人事制度の作り方を8ステップで解説!設計する際の3つのポイントも紹介


人事制度の作り方を8ステップで解説!設計する際の3つのポイントも紹介

経営目標を実現するためには、会社の考え方を反映させた計画的かつ整合性のある人事管理が欠かせません。これまでの年功序列の人事制度から脱却し、理念や経営方針にもとづいた人事管理の仕組みを目指す企業が増えています。

そこで今回の記事では、自社に合った人事制度の作り方を8つのステップで紹介します。設計する際に重要なポイントも解説するので「人事制度の作り方が分からない」「見直しを行いたい」という企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

人事制度とは?3つの構成要素も解説解説

人事制度は、会社が人的リソースを適切に管理する仕組みです。適切な人事制度は、社員の成長と会社の発展につながる重要な役割を果たします。この章では、人事制度を設ける目的と制度の構成要素を解説します。


人的資本時代に求められる経営戦略と連動する人事戦略の実践

人事制度を設ける目的

人事制度を整える目的は、人的資源を最大限活かして会社の発展を目指すことです。これまでは、年功序列による人事制度が一般的でした。しかし年功序列による報酬決定や役割付与は、能力の高い若手社員が不満を抱く原因となり、優秀な人材が流出する懸念があります。そのため、現在は年功人口序列の人事制度からの脱却を図る企業が増えてきました。


会社への貢献度や成果をもとにした人事制度に移行し、経営目標の実現に向けた適切な人材管理が求められています。また人事制度は、会社が求める人材や目指すべき方向性を社員に伝える役割を持っています。人事制度は、人材マネジメントの効率性と公平性を高める仕組み作りです。


人事制度の構成要素

人事制度を構成する主な要素は以下の3つで、社員の処遇を決定する根拠となります。


  • 等級制度
  • 評価制度
  • 報酬制度


等級制度は、従業員の能力や役割などをもとに区分・序列化して権限を付与する仕組みです。等級制度では区分・序列によって会社が求める能力・役割が異なり、付与される権限や責任の大きさが変わります。区分・序列する際の基準が明確になっているので、適材適所の人員配置が可能になります。


評価制度とは会社が設定した目標に対して明確な基準をもとに、社員の行動や成果を評価する仕組みです。適切な評価制度を構築して実施することで、社員の成長促進や会社の生産性向上が期待できます。


報酬制度は、会社への貢献度や評価をもとに社員への報酬を決定する仕組みです。成果や働きに見合った報酬を設定することで、社員のモチベーションアップにつながります。社内基準だけでなく、業種や地域の相場と比較して適切な報酬にすることが重要です。3つの制度を適切に設定し、バランスの取れた人事制度を作りましょう


人事制度の作り方8ステップ

人事制度は、会社の経営目標を実現するために欠かせない「人的資源」を適切に管理する仕組みです。自社に適した人事制度を作ることで、組織の永続的な成長・発展が期待できます。人事制度を作る際は、以下の8つの手順で進めると良いでしょう。


  1. 経営方針や企業理念の確認
  2. 現状分析
  3. 等級制度の策定
  4. 評価制度の策定
  5. 報酬制度の策定
  6. 全社員への明文化
  7. 制度の導入シミュレーション
  8. 運用開始


この章では各ステップにおけるポイントを詳しく解説するので、自社の人事制度を作成する際の参考にしてください。


経営方針や企業理念の確認

人事制度は、会社の理念や経営目標を表した内容にしなければなりません。そのため、まずは「企業が目指す方向性」や「会社の求める人物像」を明確するために、経営方針や企業理念を確認し深く理解しておく必要があります


経営方針や企業理念をもとに設計することで、根拠となる軸の通った人事制度を構築できます。評価の基準や処遇決定の根拠が明確になるので、人事制度に対する社員の納得感が得られやすくなるでしょう。


現状分析

人事制度を構築する前に、現在の問題や課題をクリアにする必要があります。人事に関する過去データや社員へのヒアリングを行い、自社の課題や問題点などを洗い出すための現状分析を行いましょう


組織内の立場でも悩みや不満は変わるため、多様な役職や部署の社員から聞き取りを実施することが重要です。現在の課題を洗い出すことで、具体的な施策や方針を検討しやすくなります。


等級制度の策定

等級制度の策定では、社員の能力や役割に応じて等級を設定します。等級制度は人事制度の骨格となる重要な部分であり、主に以下の3種類があります。


  • 職能等級制度
  • 職務等級制度
  • 役割等級制度


自社の現状に合わせて、3つの等級制度の中から方向性を決めます。等級制度を策定する際は企業の経営方針だけでなく、職場環境や企業風土なども加味して決定しましょう。適切な等級の数は、企業の規模や社員数によって異なります。標準的な設定数の目安は以下のとおりなので、自社に取り入れる際の参考にしてみてください。


  • 100名以下:6~7等級
  • 100~999名:7~9等級
  • 1000名以上:8~10等級


段階設定ができたら、各等級で期待する役割を明確にします。標準的な段階は上記のような設定になりますが、重要なのは「それぞれの等級の違いが明確であるか」という点です。各段階に該当する社員を振り分けて、能力や役割の違いが明確であるか試してみましょう。


評価制度の策定

評価制度の策定では、評価項目や基準を設定します。人事評価は、以下の3つの要素で構成されます。


  • 業績評価:一定期間における、会社への貢献度により評価
  • 能力評価:業務上必要とされる知識や能力で評価
  • 情意評価:責任や積極性など、仕事に対する姿勢で評価


社員の納得感を高めるためにも、具体的かつ客観的な評価ができる内容にすることが重要です。誰もが理解できる内容にし、わかりやすい基準を設けましょう。また、主な評価方法は以下のようなものがあります。


  • 360度評価
  • MBO(目標管理制度)
  • OKR(目標と成果指標)
  • コンピテンシー評価
  • バリュー評価


評価方法はいくつかありますが、最適な手法は会社によって異なります。企業方針や現状の課題などと照らし合わせて、自社に合った評価手法を選びましょう。


報酬制度の策定

報酬制度の策定では、等級制度や評価制度と併せて報酬を決定します。報酬とは、以下の項目を指します。


  • 給与
  • 賞与
  • 福利厚生
  • 退職金


等級制度や評価制度で策定した内容を、社員の給与や賞与に「どのように反映させるか」を決定します。報酬制度を策定する際は社内だけでなく、同じ業界や地域の賃金相場を考慮して決定しましょう。社員の能力や会社への貢献度など、成果に見合った報酬になるよう策定することが大切です。


全社員への明文化

各制度の策定が完成したら、すべての内容を全社員に平等かつ明確に伝達しましょう。人事制度の内容を明示し、会社から公正かつ公平に扱ってもらえていると実感してもらうことが大切です。明示すべき項目は、以下のとおりです。


  • 等級規程:等級数や各段階の要件
  • 人事評価規程:等級制度で定義した要件に合わせた評価基準
  • 賃金規程:賃金の計算方法や支払い方法など報酬に関する事項


人事制度に透明性を持たせ、社員に納得してもらうためにも十分な説明を行いましょう。


制度の導入シミュレーション

制度設計後は導入シミュレーションを実施し、運用前に制度の問題点を見つけ出します。たとえば人事制度の見直しにより、社員の賃金が変更される場合があるでしょう。「社員の不利益となる内容になっていないか」や「変更の必要性があるか」など、人事制度を改訂する合理性が認められなければなりません。


ほかにも人事制度には「労働基準法」や「労働契約法」など、法律に関係する内容が含まれます。弁護士や社会保険労務士など専門家に相談し、法律上の問題点がないかを十分にチェックしておくことが大切です。なお人事制度の見直しにより人件費が増加する場合があるので、社員の賃金シミュレーションを行い、制度変更後のコスト増加が許容範囲内であるかを確認しておきましょう。


運用開始

すべてのシミュレーションが完了したら、新制度として運用を開始します。運用開始後は、制度の効果や影響を図りつつ修正を加えていく必要があります。


とくに評価制度は社員のモチベーションに大きく関わるため、運用後の動向に注意しておきましょう。「社員へのフィードバックが適切に行えているか」や「社員同士の人間関係に悪影響を及ぼしていないか」など、細心の注意を払って運用することが大切です。


人的資本時代に求められる経営戦略と連動する人事戦略の実践

人事制度を作る際の3つのポイント

人事制度は、効果的に運用することが重要です。形だけの人事制度にならないよう、以下の点に注意しましょう。


  • 経営方針と整合性がとれた内容にする
  • 社員の納得感を重視する
  • 社会環境の変化を考慮する


適切な人事制度を設計するポイントを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。


経営方針と整合性がとれた内容にする

人事制度を設計する際は、自社の経営方針や企業理念に合わせて評価内容や手法を決定することが大切です。自社のあるべき姿や必要とする人材の要件などを人事ポリシーとして定め、実現する手段として人事制度を考えていきましょう。


人事制度は、会社の考え方を人材マネジメントに反映させるための仕組み作りです。他社の成功事例を真似るのではなく「会社の考えを表現した人事制度」を作り上げることを目指しましょう。


社員の納得感を重視する

人事制度を作る際は、公平性や公正性が求められます。しかし公平性・公正性を意識して作成した人事制度であっても、社員の納得感が得られなければ正しく機能しない場合があります。


人事制度の目的は社員の能力や知識を最大限活かし、企業を成長・発展させていくことです。納得できない評価や報酬はモチベーションの低下を招くため、社員のパフォーマンスの最大化は難しいでしょう。十分な説明を行い、社員が人事制度に納得できる状態にすることが大切です。


社会環境の変化を考慮する

社員が長く働き続けたいと思える環境を維持するためには、現在の社会環境に合わせていくことが重要です。特に、近年の新入社員は教育環境や親との関わり方などが大きく変化しています。そのため「労働時間の条件が合わない」「自分には向いていない」などを理由に、退職や転職を考える社員は増加傾向にあります。


また最近はライフスタイルや価値観の違いから、他者の働き方に不満を抱くケースもあるため十分な配慮が必要です。働く人の状況や環境を考慮し、不公平感を抱かない人事制度にすることが大切です。


まとめ

人事制度の目的は社員の知識や能力を最大限活かし、会社の持続的な成長・発展を実現することです。経営目標や企業理念をもとに「会社の考えを表現した人事制度」を作り、適切に運用することで能力を最大限発揮できる人材管理が可能です。また社員を正しく評価し、働きに見合った報酬を設定することは離職率低下にも貢献します。


人事評価においては明確な評価基準を設定し、充実したフィードバックを実施できる仕組みにすることが重要です。タレントパレットを活用することで、自社に合った人事制度の構築につながる柔軟なサポートが可能です。自社に適した評価シートの作成やフロー変更など、改定に伴い発生する業務の負担軽減が期待できます。またタレントパレットは人事に必要な機能が充実しているので、人材管理でお悩みの企業さまはぜひ導入をご検討ください。


人的資本時代に求められる経営戦略と連動する人事戦略の実践
タレントパレットの詳細はこちら