組織の役割とは?組織の基本から組織図や組織を作るポイントも解説


組織の役割とは?組織の基本から組織図や組織を作るポイントも解説

人事担当者には、組織の仕組みに関する知識が必要です。また、社員が円滑に業務を進められるよう、組織の役割や目的を伝える立場でもあります。組織づくりの知見が浅ければ、適切な人材配置ができず、企業の業績にも影響を及ぼしかねません。本記事では組織の定義や種類、組織づくりのポイントを解説します。組織図を作成する目的やメリットについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。


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組織の定義

組織とは、共通の目標を達成するための集団のことです。役割や機能が分割または統合されており、構成メンバーは与えられた業務・作業を遂行することで、目標の達成を目指します。経営学においては「意識的で、計画的で、目的を持つような人々の相互間の協働」とも定義されています。


組織を構成する3つの役割・要素

単に人が集まっているだけでは、組織とは見なされません。まずは、組織を構成する3つの役割・要素から見ていきましょう。


共通の目標や目的

組織には、共通の目標や目的が存在します。たとえば、地域の自治会は「近隣住民との親睦を深め、地域の課題解決を目指す」といった目標が掲げられています。同じようなメンバーが集まっても、明確な目的がなければ組織とは呼べません。


企業の場合は、ビジョン・企業理念・経営方針・売上目標・利益目標などが、共通の目標となります。組織を構成するメンバーは、共通の目標を理解し、達成に向けて行動しなければなりません。組織運営の成否は、目標や目的が浸透しているかどうかで変わってきます。


目標が浸透していなければ組織が目指す方向が不透明となり、成果が発揮しづらくなります。正しく浸透している企業は、社員がそれぞれの業務と目標を紐づけて考えられるため、生産性も高まります。


組織への貢献意欲

組織への貢献意欲も重要な要素の1つです。組織に所属することは、チームで働くことを意味しています。組織として業務を進めていくためには、互いの協力が不可欠です。社員同士が協力する意思を持つことで、組織としての一体感が生まれます。


個人プレーを好む社員も少なくありませんが、義務的に決められた業務をこなすだけでは、組織としての成長は鈍化してしまいます。組織への貢献意欲を高め、企業に利益をもたらすのは「チ―ムとして目標を達成したい」という気持ちです。企業には、社員の貢献意欲を引き出す施策の立案・実行が求められています。


組織内の意思疎通

組織を構成する要素として「スムーズな意思疎通」も欠かせません。社員同士のコミュニケーションがストレスなくできることはもちろん、情報共有のルートが明確になっているかも重要なポイントです。


社員同士といっても「上司と部下」「先輩と後輩」「同期同士」など、さまざまな関係性が存在します。どこか1つでも問題があると組織全体に影響が出てしまうため、偏ったコミュニケーションで満足する社員がいないよう注視してください。


組織の基本形

組織の基本形は「ライン組織」「ライン&スタッフ組織」「ファンクショナル組織」の3種類に分けられます。それぞれ詳しく解説します。


ライン組織

ライン組織では、上から下まで単一の命令系統で結ばれています。直系組織と呼ばれることもあり、上位から下位への命令が中心です。ごく一般的な組織形態ですが、どちらかというと職務内容が単純な企業や、社員数の少ない小規模な企業に向いています。


命令系統が明確なので、指示が伝わりやすく、責任の所在もはっきりしています。課題としては、管理者の権限コントロールが難しい点、階層が多くなると意思決定に時間がかかる点などが挙げられます。また、ライン組織だけでは他部門との連携が取りづらいため、場合によっては補完するような仕組みが必要です。


ライン&スタッフ組織

ライン&スタッフ組織は、ライン組織を応用した形態です。上位から下位への命令は同じですが、専門家による補足的なアドバイスが加わります。具体的には、従来のライン組織に対して、サポート役を担うスタッフ部門が増設されるようなイメージです。スタッフ部門の位置づけは企業によって異なりますが、主に企画部や広報部などが該当します。


専門家が行うのは、管理者のサポートや判断材料となる情報の提供です。基本的に専門家はラインへの命令権限は持ちませんが、管理者へのアドバイスなどは行います。ライン&スタッフ組織はうまく機能すれば高い効果を得られるでしょう。一方で、管理者と専門家のパワーバランスが崩れると、命令系統があいまいになるなど、トラブルに発展しやすくなります。


ファンクショナル組織

ファンクショナルは「機能的な」「実用的な」という意味を持つ言葉です。ファンクショナル組織では、事業分野ごとに複数の管理者が配置されています。すべての命令権限を持つライン組織とは違い、管理者の権限は得意分野のみに限定される点が特徴です。


ファンクショナル組織のメリットとしては、特定業務に詳しい管理者が命令を行うことで、業務がスムーズ進行できる点が挙げられます。一方で、命令系統が複雑になりやすく、現場が混乱してしまう点には注意が必要です。管理者同士で意見が分かれたときの対処法などを事前に検討する必要があります。


組織構造の種類

組織構造にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な形態として「機能別組織」「事業部制組織」「マトリックス組織」の3つを解説します。


機能別組織

機能別組織は、業務内容ごとに組織を形成します。具体的には「営業部」「生産部」「企画部」といった機能を軸に人材を配置する構造です。社員数が多い場合は「営業1部」「営業2部」などに分けられることはありますが、同じ役割を持つ部門が重複することはありません。


専門性を高めるために編成されるケースが多く、環境の変化が起こりにくい企業や、単一事業を展開している企業に適した形態です。各組織のトップに一定の権限を与えることで役割分担が明確になり、意思決定のスピードも上がります。基本的には縦割りの組織となるため、部門間の連携や情報共有が弱くなりやすい点に注意が必要です。


事業部制組織

事業部制組織とは、複数の事業部を設置し、それぞれに業務内容を割り振る組織構造のことです。たとえば「A事業部」「B事業部」「C事業部」の3つがあった場合、それぞれの事業部ごとに「営業部」「生産部」「サポート部」といった部門を設置します。担当する事業は異なりますが、1つの企業内に同じような機能を持つ部門が重複することになるため、リソースが必要です。


事業部制組織は、社員数の多い企業や、複数の分野で事業を展開している企業に向いています。事業部ごとに決裁権があるため、基本的には経営層にまで確認する必要はありません。各事業部のトップは、事業部における経営者的な存在で、将来的な経営層候補と見なされます。


マトリックス組織

「行」「列」という2つの軸で情報を分類したチャートのことを「マトリックス図」と呼びます。マトリックス組織とは、機能別組織と事業部制組織を合わせた組織構造のことです。「行」にあたる部分に「営業部」「生産部」「サポート部」などの部門、列にあたる部分に「A事業部」「B事業部」「C事業部」などの事業部が配置されます。


機能別組織や事業部制組織では、所属する部門は1つです。一方、マトリックス型組織では、複数の部門や事業部に在籍でき、柔軟に業務に取り組めます。事業部制組織でのスピーディな意思決定を実現しながら、リソースの最適化も実現可能です。デメリットとしては、命令系統が複雑になりやすい点が挙げられます。現場が混乱しないよう、フォロー体制をしっかりと整えておくことが重要です。


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組織の役割

複数の要素がその役割を果たすことで、はじめて組織としての成果につながります。ここでは、役割の基本と組織運営に必要な要素を見ていきましょう。


組織の役割の基本

組織は目的や目標を達成するために構成されます。構成メンバーには、それぞれ組織内での役割が与えられており、この役割を果たせなければ組織は意図したとおりに機能しません。組織の役割は、目標を達成するための重要な要素です。


たとえば「法人営業部」「個人営業部」に配属された社員では、アプローチする営業先が異なります。法人営業部内でも「東日本営業1課」「西日本営業1課」のように地域を限定することもあるでしょう。このように、組織内での行動パターンやルールを規定することで、組織運営の秩序と効率を保ちます。


組織のメンバーの役割と重要性

組織を構成するメンバーは、1人ひとりが自分の役割を理解し、それに基づいて行動しなければなりません。それぞれが役割への理解を深めることで、社員が一丸となり、達成すべき目標に向かって前進できます。


社員が共通認識を持つために必要なのが「ビジョン」です。ビジョンとは、企業の展望や理想とする将来像を意味します。ビジョンを掲げることで、目指すゴールが明確になり、同じ方向を向いて仕事をする組織づくりが可能です。自分の業務とビジョンを結びつけることで、組織のなかで果たすべき役割を理解でき、社員同士の連携も強化されます。


効率的な組織運営の役割

組織の枠組みを作っただけでは、効率的な運営はできません。組織のパフォーマンスを最大化するためには、そのメカニズムを理解する必要があります。効率的な組織運営を実現するためのポイントは下記のとおりです。


・明確な目標設定

・適切な役割分担

・高度なコミュニケーション

・開放的な組織文化の構築


また、それぞれの責任範囲を明らかにすることも重要です。命令系統や部門間の連携のフローを図表化しておくと、トラブル発生時の対応もスムーズに行えます。


コミュニケーションの役割と重要性

組織内でのコミュニケーションは重要です。構成メンバー間の信頼関係を築くためには、コミュニケーションが欠かせません。組織においては、一方的な報告や依頼ではなく、双方向のコミュニケーションを意識することがポイントです。


部下からの報告を受ける際も「どうしてそのような結果になったのか」「改善点はないか」などを質問することで、組織としての成長につながります。コミュニケーションがとりやすい組織は、情報の伝達・理解・共有がスムーズに行えるため、全体のパフォーマンスも向上しやすいでしょう。


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組織文化が果たす役割

組織文化とは、構成メンバーが共有する価値観・行動様式・信念などのことです。組織として共通した基盤を持つことで一体感が醸成され、企業への貢献意欲も高まります。また、ポジティブな組織文化が浸透することで自発的な行動が促されるため、生産性が向上しやすい点もメリットです。


組織文化は組織にとって重要な役割を果たします。しかし、考え方や行動のパターン化や同調圧力を引き起こす恐れがあるため、定期的に状況を把握し、必要に応じて対処しなければなりません。


組織図の目的

組織の枠組みが完成したら、組織図の作成に取りかかります。組織図は「外部向け」「内部向け」の2種類を作成しましょう。外部向けと内部向けでは目的が異なるため、記載する項目も変わってきます。


外部向けの主な目的は、自社の特徴の発信です。株主や取引先・投資先に企業の骨組みを伝える目的で作成するため、パーソナルな情報は含まれません。内部向けの主な目的は、指揮・命令系統の明確化です。業務の遂行をサポートする役割もあるため、氏名や連絡先などの個人情報が記載されているケースもあります。


組織図のメリット

組織図を作成することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは「外部向け」「内部向け」の組織図を作成するメリットをそれぞれ解説します。


自社の健全性をアピールできる

外部向けの組織図を作成し、株主や投資家などに組織図を公開することで、自社の健全性をアピールできます。たとえば、各事業部を記載するだけでなく「内部監査室」「監査委員会」などを組織図に加えることで、監視体制が万全であることを示せるでしょう。自社サイトに組織図を掲載する場合は、事業部や役割ごとに色分けすると視認性が向上します。


社員が自分のポジションや役割を理解できる

内部向けの組織図を作成し、社内に公開することで、社員が自社の全体像を感覚的に把握できます。具体的なメリットは「組織内での立ち位置が分かる」「所属している部署と他部署のつながりが理解できる」などです。組織図があることで、新入社員や配置転換された社員も自分のポジションや役割が認識でき、業務に取り組みやすくなります。


業務分配がスムーズにできる

組織図は、経営陣が組織戦略を練る際にも有効です。組織図を作成することで、企業の全体像が視覚的に把握でき、業務分配がスムーズに行えます。たとえば「営業部・販売促進課」「企画部・販売企画課」という2つの部門があった場合、組織図があることで、業務の重複に気づきやすいでしょう。


「規模が大きくなった事業部の権限を拡大する」「人材配置のバランスを見直す」といった検討がしやすくなる点も、組織図を作成するメリットです。


社員コミュニケーションを円滑にできる

内部向けの組織図は、社員同士の相互理解を促進するのにも役立ちます。特に、社員数が多い企業や複数の拠点を持つ企業では、他部署の社員の顔が分からなかったり、顔と名前が一致しなかったりするケースが少なくありません。数千人・数万人規模の企業になると、そもそもどのような業務を担当しているか分からない状況もあるでしょう。


そのような状況において、社内向けに氏名・役職・顔写真などが掲載されている組織図は、親交を深めるツールの1つです。組織図をコミュニケーションのツールとして活用できれば、業務を迅速かつ円滑に進められます。


組織(企業)づくりのポイント

最後に、組織(企業)づくりのポイントを解説します。人事担当者が知っておきたい要点をまとめているので、参考にしながら自社に合った施策を検討してみてください。


適切な人事評価制度

組織には、公正に評価できる人事評価制度が不可欠です。社員が企業に貢献したいと思うためには「自分の働きが正しく評価されている」と感じられる必要があります。そのために、企業は人事評価制度を構築し、業績や働き方を公正に評価しなければなりません。社員が納得できる人事評価制度を構築することで、企業への貢献意欲が高まり、仕事へのモチベーションも向上します。


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企業のビジョンや理念を全社的に共有

企業のビジョンや理念を全社的に共有するのも、人事部門の役割です。企業によっては、社内広報部などがビジョンや理念の浸透を図ることもありますが、人事部の協力は欠かせません。たとえば、採用の場面でも、企業のビジョンや理念を伝えることで、自社に適した人材を確保しやすくなります。


社員数が多い企業ほど、企業のビジョンや理念の浸透は難しくなるため、さまざまな施策を検討しなければなりません。「定期的なアンケートの実施」「勉強会の開催」「経営層による講演」など、自社に合った取り組みを実施し、ビジョンや理念を広く浸透させていきましょう。


社員教育制度の確立

企業が成長を続けるためには、学び続ける姿勢が必要です。社員の学びをサポートするための有効な施策が社員教育制度です。社員教育制度により社員のスキルが向上すると、画期的な商品・サービスの開発が期待できます。新人・中堅・ベテランなど、勤続年数に合わせた教育制度を確立することで、社員自身もスキルアップを実感でき、仕事に対する意欲も向上するでしょう。


まとめ

共通の目標や目的を達成するための集団が「組織」です。組織にはさまざまな種類があり、構造によって意思決定の早さや連携のしやすさなどが異なります。また、組織づくりを成功させるためには、最適な人材配置への意識を持つことが重要です。


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