レコグニションの概要
まずはレコグニションの基本的な概要について、以下で解説します。
レコグニションとは
レコグニション(recognition)は、日本語で承認や認識などの意味を持つ言葉です。人事の分野においては、社員の業務内容・姿勢や実際の成果に対して、適切な評価実施する方法と定義されます。
レコグニションでは、従来のように給与やインセンティブの報酬などで成果を讃えるのではなく、表彰や賞賛などの金銭的な要素を含まない方法で評価するのが特徴です。例えば、社員表彰制度・資格取得奨励制度などが、レコグニションの具体例として挙げられます。
ソーシャルレコグニションの意味
上記で解説したレコグニションに対して、社交的な要素がプラスされた制度が「ソーシャルレコグニション」です。ソーシャルレコグニションは、組織の上層部や人事部が社員の成果を讃えるのではなく、社員同士がお互いに認め合う仕組みを構築した状態を指します。
レコグニションを導入することで、社員同士が互いの成果を評価し合う文化が形成されるため、モチベーションアップや協力し合う意識の醸成などにつながります。
レコグニションが重要視されている背景
レコグニションによる評価方法が重要視されているのには、優秀な人材確保が困難となっている点や、労働人口そのものの減少が背景にあります。少しでも離職率を低下させるために、金銭以外の面で社員を評価して会社へのエンゲージメントを向上させたいと考える企業が増えているのです。
また、近年は社員が仕事に感じるモチベーションが多様化している点も、レコグニションが重要視される理由の1つです。必ずしも金銭に重きを置く社員ばかりではなく、仕事へのやりがいを重視する社員も増えています。そういった社員に対して給与面を優遇しても、仕事のモチベーションが向上しない可能性があります。
そこでレコグニションを実施して、その人そのものを認めて承認欲求を満たすことが重視されはじめているのです。
レコグニションとリワードの意味と違い
レコグニションと同様に人事で使用される制度に、「リワード」というものがあります。金銭的な要素を使わずに成果を評価するレコグニションとは異なり、リワードは金銭的な要素を社員に与える点が特徴です。成果に合わせたインセンティブや、特別ボーナスの実施など、通常の給与にプラスして金銭を支払うことでモチベーションを高める施策となっています。
レコグニションとリワードはそれぞれ効果の出る社員が異なるため、両方を導入して適宜活用するのが望ましいでしょう。
レコグニション制度の導入によって得られるメリット
レコグニションを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
離職率低下につながる
レコグニション制度を導入することは、離職率の低下につながります。レコグニションによって成果を讃える環境を構築することで、社員は自分の働きがきちんと会社に認識されていることを知れます。結果的に仕事へのモチベーションが向上し、成果を出すための工夫や努力を欠かさない人材へと成長することに期待できるでしょう。
生産性・エンゲージメント向上が期待できる
レコグニションで社員の仕事ぶりを評価することは、仕事の生産性や会社へのエンゲージメントを向上させるメリットもあります。表彰などによって成果を評価することで、社員は会社を特別な存在と認識するようになります。結果的に、仕事へのモチベーションが高まって生産性が向上したり、エンゲージメントが高まって会社に貢献したいという思いが強まったりするでしょう。
成果や数値化しにくい部署を適切に評価できる
レコグニションの定着は、成果を数値化しづらい部署にいる社員を適切に評価することにもつながります。例えば社内のバックオフィスで働く経理や総務は、営業などのように成果を数値化できないため、定性的な評価が基準になることが多いです。
インセンティブなどで評価するのが難しくなるので、レコグニションによって金銭以外の方法で成果を認め、会社が必要としていることを伝えるのがポイントです。
レコグニションを実施する手順・方法
レコグニションを実施する際には、以下の手順と方法が参考になります。
評価制度の整備と見直しを行う
レコグニションを実施するのなら、評価制度に関するルール作りを進めます。レコグニションの対象となる社員や実施のタイミング、報酬を与える具体的な方法を整備します。
評価制度をレコグニション向きに整備しないと、社員同士に不公平感が生まれる可能性があります。「自分だけ正当に評価されていない」と感じる社員は、モチベーションの低下などに悩まされて退職に追い込まれるリスクも懸念されるでしょう。
レコグニションを与える基準をつくる
レコグニションによる報酬を与える基準を設定し、条件を社員に明示します。スローガンなど曖昧な言葉をレコグニションの基準にするのではなく、具体的に何をすればレコグニションの対象となるのか、どんな報酬を得られるのかを認識してもらうのが重要です。
レコグニションの基準を職場に浸透させれば、社員にとって業務上の目標となる可能性があります。それは社員の積極的な行動を促し、成果を出す原動力となることに期待できるでしょう。
効果測定を実施する
レコグニションのために評価制度を整備して基準を設けたら、実際に表彰などを実施して社員の成果を評価します。レコグニションを与えて終了ではなく、対象となった社員がその後仕事に対してモチベーションを高めたかなどをチェックし、効果測定を行います。
効果測定は定期的に繰り返し、その度にレコグニションの内容を見直すのがポイントです。アンケートなどを用いて、社員が実際にレコグニションをどう思っているのか把握することも検討されます。
レコグニションを適切に定着させるポイント
レコグニションを社内に定着させるには、以下のポイントを踏まえた施策の実際が重要です。
調査を行い効果を数値化する
レコグニションの実施時には、社内でインタビューやアンケートを積極的に実施し、その効果を数値化します。レコグニションが社員にとって効果のある施策として機能しているのか、きちんと制度として認識されているのかなどを、具体的な数値で把握するのがポイントです。
「eNPS」を活用して、レコグニションの効果を数値するのも1つの方法です。eNPSとは、「自分の職場を親しい知人や友人にどれくらい勧めたいか」といった質問に対して、0〜10の数値で回答する調査方法です。主に社員のエンゲージメントを調査するために実施されますが、質問内容を変更することでレコグニションの効果測定にも応用できます。
数値をもとに施策の良し悪しを判断して改善する
各調査で数値化した結果を参考にして、レコグニションの浸透度や効果を客観的に評価します。社員にレコグニションの意味や意義が伝わっているか、レコグニションが社員のモチベーションにつながっているかなどを、数値と合わせて確認しましょう。
効果に疑問がみられる場合には、具体的な改善点を発見して必要な対策を実行します。レコグニションの効果を最大限に引き出せるように、あらゆる施策を実行して効果測定を繰り返していくのがポイントです。
まとめ
社員の成果を評価する方法は、お金だけではありません。表彰などによる成果の認識と承認が、お金以上に社員のやりがいを生み出すこともあるでしょう。この機会にレコグニションの基本を確認し、新たな評価制度として導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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