リフレクションの重要性とメリット|役立つフレームワークや注意点などを解説


リフレクションの重要性とメリット|役立つフレームワークや注意点などを解説

人材育成の効果を高める手法として、リフレクションが注目されています。しかし、リフレクションと反省・フィードバックの違いがわからず、どのように人材育成に活用するか悩んでいる担当者もいるでしょう。本記事では、リフレクションの意味や、人材育成で意識するメリット、役立つフレームワークなどを紹介します。ぜひ参考にしてください。


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人材育成におけるリフレクション(内省)の意味

リフレクション(Reflection)は、内省という意味合いを持つ言葉です。人材育成でリフレクションという場合は、特定の出来事を振り返る思考のプロセスを指します。


通常の業務から距離を置き、自分自身に起きたことや感じたこと、その結果考えたことなどを振り返ると、社員は成長につながる気づきを得られるでしょう。人材育成では、リフレクションを通じて、経験から学びを引き出すことが大切だとされています。


リフレクションと反省の違い

リフレクションと反省は、異なる概念です。反省の場合は、主に失敗や問題点に焦点を当て、原因分析と再発防止を試みます。対して、リフレクションは反省よりも包括的なアプローチです。リフレクションでは成功体験からの学びも重視し、さまざまな経験から得られる気づきを、将来の成長につなげることを目的としています。


リフレクションとフィードバックの違い

リフレクションとフィードバックは、いずれも成長を促すアプローチです。ただし、具体的なやり方は異なります。


フィードバックは、上司や先輩などの他者から客観的な評価やアドバイスをもらう行為です。一方、内省は自己との対話によりなされる主体的な振り返りといえます。リフレクションとフィードバックを組み合わせると、より深い学びにつながるでしょう。


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リフレクションを人材育成に取り入れる重要性

リフレクションが重視されるべき理由は、急速な環境変化に対応できる組織づくりが求められているためです。主体的に考え行動できる人材は、環境の変化に柔軟に対応できるでしょう。


リフレクションを通じた振り返りは、自己の経験を主観的または客観的に見つめ直す練習になります。2つの視点を意識する習慣がついた社員は、組織の持続的な成長に貢献できるでしょう。


リフレクションを人材育成で重視するメリット

人材育成でリフレクションを重視するメリットを解説します。強固な組織づくりに向け、リフレクションの習慣を導入しましょう。


社員が成長する

次に何をするべきかを自ら考えられる社員は、他者からの指示やアドバイスがなくても成長し続けられます。


自ら課題や改善点に気づいた社員は、仕事やスキルアップに対する興味やモチベーションが高まるでしょう。社員が研修や与えられた課題に前向きに取り組むと、企業は人材育成を効率よく行えるようになります。


また、リフレクションは、社員のメンタル面に配慮した育成にも効果的です。リフレクションは、ポジティブな体験とネガティブな体験のいずれも包括的に振り返るため、社員は過度に自責の念にかられずに済みます。学びの機会として失敗や問題点と建設的に向き合った社員は、着実に成長できるでしょう。


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リーダーシップが養われる

マネジメント力は、リーダーに求められるスキルのひとつです。リフレクションを通じて培われる客観的な分析力と課題発見能力は、マネジメント力を向上させます。


また、リフレクションの習慣を身につけたリーダーは、チームメンバーに対してもタイミングよく振り返りを促せるでしょう。チームにリフレクションの習慣が浸透すると、全体の分析力と課題発見能力の向上が見込めます。


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組織の生産性や競争力が向上する

社員個々が業務やスキルアップに対して高いモチベーションを持ち、リーダーが効果的なマネジメントを実践できる組織では、自然に生産性が向上するでしょう。


リフレクションが組織文化として定着すると、環境変化に迅速に適応するため、継続的な課題改善を促進することが可能です。優れた適応力は市場における競争優位性の確立や、企業の持続的な成長につながるでしょう。


リフレクションの4つのステップ

リフレクションを効果的に実践するためのステップを4段階に分けて解説します。


1.リフレクションの対象を決める

まずはリフレクションの対象となる出来事を決めてください。対象が曖昧だと思考が拡散し、建設的な気づきを得にくくなるためです。


リフレクションの対象は、成功体験でも失敗や問題点でもどちらでも構いません。たとえば、以下のような出来事が挙げられます。


  • 報告書を締め切りよりも3日前倒しして提出できた
  • 業務に関して提案したところ、チーム内で採用された
  • 商談で緊張してしまい、説得力のある説明ができなかった
  • 誤字脱字が多い状態で、企画書を提出してしまった


2.出来事を分析する

リフレクションの対象について、実際の出来事を細分化してください。たとえば、「報告書を締め切りよりも3日前倒しして提出できた」という成功体験は、以下のプロセスに細分化できます。


  • 必要な情報・データの洗い出し
  • 過去の類似報告書のチェック
  • 全体的な構成の設計
  • 本文や図、グラフなどの作成
  • 自分自身での見直しと先輩社員によるチェック
  • 修正
  • 報告書の提出と上司への説明


3.よかったこと・改善が必要なことを振り返る

細分化した各プロセスについては、成功要因と改善点の両面から丁寧に振り返ることが大切です。振り返った内容は、上司や先輩社員に報告してもらうとよいでしょう。報告のフィードバックを受けると、社員本人が気づかなかった視点や学びが加わり、より有意義なリフレクションとなるためです。


4.リフレクションを繰り返す

リフレクションで得られた気づきを実践に移し、結果を再び振り返ると、継続的な改善サイクルを確立できます。


リフレクションを継続するポイントは、成功か失敗かにとらわれずに振り返りを続けることです。リフレクションの習慣化により、業務遂行能力は着実に向上し、行動が洗練されていきます。


リフレクションに関する手法や考え方

リフレクションに関する手法や考え方は、どのようなものがあるのでしょうか。以下で、経験学習モデル・ダブルループ学習・ジョハリの窓について解説します。


経験学習モデル

経験学習は、日々の経験から得られた気づきを整理し、次の行動に反映させる手法です。経験学習は、「経験」「内省」「抽象化」「能動的実験」という、4つのステップで構成されています。4つのステップにおいて、リフレクションの位置づけは、文字どおり「内省」です。経験から意味のある学びを引き出すために、リフレクションは重要な役割を果たします。


ダブルループ学習

ダブルループ学習は、課題解決において前提となる条件を見直す考え方です。部署内の慣習や、社員本人の過去の成功体験に基づく固定観念を意識的に問い直させると、表面化していない本質的な課題が明らかになるケースがあります。


ダブルループ学習によって物事の前提を再検討する習慣を得ると、より深いリフレクションにつながるでしょう。また、前提を疑う姿勢を意識すると、環境変化への対応力が培われます。


ジョハリの窓

ジョハリの窓では、自己認識と他者からの認識を、以下の「4つの窓」で整理する手法です。


  • 自分も他者も知っている自分(開放の窓)
  • 自分は知っているが他者は知らない自分(秘密の窓)
  • 自分は知らないが他者は知っている自分(盲点の窓)
  • 自分も他者も知らない自分(未知の窓)


「盲点の窓」の存在は、他者からのフィードバックを通じて、自己理解を深める重要性を示唆しています。


リフレクションに役立つフレームワーク

リフレクションに役立つフレームワークとしては、KDA法・KPT法・YWT法が有効です。以下でそれぞれの特徴を解説します。


KDA法

KDA法は、個人でのリフレクションを効果的に進めるためのフレームワークです。KDA法では以下の3つの視点から経験を整理し、具体的な行動計画につなげます。


  • Keep(継続すべきこと)
  • Discard(今後はやらない、または改善した方がよいこと)
  • Add(新しく始めること)


KDA法は、シンプルさゆえに、無理なく継続的な改善サイクルを確立できるでしょう。


KPT法

KPT法は、プロジェクトの結果を振り返る際に用いられやすいフレームワークです。プロジェクトから得られた学びを、以下の3つの視点で整理します。


  • Keep(今後も活かすべき強み)
  • Problem(改善すべき課題)
  • Try(具体的な改善案)


KPT法は、プロジェクトチームでの振り返りはもちろん、個人の成長のためにも活用できるでしょう。


YWT法

YWT法は日本で開発されたフレームワークです。人材育成の分野で広く採用されており、以下の3つの要素で経験を整理します。


  • Y(やったこと)
  • W(わかったこと)
  • T(次にやること)


YWT法は、経験を対象としたリフレクションにおすすめです。「やったこと」「わかったこと」などのシンプルな問いかけにより、手軽なリフレクションを促進し、成長につながる行動を促します。


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リフレクションに関する理論

リフレクションに関する理論として、ジョン・デューイと、ドナルド・ショーンの理論を見ていきましょう。


ジョン・デューイの理論

ジョン・デューイは、経験から深い学びを得るには、意識的な思考のプロセスが不可欠と提唱しました。


ジョン・デューイによると、経験は「場当たり的な学び」と「リフレクティブな学び」に大別されます。場当たり的な学びでは、行動と結果の関係性が明確に理解されないまま経験が蓄積されるため、特定の出来事につながる本質に気がつけません。


一方、経験を深く考察し、因果関係を理解するリフレクティブな学びでは、より確実な学びを得られます。


ドナルド・ショーンの理論

ドナルド・ショーンは、ジョン・デューイの理論を基礎としながら、新たな理論を展開しました。


ドナルド・ショーンによると、リフレクションは、「行為のなかのリフレクション(行動しながらの振り返り)」と、「行為についてのリフレクション(行動後の振り返り)」に分類されます。行動中・行動後の両方のリフレクションにより、より深い学びを得られる可能性が提案されました。


社員の内省を深めるリフレクション会議

社員の成長を支援するために、日常業務を一時的に中断して、リフレクションのための時間を確保しましょう。


リフレクション会議(リフレクション・ミーティング)は、メンバー同士が内省から得られた気づきを共有し、互いの学びを深める場として機能します。


参加者は他者の報告を通じて、1人では気づけなかった視点や解釈を得られることが大きなメリットです。特に、自己分析が苦手な社員や、特定の考え方に固執しがちな社員にとって、多様な視点や解釈に気づけるリフレクション会議は、貴重な機会といえるでしょう。


効果的なリフレクションをするための注意点

より深い気づきと学びを得るために、効果的なリフレクションをするための注意点を解説します。


よい点と悪い点をバランスよく見る

効果的なリフレクションをするためには、成功体験と失敗や問題点の両面を、バランスよく取り上げなければなりません。失敗や問題点のみに焦点を当てると、反省に終始してしまい、建設的な学びを得られないためです。


成功体験から得られた気づきと、改善が必要な点の両方を丁寧に振り返ると、成長を促せるでしょう。


他者ではなく自身について内省する

効果的なリフレクションのためには、自分自身の行動や判断に焦点を当て、自己の変容可能な部分に目を向ける必要があります。


リフレクションの本質は、自己を深く見つめ直すことです。他者の考えや行動を推測しても、正確な理解が難しいだけではなく、自分の成長にはつながりません。


また、失敗や問題点の原因を他者に求める思考パターンは、職場の人間関係を損なうリスクがあります。


短時間でも振り返る習慣を身につける

「時間がなくて、リフレクションに割く余裕がない」と考える社員もいるかもしれません。ただし、短時間でもリフレクションは可能です。


たとえば、経験をメモに書き起こす習慣はリフレクションにつながります。具体的な手順は以下のとおりです。


  1. 商談や会議の直後に3~5分程度の短い振り返りの時間を確保する
  2. 相手の反応や自分の思考、感情についての簡単なメモを書き記す
  3. 残したメモを隙間時間で見返す習慣をつける
  4. ふと新たな気づきを得られる瞬間があり、次の行動へとつなげられる


感情に引っ張られないようにする

効果的な内省を行うためには、感情に流されないように、客観的な視点で状況を分析しましょう。特に、リフレクションに不慣れな段階では、成功や失敗に対する強い感情が、冷静な振り返りを妨げてしまうケースがあります。


また、完璧主義的な傾向が強い人は、ささいな失敗にも必要以上に心を痛めがちです。リフレクション自体が精神的な負担とならないように、取り組みの本来の目的を社員に意識させる必要があります。


まとめ

リフレクションは、経験から深い学びを引き出すための振り返りです。成功体験と失敗や問題点の両面に着目する過程で、社員は自身の成長につながる気づきを得られます。


リフレクションに不慣れなうちは、感情に引っ張られたり、失敗や問題点にとらわれすぎたりする社員もいるかもしれません。リフレクションに役立つフレームワークや、リフレクション会議などの活用を促し、個人の成長と組織全体の進化を実現しましょう。


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