オンボーディングの意味・目的
そもそもオンボーディングとは何なのでしょうか。ここでは、オンボーディングの概要や目的について解説します。
人事におけるオンボーディング
オンボーディングは「on-board」が語源となっており、元々は船や飛行機に搭乗していることを意味します。しかし、人事においては新入社員が即戦力となれるように設計されたプログラムを指すことが一般的です。
オンボーディングとOJTの違い
オンボーディングとOJT(On the Job Training)を混同している人も見られます。OJTとは、業務を実際に行いながらやり方や進め方を覚えていくという育成方法です。オンボーディングは人材育成プロセスの1つであり、OJTもオンボーディングのなかに含まれています。
オンボーディングの目的
オンボーディングの目的は、組織全体で新入社員を受け入れる体制を構築することにあります。継続してサポートしていくことにより、新入社員が自分の実力やスキルを発揮しやすい環境を作れます。
オンボーディングが重要視される背景
オンボーディングが注目される背景には何があるのでしょうか。ここでは、オンボーディングが重視される理由を解説します。
早期離職率が高くなっている
新入社員の早期離職率は高い傾向にあり、いかにして離職率を低下させるかが喫緊の課題です。そのため、人材を定着させる取り組みが重要視されており、その1つとしてオンボーディングが注目されています。
中途採用が増えている
終身雇用や年功序列の崩壊、働き方に対する意識の変化などにより、人材の流動化が加速化しています。これにより、中途採用は増加傾向です。中途採用した人材が定着し早期に活躍できるように、オンボーディングによる育成が必要だとされています。
オンボーディングプロセスの効果・メリット
オンボーディングプロセスを設計することでどのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを解説します。
離職率の低下
入社前や入社後に適切なフォローをすることで、新入社員が安心して業務にあたれる環境が構築されます。そのため、新入社員の離職率が低下することが期待できるでしょう。
採用コストの削減
新入社員の離職率が低下することにより、採用コストの削減につながります。すぐに離職されてしまうと再度採用活動を行わなければならず、採用コストがかさみます。しかし、早期離職を防ぐことで、余計な採用コストを使わずに済むでしょう。
早期戦力化
オンボーディングによって、新入社員が早期に戦力となるため、能力を活かして働きやすくなります。新入社員がすぐに戦力となれば、チームとしての業務も円滑に進められるようになり、生産性の向上なども見込めるでしょう。
オンボーディングプロセスの一例
オンボーディングプロセスにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、入社前・入社直後・入社後に分けて解説します。
入社前
入社前は、入社するにあたっての不安や疑問を解消することが重要です。特に、内定から入社まで期間が開く場合には、不安やストレスを抱えやすいとされています。そのため、座談会や懇親会、見学会などを実施して、コミュニケーションを取るとよいでしょう。入社前のフォローを適切に行い、信頼関係が構築しやすい体制を整えます。
入社直後
入社直後は、新入社員が業務に慣れるまでフォローやサポートをできる体制を整えておくことが重要です。職場環境に慣れるようにこまめにコミュニケーションを取る、分からないことがあればサポートするなど、相談しやすい環境を作ることも大切です。また、社内理念や社内規則などのルールをしっかり伝えて理解を得ることも重要です。
入社後
入社後は、キャリア面談や人事面談などを定期的に行って、コミュニケーションの機会を設けましょう。入社後数か月すると仕事にも慣れますが、今後に対する悩みやキャリアへの不安なども感じやすい時期です。そのため、メンターを設置して相談しやすい体制を整える、定期的に面談して不安を解消するなどのフォローが必要になります。
オンボーディングプロセスの設計手順
オンボーディングプロセスを設計する際には、6つのステップを意識しましょう。ここでは、詳しい設計手順を解説します。
1. 目標を設定する
オンボーディングの目的を明確にして、新入社員にどのように活躍してほしいかなどのゴールを設定しましょう。目的や目標が明確ではないと、適切なプランが立てられません。プロセス設計のなかで新しい課題が見えることもあります。
2. 環境を整える
適切なフォローやサポートを行うための環境を整えるには何が必要なのか、しっかりと検討することも重要です。たとえば、SNSや社内ポータルの構築、1on1ミーティングやメンターの設置など、自社に合ったコミュニケーション方法を探しましょう。
3. プランを作成する
オンボーディングプロセスでは、入社前・入社直後・入社後1か月というように、段階に応じて達成すべき目標を設定することが重要です。期間を区切ることにより、達成しやすい目標が設定でき新入社員のモチベーション維持にもつながります。
4. プランの見直しをする
プランを作成した後は、人事だけではなく配属先の現場にもプランを伝えましょう。現場が納得したうえで実施してもらうことが重要です。関係者全員が納得するプランにするため、必要があればプランの見直しも行いましょう。
5. プランを実行する
プランが決定したあとは、プランをもとにオンボーディングを実施しましょう。スケジュールどおりに進まないケースもありますが、臨機応変に対応することが重要です。また、進捗の記録をつけることで、プランの振り返りがしやすくなります。
6. プランを振り返る
新入社員本人だけでなく、管理者や現場の社員にもヒアリングをして、プランの振り返りを行いましょう。定期的にプランを振り返ることで、効果や課題を把握しやすくなります。課題がある場合は解決策を検討し、PDCAを回しましょう。
オンボーディングプロセスを実施する際のポイント
オンボーディングプロセスを実施する際には、5つのポイントがあります。ここでは、各ポイントについて詳しく解説します。
入社前に準備を整えておく
オンボーディングプロセスを実施する場合には、入社初日までに受け入れ態勢を整えてくことが大切です。育成方針や研修内容を既存社員で共有しておく、育成担当を決めておくなど、入社日に合わせて準備しておきましょう。
コミュニケーションを重視する
入社前から見学会や懇親会を行うなど、人間関係を構築しやすいようにコミュニケーションの場を設けることも重要です。職場の雰囲気を知り、先輩社員と交流することで、入社前に抱えやすい不安や疑問を解消しやすくなります。
企業としてのビジョンや目標を伝える
企業としてのビジョンや目標を伝えることも大切です。会社として求めるもの、期待する働き方などを伝えておくことで、入社後の期待値をすり合わせておくとよいでしょう。入社前にインターンとして働いてもらい齟齬をなくすという方法もあります。
教育体制を整える
新入社員を効率的に育成するには、教育体制の構築が欠かせません。業務に必要なスキルだけでなく、社内ルールや企業文化、ビジネスマナーなど幅広く学べる体制を整えます。OJTやOff-JTを実施し、新入社員の即戦力化を図ることも効果的です。
フィードバックをする
指導者によるフィードバックの機会を設けることもポイントです。新入社員が個人でこれまでのプロセスを振り返ることも重要です。しかし、フィードバッグがあることで自分ではわからない課題や問題に気づきやすくなり、課題解決につなげやすくなります。
オンボーディングを実施している企業の事例
オンボーディングを実際に行っている企業は少なくありません。ここでは、4つの事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
全社共通でオンボーディングを実施
インターネット関連サービスを提供しているある企業では、以前は部署ごとにオンボーディングを実施していました。しかし、企業に対する帰属意識が芽生えにくいという課題があり、全社共通の施策として実施しています。全社共通で実施することで、既存社員とのコミュニケーションが活性化するだけでなく、全社を挙げて新入社員を育成する体制が整いました。
キャリア人材のオンボーディングを強化
通信・情報処理システムや電子デバイスなどの製造・販売を行っているある企業では、キャリア人材のオンボーディングを強化しています。入社後90日間のフォロー体制構築など個別サポートを充実させるだけでなく、経営層・社員間の交流を活性化させるなどの取り組みを行っています。
入社前からリモートでオンボーディングを実施
ソフトウェアの開発を行っているある企業では、入社前からリモートによるオンボーディングを実施しています。これにより、IT未経験者にも業務内容や社内ルール、企業文化などを伝えやすくなっているようです。さらに、入社後にはオンボーディング講習の受講も可能で、継続的に学べる機会を提供し、スキルアップやコミュニケーションの活性化につながっています。
工場勤務の社員を対象に3年間のオンボーディングを実施
食品大手のある企業では、工場勤務社員を対象として3年間のオンボーディングを実施しています。eラーニングを活用しており、従来は不十分になりがちだった基礎教育の充実にもつながっています。また、スキルアップの機会を平等に与えることができ、社員の質向上にも役立っているようです。
まとめ
オンボーディングとは、新入社員が即戦力となれるように育成やフォロー、サポートを行うためのプログラムです。オンボーディングの実施により、離職率の低下や採用コストの削減、新入社員の即戦力化が図れるといったメリットがあり、実施する企業も増加しています。
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