社員の離職を防止することの意味
離職防止とは、雇用関係から離れる社員を防ぎ、定着率を上げることです。企業は離職防止の手立てを打たないと、社員の流出に歯止めが効かなくなり、現場の仕事に大きな負担がかかります。
離職防止とは
離職防止とは、社員の離職を防ぐために企業が取り組む施策です。離職防止は別名で、「リテンション施策」とも呼ばれています。
リテンション施策とは、人材の流出を防ぐための施策です。リテンション(retention)という言葉は、そもそも「維持」「保持」の意味があります。したがってリテンション施策とは、企業の中で特に優秀な社員を企業内にとどめておくための施策を指します。
離職防止に有効なリテンション施策に必要な要素
優秀な社員の離職を防ぐには、企業でどのような要素が必要か解説します。
円滑なコミュニケーション
上司や部下、社員同士の人間関係は不満やストレスを抱える原因になりやすいため、社内のコミュニケーションを活性化させる仕組みづくりが必要です。できるだけ早い段階で社員の悩みや不満を拾い上げるよう、円滑なコミュニケーション環境が求められます。
働きやすい労働環境
働き方改革の推進に反する労働環境は、社員に不満をもたらす原因の1つです。福利厚生や給与などの待遇改善が難しい場合は、働きやすい環境づくりから少しずつ着手しましょう。働きやすい労働環境づくりには、社員の頑張りを正当に評価できる制度の整備も必要です。
スキルアップ制度
スキルアップが見込めず職場環境に変化がない職場は、優秀な社員にとってモチベーション低下につながることから、「成長している」という実感を常に社員に持たせることが大切です。社員のスキルアップやキャリアプランの作成支援を、随時行うようにしましょう。
公正な人事評価と報酬
自分の努力や成果の正当な評価は、社員のモチベーションにつながります。評価の高い社員が向上心を持ち続けられる職場にするには、努力や成果に見合った報酬や待遇を得られるような、人事評価システムの構築が必要です。
離職防止が必要とされている理由
なぜ離職防止対策が必要とされているのでしょうか。離職防止対策が企業で必要とされている3つの理由を解説します。
人材を確保して次世代のリーダーを育成するため
近年日本では、労働人口の減少によって、人材の確保が難しくなってきています。終身雇用の概念が薄れ、転職のハードルが低下したことから、人材の流出が起きています。十分な労働力が確保できないと、企業活動は継続できません。
優秀な人材を確保し、次世代のリーダー育成を進めることで、離職防止とともに安定的な企業利益にもつながります。
エンゲージメントや企業イメージの向上を図るため
離職率が高いと、企業のイメージ低下になります。離職率の高さや評判は、インターネットで簡単に検索できる時代です。
社員の定着率は働きやすい職場の指標となるため、求職者が増えやすくなる要因と考えられています。このように離職率の防止は、社員のエンゲージメントや企業イメージの向上が期待できます。
早期退職による採用や教育コストを減らすため
新規採用した社員が早期退職すると、採用や入社後の教育にかけたコストが無駄になります。再度人材を雇用する必要が出てくるため、想定外の採用・教育コストが追加でかかります。社員の離職を防止できると、余計な採用・人材コストを削減でき、スムーズな人材育成が可能です。
離職防止対策を行わない場合の影響
社員の離職は企業にさまざまな影響を与えます。離職防止を放置し続けた場合のリスクを、以下で解説します。
既存社員の業務の負担が増えてモチベーションが下がる
社員が1人退職するごとに、その穴を埋めることになるため、既存社員の負担が増えます。特に経験やノウハウを持っていた社員の離職は、企業の求心力や競争力の低下を招きます。長時間労働の社員が増加すると、人件費も増大しかねません。労働環境の悪化によって既存社員のモチベーションが低下すると、離職する社員がさらに増える恐れもあります。
優秀な人材が他社に流出して生産性が下がる
転職が一般的になった近年では、優秀な人材は待遇がよく、働きやすい企業へすぐ流出してしまいます。キーパーソンがいなくなることで自社の生産性が低下すると、事業活動や企業活動の停滞を招きます。
企業イメージが低下すると求職者が減少する
離職率と企業イメージは直結しており、密接な関係があります。離職率が高いほど職場環境が悪いイメージを持たれ、優秀な人材が集まりにくくなります。企業の評判はSNSや口コミサイトなどで拡散されるため、ブラック企業のレッテルが貼られれば、求職者は減りかねません。
社員の離職を引き起こす原因
離職防止対策を立てるには、社員が離職する原因を知る必要があります。以下で社員が離職してしまう原因を解説します。
職場の人間関係によるストレス
職場の人間関係は、離職で多い理由の1つです。上司や部下、同僚などとの人間関係の悪化は、ストレスを感じさせる原因になります。社内のコミュニケーションが少なく、トラブルや悩みを相談しにくいと、社員の離職を引き起こします。
自分自身や会社の将来に不安がある
業務内容が単調で、スキルアップが見込めない職場環境や、会社の将来性への不安は、離職につながります。業務内容と社員の能力が合っていないと、仕事へのやりがいを失いかねません。社員自身のキャリアプランと会社の方向性がそぐわないことも、離職の原因となります。
待遇や労働環境に不満がある
待遇や労働環境の不満は、離職につながりやすい要因です。たとえば、給与が低い、有給を取得しづらいなどが、その原因として挙げられます。特に優秀な人材は、自社より待遇のよい企業に転職してしまいます。
社員の離職防止に有効な対策
以下では、社員離職を防ぐために、企業側ができる有効な対策を解説します。
職場の人間関係を改善するための施策
まず、ここでは職場の人間関係を改善するための施策を紹介します。
社員同士のコミュニケーションを活性化させる
社員同士のコミュニケーションの活性化は、離職防止対策の基本です。お互いに関する理解と、良好な人間関係につながる取り組みが大切になります。
たとえば、社内イベントや交流会、サンクスカードの交換などが、有効な取り組みとして挙げられます。ただし、これらの取り組みに関しても、施策と社員のニーズがマッチしなければ効果は上がらないため、現状を把握することが重要です。
管理職の意識改革やマネジメントスキルの向上を図る
仕事ができても、部下やチームの能力を発揮できないように抑圧したり、自分の手柄にして潰してしまったりする管理職は、組織の弱体化を招きます。部下を成長させ、能力を伸ばす管理職を育成することは、企業の安定的な成長に欠かせません。
管理職へのマネジメントスキル向上に関する研修を実施し、ハラスメントのリスクを理解させることが重要です。
職場環境の改善に効果的な施策
次に、職場環境の改善に有効な施策を紹介します。
長時間労働の是正と適切な有給休暇の取得を促進する
長時間労働や休日出勤の常態化は、離職を引き起こしやすくなります。まずは労働時間の適正化を行い、有給休暇の取得を促すよう、職場環境を改善するための施策が重要です。効率的に職場環境を改善するには、勤怠管理システムを導入し、労働実態を可視化することが有効です。
福利厚生を充実させる
福利厚生が充実していると、社員の経済的負担が軽減されるため、社員の満足度が高まりやすくなります。福利厚生は、社員の要望が高いものを実現すると、離職防止にも効果的です。たとえば、慶弔・災害見舞金や育児・介護休暇制度、食費補助、資格取得支援などは、社員の満足度を高めることにつながる福利厚生といえます。
労働条件を改善するための施策
最後に、労働条件の改善に有効な施策を紹介します。
社員のキャリア形成を支援する体制・研修制度を整える
キャリアプランを作成することで社員は目的や方向性が明確になりモチベーション向上につながります。自社のキャリアパスの公開や、キャリデザイン研修の実施など、社員がキャリア形成しやすい体制や研修制度を整えましょう。
上司や人事による面談の機会を設ける
上司や人事などと定期的な面談・相談ができる体制を整えましょう。1on1ミーティングやメンター制度など、自社に合った仕組みを取り入れて社員が抱える悩みを把握し、解決することが大切です。面談や相談の実施は信頼関係の構築にも役立ちます。
多様な働き方に対応できる体制を整備する
テレワークや時短勤務制度など、社員の希望する勤務形態に柔軟に対応できる体制を整備することが重要です。社員のワークライフバランスを考慮した働き方を導入できると、社員の定着にもつながります。
人事評価制度の見直しをする
公正な評価制度は、社員の納得感を得やすくなります。人事評価制度を見直す際には、客観的かつ透明性の高い評価制度の構築が重要です。社員の能力や経験部署など、個人情報を可視化できる管理システムを導入すると、制度の高い人事評価が実現します。
社内アンケートを実施する
社内アンケートを実施することで、社員が抱える問題が明確になります。社内アンケートを実施して社員の不満や意見を調査しましょう。社員から出た意見をもとに社内体制や環境を見直し、改善策に取り組むことで、離職防止が期待できます。
離職理由を把握する
離職理由を把握することで、適切な対策を立てられるようになります。離職理由は社員一人ひとりで異なるため、離職のきっかけを分析し、対策を進めることが重要です。
ただし、離職者が話す離職理由と、本当の離職理由には乖離があることも珍しくありません。あくまでも、自社の実態を把握したいという視点で離職理由を聞き出しましょう。
離職につながりやすい社員の特徴
離職につながりやすい社員には、どのような特徴があるのでしょうか。代表的な3つの点を解説します。
仕事に対するモチベーションが低い
離職につながりやすい社員は、仕事に対するモチベーションが低いため、ミスが多く、何度も同じ失敗を繰り返す傾向にあります。モチベーション低下によって、業務への関心や注意力、業務効率が低くなる点も特徴です。
社内でのコミュニケーションが減る
挨拶や声がけなど、社内でのコミュニケーションが減ると、業務での疑問や悩みなどを1人で抱える原因となります。ミーティングや会議の場で発言しなくなると、情報共有がスムーズにできなくなり、重大なミスにつながりかねません。
遅刻や報告漏れの回数が多い
遅刻が増えることも、離職の前兆の1つです。またコミュニケーションが減って、報告漏れが起きやすくなります。情報の共有がおろそかになると、チームや部署全体の業務効率が低下する恐れがあります。
早期離職の防止につながる採用活動のポイント
離職防止は、優秀な人材を雇用するうえで重要です。早期離職防止につながる、採用活動のポイントを解説します。
ハイブリッド採用を導入する
ハイブリッド雇用とは、対面とオンラインの両面から求職者を評価し、採用する手法です。対面は、信頼や好意を示す同調がしやすい一方、相手の第一印象で評価が左右されます。オンラインは、相手をきちんと評価できますが、非言語情報が少ない傾向にあります。
入社後のミスマッチを防止するために仕事内容をしっかり説明する
新規採用者の早期離職理由として、「入社してみたら、思ったような仕事内容と違った」「社風が合わなかった」などのミスマッチが挙げられます。インターンシップ制度を導入し、実際の業務を体験してもらうことで、仕事に対する自分の価値観を深められます。
リファラル採用を活用する
リファラル採用とは、社員から友人や知人など、企業が求める人物像やスキルに該当する人材を紹介してもらう採用方法のことです。企業が求める人材を集められる反面、紹介をした知人や友人が結果的に不採用になった場合の関係悪化が懸念されています。
適性検査を実施する
求職者の適性を見極めるための検査で、性格検査と能力検査に分けられます。適性検査を実施すれば、客観的に応募者のデータを分析できるため、ミスマッチが避けられるでしょう。
離職防止対策で改善した具体例
離職防止対策を実施して改善した企業の例を紹介します。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、kintone、サイボウズ Officeなどのサービスを提供している会社です。働き方の多様化に柔軟に対応し、在宅勤務や最大6年の育児休暇の取得など、環境を整えることで、離職率の低下を実現しました。人事制度の設計を社員が考えるボトムアップ型の採用や部活制度を取り入れたこともあって、離職率が28%から4%に低下しています。
株式会社鳥貴族
全国展開している居酒屋「鳥貴族」を経営する株式会社鳥貴族は、丁寧な採用活動と入社後のフォローで離職率が改善しました。長時間労働を抑制する、面接官が店舗を訪問し、フォローする機会を設けるなどの取り組みにより、入社半年間の早期退職率が8.6%(2021年度)という低い数字を実現しています。
タレントパレットの離職防止ツールを活用する
離職防止ツールを利用すれば、社員のエンゲージメントの可視化や、満足度の分析ができるため、モチベーションの向上や適切なアプローチにつながります。あわせて、社員の状態を把握するために、掲示板やSNSなどのコミュニケーションツールを活用したり、社員の体調をツールで管理しましょう。社員の離職防止には、タレントパレットの離職防止ツールの活用がおすすめです。簡単に作成・回答できるアンケートで社員のモチベーションを可視化・分析することで、離職防止の早期アクションが実現します。
離職防止に役立つシステムの詳しい情報はこちら
まとめ
離職防止とは、社員の離職を防ぐために企業が取り組む施策です。離職防止によって、安定的な人材確保や次世代リーダーの育成、企業イメージの向上などにつながります。職場の人間関係や職場環境、労働条件の改善が、離職防止のポイントです。
タレントマネジメントシステム「タレントパレット」は、数多くの企業の人材教育に関する取り組みを支援しています。大手企業をはじめ数多くの導入実績を持っており、離職率防止に関するコンサルティングの知見も積み重ねています。
離職防止に役立つシステムの詳しい情報はこちら