メンター制度成功のポイント|導入におけるメリットやデメリット、注意点を解説


メンター制度成功のポイント|導入におけるメリットやデメリット、注意点を解説

メンター制度は、人材育成だけでなく社員の定着率の向上に貢献する制度です。チームワークや組織風土における課題を解決する糸口として、マネジメント業務として広く注目されています。本記事では、メンター制度の概要に加えメリットやデメリット、注意点まで解説します。

メンター制度の概要

メンター制度とは、職場内で無理なく人材育成を行うための支援制度です。ここでは、メンター制度の概要に加え、注目されている背景まで解説します。

メンター制度の内容

メンター制度とは、「経験豊富な社内の先輩社員」が「後輩社員」の支援を行う制度です。

「メンター」と「メンティー」
・メンター:メンタル的なサポートをする先輩社員
・メンティー:サポートされる側の社員

メンターには、優れた指導者や助言者といった意味があり、一般的にメンティーの直属の上司以外に当たる人がメンターとして任命されます。そのため、メンティーは業務への影響を考えず、安心してメンターの支援を受けられます。

新人や若手社員の自律や定着を促す目的で取り入れられるケースが多いですが、中堅社員や幹部社員も対象となることも少なくありません。

注目される背景

メンター制度の目的は、新入社員の不安や悩みを解消し、離職率を低下させることです。

厚生労働省の発表によると、令和2年度における就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が約4割(36.9%)、新規大卒就職者は約3割(31.2%)となっています。

加えて、日本労働組合総連合会による「入社前後のトラブルに関する調査2022」によると、新入社員が不安や悩みを相談できる相手は、「家族・友人」が約8割もの圧倒的多数を占めています。これは多くの新入社員が社内に相談できる相手がいないことを示す結果といえるでしょう。

新入社員の離職理由としてあげられる「相談相手がいない」「社内での孤立感」が起こらないよう社員同士のつながりを増やしてサポートできる環境を作り、定着率を高めることがメンター制度の重要な役割です。

※参考:日本労働組合総連合会「入社前後のトラブルに関する調査2022」

OJT・エルダー制度との違い

メンター制度と同じく、先輩社員が指導する制度に「OJT制度」「エルダー制度」があります。混同されがちな制度ですが、違いとしては以下の通りです。

・OJT制度:実務を通じた教育訓練に重点を置く
・エルダー制度:仕事の面でのサポートに重点を置く
・メンター制度:精神的な仕事の悩みや人間関係、キャリア形成のサポートに重点を置く

メンター制度では、仕事のサポートは基本的には行われません。そのため、直接仕事の利害関係がある部署の社員が相談者にならないという点にも違いがあります。

メンター制度導入のメリット

メンター制度は、導入することでメンター側とメンティー側の双方にメリットをもたらします。ここでは、メンター制度導入のメリットを解説します。

モチベーションの維持

メンターになった社員はメンティーを指導する立場となり、必然的にお手本となる行為を取ることが求められます。教える立場として緊張感をもって業務を行うことになるため、入社後数年経ったことによる中だるみも防ぐことができます。

また、メンティーへのアドバイスにも応えられるよう、普段から他者の目線に立って物事を考えるでしょう。結果として、マネジメント力が向上しキャリアのステップアップにもつなげることができます。

モチベーションの向上

メンターを務めることで、責任感のある行動や発言に心がけるようになり、その経験が自身の成長につながります。後輩を育成しながら成長できれば、自信を持って行動に移せるでしょう。

メンティー側となる新入社員は、入社したばかりの時に不安や悩みを抱えていても誰に相談していいかわからないことがあります。人間関係構築が進んでいない新入社員にとって、メンターの存在があるだけで相談できる人が明確になり、心の支えにもなるでしょう。

メンター自身の成長

メンター制度での育成経験を通じて、メンター自身もスキルや人間力を向上させることが可能です。

メンターとなることで成長・習得可能なスキル

  • 傾聴力
  • 質問力
  • 提案力
  • モチベーションマネジメントスキル
  • 信頼関係構築力
  • 利他の精神


こうしたスキルは他の業務にも広く応用できるため、メンターにとって非常に大きなメリットといえるでしょう。

コミュニケーションを促進

メンター制度を導入することで、社員同士の対話やコミュニケーションが増えます。制度の一貫でありながら、コミュニケーションを活性化させ社内のつながりを強化するというメリットも兼ねています。

メンター制度は、部署間を越えたメンバー内でサポートを行う制度なので、部署間を越えたつながりも形成できます。

メンター制度導入のデメリット

メンター制度導入は、運用方法やメンティーの選定によってはデメリットとなるケースも少なくありません。ここでは、メンター制度導入のデメリットを解説します。

相性によっては結果が悪くなる

メンター制度は、基本的にメンターとメンティーの間の信頼関係によって効果を発揮できます。そのため、メンターとメンティーの相性が悪いと、双方にとって逆にストレスに感じてしまうことも少なくありません。

このような事が起きないために、メンターとメンティーの慎重なマッチングを行う必要があるでしょう。また、相性が合わなかったらメンターを変えるといった制度も検討します。

メンターの負担が大きい

メンターは、通常業務と並行してメンティーをサポートしなくてはならず、必然的に負担が増大します。その結果、ストレスが増加したり本業に支障をきたしたりするおそれがあります。

このような余裕がない状況に陥ると、組織全体の生産性低下につながります。回避するには、メンターをサポートする体制も構築しなくてはなりません。上司がメンターの業務状況を十分に把握し、業務の一部を他の社員に割り振って負担を軽減するといったマネジメントが求められます。

メンターの質によって成長に差が出る

メンター制度はマンツーマンで行うため、担当者の能力によって得られる効果に差が生じます。組織に在籍している社員の知識、スキルは必ずしも一律ではありません。

幅広い知識と優れたスキルを有するメンターに指導してもらえば、確かなサポートと成長が期待できますが、メンターの能力が不十分ではあまり効果を得られないでしょう。

また、実務能力が高くても、指導力やコミュニケーション力に長けているとは限りません。このケースでも、メンティーの成長度合いに差が生じてしまうでしょう。このような事態を避けるべく、メンターへの教育も必要です。

メンター制度導入時の注意点

メンター制度導入時は、信頼関係構築のための仕組みや実施の目的を明確にしておく必要があるでしょう。ここでは、メンター制度導入時の注意点について解説します。

メンターの役割を明確にする

メンター制度を導入する際は、自社の目的に合ったルールを決めることが必要です。

メンター制度の目的とゴール設定の例
・鬱になる若手が多い →安心できる居場所づくり
・女性の離職率が高い →ロールモデルとなる女性メンターによる支援
・次世代リーダー育成問題 →メンター制度を通じた人材育成

導入スタート地点では定量目標が設定できなくても、運用アンケートなどで定量化していくと良いでしょう。人事制度は導入した後に放置されてしまう傾向があります。アンケートなどで定量化することでPDCAを回せるようにしましょう。

メンター適性評価を実施

メンター制度を導入する際は、メンター適性評価を実施することを組み入れましょう。

メンター制度は、メンターとメンティーとの相性が制度導入の効果を大きく左右します。メンターとしての適性評価をする際の判断基準は以下の通りです。

・成功と失敗の経験がある
・コミュニケーション能力がある
・客観的な助言ができる
・人の成長を喜べる

メンター制度の効果を高めるには、適任者をメンターにすることが大切です。

目標設定を行う

メンター制度は新入社員・若手社員の定着と自律を目的に行いますが、その他にも以下の様な課題に有効に機能します。

・新人・若手社員の定着
・若手社員の自律促進
・キャリア形成の促進
・幹部社員の育成
・女性社員の定着・活躍推進

目標達成に向けてもっとも適した人材を見定める必要がある

運用ルールを策定する

メンター制度をうまく機能させるには、あらかじめルールを明確に決めておくことが大切です。決めておくべきルールとしては、主に以下の通りです。

事前に策定すべき運用ルール
・定期的な活動報告についてのルール
・報告や指示系統のルール
・面談にかかった費用の精算ルール

メンターのマネジメントスキルの上昇や、若手社員の早期定着といった効果が得られるまでには時間がかかります。メンター制度を導入する場合は、効果が出るまでには時間がかかるということを認識した上で、長期的視点に立って導入を進めることも重要です。面談の記録を蓄積し、場合によっては人事や上司に共有できる状態にしておくと有事の際にスムーズでしょう。

まとめ

メンター制度は、将来を担う若手人材を早くから育成・サポートできる制度です。また、メンティーだけでなくメンターとなる先輩社員の成長も見込めるため、会社の未来を大きく左右する制度でもあります。

一方で、メンターの質が問われるなど運用における難しさも指摘されています。導入を検討する際は、成功事例なども参考にしながら自社に適した方法を検討することが求められるでしょう。

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