リスキリングを支援する補助金・助成金|リスキリングの費用を抑える方法を徹底解説


リスキリングを支援する補助金・助成金|リスキリングの費用を抑える方法を徹底解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「今後の事業展開を見据えて、DXに対応できる人材の育成にもっと力を入れたい」

「リスキリングを社員に受けさせたいけど、けっこうお金がかかりそうだな」

「リスキリングをする企業に対して補助金か何かないだろうか?」

と考えている方は多いのではないでしょうか?


DX化に伴いリスキリングの導入を検討している企業は多いです。しかし、リスキリングの導入には費用がかかるため、躊躇している経営者の方もいらっしゃるでしょう。リスキリングの費用を抑える方法に助成金や補助金の活用がありますが、これらを受給するのは容易ではありません。


そこで本記事では


  • リスキリングとは何か
  • 助成金と補助金の違い
  • おすすめの助成金
  • 助成金や補助金を申請する際の注意点


について解説します。


「助成金や補助金を活用して、費用を抑えながらDX人材の育成を図りたい」という方のお悩みを解決できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。


リスキリングとは新たなスキルや知識の習得のための取り組み

リスキリングとは、社会の変化に伴い働き方も変化する中で、今後の業務で新たに必要となるスキルや知識を習得するための取り組みのことです。


第4次産業革命と呼ばれる現代は、以下のような業務はロボットに代替されつつあります。


  • 製造
  • 事務作業
  • 倉庫内の肉体労働


一方、プログラム設計業務やシステム開発などの業務は、今後一層増えていくことが予想されます。需要の高まる業務を行うためには、新たに学び、スキルや知識を身につけることが重要です。


新たなスキルや知識を身につけるためには、リスキリングが効果的ですが、費用もかかります。そこで本記事では、リスキリングに要した費用の一部を支給してくれる助成金や補助金について紹介します。


リスキリングにおすすめの3種類の助成金

ここからは、リスキリングでおすすめの3種類の助成金と、その概要を解説します。


  • 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース
  • 人材開発支援助成金 人への投資促進コース
  • 東京都 DXリスキリング助成金


受給するための要件は多いですが、分かりやすく表にまとめてあるので、一つずつ詳しく見ていきましょう。


人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース

人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業を立ち上げるなどの事業展開をする際に、社員に対して新たな技能や知識の習得にかかる費用の一部を助成するものです。


ここでいう事業展開とは、新たな製品を製造したり、新たな商品やサービス提供を行ったりして、新たな分野に事業を推し進めることを指します。具体例として以下のものがあります。


  • 日本料理店を営んでいる事業主が、新たに台湾料理店を開業する
  • 着物の着付け教室を経営していた事業主が、新たにオンラインサービスの提供を始める


支給を受ける要件や助成率・助成額などの詳細について掘り下げて見ていきましょう。


支給対象となるための条件

人材開発支援助成金を申請するためには、訓練を開始する1ヵ月前までに訓練実施計画届を提出しなければなりませんが、他にもさまざまな要件を満たすことが必要です。


支給対象事業主

  • 雇用保険の適用事業所の事業主であること
  • 労働組合等に聴取を行い、事業内職業能力開発計画や年間職業能力開発計画を策定し、従業員へ周知していること
  • 職業能力開発推進者を選出していること
  • 社員が職業訓練等を受けている期間に対応する適正な賃金を支払っていること
  • 過去の助成金の支給・不支給の決定に係る書類等を整備し5年間保存していること
  • 助成金の支給・不支給決定に係る審査に協力的な事業主であること
  • 事業展開等実施計画の作成を行う事業主であること


対象労働者

  1. 訓練期間中に事業主の事業所の雇用保険被保険者であること
  2. 訓練計画届提出時に「訓練別の対象者一覧」で届出されてるものであること
  3. 実訓練の時間数が10時間以上であること
  4. OFF-JTで実施される訓練であること
  5. 実際に受講した訓練の受講時間数が、総訓練時間数のうちの8割以上であること
  6. 訓練等を受講し終えていること
  7. 以下のいずれかに該当する訓練であること
    1. 事業展開にあたって、新たな分野で必要とされる専門技能や知識の習得を目的としている
    2. 事業展開は行わないものの、企業内でDX化またはグリーン・カーボンニュートラル化を推進するにあたって必要とされる専門技能や知識の習得を目的としている


職業能力開発推進者は、主に以下の2つのことを行います。


  • 事業内職業能力開発計画の作成および実施
  • 職業能力開発に関して労働者への相談対応や指導


また、グリーン・カーボンニュートラル化とは、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量と、森林管理や植林による吸収量を均衡させることをいいます。


助成率と助成額

助成率と助成額は以下のとおりです。


助成率と助成限度額
経費助成率 賃金助成額 (1人1時間あたり) 1年度における1事業所あたりの助成限度額
中小企業 75% 960円 1億円
大企業 60% 480円 1億円
経費助成限度額(受講者1人あたり)
実訓練時間数 中小企業 大企業
10h以上100h未満 30万円 20万円
100h以上200h未満 40万円 25万円
200h以上 50万円 30万円
なお、中小企業とは以下のAまたはBの条件に該当する企業のことを指します。
主たる事業 A: 資本金額または出資総額 B: 常時雇用する労働者数(企業全体)
小売業(飲食店含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

業種によって、中小企業となる資本金や労働者数の条件が変わってくるため、注意が必要です。


人材開発支援助成金 人への投資促進コース

人材開発支援助成金の人への投資促進コースでは、雇用保険の被保険者を対象に職務に関連している専門的技能や知識の習得のための訓練を実施した場合に、その一部を助成するものです。人への投資促進コースとしては、以下の5種類の助成があります。


  • デジタル/成長分野
  • IT分野未経験
  • サブスクリプション
  • 自発的能力開発
  • 教育訓練休暇


支給要件と助成率・助成額について深掘りして見ていきましょう。


支給対象となるための条件

支給対象となるための条件は以下のとおりです。


支給対象事業主

  • 雇用保険の適用事業所の事業主であること
  • 職業能力開発推進者の選任および事業内職業能力開発計画の策定を行った上で、従業員に周知していること
  • 訓練期間中も労働者に適正な賃金を支払っていること
  • 訓練に要した費用を事業主において全額を負担していること
  • 会社都合で退職した者が過去6ヶ月の間にいないこと
  • 労働局等の調査に協力的であること
  • 過去に不正受給を行い不支給措置期間にないこと


対象労働者

  • 訓練期間中に事業主の事業所の雇用保険被保険者であること
  • 訓練計画届提出時に「訓練別の対象者一覧」で届出されてるものであること
  • 実際に受講した訓練の受講時間数が、総訓練時間数のうちの8割以上であること


社員が8割以上の時間受講したかどうかを確認するために、企業側が社員の受講履歴について管理することが求められます。


助成率と助成額

助成率と助成額は、以下の表のとおりです。



訓練メニュー 経費助成率 賃金助成額
高度デジタル人材訓練 60〜75% 480〜960円
成長分野等人材訓練 75% 960円(国内の大学院の場合)
情報技術分野認定実習併用職業訓練 45〜60% 380〜760円
定額制訓練 45〜60% -
自発的職業能力開発訓練 45% -
長期教育訓練休暇等制度 制度の導入経費20万円 1日当たり6000円

賃金助成とは、訓練期間中に社員に支払った所定内の賃金に対して行われる助成のことです。


東京都 DXリスキリング助成金 

東京都が実施している助成金に「DXリスキリング助成金」があります。これは、都内の中小企業の社員がDX講座を受講する費用を支援する助成金です。具体的には、民間の教育機関等が開講しているDX講座を派遣やeラーニング等によって受講させると、その費用の一部が支給されます。


令和4年度分は募集が終了していますが、令和5年度分についても4月1日以降に交付申請期間として募集があります。


支給対象となるための条件

支給対象となるための条件は以下のとおりです。


  • 中小企業であること
  • 本社または事業の登記が東京都内にあること
  • 訓練費用を社員に負担させていないこと
  • 助成を受ける予定の訓練について、国または地方公共団体による助成金を受けていないこと


助成対象となる訓練は以下のとおりです。


  • 外部の講師を自社に招き実施する訓練
  • 民間教育機関が提供する集合あるいはeラーニング等で実施する訓練
  • DXに関連する専門的知識・技能の習得および向上を目的とした訓練または資格取得を目的とした訓練であること


また、訓練については以下の1または2のいずれかを満たす必要があります。


  1. 教育機関等がホームページ等で講座案内および一人当たりの1講座の受講料を明らかにしていること
  2. 企業の課題に即した内容が企画・実施され、外部講師による講座における1時間あたりの費用が10万円以内であるオーダーメイド型の講座であること


さらに訓練は以下の訓練である必要があります。


  • 上記のオーダーメイド型の講座は6時間以内の訓練時間であること
  • 単講座は訓練時間が20時間以上あること(複数の講座の組み合わせ可)
  • 助成対象事業者が社員の受講履歴を確認できること
  • 助成対象期間内の実施にする訓練であること


助成の対象となる受講者は以下のとおりです。

  • 中小企業が雇用している従業員
  • 常時勤務している事業所が都内にある者
  • 訓練時間のうち8割以上を出席していること


ここでいう中小企業の定義は、人材開発支援助成金の支給要件と同じです。


助成率と助成額

助成率と助成額は以下のとおりです。


助成率 助成額
助成対象費用の2/3 64万円が上限

申請は1事業者につき1回のみであることに注意が必要です。


リスキリングを支援する教育訓練給付金制度

助成金以外にも、リスキリングを支援する教育訓練給付金制度があります。これは、能力開発やキャリア形成のサポートを通じて、働く方々の雇用の安定や就労促進を目指す訓練を受講した際に、その一部が支給される制度です。


一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めて受給する場合は、当分の間1年以上)ある人が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、修了した場合に支給される給付金です。

厚生労働大臣の指定する教育訓練の例として、以下のものがあります。


  • ITパスポート
  • 衛生管理者
  • 簿記2級
  • 気象予報士


支給額は、教育訓練にかかった費用の20%相当額について10万円を上限に支給されます。ただし、費用が4千円を超えない場合には、支給はありません。


特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金の対象者の条件は、一般教育訓練給付金と同じです。ただし、厚生労働大臣の指定する教育訓練が、一般教育訓練給付金とは異なります。


  • 基本情報技術者試験
  • Project Management Professional(PMP)
  • 税理士
  • 社会保険労務士

などが一例です。


支給額は、教育訓練にかかった費用の40%相当額について20万円を上限に支給されます。ただし、費用が4千円を超えない場合には支給はありません。


専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めて受給する場合は、当分の間2年以上)ある人が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、修了した場合に支給される給付金です。厚生労働大臣の指定する教育訓練の例として、以下のものがあります。


  • ITSSレベル3以上のIT関連の資格
  • 第四次産業革命スキル
  • 看護師
  • 保育士


支給額は、教育訓練にかかった費用の50%相当額について40万円を上限に支給されます。ただし、費用が4千円を超えない場合には支給はありません。


教育訓練終了後にあらかじめ定められた資格を取得し、訓練受講の終了日から1年以内の期間に被保険者として雇用されると、さらに費用の20%が上乗せで支給されます。この場合、合計で70%相当額が支給されますが、その上限は168万円です。


10年を経過するまでに受講を開始した専門実践教育訓練の給付金の合計額は、168万円が上限です。しかし、最短期間が4年である専門実践教育訓練を受講した場合は、3年目の受講が終了したときに4年目の受講相当分として56万が上限で上乗せ支給されます。


助成金を申請するときの注意点

ここでは、申請の際の注意点について解説します。


  • 不正受給には厳しいペナルティが課せられる
  • 助成金の支払いまでに時間がかかる
  • 普段から労務管理をしっかり行う


これらのことをしっかりと理解し、正しい申請をすることが求められます。


不正受給には厳しいペナルティが課せられる

虚偽の内容に基づいて助成金を申請し受給すると、不正受給として厳しいペナルティが課せられます。コロナ禍における雇用調整助成金では、令和2年9月~3年12月末までの間で261件の不正受給があり、その額は約32.3億円にもなりました。


不正受給を行うと企業名などが公表され、悪質なものは刑事告発されることもあります。


助成金の支払いまでに時間がかかる

助成金は、すぐに支給されるわけではなく、審査などを経て支給決定される必要があります。申請の混み具合にもよりますが、助成金の支給が決定されてから実際に振り込みがあるまでは、半年以上かかることがあります。


そのため、助成金をあてにしなくても事業運営ができる資金繰りが必要です。


普段から労務管理をしっかり行う

助成金の申請には以下のようにさまざまな書類が必要です。


  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 就業規則
  • 労働者名簿


これらの資料によって、労働者の賃金が最低賃金を割っていないか、残業代が支払われているかなどもチェックされ、この段階で問題があると審査が通らないこともあります。


また、法改正によって就業規則も見直す必要があるため、最新のものを作成し労働者に周知することが求められます。


助成金の申請段階になって慌てないように、普段からの労務管理を怠らないようにしましょう。労務管理がスムーズにできるサービスがあるので、それを利用するのも一つの手です。


人事業務の効率化、データ活用をするならタレントマネジメントシステムの導入が必須


人事業務をDX化することで、社員データの一元化・人材検索・人事評価・配置検討などの幅広い業務を効率化できるようになります。また、人材育成・最適配置・社員パフォーマンスの最大化など、組織力向上を目的とした一歩先のタレントマネジメントまで実現が可能です。

また、タレントマネジメントシステムを導入すれば、社員データを集約し人事評価のペーパーレス化や異動シミュレーション、ハイパフォーマー分析など、高度な施策が実施できます。タレントマネジメントを取り入れて、自社のリソースを最大限に活用しましょう。

助成金・補助金を活用したリスキリングで業務効率をあげよう

助成金や補助金を活用すると、リスキリングの費用を抑えられますが、支給を受けるには申請しやすい土台が必要です。そのためには、労務管理をしっかり行いましょう。


タレントパレットが提供しているサービスには以下のようなものがあり、労務管理をスムーズに行うためにサポートを行います。


  • 労務管理から各種手続きまで効率良くオールインワンでできる
  • 入力チェックは自動なので目視の抜け漏れ確認はしなくても安心できる
  • 申請データは自動で更新されるので管理がラクにできる


他にも、タレントパレットでは社員のスキルを見える化できるサービスもあるので、リスキリングの導入においてどの社員にどの研修が必要かといった戦略が立てやすいでしょう。


人材育成を有利に行うためにも、ぜひタレントパレットのサービスの利用をご検討ください。


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