7つのリテンション施策|施策強化のメリットやeNPSのステップも解説


7つのリテンション施策|施策強化のメリットやeNPSのステップも解説

近年、人手不足の深刻化が多くの企業で課題となっています。優秀な人材の流出を防ぎ、企業の持続的な成長を実現するためには、効果的なリテンション施策が不可欠です。この記事では、金銭的・非金銭的な観点から7つのリテンション施策を解説します。施策検討の指標として注目されるeNPSの活用方法についても紹介するので、参考にしてください。


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ビジネスにおけるリテンションとは?

リテンションは、「保持」「維持」を意味する言葉です。ビジネスの文脈でリテンションという場合は、主にマーケティング領域における顧客維持や、人事領域における社員の定着を指します。本記事で紹介する内容は、人事領域におけるリテンションについてです。


人事におけるリテンションとは?

人事領域におけるリテンションは、優秀な社員の継続的な就業を実現するための施策を指します。企業の持続的な成長には、経験と専門性を持つ人材の存在が欠かせません。そのため、規模や業種を問わず、すべての企業においてリテンション施策は重要といえます。


金銭的・非金銭的なリテンション施策

リテンション施策を大きく分けると、金銭的・非金銭的な施策に分けられます。金銭的施策は以下のとおりです。


・適切な評価に基づく報酬体系の整備

・報奨制度の確立

・福利厚生制度の充実


非金銭的施策は以下のとおりです。


・成長機会の提供

・コミュニケーションの活性化

・働きやすい環境作り

・組織文化の醸成


複数の施策をバランスよく遂行する必要性

効果的なリテンション施策を実現するためには、社員の現状や要望を適切に把握し、その結果に基づいて金銭的・非金銭的な施策を、バランスよく組み合わせることが重要です。


近年、社員の価値観は多様化しており、仕事に求めるものは1人ひとり異なります。たとえば、給与水準を重視する社員もいれば、働きやすい職場環境や成長機会を重視する社員もいるでしょう。特定の施策に偏ることなく、ニーズに合った多様な施策を検討してください。


金銭的なリテンション施策3選

社員の定着を図るうえで、金銭面での適切な待遇は欠かせません。報酬や福利厚生に関する効果的なリテンション施策を紹介します。


1.適切な評価に基づく報酬体系の整備

適切な報酬体系の確立は、社員の定着率向上にとって不可欠です。自身の努力や成果に見合った報酬を得られないと感じる環境では、モチベーションの低下や離職リスクの増加につながってしまいます。


部門や役割に応じた適切な目標設定ができているか、全社員が納得できる公正な評価制度の整備ができているかを、十分に考慮しましょう。また、営業部門のような成果を数値化しやすい部門だけではなく、定量的な評価が難しい部門についても、評価基準を検討する必要があります。


2.報奨制度の確立

社員のモチベーション向上と定着率の改善には、基本報酬に加えて、効果的な報奨制度の導入が効果的です。優れた成果や貢献に対して追加の報酬を提供し、社員の意欲を向上させましょう。


主な報奨制度の1つが、営業目標の達成や、プロジェクトの成功に応じて支給されるインセンティブボーナスです。また、自社株式を購入できる権利を付与するストックオプション制度も、報奨制度として効果的といえます。複数の報奨制度を組み合わせて、社員のモチベーションを引き上げましょう。


3.福利厚生制度の充実

充実した福利厚生制度は、社員の生活の質を高め、働くモチベーションを長期的に維持します。たとえば、以下の福利厚生制度を検討しましょう。


・住宅手当や家賃補助

・産前産後休暇や育児休暇

・健康診断や医療費補助


福利厚生制度を整備する際は、社員のニーズを事前に把握しておくことが重要です。アンケートやヒアリングを通じて実際の要望を調査し、優先順位をつけながら制度を設計すると、より効果的なリテンション施策として機能させられます。


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非金銭的なリテンション施策4選

金銭面以外にも、社員の定着を促進する要素があります。職場環境や成長機会に関するリテンション施策を見ていきましょう。


1.成長機会の提供

キャリア支援は、社員のモチベーション向上と定着率改善に貢献します。スキルや能力の向上を実感できると仕事への満足度が高まり、将来のキャリアビジョンが具体化されるためです。具体的な施策としては、段階的な研修プログラムの提供、資格取得支援制度の整備などが挙げられます。


社内公募制度の導入も検討するとよいでしょう。社内での成長機会と新たなチャレンジの選択肢を提供することで、主体的なキャリア開発を促し、結果として離職防止にもつながります。


2.コミュニケーションの活性化

人間関係の悪化を理由に、多くの人が離職を選択しています。コミュニケーションの活性化は、重要なリテンション施策といえるでしょう。定期的な1on1ミーティングやメンター制度を通じて、社員1人ひとりの悩みや不満を早期に発見しましょう。


また、部門を越えた連携機会の創出や、懇親会の開催など、社員同士が交流できる場を意図的に設けることで、組織全体の一体感を醸成できます。


近年は、サンクスカードを導入し、社員同士で感謝の気持ちを伝え合う企業も増えてきました。互いを認め合う環境作りは、職場の居心地を改善し、社員の定着率向上をもたらします。


3.働きやすい環境作り

働きやすい環境作りも、リテンション施策として検討すべきです。働き方改革の浸透により、柔軟な働き方を希望する社員が増加しています。フレックスタイム制やリモートワーク、時短勤務など、多様な勤務形態を整備すると、社員1人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を実現できるでしょう。


働きやすい環境作りには、業務の効率化も欠かせません。デジタルツールの活用による業務効率化や、人員配置や業務配分の見直しによる残業時間削減などで、無理なく働ける職場環境を目指しましょう。


4.組織文化の醸成

リテンション施策を効果的に機能させるために、組織文化の醸成にも取り組みましょう。社員が経営理念やビジョンに共感することで、仕事への当事者意識ややりがいを長期的に感じられるようになります。


しかし、「経営理念を朝礼で唱和する」など、形式的な取り組みだけでは、組織文化への本質的な理解や共感は得られません。社員の目線に立った分かりやすい言葉で表現する、経営層が折に触れて語る機会を設けるなどして、経営理念やビジョンへの理解と共感を深めていく必要があります。


リテンション施策が必要とされる理由

企業にとって、リテンション施策は重要です。労働人口の減少と人材の流動化という課題について、リテンション施策の必要性を解説します。


労働人口が少ないため

リテンション施策が必要とされる主な理由が、労働人口の減少です。少子高齢化の進行と団塊ジュニア世代の定年退職により、労働人口の減少は深刻な課題となっています。


人手不足は、生産性の低下やサービス品質の劣化など、さまざまな形で企業活動に影響を及ぼしかねません。優秀な人材の確保と定着は、企業の持続的な成長にとって不可欠です。


人材の流動化が加速しているため

人材の流動化が加速する状況も、リテンション施策が必要とされる要因の1つです。近年、転職市場が活発化しています。特に若年層においては、自身のキャリアを主体的に選択する意識が高まっており、より良い待遇や働き方を求めて転職を検討する人が少なくありません。


厚生労働省の調査によれば、2021年3月卒業の新規学卒就職者の3年以内離職率は、高卒者38.4%、大卒者34.9%となっています。この高い早期離職率に対応し、持続的な成長を実現するには、効果的なリテンション施策の実施が不可欠です。


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※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省


リテンション施策を強化するメリット

リテンション施策の強化は、企業に好影響をもたらします。社員のモチベーション向上から経営の安定性まで、メリットを見ていきましょう。


社員のモチベーションが向上する

リテンション施策の強化は、社員のモチベーションを向上させる効果があります。適切な待遇や成長機会の提供、働きやすい環境作りなどに取り組むと、社員は自身の仕事により大きな価値を見いだすようになるためです。


また、意欲的に働く社員が増えると職場の雰囲気が活性化し、さらなるモチベーション向上につながると考えられます。


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採用コストを圧縮できる

リテンション施策の強化により、採用コストを圧縮できる可能性があります。社員が離職すると、企業は新たな人材の確保に迫られるでしょう。しかし、求人広告の掲載料、人材紹介会社への手数料、面接にかかる人件費など、採用活動には多額のコストがかかります。


また、離職者を減らせると、限られた予算を既存社員の待遇改善や職場環境の整備に回せるようになり、より高い定着率を実現できるでしょう。


ノウハウ・知識・ネットワークの損失を防げる

リテンション施策の強化は、企業の知的財産を守る重要な役割を果たします。社員が離職すると、その人が培ってきた業務ノウハウや専門知識、取引先とのネットワークなど、貴重な無形資産が失われてしまうかもしれません。新たに採用した社員が同等のレベルに達するまでには、相当な時間と教育コストが必要となります。また、後進の育成に長けた人材が流出した場合、組織全体の人材育成効率が低下するでしょう。


そのため、優秀な人材の定着を図るリテンション施策は、企業の競争力維持において重要です。


経営が長期的に安定する

リテンション施策は、長期的な経営の安定化に必要な基盤となります。リテンション施策の効果は、離職防止にとどまりません。適切な施策を継続的に実施すると、モチベーションが高くスキルレベルの高い社員が育ち、働きやすい職場環境が整っていきます。


また、社員のスキル向上を支援する過程で、1人ひとりの能力や志向性を深く理解できるため、より適材適所の人材配置を実現できるようになるでしょう。


個々の生産性を高め、パフォーマンスを発揮しやすい環境を整えることで、企業の持続的な成長と安定的な経営を実現できます。


リテンション施策の検討に向けたeNPSのステップ

リテンション施策を検討する際は、まず社員の現状を調査しなくてはいけません。以下では、従業員エンゲージメントを測る指標として注目されているeNPSについて、現状調査の進め方を解説します。


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1.eNPSの概要を理解する

eNPS(Employee Net Promoter Score)は、効果的なリテンション施策を検討するうえで有用なツールとなります。eNPSは、従業員エンゲージメントを定量的に測定する指標です。「自社を知人や友人にどの程度推奨したいか」という質問に対して、社員に0~10点で回答してもらい、以下のようにその社員の自社に対する印象を判断します。


・7点以上をつけた社員:自社に好意的な印象を持っている

・0~6点をつけた社員:自社に否定的な印象を持っている


加えて、単に数値を把握するだけではなく、「なぜその評価をつけたのか」「何に不満を感じているか」といった詳細な質問も併せると、具体的な改善ポイントを把握できます。


2.調査の準備をする

eNPS調査の実施に向けて、まず必要な予算と人員を確保しましょう。調査の規模や方法に応じて適切な予算を設定し、人事部門を中心とした調査チームを編成します。


3.質問を考える

以下のような具体的な質問を考案し、職場環境の課題を明らかにしましょう。


・労働時間は適切だと感じていますか

・成果に見合った報酬を得られていますか

・キャリア形成の機会は十分にありますか

・上司や同僚とのコミュニケーションは円滑ですか

・仕事にやりがいを感じていますか


4.調査を実施し分析する

収集したデータを分析する際は、まず業界のベンチマークと自社のeNPSスコアを比較し、客観的に現状を把握してください。そのうえで、個別の質問への回答を詳しく分析すると、リテンション施策を講じて優先的に強化すべき部分が明確になります。


5.施策を決定する

eNPSの分析結果に基づいて、具体的なリテンション施策を策定し実行に移しましょう。eNPS調査は定期的な実施が望まれます。施策の効果を測定・検証し、必要に応じて改善を重ねてください。PDCAサイクルを回し続けるにつれ、施策がブラッシュアップされていきます。


タレントパレットのアンケート機能

タレントパレットは、効果的なリテンション施策の検討・実施をサポートするタレントマネジメントシステムです。eNPSやテキストマイニングを活用すると、社員の生の声を可視化できるようになり、自社の課題を明確に把握できます。また、「離職ワード機能」を活用すると、離職の可能性が高い社員の早期発見が可能です。


さらに、タレントパレットには人材データベースや人事評価など、多彩なタレントマネジメント機能も搭載されています。数々の機能を組み合わせることで、より効果的なリテンション施策の立案・実行が期待できるでしょう。


リテンション施策へのタレントパレット活用事例

株式会社プレナスは、人手不足という課題解決に向け、タレントパレットのパルスサーベイを活用しました。定期的な調査により、人間関係や健康面での課題を抱える社員を早期に発見し、迅速にヒアリングや配置転換などの対応をすることで、離職防止に成功しています。


また、タレントパレットは、面談内容やコンディションの記録を時系列での管理が可能です。社員1人ひとりの状況を長期的な視点で把握・フォローできる点も、離職防止に役立つとの評価を得ています。


まとめ

労働人口の減少や加速する人材の流動化に対応するためには、効果的なリテンション施策が不可欠です。リテンション施策の強化は、定着率の向上だけではなく、企業の持続的な成長と安定的な経営にもつながります。施策を検討する際は、eNPS評価などを通じて、社員の現状を調査しましょう。


タレントパレットは、多くの導入実績を持つタレントマネジメントシステムです。長きにわたるHRテック分野での経験と最新の知見を基に開発され、導入から運用まで一貫したコンサルティングサポートを受けられます。リテンション施策をお考えの人は、ぜひタレントパレットの導入を検討ください。


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