こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
自分の認知状態について、より高次元から認識することをメタ認知といいます。「自分が認知していることを客観的に認知している」という状態です。
本記事では、メタ認知についての意味や定義、メタ認知が高い人・低い人の特徴について解説します。
メタ認知とは
メタ認知とは、「自分が物事を認知している状態を、より高次の次元で認知している状態」のことです。メタは「より高い次元の」という意味で、ここでは普段の視点よりもさらに一段階上の視点を指します。
メタ認知能力を身に付けた人は、自分自身の行動や思考を客観的に見ることができます。そのため、自分に対する客観性が高まり、感情を排除した状態で自分のことを把握できるようになるのです。自分を俯瞰的に観察できるため、冷静な判断や行動が可能になり、問題解決能力が向上するでしょう。加えて、感情に支配されることが少なくなるため、自分自身を冷静にコントロールできるようになるのです。
メタ認知の歴史
「メタ認知」は、1976年にアメリカの心理学者であるジョン・H・フラベルが提唱しました。従来は認知心理学で使われていた用語ですが、その後教育学や脳科学の分野で注目されるようになりました。近年はビジネスにおける人材育成においても、重要なスキルとして注目を浴びています。
メタ認知の分類
メタ認知は「メタ認知的知識」「メタ認知的技能」の2つに分類されます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
メタ認知的知識
メタ認知的知識とは、「自分自身について知っている知識」のことです。長所や短所、課題、経験など、自分自身の能力や特徴についての知識を指します。
「人とうまく話せない」「事務的作業が苦手」など、何らかの経験から自分の得意分野や不得意分野を認識することがあるでしょう。これまでの経験や行為によってもたらされるこのような知識は、メタ認知的知識の一種です。
「静かな場所のほうが集中できる」「自分のモチベーションを維持する方法を知っている」など、自分自身の思考や特徴、課題の解決方法などを理解・認識していることも「メタ認知的知識」に該当します。メタ認知的知識を身に付けると、自分自身の状況や課題、問題点などを正確に理解できます。
メタ認知的技能
メタ認知的知識を把握した上で、現在のそれに対して対策を講じる能力がメタ認知的技能です。メタ認知的技能には、「モニタリング」と「コントロール」という2つの側面があります。「モニタリング」とは、自分の思考や学習プロセスなどを監視する能力のことです。自分の考えや問題解決方法に関する理解度や、進捗状況を観察・把握します。
例えば感情的になっている場合に、「私は今怒っている」「私は今悲しんでいる」など、自分の感情に気付くことから始めます。次にその感情に至った理由を考えると、「自分がどのような場合に怒るのか」「どのような場合に悲しくなるのか」といったことが把握できるようになるのです。
モニタリングができるようになったら、コントロールに進みましょう。「コントロール」とは、自分の思考や学習を制御する能力のことです。理解度の低さや不足している部分を認識すると、必要な戦略や修正を選択できます。
メタ認知的知識で自覚し、モニタリングで発見した問題点を、コントロールで改善していきます。「このような場合に感情的になるため、即座にその場を離れる」などが対処方法になるでしょう。メタ認知的技能を向上させると、自分自身が抱えている様々な問題の把握や課題解決につながります。
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メタ認知の重要性
メタ認知が高い人は、ビジネスでどのような力を発揮するのでしょうか。ここでは、ビジネスにおけるメタ認知の重要性について見ていきましょう。
コミュニケーション能力
メタ認知が高い人は、自分を客観視できます。意識的に自己観察を行い、自分自身の長所・短所や癖、コミュニケーションにおける強み・課題などを明確に把握しているでしょう。
加えて、自身のことだけでなく、他者の行動意図や立場、視点なども考えられます。メタ認知が高い人は、コミュニケーションを取る際に相手への深い共感や理解を意識的に示すことができるでしょう。感情的になることが少ないため、スムーズなコミュニケーションが図れます。
社内のコミュニケーションはもちろん、顧客や取引先など、社外でのコミュニケーションもスムーズになると、営業力や交渉力の向上が期待できます。メタ認知はコミュニケーション能力向上の面で、大きな力を発揮するため非常に重要です。
冷静な判断力
メタ認知が高い人は、自分の感情を必要に応じて抑えることができます。また、認識バイアスや思考の偏りなども正確に評価しているでしょう。そのため、ビジネスにおいて判断が必要になった場合、感情や認識バイアス、思考の偏りなどに邪魔されることなく、冷静な判断を下すことができるでしょう。
メタ認知能力を身に付ける中で、様々な問題解決を戦略的に行うことが多々あるため、問題解決能力の向上も期待できます。判断が必要な場面において、冷静な判断が下せる人の存在は、ビジネスにおいて大変重要です。
正確な自己分析
メタ認知能力が高いと、感情に左右されることなく自己分析ができます。自分の行動パターンや特性、思考の癖なども把握しているため、失敗した場合でもそのことを客観的に捉えて冷静に分析したり、改善したりすることができます。
他者からのフィードバックや助言、アドバイスを素直に聞き入れて役立てることもできるでしょう。ビジネスの場において、自己分析をした上で、さらに他者からの意見も取り入れて、自ら成長し続けていく従業員がいることは大きなメリットです。
メタ認知が高い人は、自己分析をした上で自分に合う企業を選択して入社する傾向があります。自分の方向性と企業の目的が合致しているため、積極的に仕事に取り組んでもらえるという点でも、企業にとって重要な存在といえるでしょう。
自社の従業員のメタ認知度を高めるとともに、採用時に求職者のメタ認知が高いかどうかをチェックすることも有効です。例えばグループ面接を行い、その反応を確認するのも良いでしょう。一対一の面接であれば「周囲からはどう見られていますか?」と質問し、面接官が抱いた印象と本人の話にどの程度違いがあるのか確認するのも効果的です。
メタ認知が高い人・低い人の特徴
メタ認知が高い人、低い人にはそれぞれ異なる特徴があります。それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
高い人の特徴
メタ認知が高い人の主な特徴は、以下の5つです。
- 周囲に配慮できる
- 感情的にならない
- 柔軟性がある
- 仕事に対して高い意欲を持つ
- 客観視できる
メタ認知が高い人は、自身の思考や行動を把握できており、自身の特性や傾向、長所・短所などについて、高い自己認識を持っています。他者とのコミュニケーション能力が高く、適切な距離を保つなど、周囲への配慮も怠りません。仮に相手と自分の間の考え方に大きなギャップがあると気付いた場合でも、それを埋める方法を見出して実行することができます。そのため職場でも協調性が高く、多くの人と円滑な人間関係を築くことができるでしょう。
感情的にならない点も特徴です。自分の行動を客観的に見つめることができるため、不要に感情を荒げることがありません。感情のコントロールに長けているため、多くの場面で冷静な判断や対応ができるでしょう。「すぐ怒鳴る」「機嫌次第で対応が変わる」ということがないため、周囲の人も安心して仕事ができます。
柔軟性があるため、環境や周囲の状況の変化に対して適切に対応できます」。ミスをした場合でも原因を究明し、再発防止に努めることができます。状況が目まぐるしく変わる現代においても、新しいシステムの導入や人事の配置換え、取引先の変更などにも柔軟に対応できるため、安心して様々な仕事を任せられるでしょう。
自分の目標を明確に設定し、積極的に取り組むことができます。また、自己成長の意識も高いため、常に向上心を持って業務に取り組めるでしょう。自分の興味や価値観などを冷静に分析した上で仕事を選択している人が多く、何となく仕事を選んだ人に比べて仕事への興味が強い傾向があります。そのため、高い意欲を持って仕事に取り組むことができます。
メタ認知を高めるためには、自分を客観視しなければなりません。そのため、感情や思考の偏り、先入観などに左右されることなく、自分を客観視できるという特徴があります。主観的にならないため、相手の考えにも冷静に耳を傾けることができるでしょう。
総じて、メタ認知の高い人は周りの人と摩擦を起こすことが少なく、スムーズに仕事ができます。ミスをした場合でも、自分で解決策を見出して解決することが可能です。そのため、「同じミスを繰り返さない」「自分の機嫌に左右されない」「マネジメント能力が高い」といった特徴が見られます。
低い人の特徴
メタ認知が低い人の主な特徴は、以下の3つです。
- 物事を客観的に見られない
- 感情的になる
- 悲観的になる
メタ認知能力を持ち合わせていない人は、自己観察や自己評価が不十分な人が多い傾向があります。他者の視点を理解することが困難な人も少なくありません。主観的な視点しか持ち合わせていない人が多く、物事を客観視できない人が多いようです。
物事を俯瞰的に見られないため思い込みが激しく、感情的になることもあるでしょう。自分の短所や課題を冷静に把握できないため、メタ認知が高い人と比較すると自己の問題点を克服することが難しいといえます。
結果として達成感を得られることが少ないため、自己肯定感が低い、成長意欲がない、悲観的になりやすいという特徴があります。また、冷静に判断することが難しいため、「自分は嫌われている」といった根拠のない思い込みを持つことがあり、それによって悲観的になる傾向もあります。
メタ認知を高めるメリット・デメリット
従業員がメタ認知を高めることで多くのメリットが生じますが、メタ認知にはデメリットもあります。ここでは、メリット・デメリットについて解説します。
メリット
メタ認知を高めることの主なメリットとして、自己肯定感の上昇や円滑なコミュニケーションの促進、仕事に対する意欲向上などが挙げられます。多くの従業員がこのような状況になると、課題解決能力が上がり、結果として業務効率化や利益向上が期待できるでしょう。常に冷静な自己分析や課題解決方法の模索、正確な判断ができるため、変化の激しい時代においても柔軟に対応できる点もメリットです。
メタ認知が高い人は他者と円滑にコミュニケーションが取れるだけでなく、周囲に対する配慮もできます。そのため、取引先や得意先との関係が円滑になるでしょう。状況を俯瞰して冷静な判断を下せる上に、リーダーシップを発揮する人も多いため、マネジメント業務を安心して任せることができます。
デメリット
メタ認知を高めることで生じるデメリットも把握しておきましょう。いつも俯瞰的に状況を把握し、解決策などを模索しているため、頭を使いすぎるという傾向があります。
自分を客観視しすぎて周りの目が気になる、余計なプレッシャーを感じるという人も出てくることがあることを覚えておきましょう。メタ認知を高めすぎて、そのような弊害が出てきた場合は、周囲のフォローが欠かせません。
メタ認知能力を高める方法
メタ認知能力は、トレーニングで高めることができます。本人が高めたいと希望している場合は、マインドフルネスやセルフモニタリング、ライティングセラピーなどで高めることができます。
一方、企業としては従業員のメタ認知能力を開発したいと考えているものの、従業員が「メタ認知について知らない」「メタ認知を高めたいとは考えていない」という場合は、メタ認知の考え方から教えなければなりません。ビジネス書を読ませる、研修を受けさせる、コーチングを行うなどの工夫が必要になるでしょう。
メタ認知を高めると、感情のコントロールが可能になる、課題解決能力が向上するなど様々なメリットが生じます。そのため、メタ認知を高めたいと考えている人もいるでしょう。実は、メタ認知はトレーニングによって高めることができます。「メタ認知トレーニング」については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
メタ認知とは、自分を客観視して感情などをコントロールする能力のことです。メタ認知能力が高い人は、課題解決能力やコミュニケーション能力が向上し、マネジメント能力も高まるため、「従業員のメタ認知を高めたい」と考えている企業担当者の方もいるでしょう。
メタ認知能力は、後天的に高めることができます。そのため、従業員に対してメタ認知能力向上の研修を検討しても良いでしょう。多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットが生じる可能性も把握しておくことが大切です。プレッシャーを感じるようになる、頭を使いすぎて疲弊するというデメリットが生じた場合には、周囲のフォローが欠かせません。
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