パルスサーベイの基本知識
パルスサーベイの基本知識をおさらいしましょう。ここでは、パルスサーベイの意味やパルスサーベイを行う理由、一般的な社員意識調査との違いを解説します。
パルスサーベイとは
パルスサーベイの「パルス」は、日本語に訳すと脈拍のことです。パルスサーベイは社員の意識調査を行う手法のひとつであり、短期反復型の意識調査となります。パルスサーベイを行う目的は、企業などの組織と社員などの個人との関係性について、健全性を測ることです。
パルスサーベイを行うことによって、社員の会社に対する愛着心、仕事に対する思い入れなどを表すエンゲージメントを把握できます。
一般的な社員意識調査との違い
パルスサーベイと一般的な意識調査の違いは、頻度と設問項目などです。一般的な意識調査のことを「センサス」といい、年に1度から2度の頻度で、多くの設問項目を準備し時間をかけて行います。対象は全社員であり、設問が多ければ多いほど時間を要するためコストがかかり、分析にも時間が必要です。
パルスサーベイは、少ない設問数を短期間で反復して行なうため、時間やコストを削減できます。
ITの進化でパルスサーベイが容易に
パルスサーベイは短期反復の意識調査であるため、これまでは人事などの担当者に大きな負担がかかっていました。しかし、IT技術の進化によってパルスサーベイの実施が容易になっています。必要な意識調査をコミュニティツールで行えば、人事担当者の聞き取る必要がなくなり、負担は大幅に軽減されます。分析もAIを活用すれば、短時間で済むため人員削減が可能です。
パルスサーベイ導入のメリット
パルスサーベイの導入には多くのメリットがあります。その中から代表的なメリットを解説します。
エンゲージメントの向上
パルスサーベイを導入する主なメリットは、社員のエンゲージメントの向上です。社員は、会社への意見を述べる際に、個人が特定されることを好まない傾向があります。パルスサーベイは個人を特定しないため、個人攻撃がなく、社員から率直な意見を聞くことが可能です。
社員の率直な意見を現場へ早くフィードバックすれば、組織の改善や作業工程の見直しなどが迅速に進められます。社員の声に対して適切に対応することにより、社員の会社への愛着心は向上しやすくなります。問題が解決すればモチベーションも上がるため、社内のエンゲージメントの向上が可能です。
【エンゲージメント(engagement)とは】
婚約や約束、契約などの意味を持つ英単語ですが、深い関係性を現す意味でもあります。企業におけるエンゲージメントとは、社員の会社に対する愛着心や貢献の意志のことです。
リアルタイムな社員満足度調査
パルスサーベイのメリットのひとつに、リアルタイムの社員満足度調査があります。パルスサーベイは短期間で調査を繰り返すため、社員の会社に対する満足度をリアルタイムに把握可能です。パルスサーベイで得た問題に対し、タイムリーに対応することで社員の満足度は上がります。
しかし、社員の気持ちは常に一定ではありません。パルスサーベイを定点観測として利用すれば、社員の異常を早くキャッチできるでしょう。
内省習慣が身につく
パルスサーベイを活用すれば、内省習慣が身につきます。内省習慣が必要な部所や社員に対して、内省に有効な設問を準備しましょう。内省は社員の成長に必要であり、上司からのフィードバックがあればさらに効果が期待できます。
【内省とは】
自分の心や良心と向き合い、自分の行動や発言について省みることです。
コストパフォーマンスがよい
パルスサーベイは、一般的な社員満足度調査よりもコストを抑えられます。大規模な調査よりもフィードバックが早いため、タイムリーな対応が可能です。パルスサーベイのポイントを人事担当者などが習得すれば、自社でのパルスサーベイも可能となります。
パルスサーベイの実施方法
パルスサーベイのメリットが分かれば、次はいよいよ実践です。ここでは、パルスサーベイの実施方法について解説します。
設問項目の設定
まずは設問項目を設定します。設問項目の設定には具体的な目的が必要です。例えば、「仕事」や「職場環境」、「人間関係」などになります。複数の目的を混同する方法も効果的です。目的が決まれば、それに合わせて2〜10問の設問を設けます。
設問が少ないほど回答率が上がりやすい傾向があるため、考慮して設問を設定しましょう。フリーテキスト欄を設けると、リアルな意見を集めやすくなります。
実際に調査する
設問項目が決まれば、実際に調査することになります。IT技術を利用して、フォームなどを利用すると回答しやすくなるでしょう。。回答率を上げる工夫も必要です。例えば回答が社内に共有されるのではと感じると回答率が下がるため、個人が特定されないことを周知することが大事になります。
調査結果の集計・分析
調査結果の集計や分析は、できるだけ早く抽出する必要があります。大きな変化を起こしている社員がいれば、できるだけ早く上司にフィードバックしフォローしましょう。
パルスサーベイの課題検証
パルスサーベイでは調査そのものをゴールとするのではなく、調査結果を分析し、課題を検証することも必要不可欠です。良かった点は継続し、施策をさらに強化しましょう。悪かった点は、次回調査までに改善策を打ち出し、対応しておかなければなりません。パルスサーベイでは、常にタイムリーな調査や対策が求められるためです。
パルスサーベイの設問例
次にパルスサーベイの設問例について紹介します。主な目的は、人事が主に用いる目的である業務・待遇・健康・人間関係・職場関係の5つです。
業務
業務を目的としたパルスサーベイの設問では、社員が仕事にやりがいを感じているか、業務の効率性がよいかなどが主な項目です。
【業務の設問例】
- 上司に褒められた仕事はありますか?
- 最近仕事で達成感を感じられましたか?
- 今の仕事は自分に適していると思いますか?
- 効率よく仕事が進んでいますか?
- 仕事で困っていることはありますか?
待遇
待遇を目的としたパルスサーベイでは、会社からの評価に社員が満足しているかなどが主な項目です。
【待遇の設問例】
- 適正な評価を得られていると思いますか?
- 賃金は適切だと思いますか?
- 与えられている役職に満足していますか?
健康
健康を目的としたパルスサーベイでは、社員が健康であるか、体調不良などがないかなどを知ることが主な項目です。
【健康を目的とした設問例】
- 睡眠時間は足りていますか?
- 健康に不安はありませんか?
- 仕事と私生活のバランスは合っていますか?
人間関係
人間関係を目的としたパルスサーベイでは、上司との関係や相談できる同僚がいるか、部下と良好な関係が築けているかなどが主な項目です。
【人間関係を目的とした設問例】
- 上司の指示に素直に従いますか?
- 部下は自分の指示を素直に受けていますか?
- 何でも相談できる同僚がいますか?
- 尊敬できる上司はいますか?
職場環境
職場環境を目的としたパルスサーベイでは、職場の設備に満足しているか、業務を進めやすいかなどが主な項目です。
【職場環境を目的とした設問例】
- 今の仕事を続けていればスキルアップできますか?
- 業務は円滑に進んでいますか?
- 業務に必要なリソースは揃っていますか?
- 会社は自分を必要としていると感じられますか?
パルスサーベイの注意点と対策
パルスサーベイの実施には注意点があります。対策方法もあわせて解説します。
コストがかかる可能性がある
パルスサーベイは、設問数が少なくても短期サイクルで行うため、一定のコストが発生します。また、パルスサーベイは繰り返し行うことが前提であるため、アナログで実施する場合、担当者に負担がかかってしまうことが考えられます。そのような負担を避けるためには外注が有効ですが、調査を外注すれば相応のコストが発生します。
新たにIT技術の導入やエンジニアの雇用を行う場合は、イニシャルコストがかかるため、計画段階での予算の検討も必要です。しかし、担当者の負担増や増員を回避するためには、一定のイニシャルコストはやむを得ないでしょう。
マンネリ化する可能性がある
パルスサーベイは短期反復型の意識調査のため、社員は短いサイクルで同じ調査を受けることになります。そのため、回数を重ねると惰性に流されて適当に回答するケースや、設問を読まずに回答するケースがみられる場合があります。毎回回答することを負担に感じる社員もいるかもしれません。
パルスサーベイの目的を果たすためには、社員全員にパルスサーベイを実施する意味を周知しなければなりません。そして、この調査によって、自分たちが働きやすい職場環境を目指していることを実感させることが大事です。
実施だけが目的となってしまう可能性がある
回数を重ねることによって、実施だけが目的となってしまうケースもあります。運営側が本来の目的を忘れ、得られるものがなくなってしまっては本末転倒です。義務的になってしまうことを阻止するためにも、具体的な目的や設問を見直すなどの施策を行い、運営側にもパルスサーベイの目標を再認識させましょう。
まとめ
パルスサーベイは、通常の社員意識調査と異なり、短いサイクルで少ない設問による社員の意識調査を行うことです。短期間で実施することによりリアルタイムに社員の意識動向を把握することが可能です。
パルスサーベイを活用して、社員のエンゲージメントの向上を目指すには、設問設計やHRテクノロジーの活用が重要です。
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