ストレスマネジメントとは|具体的なやり方、実践の注意点、ストレスへの対処法などを解説


ストレスマネジメントとは|具体的なやり方、実践の注意点、ストレスへの対処法などを解説

職場における社員のストレスに関する問題への対応として、ストレスマネジメントが重要視されています。ストレスマネジメントとは、企業が社員のストレスの原因を把握して、適切な対処と管理をすることです。本記事では、ストレスの原因や仕事への影響、ストレスマネジメントの重要性、具体的な実施方法などについて解説します。ぜひお役立てください。

ストレスマネジメントとは何か?

ストレスマネジメントとは、ストレスの原因や正しい対処方法を知り、ストレスをコントロールすることです。企業にとっても、社員のメンタルヘルスの管理や仕事への意欲を維持するために重要です。

ストレスによる不調を防ぐためには、ストレスマネジメントによって本人がストレスを自覚できるようになり、正しく対処して解消につなげる必要があります。ストレスマネジメントに成功すれば、ストレスに左右されることがなくなり、パフォーマンスの向上につながります。

関連記事:ストレスチェックへの対応│詳細手順や結果の活用方法・費用や助成金も解説

ストレスマネジメントに必要なストレスに関する知識

ストレスマネジメントを円滑に実施するには、ストレスに関する正しい認識を持つことが必要です。ストレスによる心身の変化やその要因など、ストレスとは何であるかを理解することが重要です。

ここでは、ストレスの要因と、ストレスによる心身の変化について解説します。


ストレス(ストレッサー)の要因

ストレスには、「ストレッサー」と呼ばれる、外的要因が大きく影響しています。ストレッサーは、以下の4つに分類できます。


物理的ストレッサー

音や光、気温などの物理的な外部からの刺激や、体調不良など


化学的ストレッサー

金属製品や食品添加物、薬品、タバコなどの化学物質


心理的・社会的ストレッサー

不安や怒り、焦り、緊張などの感情を引き起こす心理に影響を及ぼす出来事や、IT化による情報過多や情勢の悪化、職場環境の変化など社会的な出来事


環境的ストレッサー

気候による温度・湿度の変化や、花粉、低気圧など


ストレスによる変化(ストレス反応)とは

ストレスの影響で生じる心身の変化を「ストレス反応」と呼びます。ストレス反応は、主に身体的反応、心理的反応、行動的反応の3つに分けられます。

ストレス反応の慢性化は、精神的にも身体的にも悪影響をもたらします。また、遅刻や欠勤が続くなど、仕事にも支障が出てしまいます。悪化すると、病気につながる可能性もあるため、ストレッサーを把握し、早い段階での対処が必要です。

身体的反応

倦怠感、疲労感、食欲不振、肩こり、頭痛、不眠、眠気、めまい、動悸など

心理的反応

イライラする、憂鬱になる、集中できない、不安になる、焦る、落ち込むなど

行動的反応

暴飲暴食、暴言、暴力、遅刻、欠勤、生活習慣の乱れ、性欲減退など

ストレスマネジメントの実施で期待できる効果

ストレスマネジメントは、個人だけではなく、企業としても取り組むことで、大きな効果が見込めます。


ここでは、企業がストレスマネジメントに取り組むことで期待できる効果について解説します。


社員のメンタルヘルスを守れる

企業としてストレスマネジメントに成功すると、社員がメンタルヘルスを健康な状態で維持できるようになります。


近年、ストレスによるメンタルヘルスへの悪影響が引き起こす体調不良や病気の増加が、多くの企業にとって重要な課題となっています。社員のメンタルヘルスを正常に保つことができれば、個々のパフォーマンス向上による生産性アップや欠勤率の改善も可能です。


職場環境を改善できる

ストレスが蓄積した状態の社員は周囲への配慮が足りなくなり、職場内の人間関係が悪化してしまうことがあります。その結果、業務に支障が出る可能性があります。


ストレスマネジメントにより、各自がストレスに対処できるようになれば、職場の雰囲気を改善につながります。雰囲気が良くなることで、職場全体のモチベーションアップや生産性向上が期待できます。


コミュニケーション・エラーを回避できる

ストレスをコントロールできるようになると、ストレスによる感情の揺れや乱れが減ります。冷静なコミュニケーションがとれるようになり、コミュニケーション・エラーを回避できます。

また、ストレスについて職場内の理解が深まると、何がストレスの要因になるのかを考えて行動できるようになるのもメリットです。ストレスの要因となりやすい、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなども防げるでしょう。


休職や離職、退職を防止できる

ストレスマネジメントは、心身の不調による休職や離職を防ぐ効果があります。定期的なストレスチェックにより、早い段階でストレスに気付き、対処することが可能です。また、ストレスについて理解を深めることで、自分なりの解消法を見つけるなど、ストレスと上手に付き合っていけるようになるでしょう。


ストレスマネジメントに役立つストレスチェックとは

ストレスチェックとは、社員がどのくらいストレスを感じているのかを確認するための調査です。ストレスに関する設問が記載された質問票に社員が回答し、実施者が集計・分析をします。結果は本人に通知されるため、自分のストレスの度合いを把握することが可能です。企業側は、社員のストレスの度合いに応じて、職場環境や業務内容の改善をします。

ストレスチェック制度の義務化

ストレスチェック制度とは、社員のストレス度合いをチェックし、必要に応じて医師の判断を仰ぐことを、事業者に義務付けた制度のことです。2015年12月から、社員50人以上の事業場では、毎年1回のストレスチェックが義務化されました。社員50人未満の事業場においては、努力義務と定められています。
個々の社員が、自身のストレス度合いを把握できるため、ストレスマネジメントに役立ちます。

関連記事:ストレスチェック制度とは?実施手順も分かりやすく解説

ストレスチェックの注意点

ストレスチェックは、医師や保健師が実施者として、ストレスレベルの判断や評価をします。その結果は個人情報に該当するため、厳重な管理が必要です。受検した社員本人の承諾を得ずに、企業側が受検結果を取得したり、管理者や上司が共有したりすることは禁じられています。

また、ストレスチェックの結果によって、社員が不利益を被らないようにしなければなりません。不利益な扱いとして、減給や降格、異動、解雇、退職勧告などが挙げられます。

ストレスマネジメントの具体的なやり方

企業として取り組むストレスマネジメントには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、ストレスマネジメントの実施方法について解説します。

メンタルヘルスのケア

厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定し、「メンタルヘルスケアの基本的考え方」を示しています。ここでは、指針にて推進されている4つのケアについて解説します。

※参考:職場における心の健康づくり|厚生労働省

社員自身が行うセルフケア

セルフケアとは、社員が自らストレスと向き合い、要因と対処法を把握して対処することです。社員が自力でストレッサーを排除・解決するには限界があるため、セルフケアで自身のストレスを把握する必要があります。

自分自身の心身の状況を把握し、ストレス反応があると認識したら、上司や専門家に相談できる環境づくりを、企業側が整備することも重要です。


企業側が行うラインケア

社員の心身の変化に気付けるように、管理職が常に配慮し、職場環境の改善や相談しやすい環境づくりなどに取り組むことを、ラインケアと呼びます。

企業におけるストレスマネジメントでは、社員がストレスについて話せるような信頼関係を日頃から構築しておく必要があります。コミュニケーションを絶やさず、社員の出勤状況や業務中の様子などを、常に把握することが重要です。また、定期的に個人面談を実施するのも効果的です。


社内の専門家に委託

産業医や衛生管理者、カウンセラー、精神科医、保健師などの専門知識を持つ人材を企業内に配置し、ストレスマネジメントを委託する方法もあります。

セルフケアやラインケアが円滑に実施できるように、専門的な立場からの助言を求めることもできます。状況に応じて、外部専門医や専門機関との連携をとる場合もあります。


社外の専門家を活用

社内専門家からの紹介で、外部の専門家を活用する方法もあります。外部の公的な専門機関としては、都道府県産業保健推進センターや地域産業保健センター、中央労働災害防止協会、労災病院、EAPなどが挙げられます。

専門知識が乏しく、社内の管理者だけでは対処できない場合に活用するのがおすすめです。ストレスマネジメントでは、対象となる社員だけではなく、企業や社内専門家、外部専門家が連携して、ストレスによる心身への影響を緩和させるための仕組みづくりに努めることが重要といえます。


セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、自分自身の心身の状態を観察することです。ストレスマネジメントにおいては、自分の現状、ストレスを感じた時の状況、ストレスに対する感情や反応などを記録する手法を指します。継続して記録していると、ストレスの原因や、ストレスにより生じる不調などを明確にすることが可能です。自分の状態を客観視することで、ストレスを回避したり、早い段階で対処したりできるようになります。


1on1ミーティング

上司と部下がコミュニケーションをはかる「1on1ミーティング」を、ストレスマネジメントとして活用できます。「1on1ミーティング」は評価面談とは異なるものです。お互いの信頼や理解を深める、部下の成長を促すといった目的で実施します。上司が部下の悩みを聞いたり、対処法を一緒に考えたりする場でもあるため、ストレスマネジメントの実践につながるのが特徴です。


研修・教育

社員がストレスマネジメントについて学ぶ場を設けましょう。研修の内容としては、ストレスの原因を把握する方法や対処法などが挙げられます。また、職場でのストレスの原因になりやすい「ハラスメント」に関する教育も重要です。ストレスを生み出さない環境づくりもストレスマネジメントの施策の一つになります。


メンター制度

メンター制度とは、先輩社員(メンター)が新入社員や若手社員を精神的にサポートする取り組みです。一般的には、勤続年数や年齢が近い先輩社員がメンターとして配置されて、後輩社員の悩みや不安、疑問などの相談に乗ったり、アドバイスをしたりします。身近にサポートしてくれる存在がいることが、ストレスの回避や解消、緩和につながるでしょう。


ストレスマネジメントで有効な3種類のコーピング

コーピングとは、ストレスに対する対処法のことを指します。以下では、ストレスマネジメントにおいて有効なコーピングについて解説します。


1.問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとは、ストレッサーを特定し、その解消を目指す方法です。

【具体例】
・業務に追われていることがストレスになっているため、仕事量を調整する
・ストレスの要因となっている人と、部署異動などで距離をとる
・自分で解決できないため、上司や同僚、家族に相談する

公的機関では、周囲に相談相手がいない人向けに相談窓口を設けている場合もあります。企業側も窓口を設けるなど、相談しやすい環境づくりが必要です。


2.情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングとは、感情をコントロールしてストレスに対処する方法です。

【具体例】
・楽しいことを考える
・瞑想する
・趣味で気分転換する

企業としては、確実にリフレッシュできる期間を設けるなど、ストレスに落ち着いて対処できるような仕組みづくりが必要です。


3.ストレス解消型コーピング

ストレス解消型コーピングは、先述の2つのコーピングのようにストレスに向き合うのではなく、感じたストレスを発散して解消する方法です。

【具体例】
・スポーツや音楽鑑賞、読書など、趣味を楽しむ
・アロマテラピーやマッサージでリラックスする
・友人と食事をする

仕事が休みの日などに「ストレスコーピング」と意識せずに実践している人も多い方法といえるでしょう。

関連記事:【企業向け】ストレスコーピングとは?種類や実践方法を解説

まとめ

ストレスマネジメントは、企業にとって大切な社員のメンタルヘルスを守る重要な取り組みです。まずは、管理層からストレスに対する理解を深め、社内に浸透させなければなりません。

また、ストレスチェックの実施を怠らず、社員1人ひとりが自身のストレスと向き合える機会を作ることも重要です。

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