部下の退職は珍しくない
部下の退職は珍しいことではありません。ここでは、退職が珍しくなくなった理由を解説します。
離職を検知する7つのアプローチとは?データ活用により離職防止を実現
近年は退職のハードルが下がっている
上司の立場からすると、部下が退職することで動揺したり困ったりするかもしれません。しかし、近年では退職のハードルは下がっています。特に、若年層では転職する割合が高いといわれており、転職することがスタンダードになっている現状です。また、欧米では転職が当たり前という傾向があり、日本にもその流れが来ています。
部下の退職に対する心構え
退職のハードルが下がった今、上司としても部下が退職するかもしれないという心構えが必要です。たとえば、部下から退職を申し出られた際のプロセス、対応などを考えておくとよいでしょう。事前に対応やプロセスなどを検討して準備しておくことで、いざというときに慌てずに対応できるようになります。
部下が相談なしに退職する理由
部下が相談なしに突然退職を申し出る理由は、大きく分けて3つです。ここでは、各理由を詳しく解説します。
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人間関係のトラブル
人間関係のトラブルと理由として、退職する人は多い傾向です。特に上司が部下に与える影響は大きく、上司との関係がうまくいかない、自分の能力や成果を評価してくれないという場合、不満が溜まりやすくなり退職を考えるという人も少なくありません。部下と良好な関係を築くように適切なコミュニケーションを取りましょう。
待遇・評価に不満がある
給与や労働条件などへの不満から退職を考えるケースも、よくあるパターンです。労働に対して納得感のある待遇が得られない、正当に評価されないなどと感じることで、退職につながる可能性があります。休みの少なさや残業の多さなども退職を検討する理由になるでしょう。
仕事にやりがいがない
仕事にやりがいと感じられない場合、退職を考えやすくなります。仕事を続けるうえで、モチベーションは重要なポイントです。特に、上昇志向があり仕事に熱心な人はやりがいを重視する傾向にあり、やりがいが得られないと転職を検討するかもしれません。また、人の役に立っていると実感できない、仕事に誇りが持てないといった理由も考えられます。
部下が相談なしに退職する前兆
部下が相談なしに退職する際、どのような前兆があるのでしょうか。ここでは、7つの主な退職の前兆について詳しく解説します。
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業務への意欲が低い
業務に対する意欲が下がっていると、退職を考えているかもしれません。特に、以前はモチベーションが高く、仕事への熱意があった場合には注意が必要です。退職や転職先のことを考えて、仕事に集中できなくなっているケースもあるでしょう。また、指示に従うだけで主体性がなくなった場合も退職の前兆として考えられます。
ネガティブな発言が多い
仕事や人間関係に対する愚痴、ネガティブな発言などが増えると、モチベーションが低下している可能性が高いでしょう。特に、これまでは愚痴や、ネガティブな言葉をあまり言わないタイプだった場合には要注意です。しかし、仕事や人間関係などのすべてに不満がないということはほとんどないため、退職につながる発言かどうかの見極めが必要になります。
遅刻・欠勤が増える
遅刻が多いと仕事へのモチベーションが低下したり、メンタルに問題を抱えていたりする場合があるでしょう。また、欠勤が多いという場合には、休みを利用して転職活動をしているケースも考えられます。有給休暇を退職前にすべて使い切ってしまいたいと考えて、有給を積極的に消化するパターンなどもあるようです。
コミュニケーションが減った
退職を考えていると、コミュニケーションが減少する傾向にあります。以前は明るく挨拶をしていたのに、態度が暗くなったり、声や返事が小さくなったりしている場合には気をつけましょう。また、これまでは積極的に会話に入ってきていたのに会話に参加しなくなった、必要最低限の仕事の話しかしないという場合も要注意です。
仕事を他者に任せる
仕事を同僚や部下などに任せるなど、自分の仕事を減らしている場合は退職する可能性があります。転職活動を効率的に行うには、時間の余裕が必要です。そのため、仕事を他者に任せて業務負担を減らし、転職活動に活用しているかもしれません。また、転職を考えていると新しい仕事を引き受けない傾向もあります。
集まりへの参加が減った
飲み会や懇親会などの集まりに参加しなくなる場合も注意が必要です。もともと飲み会への参加に積極的でないケースもありますが、これまでは参加していたのに急に参加率が悪くなる場合があります。退職の決意が固まると、周囲との仲を深める必要がないと考え、飲み会や懇親会などへの参加率が悪くなるでしょう。
見た目が変化する
服装や髪型などの見た目に大きな変化がある場合には、転職活動をしている場合があります。業界によって求められる見た目やスタイルは異なることから、別業界や業種への転職活動のために見た目を変えている可能性も少なくありません。また、退職を決意した場合評価を気にしなくなって、身だしなみに気を遣わなくなるケースもあるようです。
退職希望の部下は引き止められる?
退職希望の部下をどうにか引き止めたいという上司も多いでしょう。退職を希望する部下を引き止めることは可能なのでしょうか。
退職届を提出されると手遅れ
退職届の提出は、退職の意志が固まっていることを表すため、引き止めることは難しいでしょう。書類にして提出することで後戻りできなくなるため、その点も考慮して強い意志で提出してきたと考えられます。そのため、この段階で引き止めようとしても断られる可能性が高いでしょう。
退職届が提出されていなくても注意
退職届が提出されていなくても、退職に対する決意が固まっているケースもあるため注意が必要です。たとえば、上司に「退職を考えている」と口頭で伝えた時点で、退職届提出と同程度の決意や意思を固めているケースも珍しくありません。退職届の提出がなくてもすでに意志が固まっており、引き止めても手遅れであることが多いようです。
相談なしで部下に退職を切り出されたら?
事前の相談なしに、部下から突然退職を切り出された場合にはどうすればよいのでしょうか。ここでは、3つの対処法を解説します。
まずは部下の話を聞く
まずは、部下の話をしっかりと聞きましょう。どのような不満があるのか、退職したい理由は何なのかを部下からヒアリングして、部下を理解することが重要です。ヒアリングをする際は部下の話を遮らないことを意識しましょう。聞きたいことがあってもまずは最後まで部下の話を聞くことが大切です。
引き止められる可能性を考える
退職理由によっては、引き止められる可能性もあります。たとえば、人間関係に問題があってメンタル的につらい、仕事内容が合わないなどの場合には、配置転換をすることで解決できるケースもあるでしょう。部下の話に耳を傾けて寄り添う姿勢を見せることで、部下との信頼関係が深まり引き止められるかもしれません。
状況に応じて上司・人事に報告
状況によっては、上司や人事に状況を報告する必要があります。ただし、部下のプライバシーを守るため、報告するかどうかは慎重に判断しましょう。本人の許可なく報告すると、部下が不信感を抱き退職の決意をより強くする可能性も考えられます。また、退職しなかった場合に居づらくならないように配慮することも大切です。
部下の相談なし退職の防止策
部下に相談なく退職されないようにするにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、6つの防止策を解説します。
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業務内容・待遇を見直す
よくある退職理由としては、業務内容が合わない、待遇に不満があるなどです。そのため、定期的に業務内容や待遇の見直しを行いましょう。業務内容や待遇の見直しを行う際には、経営層や管理者層だけの判断で行うのではなく、現場の声をヒアリングすることも大切です。現場の声を取り入れながら、見直しを行いましょう。
ストレスチェックの定期実施
ストレスチェックの定期的な実施も効果的です。ストレスチェックを行うことは、メンタルヘルスの把握に役立ちます。部下の抱える悩みや問題などを見つけやすくなるため、定期的にチェックしましょう。定期的に実施することで、メンタルヘルスの変化を把握しやすくなり、部下の悩みなどの早期発見につながります。
コミュニケーションを重視する
退職を防止するには、適切なコミュニケーションを取ることが大切です。コミュニケーションを取ることで、部下の変化に気づきやすくなるでしょう。また、普段から適切なコミュニケーションが取れていれば、部下との間に信頼関係が築けます。そのため、悩みや問題があった場合にも相談してくれる可能性が高まるでしょう。
キャリア・スキルアップ支援
将来性への不安、キャリア形成やスキルアップができないことへの不満から、退職する場合もあります。そのため、キャリア・スキルアップ支援を充実させるのもよい方法です。たとえば、資格取得サポートや資格手当などを設けるといった方法です。キャリアパスは押しつけるのではなく、本人の意向を確認したうえで具体的に提示しましょう。
相談窓口を設ける
相談窓口を設けることで、退職防止に役立ちます。悩みや不満などがあっても、身近な上司や同僚などには相談しにくいというケースも珍しくありません。相談窓口を設けることで、上司には相談しにくいようなことでも話しやすくなります。悩みを素直に吐き出せる場があることで気持ちも落ち着き、問題解決につながる可能性もあるでしょう。
マネジメントを見直す
上司としてのマネジメント方法を見直すことも、退職の防止策としては有効です。マネジメントでは、組織を発展させるために成果を最大化できる人材育成が求められます。そのために、正しいリーダーシップを理解したうえでマネジメントを行いましょう。部下の強みに目を向けて、それを生かすように導くことが大切です。
円満退職の重要性
退職を止められなくても、円満退職に導くようにしましょう。ここでは、円満退職の重要性を解説します。
関係が継続する可能性がある
部下の退職を円満に済ませることで、退職後も関係を継続できます。特に、専門性の高い業種ほど退職後にも関わりが発生するケースがあります。部下が自社に対して不満や悪いイメージを持ったまま転職すると、転職先と自社の関係に悪影響が出る可能性もあるでしょう。そのため、円満退職に導き、よい印象のまま退職してもらうことが大切です。
アラムナイとして関係性を保つ
アラムナイ(alumni)とは卒業生を意味する言葉で、ビジネスにおいては、退職した人を指す言葉として使われています。退職理由はさまざまで、決してネガティブなものだけとは限りません。たとえば、資格を生かせる業務がなかったなど、タイミングの問題で離職するケースもあるでしょう。良好な関係を維持していれば、再雇用につながることもあります。
部下の退職が決まったら
部下の退職が決まったら、上司としては何をすればよいのでしょうか。ここでは、部下の退職が決まった際の流れを解説します。
部下の退職を応援する
部下の退職が決まったら、上司として退職をサポートするなど応援する姿勢を見せましょう。前述したように、退職のサポートをして、部下が自社によい印象を持ったまま退職してもらうことが大切です。態度を変えると部下の不信感につながるため、これまでどおりの態度でサポートしましょう。
後任への引き継ぎ
部下が担当していた業務を、後任に引き継いでもらいます。業務内容が複雑だったり難しかったりする場合には、マニュアルを作成してもらいスムーズに引き継げるように工夫しましょう。引き継ぎをスムーズに進めるためには、退職する部下と後任の社員に一緒に仕事をしてもらうことも効果的です。
挨拶回りをしてもらう
退職前には挨拶回りをしてもらいましょう。所属していた部署や関わりのあった部署に挨拶回りをするのが一般的です。難しければメールで挨拶を送っても構いませんが、基本的には直接退職の挨拶をするようにしましょう。特に、営業職では取引先への挨拶回りも必要となるため、できれば後任の社員を同行させます。
部下の退職で上司がすべきこと
部下の退職時に上司がすべきことは、大きく分けて3つです。ここでは、各プロセスを解説します。
退職日までのスケジュールを決める
まずは、退職日までのスケジュールを決めましょう。一般的に、退職の意向は退職の2~3か月前に伝えられることが多いようです。さまざまな手続きがあるため、部下と話し合いながらスケジュールを決めましょう。また、この段階で退職する部下の後任を決めます。人材が足りない場合は、新しく採用する、社員の異動などの対策を検討しなければなりません。
引き継ぎ資料の作成依頼
引き継ぎ資料を作るように、退職する部下に依頼しましょう。業務の目的や流れ、具体的な手順、関係者の連絡先や必要な資料などを盛り込むことが大切です。この際、実践的なアドバイスやトラブルの実例といったノウハウなどを含めておくと、後任の育成に役立ちます。後任がまだ決まっていない場合は、さらに詳細な引き継ぎ資料を作成しましょう。
書類・物品などの受け渡し
書類や物品などの受け渡しも必要です。回収するものと受け渡すものがあるため、事前に確認しておきましょう。
・回収:社員証、制服、自社の備品、業務資料、健康保険被保険者証など
・受け渡す:必要書類、離職票など
退職時には、法的に交付しなければいけないと定められている書類がいくつかあります。交付の拒否はできないため、必ず交付してください。
退職させる際の注意点
何らかの理由から退職させるケースもあるでしょう。ここでは、社員を退職させる際の注意点を解説します。
一方的に解雇できない
社員を一方的に解雇することはできません。たとえば、無断欠勤や遅刻が長く続いていたとしても、一方的な解雇はできないため注意しましょう。勝手に解雇すると、不当解雇として訴えられる可能性もあります。音信不通が続いても連絡を取る努力を続けて、その記録を取っておくことが重要です。
就業規則・雇用契約書に則る
退職手続きは、就業規則・雇用契約書に則って進めましょう。就業規則などの規定を満たしたうえで、懲戒解雇や自然退職などの形を取ります。懲戒解雇の際にも連絡を取れる必要があるため、本人や家族に連絡する、自宅を訪問するなどの対策をしましょう。音信不通の状態なら、内容証明・配達証明郵便などを利用しても構いません。
退職届の考え方
退職は、退職届を提出しなくても双方の合意があれば成立します。また、会社都合の退職の場合には、退職届を出す必要はありません。会社都合の退職としては、以下のような例が挙げられます。
・労働条件が契約内容と異なっている
・給与の未払いや遅延
・事業所の移転により通勤できなくなった
会社都合の退職で退職届を出すと、自己都合の退職とみなされる可能性もあるため注意しましょう。
離職票・源泉徴収票の交付
企業は、退職者に対して離職票・源泉徴収票を交付する義務があります。離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職証明書」です。退職が決まった社員が失業給付の手続きをするために必要な書類となるため、退職者からの請求があった場合は速やかに交付しましょう。請求があったにも関わらず拒否すると、罰則対象となり罰金刑が課される場合があります。
源泉徴収票とは、1年間の収入と納付した所得税額が記載された書類です。こちらも交付の拒否はできません。トラブルに発展しないように、必要書類を速やかに交付するなどして退職手続きを進めましょう。
まとめ
人間関係のトラブルや待遇への不満などにより、部下が相談なしに退職してしまうケースもあります。退職する具体的な前兆としては、業務への意欲低下やネガティブな発言、遅刻欠勤の増加、コミュニケーションの減少などです。退職を防ぐためにも部下の様子に気を配り、業務内容や待遇の見直し、マネジメントの見直しなどを行うとよいでしょう。
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