こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
ピーターの法則とは、仕事ができる人が昇進し続けて、無能化する現象を指す言葉です。あなたの組織にもピーターの法則が潜んでいるかもしれません。
本記事では、ピーターの法則が組織に与える影響と、解決策について詳しく解説します。組織が無能化する前に、ピーターの法則を理解し対策を講じることで、管理職のパフォーマンスを最大限に引き出しましょう。
ピーターの法則とは
ピーターの法則とは、階層組織で昇進し続けると、やがて人材が無能化する現象を指します。この法則の定義と、法則が生まれた背景を解説します。
ピーターの法則の定義
ピーターの法則の定義とは、階層組織において、「自らの能力の極限まで出世し無能化する」ということです。
仕事ができる人は昇進し続けますが、徐々に自分に合わない仕事や責任を負うようになり、最終的には仕事ができなくなります。そして、無能化した人材はその地位に留まり続けます。
このサイクルが繰り返されると、組織全体が無能化した人材であふれてしまうでしょう。そして、組織の仕事は、まだ無能化していない人によって遂行されることになります。
ピーターの法則が生まれた背景と提唱者
ピーターの法則は、教育学者ローレンス・J・ピーター氏と小説家レイモンド・ハル氏が共著した『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』で提唱されました。
彼らは、世界中に無能化した人材がいることを指摘し、階層社会がその形成要因であると論じています。同時に、組織が機能するのは創造的無能を発揮している人材がいるからだとも指摘しました。著書では、組織における昇進の仕組みや人材の能力向上について分析が行われています。
組織にピーターの法則が生じる要因
組織にピーターの法則が生じるのは、昇格制度や人事評価制度に問題があるためです。それぞれの問題点を詳しく説明します。
昇格制度の問題点
この法則が発生する原因の一つは、昇格制度にあります。組織で働く人は昇格することで仕事内容が変わりますが、その人材が変化に対応できるだけの能力を持っているとは限りません。
現場で活躍していた人が管理職に昇進した場合、それまで必要だった技術的な能力よりも、マネジメントやコミュニケーションなどの能力が求められます。しかし、それらの能力を身につけていなければ、管理職として仕事をこなすことは難しくなるでしょう。
また、昇格後の地位に必要な職務遂行能力が評価されず、過去の実績や年功序列に基づいて昇格する場合もあります。昇格した人は自分の能力に見合わない役職に就くことになり、仕事に対する自信やモチベーションを失いかねません。結果的に、組織全体のパフォーマンスも低下することが考えられます。
人事評価制度の問題点
ピーターの法則が生じる要因として、人事評価制度の問題もあります。無能化した管理職によって部下の評価が行われることで、主観的なバイアスがかかり、能力の高い部下が見過ごされる場合です。
管理職が自分の仕事を守ろうとして、部下の成果を過小評価したり、自分と同じようなタイプの部下を優遇したりすることも考えられるでしょう。このような評価制度では、有能な部下は正当に評価されず、昇進の機会を失ってしまいます。
人事評価制度の問題が組織内に存在することで、ピーターの法則が発生し、組織全体のパフォーマンスや成長が阻害されます。
ピーターの法則が組織に与える影響
ピーターの法則が組織に及ぼす影響は、モチベーションの低下や人材流出による業績悪化があります。その影響を詳しく解説します。
組織内のモチベーション低下
組織内でピーターの法則が働くと、所属する人材のモチベーションが低下します。無能化した管理職は、部下の適切な指導や育成ができず、部下のモチベーションや自信を奪うことになるからです。
能力の高い部下は、昇進や評価に見合った報酬や承認を得られず、不満・不信感を抱くことになります。結果的に組織内のモチベーションが低下し、生産性やチームワークが損なわれるでしょう。
組織外への人材流出
ピーターの法則によって、組織外への人材流出も起こりやすくなります。無能化した管理職は部下を適切に評価できず、管理職から不当な扱いを受けていると感じた部下の離職率を高めることになるためです。
能力の高い部下は、自分の能力を発揮できる他社への転職を検討する可能性も高まるでしょう。組織が有能な人材を失い続けることで、競争力やイノベーション力の低下が懸念されます。
組織全体の業績低下
ピーターの法則が慢性化すると、組織全体の業績も低下します。無能化した管理職は、組織の戦略を実行できず、組織全体の目標達成に支障を来します。能力の高い部下は、自分のアイデアや提案を無能化した管理職に受け入れられず、成果を出せない状況になるでしょう。
無能化した管理職は変化に対応できず、既存のやり方に固執することもあります。新しい市場やニーズの変化に対応できなくなることで組織全体の競争力が低下し、業績や市場シェアの悪化が懸念されます。
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ディルバートの法則とパーキンソンの法則とは?
ここでは、ピーターの法則に関連する2つの法則、ディルバートの法則とパーキンソンの法則について解説します。
ディルバートの法則
ディルバートの法則とは、スコット・アダムズが提唱した、無能な社員が管理職に昇進するという法則です。この法則は「組織は無能な者を意図的に昇進させる」というものです。無能な者を現場から遠ざけ、管理職にすることで、組織の生産性や業績を守ろうとします。
この法則は、ピーターの法則とは逆の発想ですが、同じような結果をもたらします。無能化した管理職は部下を適切に指導や育成できず、部下のモチベーションや自信を奪うことになるでしょう。
パーキンソンの法則
パーキンソンの法則とは、C・ノースコート・パーキンソンが提唱した、「仕事の量は完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する。支出の額は収入の額に達するまで膨張する」という法則です。
法則に基づく行動として、以下のような例があります。
- 仕事が少ないときは、仕事を増やすために会議や書類作成などを行う。
- 予算が多いときは、予算を使い切るために無駄遣いや贅沢をする。
この行動が発生する原因には、以下のような心理が考えられます。
- 仕事が少なくても同じ時間を使うことで、自分の仕事量や重要性をアピールしたい。
- 予算が多いときに無駄遣いや贅沢をすることで、自分の地位や権力を誇示しようとする。
つまり、時間や予算が与えられると、それに応じた仕事量や支出が生じる傾向があるということです。この法則が発生すると、組織の仕事の質や速度が低下し、コストや時間は増加します。これらは組織の生存や発展にとって大きな障害となるでしょう。
ピーターの法則を防ぐ方法
ピーターの法則を防ぐ方法には、組織と個人の両面から対策を講じることが重要です。それぞれの立場から、詳しく解説します。
組織ができる対策
ピーターの法則を防ぐために、組織としては以下のような対策が有効です。
- 優秀な社員を昇進させずに昇給や報奨を与えることでモチベーションを維持する。
- 昇進前に必要なスキルや知識を身につけるための訓練を行い、昇進後に無能化した人材は降格させる。
昇進は、仕事の内容や責任が変わることを意味します。昇進することで、社員は自分の得意な仕事から離れることになり、無能化する可能性があります。昇進させずに給与や報奨などで評価し、社員が自らの能力を発揮できる職位に留まらせるのも一案です。
また、昇進前に必要なスキルや知識を身につけるための訓練を行い、昇進後に無能化した人材は降格させることも重要です。昇進することで求められるスキルや知識は、現在の職位で必要なものとは異なる場合が多いため、昇進前にその準備をすることで、昇進後の仕事に対応できます。また、万が一、社員が昇進後に無能化した場合は降格させることで、組織の陳腐化を防げます。
個人ができる対策
ピーターの法則を防ぐために、個人としては以下のような対策を意識することが重要です。
- 社員が自分の能力に合った職位に留まり、昇進時に必要なスキルを学び、無能化したら降格を受け入れる。
- 終点到達症候群を抑えるために、仕事に意義と創造性を見出し、学びながら自己を高められるような環境をつくる。
社員が自らの能力に合った職位に留まり、昇進時に必要なスキルを学び、無能化したら降格を受け入れることが大切です。自分の得意な仕事や役割を理解し、それに見合った職位を選択することで、能力を最大限に発揮できます。
昇進する場合は、その際に必要なスキルや知識を事前に学ぶことで、無能化するリスクを減らせます。万が一無能化した場合は、降格を受け入れることで自分の能力に合った職位に戻り、再び活躍するチャンスも得られるでしょう。
終点到達症候群とは、「今よりは上に行けない」と感じてしまう状態を意味します。終点到達症候群を防止するためには、社員が仕事に意義と創造性を見出し、学びながら自己を高めることが大切です。
社員が現状に対して「もう十分だ」と思ってしまい、新しい挑戦や成長から遠ざかることは、「ピーターの法則」の原因の一つでもあります。そうならないためには、「昇進は終わりではなく始まりだ」と認識してもらえるような仕組み作りが有効です。
仕事には、自分の価値観や目標に沿った意義や創造性があります。それを見つけることで、仕事に対するモチベーションややりがいを高められます。学び続けることで、自分の能力や知識も広げられます。これは、社員自身のキャリアにおいても有利に働きます。
ピーターの法則を回避する上での注意点
ピーターの法則を回避するためには、以下の注意点に留意することが重要です。具体的な方法や事例を交えてご紹介します。
- 昇進・昇格の要件と給与体系の同時見直し
- 職場の心理的安全性の確保
- 降格人事の際に配慮すべき点
昇進・昇格の要件と給与体系の同時見直し
昇進・昇格の要件が不明確な状態では、社員が自分に合わない部署に配属される可能性があります。例えば、技術職が得意な社員が営業に異動させられたり、管理職になって現場から離れたりするケースです。
給与体系が役職や職位に依存すると、社員は高給のために昇進・昇格を目指す傾向が強まります。これにより、本来の得意分野から離れてしまうケースが生じます。
具体的な解決策として、昇進・昇格の要件と給与体系を同時に見直すことが挙げられます。給与体系を役職や職位ではなく、能力や成果に基づくものに変更し、社員の適性や希望を考慮したキャリアパスを提供するなどの取り組みを実施しましょう。
職場の心理的安全性の確保
職場の心理的安全性とは、社員が意見や感情を自由に言えたり、失敗や不安を仲間と共有できたりするコミュニケーションが活発な環境です。このような環境があれば、社員は自分の仕事に自信を持ち、困ったときには助けも求められます。
上司から社員へだけでなく、社員から上司へもフィードバックが行われることで、上司は客観的に能力や役割を見直せます。社員の意見や提案を受け入れる姿勢や、制度を導入しましょう。
職場の心理的安全性が高まると、社員は能力や成果を正しく評価されると感じやすくなり、ピーターの法則が発生しにくくなります。
降格人事の際に配慮すべき点
降格人事は社員にとって辛いものです。やる気や自信、希望や意欲を失う可能性もあります。降格人事を行う際には、以下の点に留意することが大切です。
- 降格の理由を隠さない
- 社員に対して、なぜ降格が必要なのかを説明し、理解を求めるようにしましょう。
- 降格後の役割や期待値を明確に伝える
- 社員が降格後にどのような役割を担うことになるのかを明確に示し、再び成長の機会を与える必要があります。
- 降格後のキャリアパスや再昇進の可能性を示す
- 社員が降格後も成長し、再び昇進の機会を得ることができる道筋を示すことで、希望や意欲を取り戻すことができます。
降格人事は社員にとって大きなショックであり、単なる説明では納得できないことも多いでしょう。降格人事は最終手段として、公正かつ透明な基準で行い、降格後も社員の心の健康をサポートすることが大切です。
まとめ
ピーターの法則とは、自分の能力を超える職位に昇進や昇格してしまうことで、人材が無能化する法則です。この法則が起きると、組織の活力や成果が落ち込み、優秀な人材が離れていきます。
ピーターの法則を回避するには、組織と個人の双方での対策が必要です。人事評価基準の改善や、キャリア相談などにも取り組みましょう。組織への影響は深刻ですが、適切な対策を実施すれば回避できます。経営陣の方は、ピーターの法則を理解することで、社員の能力を最大化し組織を活性化させてください。
社員のモチベーションや能力の管理は、組織全体のパフォーマンスを維持するためにとても重要です。『タレントパレット』には、モチベーション向上に役立つ「社員のコンディション・エンゲージメントを見える化」機能や、異動後の影響を予測できる「人材の最適配置」機能があり、人事制度の改善やピーターの法則の回避に役立ちます。
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