人事評価制度は失敗しやすい?
人事評価制度は企業ごとにさまざまなものが導入されていますが、その多くが「失敗しやすい」と考えられます。
人事評価制度に満足している社員の割合
2018年に実施された人事評価制度に関する意識調査によると、「あなたはお勤め先の人事評価制度に満足していますか」という問いに「満足」と回答した人はわずか4.4%となっています。62.3%が不満寄りの回答をし、「勤務先の人事評価制度を見直す必要があると思いますか」という問いに対しても77.6%が「必要があると思う」と回答しているのです。
この結果から社員の視点に立つと、人事評価制度が失敗に終わっている企業が多いことが分かります。
人事評価制度に納得していない社員は多い
自身への評価や業務の不公平さに納得いかず、人事評価制度そのものに疑念を感じている社員も多いです。上記と同調査を参考にすると、「評価基準が不明確」が62.8%、「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」が45.2%という結果になっています。
人事評価制度に対する社員の不信感が、失敗の原因となるケースは多いです。まずは社員から信頼される人事評価制度を導入・整備することが、必要な対策となります。
人事評価制度が失敗する原因とは
人事評価制度が失敗する理由には、いくつかの原因があります。以下では、人事評価制度が失敗につながる原因を紹介します。
評価の基準が曖昧
人事評価制度が失敗する原因の多くが、評価基準の曖昧さにあります。評価基準が曖昧で、人事担当者の主観や普段の人間関係が影響するような状況では、社員が不公平を感じることが多くなります。
評価内容に納得できない社員が増えれば、人事評価制度は失敗したと判断しなければなりません。
評価結果がそのまま査定につながっている
人事評価制度は社員の能力や成果を評価し、成長を促すきっかけにもなります。そのため単純に「人事評価の結果=査定結果」という図式になっていると、社員は無難に業務をこなすことだけに集中して挑戦することを辞めてしまいます。
人事評価における給与・昇格の査定は、あくまで一面に過ぎないことを理解しておかなければ、失敗につながる原因となるでしょう。
社員の意見を反映できていない
人事に関わる担当者だけが人事評価制度を決定し、説明もなく評価を実施するケースは多いです。その場合社員の意見を反映できず、一方的な通達になるため、納得のいく評価を提示できない可能性が高まります。
人事評価制度は相互の意見を尊重する形を取り、人事担当者と社員の両方を大切にする環境が必要です。
人事評価制度の失敗パターン
人事評価制度の失敗パターンを把握することで、事前に対策が取りやすくなります。以下では、よくある失敗パターンを紹介します。
導入に時間をかけられず失敗するパターン
人事評価制度に新しい方法を導入する際に、時間をかけられず失敗する事例は多いです。人事評価制度の導入にかける時間が短すぎると、人事担当者も評価方法を理解しきれず、評価にブレが生じる可能性が高まります。
人事評価が正確に実施できないと、社員の不満を増加させ失敗にいたるケースが考えられます。
自社に合わない評価制度を導入したことで失敗するパターン
人事評価制度の種類は多く、導入する評価方法によって成功・失敗が決まってしまうこともあります。自社の業務内容や職場環境に合わない評価方法を選んでしまうと、正確な評価ができずに社員の不満を募らせる可能性が懸念されます。
また、「定量評価」と「定性評価」の片方しか導入しないなど、導入方法を間違えるケースも失敗につながりやすいため注意が必要です。
人事評価制度が失敗することによるデメリット
人事評価制度が失敗に終わると、企業・社員にさまざまなデメリットを与える可能性があります。
業務へのモチベーションを削ぐ結果になる
人事評価制度が失敗すると、業務に対する社員のモチベーションが低下する恐れがあります。「頑張っても評価されない」と考える社員が増えると、業務への熱意が冷めてしまう可能性が想定されます。
モチベーションの低下はそのまま生産性を低下させることにつながるため、人事評価制度の失敗が事業にダメージを与えることもあります。
人事担当者の負担が増加する
人事評価制度が失敗すると、その責任を人事担当者が負うケースが多いです。精神的な負担となることはもちろん、失敗原因の調査や再発防止策の考案など業務量が増えるため、人事担当者が疲弊しやすくなる点もデメリットになります。
人事担当者が失敗のリカバリーに負担を感じないように、サポート・ケアを実施するのが重要です。
離職者の増加につながる
人事評価制度が失敗し、その後の改善もみられないと、社員は会社を見限って退職する可能性があります。特に自分の評価に納得いっていない社員は、認めてくれる企業への転職活動をはじめることが懸念されます。
離職者が増えれば事業の継続すら難しくなるため、失敗の原因究明と解決は早急に進める必要があります。
人事評価制度を失敗させないための対策について
人事評価制度を失敗させないためには、以下の対策が有効に働きます。
人事評価の基準や流れを明確にする
人事評価において基準となる項目や、評価を決定するまでの流れを明確にすることで失敗を防ぎやすくなります。「なぜその評価になったのか」を社員に説明できれば、不公平感をなくして評価内容に納得してもらえる可能性が高まります。
人事評価の流れが曖昧な状態にある場合には、まず基本的なフローを明確にすることからはじめてみてください。
人事評価の目的を共有する
なぜその評価方法を導入したのか、何を目的に評価をするのかといった点を社内で共有することも、人事評価制度を失敗させないポイントです。人事担当者が人事評価の目的を正確に理解できれば、納得できる評価ができるだけでなく、目的の達成につながるアドバイスなどを社員に実施できるようになります。
人事評価の目的は上層部や人事だけでなく、社員にも公開して共有するのが基本です。
人事担当者向けの研修・トレーニングを実施する
人事評価の失敗を避けるためには、評価を担当する社員のスキルアップも重要な施策になります。人事担当者向けの研修やトレーニングを定期的に実施し、企業の方向性と評価基準のすり合わせやフィードバックを行うことも検討されます。
研修・トレーニング内容はこまめに見直し、自社の人事にとって最適なものに改善していく姿勢も必要です。
社員アンケートで納得度を改善した事例
人事評価の失敗を防ぐために、社員アンケートを元に不安点を抽出し、説明会を繰り返すことで「納得度」という指標を改善した事例があります。人事のKPIに納得度を導入し、課題抽出から解決策の実行までのサイクルを構築することで、徐々に社員に人事評価の内容を納得してもらえるようになりました。
「タレントパレット」ではこの納得度による改善を支援し、人事評価制度の失敗を回避した事例として紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
※参考:タレントパレットで実現した「ADK流人事データ活用」~定量・定性両面でのPDCA~
人事評価制度の失敗をそのまま終わらせないポイント
人事評価制度を失敗で終わらせないためには、以下のポイントを理解することが重要です。
修正・改善を繰り返すことを前提に進める
新しい人事評価制度を導入する場合、短期間で効果を出すのが難しい場合もあります。失敗してそのまま終わらせるのではなく、修正・改善を繰り返すことを前提にして、長期的な視点で社内への浸透を目指すのがポイントです。
「失敗したから辞める」のではなく、「失敗したから改善する」というポジティブな思考で人事評価を進めるのが重要です。
人事評価制度の失敗理由や社員からの意見をフィードバックする
なぜ人事評価制度が失敗したのか、どうすれば失敗しなかったのか、社員からどのような意見が出ているのかといった点をまとめ、全体にフィードバックします。
次回の人事評価までに改善できる要素をピックアップし、同じ失敗を繰り返さないように備えるのがポイントです。
まとめ
人事評価制度は失敗の可能性が高く、実際に不満を抱いている社員も少なくありません。人事担当者は失敗の原因や改善方法を把握し、人事評価制度を成功に導くために必要な要素を理解することが求められます。この機会に人事評価制度が失敗しやすい理由や対処法を、具体的に把握して対策を講じてみてください。