こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
働き方改革の一環として、企業には「働きやすい職場環境作り」が推奨されています。その一方で「やりがい搾取」が問題になっている職場もあることを知っていますか。
本記事では、やりがい搾取が起きやすい職場環境や発生する原因、企業が行うべき防止方法を解説します。企業を健全な状態に保つためにも参考にしてみましょう。
やりがい搾取とは
やりがい搾取とは、経営者が労働者の「仕事へのやりがい」を悪用して様々な利益を搾取することです。たとえば、支払われるべき給料や手当の代わりに、やりがいを意識させ、サービス残業や低賃金労働などを促します。
また、心理的に顧客からの「感謝の気持ちや言葉」など、実態がないものを「やりがい」に結び付け、給与に反映させないケースなどもあることも知っておきましょう。
やりがい搾取が起きる原因と構造
やりがい搾取が起きる原因は、企業によってさまざまです。人件費だけでなく、従業員に対する扱いの意識など、特定の管理職や経営層ではなく、組織的であるケースが多いといえます。
ここでは、どのような背景からやりがい搾取が起きるのかについてみていきましょう。
人件費の削減
人件費削減のために最低限の人数しか雇用しない場合は、結果として、やりがい搾取の原因になりやすい傾向にあります。従業員1人当たりの業務量が膨大になり、残業が発生しやすくなるためです。
残業代も含めて、人件費の削減で利益を確保しようとする企業では、従業員が実績を残しても報酬に反映されないケースが珍しくありません。また、ねぎらいの言葉をかけることで、報酬が出ないことに対する不満を表面化させないように仕向ける場合もあります。
従業員は使い捨てという考え方
労働者を使い捨てにする企業もやりがい搾取が生まれやすい環境です。このような企業では、人材を育てる意識が低く「従業員が辞めたら新たに探す」という考え方が定着しています。
経営・マネジメント側もメンタルや従業員の対価に対する意識が低いため、使い捨てにする罪悪感などもないといっても過言ではないでしょう。そのため、優秀な人材が育たず、コミュニケーションを取る・チームワークを高めることも困難です。チームワークに乏しい環境では1人にかかる負担が大きく、疲弊した従業員が次々に退職する悪循環に陥るケースも多くなっています。
実力に見合わない役職に登用
従業員の能力に見合わない実力以上の役割を与え、やりがいを植え付けるのもやりがい搾取の一つのパターンです。ほかの従業員にくらべて責任感も含めて、特別扱いすることで、ステータスを感じさせるものの、賃金は変わりません。
管理職の権限を与えられず残業代も支払われない、いわゆる「名ばかり管理職」も似たような構造に陥りがちです。自己評価が低い人を不相応な役職に任命することで、プライベートまで犠牲にしてしまう「ワーカホリック問題」につながる可能性もあります。
伝統的・封建的な業界構造
伝統工芸の職人や大工など、師弟関係が残る伝統的な業界もやりがい搾取が起こりやすい傾向にあります。見習い扱いの従業員が一人前として扱われるまでの修業期間の場合、より低賃金を強いられる場合も多いのが実状です。
封建的な業界構造で、親方や師匠が絶対的な存在であることも原因のひとつと想定されます。
若者の夢や希望を悪用
若者が抱いている夢や希望を悪用することも、やりがい搾取につながります。「この仕事、業種が好きだから働きたい」という動機を持っている若者が賃金やメンタル的な面が報われないまま搾取される構造です。
適切な教育が受けられたり、成長につながったりする環境が用意されていない場合や経営者や上司に対するカリスマ性を感じさせることで、都合のよい労働力として使われるパターンも少なくありません。
やりがい搾取のリスクと問題点
やりがい搾取が起きた場合、従業員が疲弊するだけでなく、企業としても大きな損失となります。ここでは、やりがい搾取によって起こりうる問題点やリスクについてみていきましょう。
労働者の心身に負担がかかる
モチベーションや従業員満足度の面から、いくら努力しても成果が報酬に反映されない場合、労働者に大きな精神的な負担がかかります。その結果、うつ病など精神疾患の発症につながる可能性もあるといえるでしょう。
また、長時間労働による体調悪化も考えられます。1か月に80時間以上の時間外労働を目安とする過労死ラインを超える危険性がある点もやりがい搾取の問題点です。
会社の評判が悪くなる
やりがい搾取を行っている場合、企業の評判は社会的にも低下します。ブラック企業としてあつかわれるだけでなく、働いている従業員も退職する可能性が高くなるといえるでしょう。
また、会社の評判は昨今では簡単にSNS上で拡散されます。やりがい搾取が事実であった場合、改善したとしても評判や信頼を取り戻すまでには時間がかかるといえるでしょう。
転職者が増え人材不足に陥る
やりがい搾取が常態化した場合、転職や退職を希望する従業員が増加する可能性があります。人材不足は多くの企業が抱える問題であり、優秀な人材であるほど問題に気付くのは早いといえるでしょう。
そのため、企業は転職を考える従業員を増加させないためにも、社内風土や企業の体質を改善し、働きやすい環境づくりを行う必要があります。また、改善に時間がかかりすぎている場合も退職者が増加することから、早めの対処が大切になります。
違法行為の可能性がある
やりがい搾取は、そもそも違法行為につながる可能性が高いものです。たとえば、賃金未払いやサービス残業が習慣化されているケースは違法行為に該当するでしょう。残業が常態化した場合は、過度の長時間労働による過労死の危険性もあります。
また、セクハラやパワハラが日常的に行われていると判断される可能性も否定できません。そのため、社内の人間関係を含め、労働環境や経営方針の見直しが必要です。
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やりがい搾取の具体例
やりがい搾取の具体例としては、どのようなケースがあるのでしょうか。企業側も気づかないまま行っている場合があるため、自社に該当するケースがないか確認してみましょう。
固定残業・みなし残業が多い
はじめから基本給に固定残業代やみなし残業代が含まれている場合、しっかりとした管理を行なわなければ、やりがい搾取につながります。実際に、基本給に含まれている時間分は、いくら残業を行っても残業代が支払われません。
そもそも固定残業代が給与に含まれている場合は、残業を行うことが前提となっています。みなし残業の制度を導入すること自体は問題ありません。しかし、長時間労働が常態化しやすいため、正しい労務管理が行われているか見直す必要があるでしょう。
残業代の未払い
時間外労働や深夜労働、休日労働を行っているのにも関わらず、割増賃金が支払われない場合もやりがい搾取に当てはまります。
割増賃金の支払いについては、労働基準法第37条に定められており、違反した場合は罰則が適用される点は知っておきましょう。また、従業員が残業代の未払いについて労働基準監督署に相談した場合、立入検査が行われます。
労働基準法119条1号において罰則も定められているため、残業代の未払いを防ぐためにも徹底的な管理が必要です。
有給休暇を取得しづらい
2019年4月の労働基準法改正により、年5日の年次有給休暇の付与が企業に義務づけられました。しかし、やりがい搾取が横行している企業では、慢性的な人材不足により有給休暇を取得しづらい雰囲気があるだけでなく、実際に取得できないケースも少なくありません。
有給休暇の取得義務に違反した場合は労働基準法違反として、経営者に罰金が課されるため、労働環境と有給休暇の扱いについては徹底的に管理しましょう。
「過重労働」については、こちらの記事をご確認ください。
やりがい搾取が起こりやすいとされる業種・職種
ここでは、やりがい搾取が起きやすい傾向にある業種、職種についてみていきましょう。あくまでも傾向的なものではあるものの、業界の傾向を知ることでやりがい搾取が起きにくい対策を立てることが可能です。
福祉・保育業界
介護士や保育士は長時間勤務も多く、重労働になりがちです。高齢者人口の増加に伴い、特に介護職は慢性的な人材不足に悩まされています。
介護士の場合は夜勤もあり負担が大きいですが、「経営が厳しい」という理由から賃金が上がりにくいケースもあるのが実状です。
教育業界
学校教員や学習塾の講師など教育に関連する仕事も、やりがい搾取につながりやすいといえます。授業のほかに教材の準備やテストの採点、個別質問の対応などの業務が多いためです。
また、定期テスト前や受験前には、時間外労働や休日出勤が増えるケースもあります。生徒の成績アップや受験合格という目に見える成果を得られる点がやりがいにつながりますが、長時間労働になりやすい構造といえるでしょう。
エンタメ業界・クリエイター
ゲームクリエイターやウェブデザイナーなどのクリエイティブな職種では、短納期や長時間労働など、過酷な条件を強いられる場合があります。ときには、制作費用と成果物のクオリティに折り合いがつかないケースもあるでしょう。
テレビ業界やアニメーター、テーマパークスタッフなども若者の憧れる気持ちが生まれやすい職業です。そのため、企業としても気持ちを汲み取りつつ、適した労働環境を用意する必要があります。
販売業・営業職
アパレルや通信キャリアなどの販売業では、厳しいノルマがあるケースだとやりがい搾取につながりやすくなるといえるでしょう。
営業職は、ノルマをクリアするためのモチベーションやクリアした場合に感じられるやりがいもふまえて、企業側は管理・調整できる労働環境を作らなければなりません。
飲食業
飲食業では、店長や社員が名ばかり管理職とされる場合があり、やりがい搾取が起こりやすい傾向にあります。アルバイトが多い店舗などでは、スタッフが急に休むと社員が穴埋めをしなくてはなりません。
コンビニ業界も、似たような傾向にあり、管理職であるという理由から残業代などが支払れないケースが問題になった事例もあります。そのため、企業は現場の状況を把握し、問題点を明確にしたうえで一つずつ問題を解決していかなければなりません。
やりがい搾取が起こりやすい会社・職場の特徴
やりがい搾取が起こりやすい職場には、業種や業界を問わず共通している特徴があります。ここでは、やりがい搾取が起こりやすい職場の特徴についてみていきましょう。
成果主義に偏っている
成果に対して報酬を払うシステムや仕組みは、日本でも浸透しつつあります。
ただし、運用が極端になった場合、やりがい搾取に結びつきやすくなります。たとえば、高評価や高報酬を得るために無理をして、業務範囲や職権を超えた命令や行動を起こす可能性があるためです。成果主義を取り入れる場合は、程よい加減を見極めましょう。
「好きだから働く」人が極端に多い
「好きだから」という理由で働く人が多い職場や業界では、モチベーションが高く保たれるため、成果につながりやすくなります。しかし、モチベーションの高さから、サービス残業などのやりがい搾取に結びつきやすくなるため、注意が必要です。
従業員側からしても、好きなことを仕事にしているため、必要以上に負荷がかかっている可能性があります。従業員に対して過度に負荷のかかった状態が継続していないか、労務の状態から確認しましょう。
根性論や精神論を押し付ける
カリスマ性の高い経営者がいる場合は、、強力なリーダーシップのもとで成果をあげやすくなる一方、やりがい搾取が起こりやすい一面もあります。体育会系的な上下関係が生まれやすく、部下に「やればできる」というような根性論を押しつけるケースがあるため、注意しましょう。
やりがい搾取を防ぐための対策
ここでは、やりがい搾取を発生させないための効果的な対策、防止する方法について解説します。企業として、現状把握から意識を変えていくことは難しい面もあるものの、やりがい搾取の状態であれば、経営そのものが難しくなっていくといえます。やりがい搾取が起こらない状態は、次の通りです。
経営者や管理職の意識改革を行う
やりがい搾取を発生させないためには、経営者や管理者の意識改革が大切です。経営者や管理職は、部下に対して根性論や精神論を用いた指導を行わないようにしましょう。「部下もやりがいを感じているはずだ」という思い込みから改善し、自社の課題を冷静に分析することが大切です。
労働環境を整える
マネジメントを行う側は、やりがい搾取の原因になりやすい長時間労働が行われていないか、再度確認しましょう。長時間労働や残業代の未払いを防ぐためには、適切な労務と労働環境の管理が大切です。正しく労務管理を行い、働きやすい環境を整えることでやりがい搾取を防止する効果が見込めます。
相談窓口を設置する
やりがい搾取は、直属の上司と部下の間で起こりやすいものです。そのため、上司に相談できずに悩むケースも多いといえるでしょう。
対策として、直属の上司ではなく、人事や総務の担当者に直接相談できる窓口の設置が有効です。社内で相談しづらい場合に備えて、公的機関や外部の相談窓口があることも周知しておきましょう。
働き方改革を行う
やりがい搾取を防ぐには、働き方改革の推進も効果的です。ストレスチェックを導入し、従業員が感じている働きづらさをあぶり出すことも早めの対策につながります。従業員の働きやすさを考慮して、テレワークやフレックスタイムを導入する方法も効果的です。
まとめ
本記事では、やりがい搾取がおきやすい業種や会社の特徴、やりがい搾取が起きる原因と対策方法についても解説しました。仮に、改善が必要な場合は、適切な労働環境の整備と経営陣の意識改革も必要です。
やりがい搾取を発生させないための防止策として、科学的人事システムタレントパレットの導入も選択肢の一つといえます。
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