こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「産業医面談の対象となる残業時間が知りたい」「面接指導に向けて何をすれば良いの?」といったお悩みを抱えていないでしょうか。
企業が繁忙期に入るとどうしても社員の残業が増えますが、長時間労働は心身に大きな負荷がかかり、健康障害を招く恐れがあります。厚生労働省の調査によると、2021年の過労死による労災申請は3,099件で、前年度より約260件も増加しています。社員の健康を守るためにも産業医面談を実施し、適切な措置を取ることが大切です。
そこで本記事では、以下の内容について解説します。
- 面接指導制度の概要
- 産業医面談で企業が対応すること
- 社員に面談を受けてもらうためのポイント
- 残業時間の改善方法
長時間労働者の基準を理解でき、面接指導の施策や残業時間の解消方法なども参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。
産業医による長時間労働者への面接指導制度について解説
労働安全衛生法により、企業は長時間労働者に対して面談を行わなければなりません。ここでは、産業医面談の概要について解説します。
- 面接を行う目的
- 産業医面談の対象者と基準
- 面接指導の流れ
産業医面談について理解を深めたい企業担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
面接を行う目的
長時間労働者へ面接指導するのは、心身の健康を守るためです。長時間労働を続けると脳や心臓疾患の発症につながりやすいと言われています。近年は特に、精神障害による過労死の労災請求が増加傾向です。また自殺者のうち仕事を原因とする割合は、2007年の6.7%以降おおむね増えており、2021年は9.2%でした。
万が一でも社員過労死が発生した場合、企業は社会的信用を失ってしまうでしょう。産業医は長時間労働による健康リスクが高い社員の状態を把握し、長時間労働者や企業に適切な指導を行います。面接指導を受けることで社員は心身の状態を理解し、健康意識の向上が期待できます。
参照元:厚生労働省|令和4年版過労死等防止対策白書 第2章過労死等の現状
参照元:厚生労働省|令和4年版過労死等防止対策白書 第1章労働時間やメンタルヘルス対策等の状況
産業医面談の対象者と基準
健康障害のリスクがある社員に対し、企業は産業医面談を実施する必要があります。面接指導の対象となる長時間労働者の基準は、以下のとおりです。
対象者 | 基準 |
---|---|
労働者 | 時間外・休日労働が月80時間を超えていて疲労の蓄積が見られ、面談を申し出た者。 |
研究開発業務従事者 | 時間外・休日労働が月80時間を超えていて疲労の蓄積が見られ、面談を申し出た者。 時間外・休日労働が月100時間を超えている全ての者。 |
高度プロフェッショナル制度適用者 | 「事業内外での労働時間が週40時間を超えた」時間が月100時間を超えた者。 |
残業時間が80時間を超えた場合、社員から面談の申し出がなくても、企業側から実施するよう働きかけなければなりません。基準に該当しなくても社員から面談の希望があった場合は、実施することが望ましいです。また企業努力として、自主的に定めた基準に当てはまる社員にも面接指導を行います。
休日労働について詳しく知りたい方は、別記事「法定休日残業」をあわせてご確認ください。
参照元:厚生労働省|長時間労働者への医師による面接指導制度について
面接指導の流れ
面接指導をスムーズに進められるように、一連の流れを把握しておきましょう。
面接指導の流れ | 概要 |
---|---|
労働時間の算定・通知 | 労働時間を算出し、時間外・休日労働が80時間以上の場合は該当者へ通知する。 |
該当者へ面接指導の促進 | 該当者へ面談の申し出を促す。産業医からも勧奨可能。 |
産業医面談の実施 | 申し出から1ヶ月以内に面談を実施する。面談では該当者の勤務状況や疲労蓄積度合い・メンタルヘルスなどを確認する。 |
産業医から意見聴取 | 企業は産業医から面談結果や必要な措置を聴取し、内容を記録する。記録は5年間保存する必要がある。 |
事後措置の実施 | 産業医の意見をもとに、部署の異動や労働時間の短縮・休職など該当者に適切なケアを行う。 |
長時間労働の該当者が気軽に面談できるように、手続きを簡易化することが大切です。
産業医面談は企業の義務ではあるが社員への強制力はない
企業は労働安全衛生法で面談実施が義務付けられていますが、社員にとっては任意です。企業は強制できないので、あくまで該当者から申し出があったときに面談するようにしましょう。
場合によっては、面接指導を拒否されるケースもあります。多忙で時間が取れなかったり、心身の不調を企業に把握されたくなかったりと、理由はさまざまでしょう。しかし、面談を放置して社員が健康障害を発症した場合、企業側が安全配慮義務違反と指摘される恐れがあります。
したがって、該当者に適宜フォローを入れながら面談の勧奨を行った旨を記録し、安全配慮義務を果たしたことを証明できるようにしておくことが重要です。
産業医面談で企業が取るべき3つの対応
実際に社員から面談の申請があった場合、企業は適切に対応しなければなりません。ここでは産業医面談の際に、企業が取るべき対応について紹介します。
- 社員の労働時間を把握する
- 商談の記録を作成して適切に保存する
- 面談後に適切な措置を行う
面談時の対応方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
社員の労働時間を把握する
長時間労働を防止したり、正しく残業時間を計算したりするためにも、労働時間の把握は重要です。労働安全衛生規則では、パソコンの使用時間やタイムカードの記録などによる労働時間の記録が義務付けられています。社員だけでなく、残業が多くなりがちな管理職の労働時間も正しく把握しなければなりません。
また産業医が面談を実施するにあたって、社員の労働状況を正しく判断するために、企業は労働時間の提供が義務付けられています。
面談の記録を作成して適切に保存する
面談後、1ヶ月以内に産業医から社員のストレス度合いや必要な措置についてヒアリングし、記録する必要があります。また記録は、労働安全衛生法および労働安全衛生規則により5年間保存しなければなりません。
産業医面談で社員の情報を提供したり、記録を確認したりすることもあるので、実務での使用も考慮して保存することが大切です。
面談後に適切な措置を行う
面談後、企業は産業医から面談内容や必要な措置を聴取する必要があります。聴取結果をもとに措置が必要と判断した場合は、産業医の意見を聞いた上で、以下のような対策を取らなければなりません。
- 労働時間の短縮
- 深夜労働の削減
- 業務内容の見直し
- 所属部署の異動
- 就業場所の変更
個別対応だけでなく、企業全体で残業時間の削減に向けて動くことが重要です。就業規則を見直したり、有給休暇の取得を促したりなど、労働環境を整えましょう。
産業医面談の実施率を上げる5つのポイント
社員に面談の義務はないため、拒否されるケースもあります。そのため、産業医面談の実施率を上げるには、社員の立場に寄り添った対応が必要です。ここでは、社員に安心して面談を受けてもらうための5つのポイントを説明します。
- 産業医面談を受けやすい環境を作る
- 面接指導を受けるメリットを周知する
- 産業医面談が法律で義務付けられていることを説明する
- 産業医には守秘義務があることを知ってもらう
- 面談日を幅広く準備する
自社の面談実施率が低くてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
産業医面談を受けやすい環境を作る
健康管理のためとはいえ、ほぼ初対面の産業医に自身の健康状態を話すことに抵抗を感じる社員がいるかもしれません。身近に感じてもらえるように、企業が産業医の役割や人柄について周知しましょう。産業医がこまめに職場巡視を行って、社員と接触する機会を増やすことも重要です。
また、産業医面談が評価に関わってしまうことを心配する社員もいます。相談者への不利益な扱いは法律で禁じられていることを説明し、安心して面談を受けられるようにしましょう。
面接指導を受けるメリットを周知する
面談によって、社員が受けられるメリットを説明するのも効果的です。産業医面談における最大のメリットは、健康を維持しながら働き続けられることでしょう。面接指導で体調不良の早期発見や治療につながるケースもあります。
特にメンタルヘルスの不調は気付きにくいので、面談を受けて自身の状態を知ることが重要です。産業医面談では、プライベートや持病についても相談できます。このような悩みが不調の一因になっている可能性もあるため、親身になって対応してくれることが多いです。
産業医面談が法律で義務付けられていることを説明する
面接指導が法律で義務付けられていることを周知することで、理解を示す社員も増えるでしょう。企業には面談実施の義務があるため、社員に受けてもらえるよう努めなければなりません。
仮に面談をしないまま社員が健康障害を発症した場合、責任を問われる可能性があります。そのため、企業は産業医面談を実施し、安全配慮義務を果たしていることを証明しなければなりません。
社員にも労働安全衛生法で自己保健義務が定められており、自身の健康維持に努める必要があります。産業医面談で健康を管理することは、企業と社員の双方にとって重要です。
産業医には守秘義務があることを知ってもらう
産業医面談で話した内容や健康状態を「口外されてしまうのではないか」と不安に思っている社員もいます。産業医には守秘義務があり、本人の同意なく面談内容を開示することがない旨を周知し、社員の不安を払拭することが重要です。
産業医は中立の立場なので、第三者目線の助言を聞くことが可能です。面談に上司が同席することはないので、安心して面談を受けられます。
面談日を幅広く準備する
仕事が忙しいことを理由に面接指導を拒否する社員もいるので、面談日を幅広く設定すると実施率が上がります。
また、急に会議などが入ったとしても柔軟に日程変更ができることを伝えておくと、面談に対してプレッシャーを感じにくくなるでしょう。
どうしても時間が取れない場合は上司や同僚から協力してもらい、面談時間を作る方法もあります。ただし、産業医面談の該当者であることを知られたくない方もいるため、注意しながらサポートしましょう。
残業時間を減らすために企業が取り組むべき4つの対策
働き方改革が進んで残業時間に対する目がより一層厳しくなり、労働環境の整備が急務となっています。ここでは、時間外・休日労働の削減方法について紹介します。
- 管理職から意識改革を行う
- 就業規則を整備する
- 評価制度を見直す
- 有給休暇の取得を促す
長時間労働に対策する方法が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
管理職から意識改革を行う
長時間労働を減らすために、まずは管理職の意識改革から行いましょう。社内に残業が当たり前という意識が根付いている場合は、上層部から変えていかないと一般社員まで浸透しません。社員の個性や能力・適性を見極めてタスクを振り分けたり、適切に勤怠管理したりできるように研修で指導しましょう。
また、上司が率先して定時退社するのも効果的です。「上司が社内にいるから帰りにくい」と感じている社員は少なくありません。マネジメント層から積極的に定時退社を勧めることで、長時間労働の防止につながるでしょう。
就業規則を整備する
残業時間を減らすために、勤務制度を見直すことは有効な手段の1つです。例えば「ノー残業デー」を週に1回設けて、労働時間の削減を目指す方法があります。最近は、フレックス制度を導入する企業も出てきました。
コアタイム以外は柔軟にスケジュールを組めるので、子育てや介護などの事情がある方も働き続けられるようになるでしょう。ただし、新しい制度を取り入れたら終わりではありません。人事が定期的に周知したり、上司が積極的に新制度を利用・推奨したりして社員に浸透させることが重要です。
評価制度を見直す
給与やボーナス・昇給に直結する評価制度を変えることで、長時間労働の削減につながることもあります。今でも「残業するほど頑張っている」という価値観を持っている方は多いでしょう。
生産性の高さを重視する制度に変えることで残業への美徳を払拭し、上司が正しく評価できるようになることが大切です。生産性が重視されれば社員のモチベーションが上がり、限られた時間の中で結果を出せるように努力するでしょう。
有給休暇の取得を促す
有給休暇を取得することで、残業時間の減少が見込めます。2019年4月から年5日の有給休暇取得が義務付けられていますが、取得率は50%前後で推移しており状況は40年前から変わっていません。そのため、休みを取りやすい雰囲気を作ることが大切です。
例えば、管理職の評価項目に部下の有給休暇の取得状況を盛り込むことで、積極的に消化を促すようになるでしょう。また上司が定期的に休みを取ることで、部下も休みやすくなります。適切に休みを取ることでリフレッシュでき、結果的に仕事の効率が上がるでしょう。
産業医面談残業時間のまとめ
残業時間が80時間を超えている社員は、産業医面談の対象です。企業には面接指導の義務があるため、社員の健康を守るためにも実施を促しましょう。面談後は、産業医と連携して適切な措置を取ることが大切です。また、残業時間の削減に向けて就業規則や評価制度を見直し、働きやすい環境を整備しましょう。
企業全体を見直すにあたって、サービスを利用してみるのもおすすめです。タレントパレットでは、以下のような管理や分析が1つのプラットフォームで完結するので、業務の効率化が期待できます。
- 評価シートをシステム化し、柔軟に評価制度やフローを作成・変更できる。
- 人材配置のシミュレーションが行えるので、適切な部署へ配置できる。
- 社員に合わせた研修を自動でレコメンドできる。
- 簡単にアンケートを作成でき、手軽に社員のモチベーションを図れる。
社員が健康を維持しながら長期的に働けるように、ぜひタレントパレットのサービス利用をご検討ください。