プロセス評価の概要
プロセス評価とは、目に見える仕事の結果だけを人事評価の対象にするのではなく、業務の成果や結果に至るまでの過程(=プロセス)を評価する制度です。プロセス評価を行うことで、成果には至らなかった事例でも社員の行動・努力を評価できます。具体的には、以下のような行動・内容を評価可能です。
・情意評価:業務に対する姿勢・勤務態度など
・能力評価:企画力・判断力など潜在的な能力や業務で発揮された能力など
・行動評価(コンピテンシー評価):業務遂行のための立ち振る舞い、パフォーマンスなど
プロセス評価では成果を出すための行動が評価できるため、社員の努力が報われる特徴があります。
プロセス評価が注目されている背景
成果ばかりに重点を置いてしまったことにより、不正が横行したという背景があります。たとえば短期間で成果を出すために強引な勧誘をするなど、価値の低い行動・不正が実際に発生しました。
成果を出すために企業イメージがマイナスになる行動をする社員が増えると、短期的な成果が出ても長期的な利益にはつながりません。そのため成果に至るまでの過程・成果を出すための行動を評価できる、プロセス評価が注目されるようになりました。
プロセス評価を導入する目的とは
プロセス評価は、最悪、成果に繋がらなかった場合でも、適切な評価を受けることを可能にする目的があります。成果だけを評価してしまうと、偶然成果を出せた社員が評価され、努力を重ねていても成果を出せなかった社員は評価されません。その結果強引な押し売りなど、成果を出すための不適切な行動が起きる恐れがあります。
プロセス評価の導入によって正しい行動ならば平等に適切な評価を受けられるため、不適切な行動の防止が可能です。
プロセス評価を導入するメリット
プロセス評価を導入することで得られるメリットについて、詳しく解説します。
社員の業務への士気が高まる
プロセス評価では評価基準が明確になるため、業務に必要なスキルの把握や成果が上がる行動につながります。
成果をあげるためには社員個人の努力だけでなく、周囲との協力・他の社員へのアドバイス・業務改善などチームに対するサポートが必要です。プロセス評価であれば、最前線で成果を出す社員以外の補助的な働きも評価できます。プロセスが評価されることでフォロー業務や長期的なプロジェクトなど成果が出にくい仕事でも、やる気を持って取り組めるでしょう。
公平な評価に繋がる
プロセス評価の基準を数値化することで、公平に社員を評価できます。成果をあげやすい部門と短期的には成果が出ない部門は、成果だけを評価すると不平等です。また成果を出した社員以外に、その社員が成果を出すためにサポートした社員もいます。
プロセス評価であれば、長期プロジェクトに関わる部門や成果をサポートした社員の努力に対して、適切な評価が可能です。特に第三者的な評価基準を設けることで、公平な評価に繋がりやすいでしょう。
企業理念が浸透した人材の育成
プロセス評価を経営理念に沿って評価すると、その結果に合わせて行動しやすいです。評価結果により目的・目標が明確になるため、どういった努力を重ね、どのように動けばよいかなど職種・職位ごとに求められている内容を理解できます。また企業理念が浸透した社員はチャレンジ精神が出てくるため、結果的に社員のモチベーション向上につながるでしょう。
プロセス評価を通して、社員に対する企業理念を深められる点は大きなメリットといえます。
プロセス評価を導入するデメリット
プロセス評価を導入することで起こり得るデメリットについて、解説します。
社員の評価が不公平になる可能性も
評価を行う上司の心象に依存してしまう可能性もあり、場合によっては評価の公平性が保たれず不公平な評価になることがあります。不公平な評価が起きないように、定性的な評価については基準を数値化するなど平等な評価ができるよう工夫が必要です。
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人事評価システム運用へのコストがかかる
公正さや多様な評価項目を重視するほど、人事評価制度の運用に大きなコストがかかります。公平な評価を行うためには、評価基準が増えて複雑になりやすいため評価者の負担が大きいです。また仕事に対する日常的な姿勢・行動を観察する必要もあるため、評価者には事前の教育が必要になります。
その結果プロセス評価は成果主義よりも、評価者に対する人件費・教育費などシステム運用のコストが大きいです。
評価への不満がモチベーション低下につながることも
人事評価の基準に納得感がなく、「曖昧」「主観的」だと感じられる場合はマイナスにつながることもあります。曖昧な基準による評価で社員が納得できなければ、社員のやる気やモチベーションを低下させる可能性が高いです。
社員のモチベーションを保つためには、多角的な視点で評価する必要があります。評価項目を数値化して客観的にしたり、「1日5件の営業」など具体的な目標の達成率で評価したりしましょう。
プロセス評価を導入する際の3つのポイント
プロセス評価を導入する際、重要な3つのポイントについて紹介します。
結果とプロセスの両方を評価する
人事評価制度は、「結果」と「プロセス」の評価バランスの設計が大切です。結果だけを重要視するとサポートに徹する社員が不満を持ち、プロセスだけを評価すると多くの成果を出す社員がストレスを感じます。どちらかに偏りすぎても、人材の離職やモチベーション低下につながる恐れがあるでしょう。
業績評価とプロセス評価を組み合わせることで、正しいプロセスを辿りながら結果を追い求められます。社員がストレスを感じないように、結果・プロセスの両方を適切に評価できるバランスにしましょう。
具体的でわかりやすい評価にする
「いつ・どこで・だれが・なにを」という目標をしっかりと指定し、具体的でわかりやすい評価にすることが重要です。プロセス評価は数値化しにくいため、曖昧な評価基準になる可能性があります。社員が納得できる評価制度にするためには、主観的で偏った評価にならないように評価を数値化することが必要です。
適切な評価基準を作成すると、達成できた項目と未達成の項目が分かりやすくなります。具体的な基準があれば、評価後のフィードバックもしやすいです。また未達成の原因も探りやすいため、次の目標に活かせるでしょう。
重要度を決定する
重要度が高いプロセスを明確にして、社員と会社で共有認識を行う必要があります。会社で行う業務は1つではないため、それぞれの仕事における優先順位・重要度は異なります。重要度を数値化すると、優先すべき行動や評価基準が社員にとっても分かりやすいです。業務や行動指針において優先順位をつけることで、プロセスも評価しやすくなります。
業務自体の優先順位だけでなく各ポジションの役割なども分け、重要度や役割の比重を細かく数値化することが重要です。
まとめ
成果主義が行き過ぎると不正につながるため、成果に対する正しい行動などプロセスを評価するプロセス評価が注目されています。プロセス評価は成果が出にくい職種でも評価されるため、社員のモチベーションアップや適切な評価につながります。
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