OJT研修とは、新入社員を育成する手法の一つです。あらゆる企業でOJT研修が実施されていますが、新入社員に対してどのような効果が期待できるのでしょうか。
そこで本記事では、OJT研修のメリットや課題などについて詳しく解説します。OJT研修の基礎知識や目的、やり方についても解説しているので、OJT研修の知識を深められるでしょう。
OJT研修とは何か
OJT研修は人材育成の手法としてあらゆる企業が導入しており、教育制度の代表格として定着しています。しかし、そもそもOJT研修とはどのような研修手法なのでしょうか。そこで、OJT研修の意味やOFF-JTとの違いについて解説します。
OJT研修の意味
OJT研修のOJTは、英語の「On the Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の頭文字をとった略称で、和訳すると現任訓練や職場内訓練などを表します。OJT研修とは、受講者が現場で指導者の指導を受けながら職場での実務に取り組むことで、効率よく戦力として育てていく人材育成の手法の一つです。
日本では、高度経済成長期にOJT研修という教育手法が広まりました。新卒を一括で採用する日本独自の採用制度と新人をまとめて教育できるOJT研修は相性がよかったため、日本の企業では広く実施されるようになりました。
OJTとOFF-JTの違い
OJT研修と似た言葉にOFF-JT研修があります。OFF-JT研修とは、外部で講師を招いてセミナーを実施したり、通信教育したりする教育手法です。
OFF-JTは「Off the Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称で、OJT研修と同様にOFF-JT研修も従業員の教育制度として広く知られています。
また従業員の教育は、OJT研修とOFF-JT研修と組み合わせることでさらなる効果を発揮することが可能です。OJTでは技術や業務のやり方を、OFF-JTで知識、理論を効率よく身につけられるでしょう。
OJT研修の目的
OJT研修は主に3つの目的を達成するために実施されます。OJT研修の目的を詳しく確認していきましょう。
研修者や受講者の能力が高まる
OJT研修は、研修を受ける側の研修者または受講者が仕事に必要なスキルや知識を早く習得させる目的で実施されます。人材育成に時間や手間をかけることが難しい企業もあるでしょう。このような場合にOJT研修は有効な手法であるといえます。
また、OJT研修では社員同士のコミュニケーションが増えるため、結束力を強化することが可能です。仕事へのモチベーションが高まれば、離職率が下がり、優秀な人材を職場に定着させられます。
指導者の能力が高まる
OJT研修は、指導者の能力向上を図る目的もあります。他者の教育や管理を経験することによりマネジメント能力が高まり、次世代のリーダー育成にも役立つでしょう。
また効果的なOJT研修を行えば、周囲は指導者に対して信頼を寄せるでしょう。さらに企業は、従業員から信頼を寄せた能力の高い指導者を把握することが可能です。そのため指導が必要な場合には、従業員からの信頼を得た指導者に任せることで効率的に対応できるでしょう。
企業が継続的にパフォーマンスを高める
OJT研修を継続的に行えば、自社が必要としている人材を効率よく育てられます。専門技術や専門知識の伝達がスムーズにできる環境であれば、企業全体のパフォーマンスを高めることが可能です。
OJT研修を実施するメリット
OJT研修の実施には、従業員や企業の双方に利点があります。OJT研修を実施するメリットについて詳しく解説します。
新入社員を早期戦力化できる
新入社員にOJT研修を実施すれば、短期間で戦力に育て上げることが可能です。OJT研修では先輩社員から実務に関する実践的な指導が受けられるため、短期間で仕事を覚えられます。
また配属された部署や業務に合わせたOJT研修のカリキュラムを作成できるので、必要なスキルをスムーズに定着させられるでしょう。
また、新入社員に力がつけば企業全体の底上げにもなります。新入社員に抜かれたくないという気持ちが従業員同士に芽生えれば、お互いに刺激し合える理想的な競争環境を育むことが可能です。
管理職やリーダーを育成できる
OJT研修では従業員が指導者となり指導するため、未来の管理者やリーダーを育てることにも役立ちます。また、指導期間を定めることによってマネジメント能力の向上にも期待できるでしょう。新人を育てるためにあらゆる工夫を凝らす必要があるので、普段の業務では得られない経験ができます。
さらに、研修者や受講者に質問されたことは正確に答えなければなりません。そのためには、これまで当たり前に行ってきた仕事のやり方を見直したり、人に教えるために詳細まで理解したりする必要があります。つまり、指導者の個人能力や知識も高めることもできるでしょう。
企業内での人間関係を構築できる
新しく入社した新入社員が職場に馴染むまでには時間がかかる場合があります。しかし、OJT研修を実施するとコミュニケーションをとる機会が自然に増えるため、職場内の人間関係の構築が可能です。
新入社員に「誰に質問すればよいのかわからない」といった不安がなくなるので早期離職の防止に役立つかもしれません。OJT研修により社内の上下間の交流が活性化すれば、働きやすい職場になるでしょう。
また誰とでも打ち解けられる職場は、周囲から見ても魅力的です。そのため、OB・OG訪問で社内の雰囲気が入社希望者に伝われば、翌年以降も安定した人材確保ができるようになるでしょう。
OJT研修をはじめとした従業員の管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
OJT研修の効果をさらに高めたいなら、科学的な人事でタレントマネジメントが行えるタレントパレットがおすすめです。人材データを一元化して分析し、組織の能力を最大値まで引き上げるサポートができます。
労務管理業務を効率化できるので、OJT研修に携わる従業員の負担も軽減することが可能です。人材データの可視化により、OJT研修を実施するときに相性のよい従業員同士の組み合わせを考えることができます。
時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な経営課題と向き合えます。
・あらゆる人事情報を一元集約
・人材の見える化で埋もれた人材を発掘
・AIシミュレーションで最適配置を実現
・簡単操作で高度な人事分析が可能
OJT研修の課題点
OJT研修にはさまざまなメリットがありますが、人事担当者にとっては実施するべきかどうか迷ってしまうような課題も存在します。そこで、OJT研修の課題点と対処法について解説します。
OJT研修の指導者に負担がかかる
OJT研修で指導にあたるのは上司や先輩ですが、通常業務を進めながらOJT研修を実施するため、指導者の負担が大きくなります。人手不足で業務が終わらなければ、残業が必要になってしまう場合もあるでしょう。物理的な負担と精神的な負担が重なれば、体調を崩してしまう可能性があります。
指導者に負担をかけすぎないようにするためには、通常業務の量を減らしたり、指導者を交代制にしたりするなどの配慮が必要です。指導者だけに新人教育を任せきりにしないように、企業側はフォローを徹底しましょう。
指導者によってOJT研修のクオリティが変わる
指導者は人によって指導力が異なるため、OJT研修のクオリティに差が生まれてしまう可能性があります。指導者は状況に応じて教育カリキュラムを作成しますが、指導者の能力の低さによってクオリティに問題が生じる場合もあるでしょう。
指導者の実力不足による教育格差をなくすためには、指導に関する研修会やセミナーに参加させてコーチングスキルを高めておくことが必要です。人事によるサポートで育成効果にばらつきが発生するのを防ぎましょう。
OJT研修のやり方
OJT研修では4段階職業指導法を用いて指導が行われます。4段階職業指導法の手順は、以下のとおりです。
1.やってみせる(show)
2.解説・説明する(tell)
3.やらせてみる(do)
4.指導・評価する(check)
OJT研修の正しいやり方を覚えましょう。
やってみせる(show)
まずは指導者が受講者に対して実務の手本を見せます。最初から最後まで一通りやってみせ、仕事の流れや全体像を覚えてもらうことが目的です。仕事をやってみせることで、言葉で説明するよりも具体的なイメージがつかめるでしょう。
また、実務を行っている場面は動画に残しておくことをおすすめします。これは研修者や受講者が実務を復習したいときにいつでも見返すことができ、指導者の負担を軽減できるためです。受講者は緊張から見逃してしまう場合もあるので、手本の動画は残しておきましょう。
解説・説明する(tell)
次に指導者がやったことを詳しく解説・説明していきます。解説・説明する際は業務の意味や目的を明確にしながら伝えることが必要です。
解説・説明が終わったら、わからなかったことはないかの確認を行います。このときに長々と回答すると説明が頭から抜けてしまうため、できるだけシンプルに答えることを心がけましょう。
実務に関することだけでなく、OJT研修の意義や即戦力となるために必要な技術・スキルについても説明します。目的を明確化すれば、人材育成の効果をアップさせることが可能です。
やらせてみる(do)
解説・説明が終わったら、受講者に一人で業務をやらせてみます。完璧に業務をこなすことが目的ではないため、間違いや失敗があってもその場で指摘しないことが大切です。
安心して仕事ができるように、「失敗してもよい」というスタンスで受講者の業務を見守りましょう。受講者に心理的な不安がなくなれば、失敗を恐れずにチャレンジする力が養われます。
指導・評価する(check)
業務が終わったら、どのような点がよかったか、どこを改善するべきかを丁寧にフィードバックします。フィードバックの効果を高めるためには、具体的に伝えることが大切です。
その後、業務の評価をもとに今後の目標を受講者に考えてもらいます。マイナスのポイントを伝えるときは、できるだけポジティブな声がけを心がけましょう。
受講者がある程度のスキルを持っている場合は、レベルに合った目標を設定させましょう。熟練度が上がってきた場合は、状況に応じて目標のレベルを変更することが即戦力になるために重要です。目標の達成状況を確認するために、フィードバックは1回だけでなく研修期間中は定期的に行いましょう。
また習得に時間がかかる技術がある場合は、OJT研修が終わったあとも継続的に教育指導を実施する機会や制度を設けることをおすすめします。状況によってOJT期間を延長するといった対策を検討しましょう。
まとめ
OJT研修は、新入社員の戦力としての成長を早めることを目的に多くの企業で取り入れられています。OJT研修のメリットは新入社員の成長促進だけではありません。未来の管理者やリーダーの育成、職場のスムーズな人間関係の構築などの効果も期待できるでしょう。
しかし、OJT研修にはメリットだけでなく課題もあります。今回解説したOJT研修の課題をクリアして、企業の未来を支える人材育成に努めましょう。
人材データの一元化や業務効率化が可能なタレントパレットを利用すれば、OJT研修の効果を最大限発揮することができます。一人ひとりに最適な育成環境を整えるためにもタレントパレットを活用してみましょう。