離職とは?
離職とは、仕事から離れることです。本章では、離職や早期離職の意味について解説します。
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離職の意味
離職は、退職や解雇などの理由で現在就いている仕事から離れることです。仕事を離れる事情や理由はそれぞれで異なるものの、離職は自己都合・解雇・契約満了・定年を問わず、仕事を離れる際に使用されます。
離職の定義は企業によって異なる場合があります。たとえば、社員の自己都合で退職した場合は離職とするケースや、企業が社員を解雇した場合も離職とするケースも珍しくありません。厚生労働省による離職者の定義は以下のとおりです。
「離職者」
「常用労働者のうち、調査対象期間中に事業所を退職したり、解雇された者をいい、他企業への出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所への転出者を除く。」
※引用:主な用語の定義|厚生労働省
早期離職の意味
離職と似た言葉の1つが、早期離職という言葉があります。早期離職とは、入社後3年以内に離職することです。社員が離職するまでの期間が入社から何年であるかによって、離職か早期離職かが決まります。
早期離職する社員が多いと、社内外からの企業のイメージ低下につながるケースも少なくありません。また、離職した社員の採用や研修にかけたコストが無駄になります。
早期離職の現状
早期離職の現状を知るうえで、早期離職率が役立ちます。本章では、早期離職率について確認しておきましょう。
早期離職率は?
厚生労働省が2023年に発表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、2020年3月の新卒者の早期離職率は以下のとおりです。
・新規高卒就職者:37.0%(前年比1.1ポイント上昇)
・新規大卒就職者:32.3%(前年比0.8ポイント上昇)
事業所規模別の早期離職の人数は5人未満と5~29人で多く、小規模よりも大規模の企業の離職率は低い傾向が見られます。ただし、全体では前年度よりも早期離職率は増加している結果となりました。
※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
※参考:新規高卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)(別紙2)|厚生労働省
業種による早期離職率の違い
前述の厚生労働省の資料によると、業種ごとに早期離職率の傾向が異なります。まずは、早期離職率が高い傾向の業種から確認しておきましょう。
・宿泊業・飲食サービス業
・生活関連サービス業・娯楽業
・教育・学習支援業
・医療・福祉
・小売業
一方で、早期離職率が低い傾向がある業種は以下のとおりです。
・電気・ガス・熱供給・水道業
・複合サービス事業
・鉱業・採石業・砂利採取業
・金融業・保険業
・運輸業・郵便業
※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
※参考:新規高卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)(別紙2)|厚生労働省
離職・退職の違い
離職と退職の意味は、どちらも仕事を離れる点では似ていますが、両者には明確な違いがあります。退職は仕事を辞める行為を指す言葉で、離職は仕事から離れた状態を表す言葉です。厚生労働省では退職者を以下のように定義しています。
「退職者」
「離職者のうち、調査対象期間中に離職した出向者・出向復帰者を除いた者をいう。」
※引用:主な用語の定義|厚生労働省
離職の主な理由
離職を防ぐには離職の理由を知ることが大切です。本章では、社員が離職する主な理由を解説します。
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業務のミスマッチ
業務のミスマッチは社員が離職する理由の1つです。新入社員は希望する部署への配属や、自分のスキル・経験を生かせる業務を期待する人は少なくありません。社員が入社前に想像していた業務内容と、実際に任される業務内容に大きな差があると、モチベーションが下がり離職する可能性が高まります。
人間関係のストレス
仕事を円滑に進めるためにはチームワークが重要です。職場での人間関係が良好な場合は十分なコミュニケーションが取れるため、スムーズに業務を進められます。
しかし、職場での人間関係がうまくいかない場合はストレスが生じ、悩みや疑問があっても相談できずに孤立するケースも少なくありません。結果的に、職場になじめない社員は人間関係のストレスが原因で離職してしまいます。
労働条件への不満
労働条件や待遇への不満も社員が離職する主な理由です。具体的には、給与や勤務時間、正当な評価が得られない場合も不満につながりやすくなります。不満が募ると、今よりも労働条件のよい転職先がないか考えるのが人の常です。特に、同業他社よりも給与水準が低い場合は離職率が高くなる傾向があります。
将来性に対する不安
社員が離職を考えるタイミングは、将来に対する不安を抱いたときです。「キャリアアップが見込めない」「スキルアップが望めない」など、将来に対する期待感が得られない環境にあると離職を考える人が増えます。また、企業として成長が見られず、将来性が期待できない場合も離職につながる要因の1つです。
プライベートとのバランス
近年、働き方改革の推進やダイバーシティ(多様性)などの影響により、ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方を考える人が増えています。労働時間が長すぎると、趣味や好きなことに費やす時間を確保できなくなるため、離職の原因になるケースも少なくありません。また、有給休暇や育児休暇などの休暇の申請が通りづらいことも、離職につながる場合があります。
離職率が高まることの悪影響
離職率の向上は、企業にさまざまな弊害が生じるため注意が必要です。本章では、離職率の向上で起こる悪影響を把握しておきましょう。
採用・育成コストの負担増加
企業は、社員を雇用するために採用活動に多額のコストをかけています。入社後は人材への投資として育成にも力を注ぎ、育成にも多額のコストを投じているのが実情です。しかし、社員が短期間で離職すると、採用活動や社員教育にかけたコストが無駄になる恐れがあります。人員不足を補うために再び採用活動をする場合は、コストの負担はさらに増えるでしょう。
企業のイメージが低下する
社員の離職率が高い企業は、社内外からのイメージが下がりやすくなります。消費者にネガティブなイメージを与えてしまった場合は、自社の商品やサービスを購入してもらえなくなるケースもあるでしょう。イメージ戦略が重要な役割を担っているため、口コミやSNSなどでネガティブな印象を拡散されないように、注意する必要があります。
人材が育たない
離職率が高い企業は人材を採用してもすぐに離職してしまうため、将来的に自社を背負って立つ優秀な人材を育てられません。企業が成長し続けるには、次世代のリーダーを育成しなければなりません。そのため、人材育成は企業にとって重要な課題です。優秀な人材を育てるには、人材を定着させて離職率を下げる必要があります。
離職率の定義・計算方法
離職率とは、常用している労働者のうち、離職した労働者の割合のことです。厚生労働省では、離職率を在籍者に対する離職者の割合と定義しています。離職率の計算式は以下のとおりです。
離職率=離職者数/1月1日時点の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)×100
たとえば、常用労働者数が1,000人で、離職者数が10人の場合は離職率が1%となります。
※参考:主な用語の定義|厚生労働省
離職前の兆候
離職を防ぐには、離職前に見られる社員の兆候を把握しておくことが大切です。本章では、離職前の主な兆候を解説します。
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モチベーションが低下している
モチベーションが低下している社員がいる場合は、離職する可能性があることを認識しておきましょう。モチベーションが低下しているかどうかは、仕事のミスが増えた、業務の効率が落ちたなどの行動の変化から察知できます。また、モチベーションが低下すると業務に対する関心が下がりやすくなるため、社員をよく観察しましょう。
コミュニケーションが減っている
社員が離職する前に現れる兆候の1つは、コミュニケーションの減少です。離職を検討し始めると、離職や離職後のことに意識が移るため、仕事や自社への関心が薄れ、職場でのコミュニケーションが減る傾向があります。具体的には、社員同士の会話や雑談に参加しなくなる、挨拶をしなくなるなど、行動の変化が顕著に現れるケースも少なくありません。
仕事を早く切り上げるようになった
離職を決意した社員は仕事や自社への関心が低くなるため、離職を決める前と比べて退社時間が早くなる場合があります。仕事を早く切り上げる理由はそれぞれで異なりますが、主な例は転職活動のために時間を作っている、資格取得に向けた勉強時間を確保しているなどです。社員が急に退社する時間が早くなった場合は、離職する可能性があると考えましょう。
離職防止に効果的な取り組み
離職を防止するには、効果の高い取り組みを実施することが大切です。本章では、高い効果が期待できる取り組みを解説します。
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ミスマッチを減らす
業務のミスマッチは早期離職につながる恐れがあるため、採用や配置によるミスマッチを減らすことが大切です。採用のミスマッチを減らしたい場合は勤続年数が長い社員の傾向を把握し、自社の風土や文化に合う社員像を明確にする必要があります。配置によるミスマッチを減らすには、現場で求められるスキルや経験、本人の意向を参考にしてください。
ワーク・ライフ・バランスを見直す
労働時間が長い傾向がある場合は、ワーク・ライフ・バランスを見直して離職防止につなげましょう。具体的には、勤務時間や給与などの労働条件が、実際の業務内容に見合っているかを検討します。長時間労働の社員がいる場合は、業務負担の軽減や業務の効率化などに取り組みましょう。また、社員が休暇を申請しやすい環境を整備することは、離職を防止するうえで重要な取り組みです。
評価制度を改善する
社員が正当な評価を受けられない場合は離職につながるため、評価制度の定期的な見直しや改善を行いましょう。評価制度を改善する際は、評価者の主観が社員の評価に直結しない仕組みを作る必要があります。公正な評価を行うには、360度評価の導入がおすすめです。
360度評価とは、上司や同僚、部下などからの意見を取り入れた評価制度を指します。さまざまな立場からの意見を基に総合的な評価を行うため、社員の納得感を得やすくなるでしょう。
コミュニケーションを促進する
社内のコミュニケーションの活性化は離職防止に効果的な施策です。社内のコミュニケーションが活性化することで気軽な会話はもちろん、悩みがある社員が相談しやすい環境を作れます。また、社内のコミュニケーションが促進されれば人間関係の改善につながり、人間関係のストレスが理由で離職する社員を減らすことも可能でしょう。
マネジメントスキルの向上
社員の離職を防ぐにはマネジメント研修を実施し、管理職やリーダーのマネジメントスキルを向上させることが大切です。上司が部下の管理を怠ると離職前の兆候を見過ごすだけでなく、公正な評価を行えないために優秀な人材を離職させる恐れがあります。上司のスキルアップは、組織全体の意識の改善や公正な評価にも役立つでしょう。
キャリア・スキルアップの支援
将来的なキャリアを思い描けずに離職を選択する社員は少なくありません。企業がキャリアやスキルアップをサポートすれば社員の選択肢は広がるため、将来に不安を抱く社員の離職防止につながります。たとえば、研修や社員教育を実施してスキルアップを図るとよいでしょう。社員が自社に将来性を感じられるようになれば、定着率の向上も期待できます。
柔軟な働き方を導入する
社員が働き方を自由に選択できるようになれば、ライフ・ワーク・バランスへの不満による離職を防ぐことができるでしょう。離職する社員のなかには、家庭の事情でやむを得ず離職を選択する人も少なくありません。
企業が柔軟な働き方を提示することで社員が自由に働き方を選択できれば、離職を防止できる可能性が高まります。具体例は、リモートワークやコアタイム制度の導入です。
離職防止に役立つ施策
離職を防ぐうえで、具体的な施策を知りたいという人もいるでしょう。本章では、離職の防止に役立つ施策を解説します。
定期的な1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行うミーティングのことです。個室や2人だけになれる空間で1on1ミーティングを実施することで、部下の本音を聞き出しやすくなり信頼関係の構築にも役立つでしょう。定期的に1on1ミーティングを行えば社員の変化にも気付けるため、離職前に現れる兆候を早く発見して対策を講じられます。
社内アンケートの実施
社内アンケートの実施は、社員の本音を知るうえで有効な施策です。無記名でアンケートを実施すれば社員から率直な意見を引き出せるでしょう。集計したアンケート結果から不満や課題、改善点を洗い出し、待遇や職場環境などを改善するための施策を検討します。社内アンケートは年1回または数か月に1回の頻度で実施し、評価と改善を繰り返し行いましょう。
パルスサーベイによる調査
パルスサーベイとは、短期間に高頻度で実施する調査のことです。パルスサーベイによって社員の意識調査を実施すれば、社員の満足度や組織の変化など、リアルタイムの状況の把握に役立ちます。過去に実施した調査結果と比較してデータを可視化させれば、現場の状況を詳細に分析することも可能です。
タレントマネジメントシステムの導入
タレントマネジメントシステムは、社員のスキルや成長の度合いを把握するうえで有効なツールといえます。タレントマネジメントシステムを導入すれば、社員のリアルタイムの状況を把握できるため、離職防止の効果が期待できるでしょう。タレントマネジメントシステムは離職防止だけでなく、人材育成や配置の適正化を行う際にも役立ちます。
離職で必要となる手続き
社員が離職する場合はいくつかの手続きが必要です。本章では、企業側と社員側で行う手続きについて解説します。
企業が行う手続き
社員が離職する際に企業が行うべき手続きは以下のとおりです。
・雇用保険資格喪失の手続き
・社会保険資格喪失の手続き
・住民税の手続き
・源泉徴収票の交付
離職手続きが終わったら、年金手帳や雇用保険被保険者証を離職する社員に渡します。社員から希望があった場合は、退職証明書を発行しなければなりません。
社員が行う手続き
離職する社員が自分で行う手続きは以下のとおりです。
・業務の引き継ぎと関係者への連絡
・退職日の決定と退職届の提出
・貸与品の返却
・健康保険と厚生年金に関する手続き
健康保険証や借りた制服・社員証・社章などの貸与品、業務で作成した資料やデータは退職日までに返却する必要があります。
まとめ
離職率が高い企業は、社内外にネガティブな印象を与えかねません。自社の離職率を下げられれば優秀な人材を育成できるうえに、企業として継続的な成長が見込めます。離職を防止するには、社員のエンゲージメントやモチベーションを向上させる施策を実施しましょう。
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