こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
最近、トレンドワードとして「ポリコレ」という言葉を初めて耳にしたという方もいるのではないでしょうか。しかしポリコレという言葉は最近できたものではなく、古い歴史を持っているのです。
本記事では、昨今ビジネスの世界でも注目されているポリコレについて解説します。ポリコレの正しい意味や考え方、取り入れるメリットや注意点も解説しますので、企業経営の参考にしてください。
ポリコレとは
ポリコレとは、ポリティカル・コネクトレス(Political Correctness)の略称で、直訳すると「政治的な正しさ」という意味になります。
わかりやすく言うと「差別を行わず、社会的に公正で中立的な表現を心がけよう」という考え方です。
性別や人種、職業、宗教など、さまざまな要素で分けられたグループに対する「差別的な表現」を廃止し、新たな表現方法や言い換えを用いることをポリコレと言います。
ポリコレの発祥と由来
ポリコレという言葉は、1950〜1960年代にアメリカで起きた公民権運動をきっかけに誕生しました。
当時のアメリカは、公共施設やホテル、トイレなどが全て黒人用と白人用に分かれており、人種差別があった時代です。この頃差別されていた人々が、自由と平等を求めて公民権運動を始めました。
1970~80年代にかけてはフェミニズム運動のため、また人種差別や欧米至上主義を是正するためにポリコレの動きが広がります。
さらに1990年代に入るとニューヨークタイムズに取り上げられ、ポリコレが世界中で注目されるようになりました。
ポリコレの具体的な表現事例
ポリコレの具体的な表現事例には、さまざまな種類があります。代表的なポリコレの表現事例は、次の通りです。
人種における表現
ポリコレ表現の事例として最初に紹介するのは、人種に関する呼称です。
例えば、黒い肌をした人は、かつて「Black(ブラック)」と呼ばれていました。しかしこの呼び方は、肌の色を連想させる差別的表現であるとして問題になり、「アフリカン・アメリカン」に変更されたのです。
同様に、アメリカ先住民の呼称である「インディアン」も人種差別的な表現とされたため「ネイティブ・アメリカン」に置き換えられました。
職業における表現
以前は、さまざまな職業の名称として、特定の性別を連想させる呼び方が使用されていました。しかし昨今はポリコレの影響を受け、性別による区別がない名称に変更されています。
例えば、女性を連想する職業として「保母」や「看護婦」が使用されていました。しかし昨今は、男性が従事するケースも増えたため「保育士」「看護師」に変更されています。
一方、男性をイメージさせる職業名として「カメラマン」「サラリーマン」の呼称が長く使われていました。こちらは「フォトグラファー」「ビジネスパーソン」に変更されています。
また男女で名称が分かれる職業として「スチュワード」「スチュワーデス」が使われていましたが、現在は男女ともに「キャビンアテンダント」もしくは「客室乗務員」と呼ぶのが一般的です。
性別における表現
性別におけるポリコレ表現は、職業だけでなく相手の名前を呼ぶ際の敬称にも影響しています。
以前は子どもの名前につける敬称は、男子の場合は「○○くん」、女子の場合は「○○ちゃん」が一般的でした。しかしこの敬称は性差別の表現に当たるとして、昨今は男女ともに「○○さん」に変更されています。
教育の現場では敬称を「○○さん」に統一すると同時に、出席番号も男女で分けないケースが増えているようです。
また以前は、海外の敬称表現で未婚女性を「Miss.」、既婚女性を「Mrs.」と呼び区別していました。男性は「Mr.」で統一されているのにもかかわらず、女性ばかりが未婚と既婚で区別されるのは差別的だとの理由で現在は「Ms.」に統一されています。
ポリコレの具体的な言い換え方法や、さらに詳しい表現事例についてはポリコレ例の記事をご覧ください。
「ポリコレ例」については、こちらの記事をご確認ください。
ポリコレが注目されている背景
昨今、ポリコレ対策に取り組む企業が増えている背景として、次のような理由があります。
ダイバーシティ経営の強化
企業がポリコレに取り組む理由として、ダイバーシティ経営の強化が挙げられます。
ダイバーシティとは「多様性」という意味の英単語です。組織内に年齢や性別、人種、宗教が違う、さまざまな属性を持つ人が集まっている状態を指します。
少子高齢化によって日本の労働者人口が減っている昨今、働き手を確保するためにダイバーシティ経営が強化されるようになりました。
国籍や年齢が異なるさまざまな人材が集まる企業では、多様性を認め合うことが大切です。そのため、ポリコレ対策に力を入れる必要があります。
新たな事業視点の拡大
ポリコレに取り組むことで多様な人材が活躍できる企業に成長し、新たな事業拡大につながります。これまで社内になかった新しい視点から、新たな事業やサービスが生み出される可能性があるためです。
例えば、定年退職した従業員を再雇用すると、経験豊富なアドバイザーとして活躍できるケースが多いでしょう。経験に基づいたアドバイスで、社内外から信頼を獲得できるためです。
社会の価値観の変化・多様性の時代
コロナ禍以降にリモートワークが定着したため、働き方にも多様性が求められるようになりました。
また従来のように仕事一辺倒ではなく、ワークライフバランスを重視する方が増えるなど、社会的な価値観も変化しています。
社会全体が多様性を求める中で、企業もポリコレと真剣に向き合わなくてはなくてはなりません。
ポリコレに力を入れることにより、差別の排除に取り組む企業であるとの評判が高まるでしょう。働きやすそうな企業だと印象づけることで優秀な人材を獲得しやすくなり、結果的に売上が増えるなどの好循環が期待できます。
経営管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
ポリコレを意識したダイバーシティ経営や、多様性時代の人材管理にはタレントパレットがおすすめです!
時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な経営課題と向き合えます。
- 従業員のあらゆる人材データを一元管理
- 社員情報や生産性、満足度など人的資本ダッシュボードを構築
- 人材データを自由に掛け合わせて候補者を瞬時に発見
- 分析したデータを人事戦略の策定に活用
採用や人材育成におけるポリコレの重要性
企業経営においてポリコレが最も重視されるのは、採用や人材育成のシーンです。
人事担当者は応募者と接する機会が多く企業の顔でもあるため、ポリコレ意識を高めることが求められています。
ポリコレを意識した採用活動として、男女雇用機会均等法を順守することが大切です。
例えば、性別による差別行為は禁止されているため、必要がない場合は、募集フォームに「性別」の記載欄を設けないようにしましょう。
人材育成においてもジェンダー平等の観点から、ポリコレが重要とされています。以前に比べると女性の管理職も増えていますが、まだまだ男性と同じ割合であるとは言えません。
そこで、社内の人材育成の一環として女性管理職候補者や、将来的に管理職を希望する女性社員向けの研修を実施すると効果的です。女性従業員を多数管理職に登用するような企業風土を作ることも、ポリコレ対策の一環となります。
企業が取るべきポリコレ対策5つ
企業がポリコレを意識する重要性について解説しました。従業員にとって働きやすい職場環境を作るためにも、ポリコレ対策を行うことが重要となります。
企業が取り入れるべきポリコレ対策の具体例は、次の5つです。
1.ハラスメント予防対策
企業がポリコレ対策を行うべき理由には、ハラスメントの予防があります。例えば性別による差別、いわゆるセクシュアルハラスメントも、その一つです。
「女性(男性)のくせに~」や「女性(男性)だから~だ」など、性別に関連づけた発言を行わないように注意しましょう。
女性従業員に対する「マタニティハラスメント(マタハラ)」だけでなく、男性従業員への「パタニティハラスメント(パタハラ)」にも気をつけなくてはなりません。育児休業を取得する男性従業員に対して否定的な態度を取ることも、ハラスメントに該当します。
また女性従業員にパンプスの着用を義務づけたり、ヒールの高さを指定したりといった服装指定を行ってはいけません。ノーメイクやメガネ着用の禁止も同様です。
これらのハラスメント対策としては、全従業員向けに「ハラスメント防止研修」を行うのが効果的でしょう。
2.グローバル対応
日本国内の少子高齢化による労働人口不足を解消するために、外国人を雇用するケースが増えています。
言語や文化が違う相手と仕事をする際には、失礼な物言いをしないように気をつけなくてはなりません。対策として、事前のマニュアル整備をおすすめします。マニュアルには、外国の方とコミュニケーションを取る際の注意点を明記しましょう。
グローバル化が進んでいる企業では、宗教上のルールについても検討しなくてはなりません。礼拝スペースの確保や、休憩時間と礼拝時間の調整など、外国人雇用者への配慮が必要です。
さまざまな国籍の従業員を雇用する際には、多様な宗教に合わせた社食メニューを提供するなど、社内の環境整備を行いましょう。
3.福利厚生や社内制度の対策
企業の福利厚生や社内制度が、ポリコレに対応しているかの確認も必要です。
代表的なものとしては、育児休業や介護休業の整備が挙げられます。例えば男性社員の育児休業制度を推進するためには、社内の意識改革や復帰後の環境整備を行わなくてはなりません。
ポリコレを意識した福利厚生として、婚姻関係がない家族への配慮も重要です。同性パートナーがいる従業員への家族手当の支給や、アニバーサリー休暇の導入について検討する必要があります。
具体的な例として、ポリゴンマジックグループでは、2015年より同性パートナーを家族手当の支給対象にするなど、いち早い取り組みを行ってきました。同社では採用プロセスにおいても性別確認を行わず、さまざまな国籍や文化背景を持つ人材を雇用するなど、積極的にダイバーシティに取り組んでいます。
4.求人募集における対策
求人募集の際にもポリコレ対策が重要となります。公平に採用選考を行うには、厚生労働省が定めた公正な採用選考の基本を守らなくてはなりません。
採用選考に当たって、次の2点に注意しましょう。
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力に基づいて行うこと
採用の際には、男女雇用機会均等法の順守が大切です。募集や採用の場では、性別による差別を禁止するように定められています。
職業の名称や職種によって男女を振り分けることが禁止されているほか、服装の規定でも性別による違いを明記してはいけません。
性別による差別のほか、年齢や障がいの有無による差別も禁止されています。障がい者であることを理由に差別をせず、合理的な配慮を行いましょう。
5.面接時の対策
採用面接を行う際にも、ポリコレを意識することが大切です。
厚生労働省が定めている就職差別につながるおそれがある 14事項に従って、質問の内容を再度確認しましょう。ポリコレを意識した質問を設定し、社内で統一する必要があります。
採用面接の際は本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項について質問してはいけません。例えば、信仰する宗教や性的指向に関する質問は禁止されています。
同様に本籍地や出生地、家族に関する事項も就職差別に当たるため、質問してはいけません。
「尊敬する人物は?」「愛読書や購読新聞は?」といった質問も、思想に関する事項に該当するため行わないようにしましょう。
企業がポリコレを重視するメリット5つ
社会全体にポリコレが浸透しつつある中、企業がポリコレを重視することで得られるメリットもあります。
企業がポリコレ意識を持つことで得られるメリットは、次の5つです。
1.人種や性別への差別意識が減少
ポリコレが企業内に浸透することで、人種や性別に対する差別が減少します。差別を防ぐことで、社内での人権侵害リスクも減るでしょう。
またジェンダーフリーへの理解が社内に浸透することで、性別の差にとらわれず、従業員全員が自分らしく働ける環境が実現します。
2.ハラスメントの抑制
企業内にポリコレが浸透することで、性や人種の違いによって起こるハラスメントやいじめを抑制できます。
ポリコレへの取り組みを徹底することによってハラスメント防止対策になるため、従業員が安心して働ける職場環境の構築が可能です。
3.好意的な評価と信頼獲得
ポリコレへの対策が行き届いている企業は、社内外から好意的な評価を得られます。ダイバーシティ経営によって、社会的な責任を果たしているとの印象が強くなるためです。
消費者や投資家から信頼を獲得することで、企業のブランド力がさらに向上し、事業拡大や売上増に結びつくでしょう。
4.多様性の促進
企業でポリコレを意識することで、多様な人材を獲得しやすくなります。これまでとは違ったバックグラウンドを持つ人材を獲得することで、社内に新しい風土が形成されるでしょう。
多様な経験や考え方、個性を持つ従業員を起用することで、新たな創出につながるかもしれません。従業員の多様性を促進することで、ビジネスチャンスが拡大します。
5.従業員のモチベーションアップ
多様な人材が活躍できる環境をつくることで、従業員のモチベーションがアップします。自分の能力を発揮しやすい環境で働けるようになるためです。
また社内にさまざまな視点が混在することで、活発な意見交換が行われ、豊富なアイデアが創出されるでしょう。
企業全体でポリコレを意識することで、差別や偏見のない職場づくりにもつながります。みんなが安心感を持って意欲的に働けるため、離職率の低下も期待できます。
企業がポリコレを行う際の注意点
企業でポリコレ対策を行う場合は、注意すべき点がいくつかあります。
SNSでの炎上、批判に注意する
企業の経営者や従業員がSNSで発信した内容が、特定民族への「ヘイトスピーチ」に該当するとして不買運動に発展した事例が過去にあります。
SNS上での「うかつな発言」は炎上につながるため、企業にとって大きなマイナスです。経営者や企業の担当者がSNSを運用する場合は、問題発言をしないよう慎重に行ってください。
ポリコレを軽視しない
日本でも、海外同様に女性の社会進出が進んでいますが、企業内でポリコレについて正しい理解が得られていない場合、女性差別の問題が起きる可能性が高くなります。経営者のポリコレ意識が低いと社内教育が行われずに、セクハラやパワハラにつながる可能性もあるので注意が必要です。
経営者や人事担当者は率先してポリコレへの理解を深め、軽視しないように心がけましょう。社内でポリコレが軽視されないように、しっかりと啓蒙することも大切です。
グローバル化に正しく対応する
労働力を確保するために外国人労働者を雇用する企業が増え、グローバル化が進んでいます。ポリコレがこれほど企業で重視されるようになったのも、グローバル化の影響が大きいといえます。
人種や民族、宗教の違いによるトラブルをなくし、社内のグローバル化を推進するためにも、ポリコレを正しく理解しましょう。
まとめ
本記事では、社会的に注目されているポリコレについて解説しました。企業がポリコレ対策を意識することは、ダイバーシティ経営の推進にもつながります。
また企業内でポリコレ意識を高めることで、ハラスメントの防止や炎上リスクを減らすことも可能です。
今後もグローバル化は進んでいくと考えられるため、ポリコレへの対策がこれまで以上に重要視されるでしょう。ポリコレに対する知識が不足すると、思わぬトラブルが発生するかもしれません。
未然にトラブルを防止するため、この機会に企業全体でポリコレについて学びましょう。
タレントパレットには、eラーニングや研修管理の機能が搭載されています。採用編・社内編のポリコレ対策マニュアルなど、自社独自の研修コンテンツの作成も可能です。
科学的人事を実現するタレントマネジメントシステム『タレントパレット』には、さらに次のような機能も備えています。
- あらゆる人事システムを活用できる
- あらゆるシステムのデータを統合して分析できる
- 分析結果から経営や人事課題の解決のための根拠のある施策が打てる
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』では、さまざまな経営課題と向き合えます。ダイバーシティ経営とポリコレ対策のために、ぜひ活用してみませんか。
タレントパレットのHPはこちら