こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
本記事では、人材評価に有効なネガティブフィードバックの手法を解説します。ネガティブフィードバックは人材育成に大きな効果を発揮しますが、失敗すれば大きな痛手を被る可能性があります。そこでポイントなのが、信頼関係の構築です。
ネガティブフィードバックとは?
ネガティブフィードバックとは、評価時に相手の問題点を指摘して成長を促すフィードバック方法です。ネガティブは「否定的」、フィードバックとは「口頭や文章などでの指摘」を指すため、ネガティブフィードバックは否定的な指摘ということになります。
ネガティブフィードバックは従業員の目標達成やスキルアップに効果を発揮しますが、使い方には注意が必要です。使い方を誤ればまったく逆の効果となり、指摘自体が裏目に出る可能性があります。
相手の問題点を明確に指摘し改善する手法
ネガティブフィードバックは本来、以下の2つの意味を持ちます。
- 意欲や能力が好ましくない方向に逸れるフィードバック
- 評価されるものにとって耳が痛いフィードバック
ネガティブフィードバックは元々、工学分野で前者の意味で用いられていました。しかし、ビジネス分野で用いられるネガティブフィードバックは後者を指します。
ネガティブフィードバックは相手の問題点改善が目的のため、指摘内容は厳しい内容になります。
- 提案能力が低い
- 業績アップが不可欠
伝え方だけでなく、伝える側と受け取り側の信頼関係が必要になってくるでしょう。
ポジティブフィードバックとの違い
ビジネスシーンで用いられるフィードバック手法として、もう1つポジティブフィードバックがあります。ネガティブフィードバックとの違いは指摘箇所です。ネガティブフィードバックが問題点を指摘するのに対し、ポジティブフィードバックは良い部分を指摘します。そのため、両者ではフィードバックの目的が以下のようにまったく異なります。
- ネガティブフィードバック:問題点を改善して成長をサポート
- ポジティブフィードバック:モチベーションの向上を図って成長をサポート
指摘箇所が「良い点」や「成功点」のため、ネガティブフィードバックのような使い方への配慮は必要ないでしょう。
ネガティブフィードバックの実施は基盤づくりが必要不可欠
ネガティブフィードバックは、伝える側と受け取り側の関係性が大きく影響します。もちろん伝え方にも配慮がいりますが、目的通りの効果を期待するなら、両者の信頼関係は不可欠です。
ネガティブフィードバックは一歩間違えば、非難と取られかねない辛辣な内容です。
- 営業トークが下手だ
- 事務処理能力が低い
- 業務効率が悪い
両者に信頼関係が構築されていなければ、指摘を自分の改善点として素直に受け止められないでしょう。
信頼関係が構築されていないとパワハラになりかねない
ネガティブフィードバックは相手のマイナス面を指摘するため、指摘する側は十分な配慮が必要です。伝達時には、最低でも以下のポイントに注意しなければなりません。
- 客観的な観点指摘する
- 責任の押しつけや人格否定となる言葉はNG
- 追い詰める発言はNG
- ポジティブフィードバックを交える
- みんなの前でなく個別に実施
これだけの配慮をしても、思わずNGワードが出ないとは言い切れません。また、急に厳しく指導されたことで相手にストレスを感じさせる可能性もあります。ネガティブフィードバックは、いつパワハラと取られても不思議でない危険性を伴うのです。その危険性を回避できるのが信頼関係です。
「この人が言うんだから、個人的攻撃ではない。」という信頼感さえあれば、受け取る側は「自分のことを思ってのことだ。」と素直に受け取ることができるでしょう。
ネガティブフィードバック実施のメリットは3つ
青山学院大学教授の繁桝江里さんは「ネガティブ・フィードバックを苦手とする風潮」が強まっていると指摘しています。確かにパワハラと取られかねないネガティブフィードバックは、伝える側にとって使いやすい手法とは言えません。それでも注目されているのに企業にとって以下のメリットが期待できるからです。
- 従業員の軌道修正ができる
- 従業員の成長を促進
- エンゲージメントの向上
従業員の軌道修正ができる
従業員の軌道修正ができる点が、ネガティブフィードバックのメリットです。仕事を怠けているわけではありませんが、特定の従業員の業績だけが思うように上がらない場合、目標達成のために注いでいる努力の方向性が間違っている可能性が高いです。そのような時は、問題や課題を特定して、ネガティブフィードバックする方法がベターです。
従業員の成長を促進
人間は否定されるより、褒められる方がモチベーションは上がります。しかし、ポジティブフィードバックでは、改善が必要な問題点は曖昧にしか伝わりません。これでは成長は望めないでしょう。しかし、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックをバランスよく使い分けてやれば、与えられた試練を乗り越えようと自ら努力を重ねるようになることが期待できます。
エンゲージメントの向上
自由で働きやすい職場もいいですが、程度によっては、従業員のエンゲージメントの低下を招きます。エンゲージメントとは従業員と以下の要素との結びつきを意味します。
- 上司
- 組織
- 仕事
このエンゲージメントが高いと、意欲的に仕事にうち込めます。時にはネガティブフィードバックによって、緩んだエンゲージメントを向上させると良いでしょう。
ネガティブフィードバックのデメリットは3つ
ネガティブフィードバックが成功すれば、相手の成長を促せます。しかし、失敗すれば、なんのメリットも生みません。むしろ、デメリットばかりの愚策と化してしまうでしょう。
- 人間関係の悪化
- モチベーションの低下
そこで、ネガティブフィードバックのデメリットが起こりうるシチュエーションを紹介します。
人間関係の悪化
ネガティブフィードバックで一番懸念されるのは、人間関係の悪化です。
ネガティブフィードバックはマイナス面の指摘となるため、相手が素直に意見を取り入れるだけの関係性が求められます。まったく人間関係が築けていない状態でネガティブフィードバックすれば、人間関係は悪化し、修復不可能な状態になる懸念があります。
主観の混在
ネガティブフィードバックが失敗する原因でよく聞くのが、主観を取り混ぜた伝達です。ネガティブフィードバックでの指摘は、主観を省いた、客観的な意見でなければなりません。主観的な意見が混在すると、ただの感想になってしまいます。そうなれば、相手も素直に捉えられず、言い合いになってしまう可能性もあるでしょう。
人事評価は主観的意見でするものではなく、あくまで決められた客観的項目で実施されるべきものです。主観の混在には注意してください。
フィードバックのタイミングを図りにくい
ネガティブフィードバックはタイミングが重要です。時間が経ってからだと、効果は期待できません。「なんで今頃、そんなことを言うんだ」といぶかしがられるでしょう。その相手との人間関係が構築されていなければ、ただの嫌味としか取られません。目安としては、問題が起きてから1週間以内がおすすめです。
効果のないネガティブフィードバックは、相手のモチベーションを下げるだけでしょう。くれぐれもネガティブフィードバックは迅速に実施してください。
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ネガティブフィードバック実施者の注意点
ネガティブフィードバックが成功すれば、組織・従業員共に大きなメリットが得られます。しかし、失敗すればまったくの愚策となり、デメリットを被るだけです。本章ではネガティブフィードバック実施者に注意してほしい以下の5つのポイントを紹介します。
- 客観的視点を重視する
- 対象者の情報を把握した上で実施する
- 早めかつ個別のフィードバック
- 具体的な指摘を行う
- ポジティブフィードバックを織り交ぜる
客観的視点を重視する
ネガティブフィードバックは、必ず客観的視点を重視してください。主観的な意見が混ざると、相手は素直に指摘を受け入れてくれません。相手が素直に受け入れるよう、信用できる数値やデータを基に話を進めてください。少しでも主観的な意見が混在した時点で、ネガティブフィードバックの効果は薄れて、建設的な対話ができなくなります。
ネガティブフィードバックは議論の場ではなく、対話の場です。対話の場であることを念頭に置いて、話し合いを進めてください。
対象者の情報を把握した上で実施する
ネガティブフィードバックを円滑に進めるには、伝える側と受け取る側の信頼関係が物を言います。信頼関係が築けていない相手には、慎重な対応が必要です。そのため、あまり一緒に仕事をしたことがない従業員に実施する際は、どんな性格なのかを下調べしましょう。
ネガティブフィードバックは厳しい指摘となるため、言葉選びを間違えると相手は威圧されてしまいます。相手の性格も加味した上で、実施しなければなりません。
早めかつ個別のフィードバック
ネガティブフィードバックは迅速な対応ほど効果が高くなります。記憶が新しいほど、自分の改善点をより深く印象付けられるでしょう。時間が経ってからのネガティブフィードバックは、実感が湧きづらいため、効果は半減します。人によっては「なんで今さら、そんな前のことを」と、重要性を感じないこともあるでしょう。
具体的な指摘を行う
ネガティブフィードバックは、客観的かつ具体的な指摘であることが重要です。抽象的な指摘では、何を改善していいか分かりづらくなります。「あなたの商品説明はわかりづらい」と言われても、何がどう分かりづらいかわかりません。
「あなたの商品説明はスペックや機能の説明ばかりで、それが顧客にどんなメリットを生むのか、今とどう変わるのか、他社と比べてどうなのかの説明がない」と具体性を持たせてやれば、何を改善すればいいか理解できるでしょう。
ポジティブフィードバックを織り交ぜる
自分のためだとわかっていても、マイナス面ばかり指摘されると、少なからず反抗的感情が生まれます。そのためネガティブフィードバックする時は、ポジティブフィードバックを交えると効果的です。
自分の優れているところも指摘されれば、「上司は自分の良いところもちゃんと見てくれている」と信頼感が増し、ネガティブフィードバックも受け入れやすくなります。しかし、お世辞だとわかる抽象的な褒め言葉はNGです。ネガティブフィードバック同様、具体的な指摘を心がけてください。
ネガティブフィードバックの具体的な例文を紹介
ネガティブフィードバックには、客観的かつ具体的な指摘が求められます。
いきなりそう言われても、まったく良い例が思い浮かばないという人もいるでしょう。人は主観的で、曖昧な抽象的表現を好むため、客観的かつ具体的な表現に慣れていない人が大半です。最後に、ネガティブフィードバックの具体的な例文とポイントを紹介します。
例文
今回の例文はネガティブフィードバックにポジティブフィードバックを織り込んだものを紹介します。
〇〇社に提出する提案書を確認させてもらった。前回私が指摘した具体的なデータの記載がちゃんと入っていたね。それをグラフ化して見やすい化を図っていたのは良かった。他にも図解の挿入もあり、以前の文字だけの見づらい提案書と比べれば、格段よくなっていたよ。
(ここまでポジティブフィードバック)
だけど、気になった点が2点あります。まずは流用したデータが最新のものではなかったね。データは新しいほど提案先に信憑性を抱かせるので、次回からは最新データを探して記載してください。
そして2点目は、他社比較での文章が主観的すぎる点が気になりました。ここはあくまで客観的な文章で攻めてください。その上で、当社が他社より優れているとわかってもらえるようにしてください。「〇〇だと思います」と主観的な判断を盛り込まず、データから導いた答えで「〇〇です」と言い切りましょう。
(ここまでネガティブフィードバック)
その点以外は本当にいいできでした。
(ここまでポジティブフィードバック)
以上のように、ポジティブフィードバック、ネガティブフィードバックに関わらず、抽象的な言葉は避け、具体的指示であることが重要です。
また、ポジティブフィードバックから始めることで、ネガティブフィードバックを受け入れやすくなります。
流れとしては、「褒めて指摘して、最後にまた褒める」が理想です。
まとめ
企業力アップには、ネガティブフィードバックは欠かせません。従業員一人ひとりのスキルアップこそが、企業力アップにつながるからです。しかし、ネガティブフィードバックは、失敗すれば目的と正反対の結果を招く恐れがあるため実施する際は相手の情報をよく把握しておくべきでしょう。しかし、うまく従業員のフィードバックができなかったり、スキルを確認できない場合はタレントパレットがおすすめです。
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