こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
企業で人材を育成させたいならば、人材育成ロードマップの作成がおすすめです。人材育成ロードマップを作れば、育成の目的から最適な育成方法・手順までがわかり、効率良く質の高い人材育成に取り組めます。
本記事では、人材育成ロードマップの作り方や運用のポイントを解説しましょう。人材育成の具体的な手法と運用事例も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
人材育成ロードマップとは
人材育成ロードマップとは、従業員を理想的な人材に育てるための予定表であり、理想の人材に育てるための道筋や手順を示します。
自社にとって理想の人材に育てていくためには、最終的にどう育ってほしいのか目標を定めておかなければなりません。また、目標達成に向けた育成方法などの検討が必要です。
さらに優秀な人材を育てるための再現性を保つためにも、人材育成ロードマップの作成が求められます。
人材育成ロードマップを作る目的
人材育成ロードマップを作成すれば、関係者同士で計画内容や問題点を共有できるようになります。つまり、人材育成を成功するまでの道筋をイメージしやすくすることがロードマップを作成する目的です。そこで、主な目的について詳しく解説します。
【目的1】役割に沿ったキャリアの明確化
職務によって求められる知識やスキル、さらに必要となるレベルは異なります。そのため、従業員の役割に合わせて教育することが大切です。
ロードマップを作成すれば、職務ごとに「どのくらいのレベルの知識・能力を身につけてほしいのか」「どのように身につけてもらうのが良いのか」などキャリアを明確化できます。
【目的2】現場と経営層の意思を統一する
人材育成ロードマップには、現場と経営層の意思を統一させる役割があります。人材育成の目標は、どうしても抽象的なものになりがちです。
そのため、経営層が考える理想像と実際の現場で求められる人物像でミスマッチするケースも珍しくありません。最終的に育てたい人物像のミスマッチを防ぐためには、ロードマップを活用して人材育成計画を練り、共通の認識を持つことが重要です。
【目的3】人材育成の質を高め教育の進捗を確認する
人材育成ロードマップを作成すると、人材育成を体系的かつ効率良く実行できるようになります。必要な知識やスキルをどんな方法でいつ身につけていくのか、その道筋を整理しながら人材育成計画を立てることが可能です。
年次や役職ごとに身につけるべき知識・スキルを明示すれば、従業員の自己研鑽を促せるでしょう。結果的に人材育成の質が高まり、さらに教育の進捗度も確認しやすくなるメリットもあります。
【目的4】長期的な視野を持ち人材育成のブレをなくす
ロードマップを作成するには、長期的な視野で計画を立てます。また道筋がしっかり作られるので、人材育成計画の再現性を担保できる点がメリットです。
長期的な教育が実行される最中に、もし担当者が変わってしまっても、明確な計画によって高い質を維持しながら人材育成を継続できます。
人材育成ロードマップの作り方
人材育成ロードマップを運用したいならば、作る手順を事前に把握しておくことが大切です。作成のステップを7つに分けて解説するので、ぜひ参考にしてください。
【STEP1】企業が求める人材を明確にする
身につけるべきスキルや育成に必要な期間の目安など、具体的に育てたい人材のイメージを決めましょう。経営課題と比較対照して、どんな人材が必要なのか考えることが重要です。また現在のニーズばかりにこだわらず、今後の将来も必要不可欠な人材であることを意識するのも大事なポイントです。
経営目標やビジョンも考慮して検討するので、議論は経営層も交えて行うのが望ましいです。考えた人材が現場で必要となるのか確認しましょう。現場が求める人材と相違があれば、意見を取り入れながら内容を見直してください。
【STEP2】企業理念の作成・再考
企業理念は、企業が重視する価値観や考え方を示します。企業活動は定めた理念に基づいて行われるため、企業理念が決まっていないと人材育成の実施も困難になります。
企業理念がない場合には、理想的な人物像に合わせて作成しましょう。すでに企業理念があり、理想の人物像とズレがあれば、人物像に寄せる形で企業理念を見直してください。
【STEP3】短期・中期の目標を設定する
次に、人材育成における短期・中期の目標を考えていきましょう。最終地点に到達するまでに細かい目標を決めておけば、育成の進捗度を計りやすくなります。教育を受ける従業員も育成がどこまで進んでいるのか、把握することが可能です。
人材育成は長期的に行われるため、先の長い最終地点ばかり見てしまうと従業員は成長の実感が湧かず、モチベーションもダウンしてしまうでしょう。しかし、短期・中期の目標があれば達成するたびに成長を振り返ることができ、モチベーションの維持につながります。
【STEP4】現状を把握しておく
人材育成ロードマップを作成する際は、社内の現状を把握することも重要です。社内で行われている業務は多岐にわたるため、誰がどの仕事を担っているのか把握しなければなりません。
その上で従業員にヒアリングを行い、現場での課題を洗い出します。ヒアリングはミドル層から若手まで幅広く行うことが大切です。そして、表面化した課題が従業員の育成で解消できるかどうかを検討しましょう。
【STEP5】必要なスキルの洗い出し
最終目標やSTEP3で設定した短期・中期の目標を達成するためには、どのようなスキルが求められるのか洗い出していきます。まずは必要性を感じるスキルを思い付くだけリストアップしてください。
リストアップしたスキルから要らないものを削っていきましょう。取得するスキルが偏ってしまうのを避けるために、洗い出しは担当者だけではなく、複数人で精査するのが望ましいです。
求めるスキルがある程度まとまってきたら、優先順位を決めて整理します。いつまでに取得するのか期限も設定しておきましょう。
【STEP6】育成方法の設定
現状や身につけさせるスキルが明確になったら、続いては育成方法を検討してロードマップに落とし込んでいきます。育成方法には様々な手段があるため、スキルに合わせて選ぶことがポイントです。
また、人材育成では費用や現場への負担が生じることも念頭に置いておく必要があります。そのため、費用対効果や現場負担などを考慮しながら、どのような手段でスキルを身につけさせるのか決定しましょう。
【STEP7】現場への定着を促進する
人材育成ロードマップが完成したら運用となりますが、その前に現場へ定着させる必要があります。今までの育成方法と大きく変わる場合、現場で新しいやり方が定着しないと、せっかく作成したロードマップを活用しきれない可能性が高いです。
また、新しいやり方に困惑する従業員もいるでしょう。現場の混乱を避けるためにも人材育成ロードマップの活用を現場に説明しなければなりません。作成時から現場にも説明をしておけば、早期に理解を促すことが可能です。
人材育成ロードマップの運用ポイント
作成した人材育成ロードマップを上手く運用していくためにも、常に意識しておきたいポイントがありますので、詳しく解説します。
金銭的・人的コストを考慮する
人材育成ロードマップの作成や運用では、金銭的コストと人的コストへの考慮が必要です。理想の人材になってもらうには様々なスキルを身につけたり、既存のスキルを磨き上げてもらったりする必要があります。
育成方法によっては大きな費用がかかるため、金銭的なコストが負担になってしまうでしょう。また人材育成は中間管理職に負担が集中しやすいため、その点も考慮して計画を立てていかなければなりません。
「中堅の従業員に指導を任せる」「金銭的コストと相談しながら現場の負担を軽減できる教育方法を選択する」など、あらゆるコストを考慮して整備・運用していきましょう。
時間を意識して運用する
人材育成ロードマップは、時間を意識して作成・運用することも大事です。作成の時点から最終目標まで何年で達成する計画にするのか定めておく必要があります。「そのうちできればいい」という考えで運用してしまうと、ロードマップの存在意義がなくなってしまいます。
そのため、最終目標の達成期間と細かい目標ごとにしっかり期限を設け、計画的に人材育成を進めていくことが大切です。また、運用中は進捗速度にも配慮しましょう。予定よりも進捗が遅い場合は、設定を見直しましょう。
評価制度を構築して人材育成を浸透させる
ロードマップを活用した人材育成を浸透させ、定着させることも大切です。組織に浸透させていくためにも評価制度を構築し、教育制度と連携させると良いでしょう。
また、昇格基準に人材育成の実績などを取り入れると、従業員は主体的に学ぼうとする意識が高まります。このように、ロードマップを使った人材育成が定着する仕組みができれば、スムーズに運用していくことが可能です。
人材育成ロードマップの作成だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
人材育成ロードマップの作成では、現状を把握して求めるスキルを明確にしなければなりません。また、運用後はどのくらいスキルが身についたか、進捗具合の確認も必須です。スキルや経歴など従業員に関する様々なデータを管理・分析ができれば、人材育成ロードマップの作成や運用もスムーズになるでしょう。
『タレントパレット』では、従業員のスキルや育成履歴などあらゆる人事データを一括管理し、分析することが可能です。システムに集約されたデータは人材育成や人事評価など様々な目的に活用できます。
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人材育成の具体的な方法や手段
人材育成のやり方にも様々な種類があり、代表的なものとして以下の方法が挙げられます。
- OJT
- OFF-JT
- MBO
- ジョブローテーション
- eラーニング
- SD
- ティーチング・コーチング
- メンター制度
それぞれの育成方法について詳しくご紹介しましょう。
OJT
OJTは「On the Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称で、実際の業務を通じてスキルを習得する手法です。業務に取り組みながら行うため、現場への負担を少なくでき、気づいた時にその都度指導ができるメリットがあります。
ただし、担当者が指導する範囲でしかスキルを身につけられない可能性があり、万能な育成方法とは言い難いでしょう。また、難しい業務は担当者が先にやってしまうケースもあり、難易度が高い業務をこなせるようになるまで時間がかかる場合もあります。
OFF-JT
OFF-JTは「Off The job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称で、研修やセミナーなどを受けてスキルを習得していく手法です。研修を実施するため、一度に大勢の従業員に対して指導が行えます。
注意点は、研修で習得したスキルを活用できる場所がないと、実務と結びつかない点です。実務と関連する研修を実施し、また実際にスキルを活かす場を提供する必要があります。
MBO
MBOは「Management by Objectives(マネジメント・バイ・オブジェクティブズ)」の略称で、目標管理制度とも呼ばれています。従業員ごとに目標を設定し、どのくらい達成したのか自己評価する手法です。
企業ではなく自ら評価を行うため、成長の実感が湧きやすく、モチベーションを保ちながら人材育成に取り組めます。
ジョブローテーション
ジョブローテーションは、定期的な配置転換により従業員の能力を開発していく手法です。様々な職種を経験できるので、幅広いスキルを身につけられます。
「従業員の成長促進」や「特定のポジションの育成」など、明確な目的を持った上で行われるため、教育制度の一環として採用されるケースが多いです。
eラーニング
eラーニングはデジタルデバイスを使って行う学習方法で、時間や場所に縛られず学習できます。また受講管理機能を持つeラーニングシステムが多いため、教育担当者の負担を軽減できる点もメリットです。
ただし、スキルの習得に偏りが生じやすい点に注意しましょう。システムを自社に合わせてカスタマイズすると、導入にコストが高くつく点もデメリットです。
SD
SDは「Self Development(セルフ・デベロップメント)」の略称で、自己啓発を意味します。従業員個人が業務に求められる学習を実施する手法です。学習方法も多岐にわたり、社内外セミナーへの参加や書籍による独学、資格の取得などが挙げられます。
従業員の自己啓発を促すために、資格取得のために書籍代や試験料を補助すると良いでしょう。資格の取得でインセンティブや人事評価の対象にする方法もおすすめです。
ティーチング・コーチング
ティーチングは、経験の浅い新人に対して先輩従業員が仕事の進め方や自分の知識・ノウハウを提供する手法です。担当者に一方的な指導となるため、明確な答えを持った上で行う必要があります。1対1で行われるだけではなく、一人の担当者がセミナー形式で教育することも可能です。
一方コーチングは、最初から1からすべて教えるのではなく、ヒントを与えて自ら答えを見つけ出してもらいます。1対1で指導を進めていき、担当者は新人が自力で答えを出せるようサポートしていくことが大事です。
メンター制度
メンター制度は、経験豊富な先輩従業員が若手従業員に対して個別にサポートする手法です。指導する従業員は「メンター」、指導を受ける従業員は「メンティー」と呼ばれます。
メンターは、他部署の従業員が担当する場合が多いです。その理由は、同じ部署の人間には話しづらいことも相談しやすいからと言われています。ただ仕事を教えるだけではなく、精神面のサポートもメンターの役目です。
階層別の人材育成ロードマップ作成ポイント
人材育成ロードマップは新人だけではなく、若手や中堅から管理職まで幅広い従業員の育成に活用できます。しかし、実際に運用する際はそれぞれの階層にマッチしたロードマップの作成が必要です。そこで、階層別に人材育成の課題とロードマップの作成ポイントを解説します。
新人
新人の場合、やりがいを感じられるかどうかが重要なポイントとなります。やりがいを感じてもらえるように、座学だけではなく実践も組み合わせると良いでしょう。
また、モチベーションを保つためにしっかり期間を設定することも重要です。2週間のスパンを目安に基礎から指導していきましょう。育成方法にはOJTやメンター制度、eラーニングがおすすめです。
若手や中堅
若手や中堅の従業員は、会社の将来を担う人材です。そのため、人材育成における最終目標は、次世代のリーダーを育てることになります。
おすすめの育成方法は、様々な経験ができるOJTやジョブローテーションです。また、メンター制度を採用している場合、新人の指導担当を任せることでメンター個人の成長を促せます。
中途採用
即戦力となる可能性が高い中途採用でも、自社のやり方に慣れてもらうためにはある程度の教育が必要です。中途採用の従業員に対しては、企業全体が組織に馴染んでもらえるようにサポートしていきましょう。
おすすめの育成方法は、メンター制度やOJTです。他にも効果的に従業員を戦力化・定着させるために、人事部によるフォローアップ研修を実施するのも良いでしょう。
管理職
管理職はすでに多くのスキルを身につけているので育成は不要に思われますが、成長の機会を与えることでモチベーションを高められます。
日々の業務が忙しい管理職には、MBOやSD、eラーニングがおすすめです。これらの手法であれば、自身で進捗管理やスキマ時間を使って取り組めるため、業務への負担を軽減できます。
人材育成ロードマップの運用事例
人材育成ロードマップを活用している企業は、どのように運用しているのでしょうか?本章では、3社の運用事例をご紹介します。
【事例1】既存カリキュラムの最適化に取り組んだA社
A社は、以前からお金と時間を十分にかけて研修を実施していました。しかし、その効果がはっきりと表れなかったことから、既存カリキュラムを最適化するためにロードマップの見直しを行たのです。
年次ごとに求められるスキルレベルを決め、獲得したスキルを可視化する仕組みを構築しました。ロードマップの見直しにより、その年次では不要なスキルまで取得するプログラムとなっていて非効率であることに気づけたのです。
【事例2】DX専用のチームを設立したB社
B社は、デジタル化に伴ったスキルを習得することを目的に専門チームを作り、事業横断で人材育成を推進しています。ハイレベルなDX人材を育てるために、幅広いスキルを持つ人材を育成対象として選んでいるのです。ロードマップには必要なスキルを落とし込むため、人材の選定にも役立つでしょう。
またDXの教育を受けながら業務に携わることで、効率良く人材の熟練度を上げる工夫もしています。
【事例3】新人のつながりを形成して力をつけたC社
C社は、新人同士の交流も目的に合宿研修を実施することが毎年の恒例となっています。しかし、新型コロナウイルスの影響で座学研修しか実施できず、新人同士の交流がないままの人員配置が行われました。
そこで新人同士のつながりを形成するために、ロードマップに新たな施策として「ボッチャ」を取り入れています。ボッチャとは、年齢や性別、経験など無関係に楽しめるチームスポーツです。スポーツを通じて結束力を高めると同時に、自ら考え・行動する力を養うことができました。
人材育成ロードマップを作成して理想的な人材を育てよう
人材育成は明確な目標を定め、適切な方法と手順で実施することで効果が発揮されます。しかし、絶対的な正解がないため、無駄な施策を講じてしまうケースも多いです。
本来の目的からずれた人材育成を避けるためには、人材育成ロードマップが役立ちます。ロードマップを作成し、従業員を効率的に理想の人材に育てていきましょう。
まとめ
今回は人材育成ロードマップの作り方や運用のポイントなどをご紹介しました。ロードマップがあれば、経営層と現場の意識を統一させて、人材育成に取り組めます。理想の人物像や現状の課題などをしっかり把握し、長期的な視野を持って緻密に計画を立てていきましょう。
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