OKRの目標設定の特徴と進め方!企業・部門・個人別の手順と注意点


OKRの目標設定の特徴と進め方!企業・部門・個人別の手順と注意点

目標管理方法の1つであるOKRの目標設定を行う企業が増えています。しかし、OKRの目標設定の進め方がわからない場合やどのようにスケジュールや期間を決めればよいのかわからないという担当者も多いでしょう。この記事では、OKRの目標設定の進め方や注意点を解説します。また、目標設定の範例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。


人的資本経営時代の人材マネジメント戦略

OKRとは目標設定のための管理方法

OKRとは「Objectives(目標)」と「Key Results(主要な結果)」の頭文字を取った目標管理方法です。企業が目指すべき目標と社員個人が目指す目標に関連性を持たせ、同じ方向を向いて重要課題に取り組むことを目的としています。


OKRの意味とは?導入するメリットや手順、ポイントを解説


OKRの仕組み

OKRは、O(Objectives :目標)と、Oの達成度を測るKR(Key Results:主要な成果)で構成されています。それぞれの内容や特徴について解説します。


O(Objectives:目標)

Objectivesとは、日本語で「目標」という意味です。OKRにおいては「シンプルで覚えやすい」内容にしましょう。Objectivesは正確な数字を入れないことが特徴です。少し難しいくらいのレベルで、1~3か月程度で達成できる目標にします。


内容はチームや社員個人のモチベーションを高めるものにしましょう。ただし、Objectivesの数が多すぎると負担が大きくなるので、目標の数は多くても5つ程度に絞ることがおすすめです。高みを目指す目標であることが大切なため、「維持」や「継続」を目標にしないようにしましょう。


KR(Key Results:主要な結果)

Key Resultsとは、日本語で「主要な結果」という意味です。OKRにおいては「進捗度を計るための細かい指標」を意味します。


設定する際は、困難だけれど不可能ではない「頑張れば達成できそうな水準の目標」にしましょう。たとえば、自信度を10段階で表すとしたら、5段階程度の難易度にすることがおすすめです。また、KRはO(目標)と異なり、売上20%アップ、新規顧客50人獲得など正確な数値で示せるものにします。


OKRによる目標設定の特徴

さまざまな目標管理方法があるなかで、OKRは「挑戦的な目標設定」にすることが特徴です。達成率100%を目指す目標管理方法もありますが、OKRでは達成率が60~70%でも成功とみなされます。


OKRが注目される背景

OKRは、50年前にアメリカのIT企業「Intel(インテル)」で生まれた目標管理方法です。Intel(インテル)での導入例を参考に、「Google」「Oracle」「Facebook」などのシリコンバレーの大手企業が後に続き、現在は日本の大手企業でも活用されています。


社員の多様化によって、それぞれが納得できる業績評価を行う必要があるなか、企業と社員が一体となってモチベーションを保ちながら進む必要があるなどの理由でOKRが注目されるようになりました。


OKRに似た用語との違い

OKRに似た用語として「KPI」や「MBO」などがあります。OKRと他の用語との違いについて、くわしく解説します。


OKRとKPIの違い

KPIとは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」の略称で、業務プロセスが適切に実施されているかを測る指標です。


OKRでは目標に対する達成率が60~70%でも成功とみなされますが、KPIは達成率100%を目指す点が大きな違いといえるでしょう。また、OKRは1~3か月単位で目標設定を見直しますが、KPIは業務プロジェクトごとに設定していく点も大きな違いです。


OKRとMBOの違い

MBOとは「目標管理(Management By Objective)」の略称です。社員が設定した目標に応じて最終的な目標の達成度を測ります。MBOは個人の自主性を尊重しながら日々の業務管理や社員の報酬を決める際に用いられることが特徴です。


MBOもKPIと同様に達成率100%を目指すという点が、OKRとは異なります。OKRは人事評価と結びつけませんが、MBOは人事評価に結びつけるという点も大きな違いです。


MBOとは?意味やメリット・デメリットについて解説


OKRの目標設定の進め方

OKRは以下のような手順で進めていきます。大まかにいうと、企業、部門・チーム、個人の順でOKRを設定し、達成度を図って新たなOKRを設定するという流れです。


1.企業OKRの設定する(一般的には企業のOKRは1つで十分)

2.部門やチームのOKRの設定する(企業のOKRと連動させる)

3.社員個人のOKRの設定する(企業OKRや部門やチームOKRと連動させる)

4.OKRの期間終了時に達成度(スコア)を図る(60〜70%の達成で成功とみなす)

5.新たなOKRを設定する(一般的には四半期ごとに設定する)


OKRの目標設定にかかる期間・スケジュール

先述したとおり、OKRの目標設定は、企業、部門・チーム、個人の順に進めます。あらかじめ目標設定にかける期間やスケジュールを決めておくとスムーズに進められるでしょう。OKRの目標設定は、OKR運用開始の約3か月前ごろから始めることが理想です。企業、部門やチーム、個人のそれぞれのOKRの目標設定に、1か月ずつの期間を設けると設定しやすくなります。


企業におけるOKRの目標設定の手順

OKRの目標設定は、企業、部門・チーム、個人の順に進めますが、こちらでは企業におけるOKRの目標設定の手順を解説します。


O(目標)の設定

企業の上層部が自社のO(目標)を設定します。事前に意見を募るなど、社員のアイデアを取り入れることもおすすめです。数値化しない定性的な目標で、社員にやる気を与えるようなチャレンジ性のある言葉で表現します。企業のO(目標)は1つにすることが望ましいですが、複数にする場合は最大でも5つ以下にしましょう。


KR(主要な結果)の設定

企業のO(目標)に関連づけて数値化した内容にします。部門長やチームリーダーなどが部下から意見を集め、部門が達成すべき企業のKR(主要な結果)を設定することもおすすめです。困難だけれど不可能ではない60~70%程度達成できそうなものにします。企業のO(目標)1つに対して、KR(主要な結果)は3~5個設定することがおすすめです。


企業におけるOKRの目標設定の範例

企業におけるOKRの目標設定の手順を解説しました。手順で紹介した内容と以下の範例を参考に、自社の企業におけるOKRの目標設定を行ってみましょう。


O(目標)の設定例

企業のO(目標)は、チャレンジ性があり、数値化しない定性的な目標であることがポイントです。「顧客満足度の高いサービスを提供する」「生成AIのリーディングカンパニーになる」など、社員にやる気を向上させるようなことがよいでしょう。


KR(主要な結果)の設定例

企業のKR(主要な結果)は、企業のO(目標)を達成させるために必要な数値を目標にします。たとえば、「顧客のリピート率を25%アップさせる」「生成AI関連の顧客を30%アップさせる」など具体的な数値を入れましょう。


部門におけるOKRの目標設定の手順

企業のO(目標)と企業のKR(主要な結果)を設定したら、次は部門におけるOKRの目標設定を行います。


O(目標)の設定

企業のO(目標)の内容を踏まえ、部門のO(目標)を設定します。企業のO(目標)を設定したときと同様に、数値化しない定性的な目標で、社員がチャレンジしたくなるものにしましょう。モチベーションが高まるポジティブな表現を意識することがおすすめです。他部門のO(目標)も確認して、互いに整合性がとれたものにします。


KR(主要な結果)の設定

部門のO(目標)の1つにつき3~5つ設定することがおすすめです。部門に属するメンバーで話し合って決めましょう。また、部門のO(目標)と整合性があることが重要であるため、KR(主要な結果)が部門のO(目標)に紐づいているかを確認することも大切です。


部門におけるOKRの目標設定の範例

部門におけるOKRの目標設定の手順を解説しました。部門OKRの目標設定を決める際は、以下の範例を参考にしてください。


O(目標)の設定例

部門のO(目標)も企業のOを設定したときと同じように、チャレンジ性があり定性的な目標にしましょう。たとえば、営業部門の場合は「売り上げ増を達成する」、管理部門の場合は「組織の利益率アップに貢献する」などの目標にします。


KR(主要な結果)の設定例

部門のO(目標)を達成するために必要な数値目標を立てましょう。たとえば、O(目標)が「売り上げ増の達成」などの場合は、KR(主要な結果)を「新規売上1,000万円達成」にします。「組織の利益率アップに貢献」などの場合はKRを(主要な結果)「DX化を推進し残業時間を20%削減する」など具体的な数値を入れましょう。


個人におけるOKRの目標設定の手順

企業・部門のO(目標)を設定したら、最後は個人におけるOKRの目標設定を行います。手順は以下のとおりです。


O(目標)の設定

個人のO(目標)を設定する際は、まず社員自身が考えてから上司や部門の責任者に相談して決定します。企業・部門のKR(主要な結果)に関連する内容にすることがポイントです。個人のO(目標)を設定は、全員共通のO(目標)設定、各個人のO(目標)設定の2パターンがあります。


KR(主要な結果)の設定

個人のKR(主要な結果)を設定する際は、まずは自分自身が達成できそうなものを設定しましょう。次に、上司や部門の責任者などが個人のスキルや経験を考慮して達成できそうなKR(主要な結果)であるかを判断します。


人的資本経営時代の人材マネジメント戦略


個人におけるOKRの目標設定の範例

個人におけるOKRの目標設定の範例は以下のとおりです。以下を参考に、自分のスキルや経験に合わせて達成できそうなOKRを設定してみましょう。


O(目標)の設定例

企業や部門の場合と同じように、個人のO(目標)も定性的な内容で、自分自身を鼓舞できるようなものにします。たとえば、営業部門の場合は「顧客との信頼関係を深める」、管理部門の場合は「不要な消耗品の経費を削減する」などがよいでしょう。


KR(主要な結果)の設定例

個人のO(目標)を達成するために、必要な数値目標を立てましょう。たとえば、O(目標)が「顧客との信頼関係を深める」などの場合は「顧客ヒアリングを10件対面で行う」、O(目標)が「不要な消耗品の経費を削減する」の場合は「消耗品の仕入れ先を変えて経費を15%削減する」など具体的な数値を入れます。


健全性指標の設定方法

OKRとは別に健全性指標を設定することも必要になります。健全性指標はOKRに記載はしませんが、OKRには欠かせない指標です。健全性目標は「青」「黄」「赤」の3段階で評価し、赤に近いほど危険度が高まります。健全性指標を定期的に確認することで、フォローしやすい状態を作ることが目的です。


健全性指標の設定例

目標達成させたい項目がOKRとした場合、健全性指標は目標達成に関わらず常に監視しなければならない項目です。


たとえば、OKRのOが「市場における価値の向上」、KRが「新規顧客を10名獲得する」などの場合、常に監視しなければならない健全性指標に「部門メンバーの健康」などを設定します。目標達成のためにメンバーが無理をすれば、健全性指標が赤になる仕組みです。


OKRの目標設定達成のために、メンバーの健全性指標が赤にならないように定期的に精神面や身体面を確認してフォローします。


OKRの目標設定を行う際の注意点

OKRの目標設定をする際は、以下のような注意点も考慮しましょう。


OKRを確認する時間を設ける

OKRを達成できない場合は、設定したOKRを忘れてしまうという原因が考えられます。毎週・毎月のミーティングなどで、OKRを確認するようにすることもおすすめです。KRの達成状況などを確認し合うことで、状況を把握しやすくなります。


目標を途中で変更しない

O(目標)を期の途中で変更することは、社員が目標を見失いやすくなるのでおすすめできません。組織に対する不信感やゴールへ向かうやる気を低下させてしまうこともあるので、目標は途中で変更しないようにしましょう。O(目標)を変更したい場合は、まず期間を終えてから結果を踏まえて、次期のOKRを見直す際に変更します。


上層部だけで目標設定しない

社員の意見を聞かず、上層部だけで目標設定を行うこともよくありません。もし目標に届かなかった場合に「自分たちで決めた目標ではない」と社員から不満の声があがりやすくなってしまいます。会社としての目標を社員にヒアリングし、部門ごとに結果を集め、最もよい目標を上層部に提出するという手順がおすすめです。


達成可能な目標設定にする

OKRは目標に対する達成率が60~70%でも成功とみなされます。達成の難易度が高くても、ベストを尽くせば達成できそうな目標にしましょう。誰が見ても明らかに達成できそうもない高すぎる目標は社員のモチベーション低下を招きます。逆に簡単すぎる目標は、やる気を引き出せないため向いていません。


まとめ

OKRは、企業と社員が一体となってモチベーションを高め合える目標管理方法です。OKRにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。OKRの目標を達成するためにも、しっかり取り組みましょう。


タレントパレットは、OKRの設定から進捗管理、評価までを一元的に管理できるタレントマネジメントシステムです。企業・部門・個人のOKRの連携を可視化し、目標達成のプロセスを効率的にサポートします。また、OKRと連動した社員のエンゲージメント分析により、組織全体の成長を促進します。OKRの導入や運用改善をお考えの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


社員エンゲージメントの詳しい情報はこちら

人的資本経営時代の人材マネジメント戦略