こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
自社を取り巻く外部環境の分析をするためのフレームワークとして利用されているのが、PEST Analysisです。しかし、PEST Analysisとは具体的にどのようなものなのか分からない人もいるでしょう。
本記事では、PEST Analysisの意味や目的などについて分かりやすく解説します。また、PEST Analysisを構成する4つの環境要因や活用場面、導入するときの手順についても解説しますので、ご覧ください。
PEST Analysis(分析)とは?
PEST Analysisを有効に活用するには、意味やほかの分析ツールとの違いを正しく理解しておくことが大切です。まずは、PEST Analysisとはどのようなものなのか、企業の現状を分析するフレームワークとして知られているSWOT分析との違いも踏まえて解説します。
PEST Analysisの意味
PEST AnalysisのPESTとは自社を取り巻く「政治(Politics)」、「経済(Economy)」、「社会(Society)」、「技術(Technology)」の4つの外部環境の頭文字をとった言葉です。Analysisの意味は分析であるため、PEST(ペスト)分析ともよばれています。PEST Analysisは、マーケティング戦略や経営戦略などの事業戦略を策定する際に活用するのが一般的です。
PEST Analysisは、経営学の第一人者であるフィリップ・コトラーが提唱したことによって世の中に広まりました。コトラーは、調査を行わずに市場に参入することのリスクや、環境調査が重要であることを著書の「コトラーの戦略的マーケティング」で述べています。
外部環境の分析にはマクロ環境分析とミクロ環境分析の2種類があります。マクロ環境分析はより広い視点から、ミクロ環境分析ではより狭い視点からアプローチする方法です。また、マクロ環境は5〜10年程度の長期間、ミクロ環境は短期間のスパンで捉えます。
なお、PEST Analysisはマクロ環境分析に活用されるフレームワークです。
SWOT分析との違い
SWOT分析もマーケティング戦略の構築に役立つフレームワークの一つですが、PEST Analysisとは分析に使用される要素や使用目的が異なります。
SWOT分析は、内部環境のプラス要素である「強み (Strengths)」、内部環境のマイナス要素である「弱み (Weakness)」、外部環境のプラス要素である「機会 (Opportunities)」、外部環境のマイナス要素である「脅威 (Threats)」を見つける際に使用されます。SWOT分析を使えば、自社を取り巻く現状から経営戦略の構築、社員や組織の目標などを設定することが可能です。
さらにPEST Analysisから得た情報を使えば、SWOT分析の際に外部環境の要素である機会と脅威の情報を補充できます。内部環境と外部環境の要素を掛け合わせたクロスSWOT分析では、さまざまな戦略を導き出すことも可能です。
PEST Analysisの目的
PEST Analysisは、世の中の変化やトレンドなどの外部環境の分析もできます。そのため、自社にとって効果的なマーケティング戦略や事業戦略を策定する目的で活用可能です。事業は外部環境の影響を受けやすいため、PEST Analysisによって市場におけるチャンスやリスクを把握しておくことは非常に重要です。
事業を成功に導くには、時代や世の中の流れに合った商品を生み出す必要があります。そのため、 PEST Analysisはこういったマーケティング戦略の策定に役立つでしょう。
またPEST Analysisは、外部環境が自社に与える影響を分析することも可能です。このまま事業を続けていくことがリスキーであることが分かれば早急に対応できるため、損害を最小限に抑えられます。このような外部環境を分析するために、PEST Analysisの重要性は高まっているのです。
PEST Analysisの4つの環境要因
PEST Analysisでは、政治・経済・社会・技術の4つの環境要因を用いて市場の動向や自社に与える影響を把握したり予測したりすることが可能です。事業に大きな影響を与える4つの環境要因を具体例を交えて詳しく解説します。
政治(Politics)
政治体制の変革によって市場にも変化が起こり、企業の事業に大きな影響を与えることがあります。市場競争のルールに変化をもたらす政治的要因の具体例は、以下のとおりです。
・規制緩和
・法規制
・条例改正
・政権交代
・交付金制度
・補助金制度
・法改正
・規制緩和
特に消費税の増税や雇用法の改正などは、企業に大きな影響を及ぼすでしょう。またビジネスに関わる法律の規制や強化された場合も事業に影響する場合があります。
政治は常に変化していくので、常に注意を払う必要があります。また、政治に大きな変化があった場合の備えも大切です。効率的な分析を行うには、自社と関わりの深い政治要因に絞って情報を収集する必要があるでしょう。
経済(Economy)
経済動向も市場の成長や企業の業績に影響を与えます。グローバル企業であれば日本だけでなく、世界情勢の変化も市場へ影響するでしょう。経済的環境要因の具体例は、以下のとおりです。
・景気動向
・為替
・金利
・GDP(経済成長率)
・消費動向
・賃金の推移
・消費動向
事業が国内のみの展開であっても、日本と世界の経済動向は連動しているため、世界にも目を向ける必要があります。経済的環境要因を分析すれば、事業で起こりうるリスクを予測して対応できるように備えられます。
社会(Society)
社会情勢や社会変化が起きると、消費者のニーズに変化が生じます。人々の意識や習慣の変化により、新たな需要が生まれたり減ったりする可能性があるでしょう。社会的要因の具体例は、以下のとおりです。
・人口動態
・流行
・世論
・宗教
・倫理観
・教育水準
・社会的な事件
日本では少子高齢化が大きな社会問題になっています。このような需要構造に変化を与える問題が起きている場合は、タイムリーな対応を心がければ事業の成功につながります。社会的要因を分析すれば、市場に出ていない新たな事業を早く世の中に広めることが可能です。
技術(Technology)
技術の進歩や変革によって、市場の動向が一気に変化する場合があります。新技術の発見に伴い新たな需要が生まれたり、市場から撤退する企業が増えて競争力が低下したりするでしょう。技術的要因の具体例は、以下のとおりです。
・技術開発
・研究開発
・イノベーション
・インフラ整備
・特許の取得
近年、新聞や書籍市場が衰退しています。なぜなら、インターネットや電子書籍に市場を奪われているためです。このように新しい技術に注目し市場にどのような影響を及ぼすのかを分析して、事業を構築することができるでしょう。
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PEST Analysisの活用場面
PEST Analysisは、実際に戦略を策定するときの初期に活用するのが効果的です。ここでは、 PEST Analysisが有効な3つの活用場面について具体的に解説します。
新たな顧客層や市場に進出するとき
PEST Analysisは新しい市場に進出するときや、新たな顧客層を獲得したいときに役立ちます。開発チームのなかに市場に関する深い知識を持ったメンバーがいない場合でも、経済的要因や文化的要因を分析することで中長期的な戦略を策定することが可能です。
PEST Analysisでマクロ環境を分析すれば、新規参入事業が大きなトレンドになる可能性もあります。トレンドの波に乗れば結果として新たな顧客の獲得につながるため、企業としても急成長できるでしょう。
新しい製品を開発するとき
外部環境が開発した新商品にどのような影響を与えるのか、PEST Analysisによって予測できます。プラスの影響とマイナスの影響を分析すれば、新たな製品を開発するチェンスやリスクを発見できるでしょう。
新商品を開発するときに欠かせないのが競合企業の調査です。時代の流れを正確に分析し、現時点では発見されていないニーズを満たす商品を開発する必要があるでしょう。
ビジネス環境が変化するとき
外的要因によってビジネス環境に変化が生じた場合には、PEST Analysisを活用すれば経営戦略を変更できます。時代の変化に合わせて経営戦略を変更すれば、競合との差別化が可能です。そのため、新たなトレンドが生まれては淘汰されていく状況でも、生き残っていけるでしょう。
自社の経営を取り巻く環境は常に変化しています。環境の変化に合わせて経営戦略やマーケティング戦略を柔軟に変更していくことが大切です。
PEST Analysisの手順
PEST Analysisを行う目的や活用場面などが正しく理解できたら、分析を開始しましょう。 PEST Analysisを行うときの手順は以下のとおりです。
手順1:自社に関係しそうな要因をPESTに振り分ける
手順2:「事実」と「解釈」に分類分けをする
手順3:「機会」と「脅威」に分類分けをする
手順4:「短期」と「長期」に分類分けをする
PEST Analysisの手順を詳しく確認していきましょう。
手順1:自社に関係しそうな要因をPESTに振り分ける
まずは自社に関わる環境要因をピックアップして、「P」「E」「S」「T」の4つに分類しましょう。環境要因の情報は、新聞や書籍、ニュース、講演会、信用できる機関などが集めたデータを利用して集めます。
むやみに調査範囲を広げてしまうと情報が混在してしまうため、調査対象範囲を業界全体にするのか、自社に影響がある部分だけを抽出するのか、事前に決めてから始めることが大切です。
手順2:「事実」と「解釈」に分類分けをする
PESTの要素に振り分けた情報を、「事実」と「解釈」に分類します。「事実」とは、実際に起きていることや証明できる明確なデータが存在する情報です。一方「解釈」とは、個人の主観による判断であるため、PEST Analysisに用いても結果は得られません。
PESTから事実が確認された情報だけを抽出して、環境分析の精度を高めていきます。事実と解釈のどちらに当てはまるのか判断できない場合は、納得できる情報かどうかを確認しましょう。一人でも同意できない情報の場合は、事実ではなく解釈に分類されます。
手順3:「機会」と「脅威」に分類分けをする
事実として抽出されたPESTの情報を、次は「機会」と「脅威」に分類します。「機会」とは、自社にとってメリットがあることや事業を成功させるためのチャンスになる要因です。一方「脅威」とは、自社にとってデメリットになることや事業を撤退させる可能性があるリスクになる要因を指します。
しかし、脅威として分類された情報は、あらゆる視点から注視すれば機会になる可能性があるかもしれません。そのため、広い視野を持って分類することが大切です。
手順4:「短期」と「長期」に分類分けをする
自社にとっての機会や脅威として分類した情報を、「短期」的に起こりうるものと長期:的に起こるものに分けます。なぜなら、短期的なものと長期的なものを混在したまま分析を続けてしまうと、生産性の低下が起きる可能性があるためです。
短期間で判断する必要があることや長期間かけて考えなければならないことが分かれば、効率的にPEST Analysisを進められます。緊急性の高さや低さによっても優先順位が変わるため、できるだけ多くの視点から情報を見極めるようにしましょう。
集めたすべての情報の振り分けが完了したら、マーケティング戦略や事業戦略への落とし込みます。またPEST Analysisを行った後もほかのフレームワークと併用して、より正確に戦略の方向性を決めましょう。
まとめ
PEST Analysisは、自社を取り巻く政治・経済・社会・技術の4つの要因を分析するために実施されます。企業が介入できないマクロ環境を網羅的に分析すれば、市場の変化を予測して時代に合った事業を展開できます。
事業を成功させるためにはいち早くトレンドを把握し、ニーズに合った商品やサービスを提供する必要があります。PEST Analysisを活用すればこのような社会的変化に柔軟に対応できる企業を目指せるでしょう。
PEST Analysisが完了したら、次はタイムパレットでデータを活用した科学的な人事を行いましょう。ダッシュボードで人材・組織の状態を一目で把握でき経営意思決定に役立ちます。
また、従業員を移動させた際に起こる影響を予測することも可能です。タレントパレットの人材データの分析によって、人事戦略の効率化と強化が実現できるでしょう。
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