績を誇り、コンサルティングの知見も積み重ねています。
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