帰属意識とは
帰属意識とは、集団や組織に属する個人が有する感覚の1つです。具体的には、自身がその集団や組織の一員であると認識し、目標や価値観を共有することです。
帰属意識が高い状態になると、自身が集団や組織に与える影響を理解しやすくなります。また、集団や組織に対して強い興味関心や愛着を持つことが特徴です。
ビジネスシーンにおける帰属意識は、企業への満足度や信頼感の高さに影響を及ぼします。また、目標達成に向けて積極的に貢献したいという気持ちを持ちやすい傾向にあります。
エンゲージメントやロイヤルティとの違い
帰属意識と混同されやすい言葉として挙げられるのが、エンゲージメントやロイヤルティです。それぞれの詳細は、以下の通りです。
エンゲージメント
エンゲージメントとは、相手と対等な関係で契約や約束を結ぶことを意味する用語です。ビジネスシーンにおいては、社員が仕事や組織に対して持つ情熱や献身度を指します。
具体的には、社員の仕事に対する熱意や、組織の目標達成に対する関与の程度を示します。なお、エンゲージメントを高めるには、社員と企業の双方が貢献する意識を持つことが重要です。
また、エンゲージメントは帰属意識よりも個人が組織に貢献する姿勢にフォーカスしていることが特徴です。
【徹底解説】エンゲージメントサーベイとは?自社で調査する必要性や注意点を理解しよう
ロイヤルティ
ロイヤルティは、日本語で忠誠や誠実などを意味します。また、主従関係において、仕える存在に尊敬の念を持って奉仕したり、服従したりすることも意味します。
ビジネスシーンでは、社員が所属する会社に奉仕するという意味合いで使われがちです。ロイヤルティは、組織に長期間留まって貢献し続けようとする意欲から生まれます。
帰属意識とロイヤルティは、どちらも社員の企業に対する意識を表す言葉です。しかし、ロイヤルティには背景に主従関係があるのに対して、帰属意識では主従関係が重視されません。
従業員ロイヤリティが高い会社の5つの特徴!向上させる4つのメリットや施策を解説
帰属意識が低くなる主な原因
帰属意識が低くなる原因はいくつかあります。以下は、具体的な原因とそれぞれの詳細です。
コミュニケーション不足
組織内におけるコミュニケーションが不足すると、社員は自分がどのように組織の目標に貢献しているのかを把握しにくくなります。その結果、組織に対する愛着が薄れ、帰属意識が低下する可能性があります。
また、経営層と現場、部門間やグループ内など、それぞれ異なる立場の人同士のコミュニケーションは重要です。なぜなら、互いの信頼関係の構築につながり、個々の帰属意識にも影響するからです。
不公平な評価
努力や成果が適切に評価されない場合、社員は不公平感を抱きます。特に、他の社員と比べて不当な扱いを受けていると感じる場合、組織に対する信頼感が失われ、帰属意識が低下します。
さらに、ポジティブなフィードバックがない場合も、帰属意識が低くなりがちです。なぜなら、自分の業務に対する姿勢が理解されていないと感じるからです。社員のモチベーションや帰属意識を損なわないように、公平な評価制度や報酬体系の確立を目指しましょう。
職場環境の問題
社員間の対立や競争が激しく、協力的な関係が築かれていない場合、職場の雰囲気が悪くなりがちです。職場環境に問題があると、社員はストレスを感じ、帰属意識が低下しやすくなります。
また、企業の目的や方針が不透明な場合も、職場環境の問題として帰属意識を低下させる要因となります。自社のビジョンがわからない状態では、業務に対するモチベーションが下がるからです。
良好な人間関係を維持し、自分の役割を認識できる職場環境を整え、社員が安心して働けるようにしましょう。
帰属意識の低下により企業にもたらすデメリット
帰属意識の低下は、企業にデメリットをもたらすため注意が必要です。ここからは、具体的なデメリットとそれぞれの詳細を解説します。
生産性の低下につながる
帰属意識の程度は社員のモチベーションに影響を与えます。たとえば、自分が組織の一員であるという意識が薄れると、業務に対する意欲や熱意が減少しがちです。
そのため、モチベーションが低い状態が続くと、日々の仕事に対して消極的になります。結果として、生産性の低下や業務効率の悪化につながります。組織全体で生産性が低下し業務効率が悪化すると、事業にも悪影響が及びかねません。
離職率が高まる
帰属意識が低下すると、その会社で働き続けたいという意欲が減少しがちです。また、社員は自分のキャリアや成長に対して不安を感じ、よりよい環境を求めて転職活動を始めます。つまり、帰属意識が低下すると組織の人材が流動的になり、離職率も上昇しやすくなります。
退職によって人手不足になると、残った社員の負担が増えます。負担が増えると帰属意識が低下し、さらに離職者が増えるという悪循環が発生するため、注意が必要です。
【徹底解説】離職率が高い会社の特徴7選!7つのデメリットと改善策を紹介
組織全体の一体感を損なう
帰属意識が低下すると、社員同士の協力やコミュニケーションが減少します。そのため、チームワークが弱まり、組織全体の一体感が損なわれます。
組織全体の一体感がなくなると、組織内での問題解決やアイデアの創出が難しくなりがちです。その結果、組織全体のパフォーマンスが低下し、企業の業績も悪化する可能性があります。
帰属意識が高いことで企業にもたらすメリット
帰属意識が高いと、企業にさまざまなメリットをもたらします。具体的なメリットとそれぞれの詳細は、以下の通りです。
生産性と業績の向上につながる
帰属意識が高い社員は、自分が組織の重要な一員であると感じているため、仕事に対するモチベーションが高いです。自分の役割を理解し、目標達成に向けて積極的に取り組みます。
また、帰属意識が高い社員がいると、社員同士の交流が積極的に行われる環境が構築しやすくなります。情報共有が円滑に進みやすく、経営方針や企業理念に基づいた働き方が実現しやすいです。以上の要因から、帰属意識の高さは生産性と業績の向上につながります。
長期的に働く社員が増える
帰属意識が高い社員は、離職しにくい傾向があります。なぜなら、その組織に魅力を感じ、所属し続けて貢献したいと考えるためです。
社員の定着率が高まると、人材の流動性が低下し、長期的に働く社員が増えます。そのため、組織内で知識やスキルが蓄積されます。組織としての競争力が向上すれば、企業の長期的な継続と発展が可能です。
組織内で一貫した企業文化が育まれる
帰属意識が高い社員が多い場合、組織内で一貫した企業文化を育むことが可能です。また、共通の価値観や目標を共有することは、社員同士の信頼関係を強化します。
長期的に働く社員が増えれば、チームワークや組織の一体感が高まりやすくなります。社員一人ひとりの満足度も向上し、社員の流出を防ぐことが可能です。
社員の帰属意識を高める方法
社員の帰属意識を高める方法はいくつかあります。以下は、具体的な方法とそれぞれの詳細です。
企業のビジョンやミッションを明確にする
社員の帰属意識を高めるためには、自分の役割が企業全体の目標達成にどう貢献するかを認識することが効果的です。そのためには、企業のビジョンやミッションを明確にしましょう。
企業のビジョンやミッションを明確にするには、社員向けのブランディング活動であるインナーブランディングの実施が推奨されます。また、インナーブランディングには、コミュニケーションの促進や連帯感の向上が期待できます。
具体的な手法としては挙げられるのは、社内ポータルサイトや社内報の活用です。社員に向けて情報を発信し、帰属意識の向上を目指しましょう。
ビジョンドリブンとは?意味や重要性、組織づくりの注意点を解説
社員のパフォーマンスを公平に評価する
成果に応じた報酬を提供することで、社員の帰属意識を高められます。また、適切な報酬を見定めるためには、社員のパフォーマンスを公平かつ透明に評価することが求められます。
定期的なパフォーマンスレビューやフィードバックセッションの実施も効果的です。社員の努力を正当に評価し、それを認めることが重要です。
昇進や異動の機会を与える
社員がキャリアアップに対して興味を失うと、帰属意識が低下します。そのため、各社員に対してキャリア開発プランを作成し、定期的に見直すことが推奨されます。昇進や異動の機会を明確にし、キャリアパスの実現に向けたサポートを提供しましょう。
社員がキャリアアップを目指すようになると、積極的に業務に取り組むことが期待できます。また、社員同士のコミュニケーションが活発になり、生産性向上や新たなアイデアの発見などにつながる可能性もあります。
社員が快適に働けるようにする
作業環境を改善し、社員が快適に働けるようにすることも大切です。職場環境の良し悪しは、社員のモチベーションを左右します。また、モチベーションの程度は帰属意識にも影響します。
さらに、企業理念やフィロソフィーを盛り込んだデザインを採用することも、帰属意識を高めるのに効果的です。デザイン性の高い空間は、居心地の良さやステータス感を演出できます。エントランスやオフィスデザインへの採用を検討しましょう。
社員の健康を維持する
健康を維持することは、社員の帰属意識を高めるのに貢献します。健康管理は社員個人に任せるものと思われがちですが、企業側も社員の健康をサポートするプログラムを提供することが推奨されます。
具体的には、フィットネスプログラムやメンタルヘルスサポートなどを通じて、社員の健康維持を支援しましょう。
社員が問題や悩みを相談しやすくする
経営陣や上司とのオープンなコミュニケーションを促進し、社員が問題や悩みを相談しやすい環境を作りましょう。例えば、オープンドアポリシーを導入することで、社員が意見や提案をしやすくなります。
また、1on1ミーティングを実施するのも効果的です。社員が抱えている悩みや課題について相談しやすく、メンタルヘルスの把握にもつながります。
上司と部下の間に信頼関係が構築できると、帰属意識の向上が期待できます。また、モチベーションや生産性の向上にも効果的です。
社員同士の交流を促進する
定期的にチームビルディングイベントや社内イベントを開催することで、社員の帰属意識を高めることが期待できます。なぜなら、イベントによって社員同士の交流が促進されるからです。
社員同士の信頼関係が構築されると、チームの結束力が高まります。結果的に職場の雰囲気が良くなり、企業への愛着やモチベーションの向上につながります。
リーダーとしての能力を向上させる
リーダーの能力は、部下の業務に対するモチベーションや職場環境に大きな影響を及ぼす要素です。
そのため、管理職やリーダーに対してリーダーシップトレーニングを提供することで、帰属意識を高めることにつながります。リーダーとしての能力を向上させる施策として、以下のようなものが挙げられます。
・効果的なコミュニケーションの方法
・問題解決に必要なスキル
・モチベーションの引き出し方
リーダー育成に必要な研修とは?育成ステップや得られるスキルについて
職場での多様性を尊重する
さまざまな観点やアイデアを取り入れることで、創造性やイノベーションが推進されます。さらに、職場において多様性を尊重し、異なる背景や考え方を持つ社員が能力を発揮できる環境を整えることも重要です。
社員が自分に合った環境で働けると感じれば、仕事に対するやりがいや働きやすさを感じることができます。その結果として、モチベーションの向上が期待されます。
定期的に給与を見直す
市場で競争力のある給与体系を採用し、社員の努力や成果に応じた適切な報酬を提供しましょう。また、定期的な給与の見直しや昇給を行うことも欠かせません。
これは、福利厚生の充実度が社員のモチベーションに直接影響を与えるためです。特に、報酬が上がる条件が明確であれば、社員は報酬アップを目指してモチベーションを維持しやすくなります。
まとめ
帰属意識を高めることは、企業にとって重要な目標と言えます。生産性や業務効率を高水準に保つだけではなく、人材の流出を防ぐことにもつながるからです。
また、企業として発展するためには、帰属意識と併せてエンゲージメントを高めることも大切になります。そこでおすすめしたいのが、専用システムの導入によるエンゲージメントへの取り組みです。
タレントパレットを活用すると、社員のエンゲージメントやモチベーションを可視化できます。そのため、効果的な施策の立案や離職の防止につながります。
人事における課題を解決したい担当者の方は、ぜひタレントパレットを導入してみてください。
エンゲージメント向上・離職防止に役立つシステムの詳しい情報はこちら