企業の競争力を高めるうえで、社員のメンタル面の強化は重要な経営課題となっています。メンタルトレーニングを適切に推進することは、社員の業務パフォーマンスの向上やストレス耐性の強化を促し、組織全体の生産性を向上させるでしょう。この記事では、人事担当者向けに、メンタルトレーニングの効果や必要性、実践する方法について解説します。社員のメンタルを強化させたい人は、ぜひ参考にしてください。
メンタルトレーニングとは
メンタルトレーニングは、メンタル面をバランスよく強化する取り組みです。仕事やスポーツ、試験などに臨む際は、メンタルトレーニングを通じて心理的準備を整えることで、より安定したパフォーマンスを発揮しやすくなります。
ビジネスシーンには、緊張を伴う場面や予期せぬトラブルがつきものです。トレーニングを重ねた社員は、さまざまな状況において自身のメンタルを理解・調整できるようになります。
メンタルトレーニングの必要性
企業が社員の持続的な成長を支援するためには、計画的なメンタルトレーニングの導入が欠かせません。人は、メンタルの状況しだいで、日々のパフォーマンスが左右されるためです。優れた技術や専門性を持ち合わせていても、メンタル面に不安があれば、能力を十分に発揮できません。メンタルトレーニングを怠っていると、ストレス耐性が低下し、さまざまな状況でメンタル面の不安定さを感じやすくなる可能性があります。
メンタルトレーニングで得られる効果
メンタルトレーニングは、社員の成長を支援する効果的な手段となるでしょう。以下では、メンタルトレーニングで得られる効果を解説します。
モチベーションが向上する
メンタルトレーニングにより自身のメンタルを理解・調整できるようになると、ネガティブな状況に直面しても、前向きな気持ちや建設的な思考を引き出しやすくなります。結果として、日々の業務や新しい課題に対して、高いモチベーションで取り組めるようになります。
自信がつく
メンタルトレーニングを受けた社員は自信がつきます。メンタルトレーニングによって高められたモチベーションが、その人の業務パフォーマンスを向上させるためです。目標達成や成果の実現を重ねることで、社員の自信は段階的に育まれていきます。培われた自信は、より困難な課題へ挑戦する意欲を引き出し、新たな成果につながるという好循環を生み出すでしょう。
緊張しにくくなる
メンタルトレーニングを継続すると、心を落ち着かせる力が備わり、過度な緊張を抑制できるようになります。ビジネスシーンには、重要なプレゼンテーションや上司との面談、新規顧客との商談など、緊張を伴う場面が数多く存在するものです。緊張と上手く付き合えるようになると、さまざまなシーンで実力を発揮できるでしょう。
メンタルの強さをもつ人の特徴
メンタルが強い人に共通する特徴を理解し、意識してトレーニングに反映しましょう。メンタルが強い人の特徴を解説します。
自己肯定感が高い
メンタルが強い人は、自己肯定感が高い傾向が見られます。長所だけではなく短所についても客観的に認識できるため、前向きに自分自身を受け止められるためです。また、失敗を過度にネガティブに捉えず、次の成長機会として建設的に生かせることも、メンタルが強い人の特徴といえます。
自己理解が深い
メンタルが強い人は、自身の得手不得手を十分に把握しています。加えて、高い自己肯定感を持っているため、苦手分野に対しても焦らず自分のペースで向き合うことが可能です。苦手分野を素直に認められると、必要に応じて周囲にサポートを依頼できます。柔軟な姿勢により周囲の協力を得られると、苦手分野であっても解決へと導けるでしょう。
ストレス解消の方法をもっている
自分に合ったストレス解消法を見つけることは、メンタル強化への第一歩となります。効果的なストレス発散により、メンタルの余裕を保ちやすくなるためです。状況に応じて複数の方法を使い分けると、さまざまなストレスに対応できるでしょう。また、自身がどのような状況でストレスを感じやすいかを理解できれば、よりメンタルを安定させやすくなります。
全員から好かれようとしない
メンタルが強い人は、周囲からの評価に過度にとらわれません。無理のない自然な態度で周囲と接することができる理由は、自身の価値観や考えを大切にしているためです。周囲からの評価に振り回されなければ、ストレスを感じにくくなり、メンタルの安定性がより高まります。
自分の意見をもっている
メンタルが強い人は、他者との価値観の違いを理解したうえで、自分なりの考えをしっかりと確立しています。自身の価値観を大切にする姿勢は、他者の意見を否定することではありません。むしろ、自分の意見を持っていればこそ、異なる視点や考え方を拒絶せず、柔軟に受け入れられます。
メンタルが弱い人の特徴
メンタルが弱い人の特徴を把握し、日常的に気をつけるとよいでしょう。メンタルが弱い人の特徴を解説します。
周囲と比較してしまう
メンタルが弱い人は、同僚などとの比較に悩まされがちです。たとえば、同期の昇進状況や実績、評価などを気にかけ、自分と比べては落ち込むという悪循環に陥りやすい傾向があります。周囲の評価に必要以上に敏感になる理由は、他者からの承認を過度に求めるためです。
完璧主義になりがち
メンタルが弱い人は、物事の細部にまでこだわる傾向が見られます。本来なら許容範囲内のささいな点まで気になってしまうため、必要以上に神経を使いがちです。完璧を求める姿勢は過度なプレッシャーを生み、ストレスが蓄積されやすくなりメンタルに悪影響をもたらします。
ネガティブに考える
物事を悲観的に捉えがちなことも、メンタルが弱い人の特徴です。自身を適切に評価できなければ、ささいなつまずきにも敏感に反応してしまいます。たとえば、業務で失敗したとき、自身を客観視できないメンタルが弱い人は、ネガティブな気持ちになりがちです。また、周囲の長所ばかりに目が向いて、自身の短所を過度に意識してしまう人もいます。
臨機応変に対応できない
メンタルが弱い人は、突発的な事態や想定外の変化に直面すると、強い不安を感じやすい傾向があります。特に、状況に応じた迅速な判断が求められる場面では、自身の判断に確信を持ちづらく、適切な行動を取ることが難しくなるでしょう。不安に思う気持ちは、多くの場合、経験不足から引き起こされます。段階的に経験を積み重ねて、変化への対応力を養うことが重要です。
自分の意見を伝えられない
メンタルが弱い人は、自己主張に対して苦手意識を持つ傾向があります。自己肯定感の低さから他者からの批判を過度に恐れるだけではなく、周囲の様子を伺う気持ちからも意見を抑制しがちです。対人関係における消極的な態度はメンタルに負担をかけ、意見を伝えられないもどかしさが蓄積されていきます。
社員のメンタル不調によるビジネスのリスク
メンタル不調に悩む社員が増加すると、企業は多くのリスクに直面します。以下に、代表的な影響を解説します。
社員のモチベーションが低下する
メンタル不調を抱える社員は、仕事へのモチベーションが著しく低下し、無気力な状態に陥りやすい傾向です。パフォーマンスを発揮できない社員が1人でもいると、少なからず、チーム全体の業務バランスや生産性に影響を与える可能性があります。
組織の生産性が低下する
メンタル不調を抱える社員が増加すると、組織としての生産性が大きく低下します。メンタル不調によるモチベーションの低下は、業務効率を低下させるだけではありません。仕事への熱意や好奇心が薄れる結果、アイデアの創出や画期的な取り組みまでもが停滞してしまいます。
離職者が増加する
多くの社員にメンタル不調が見られる状況を放置すると、遅刻や欠勤が頻発するようになります。最終的には、離職者の増加という深刻な事態を引き起こしかねません。離職者の増加は、生産性の低下やノウハウの流出だけではなく、大きな経済的負担ももたらします。代替人材の採用や新入社員の教育には、多大な費用が発生するためです。
メンタルトレーニングにおすすめな9つの方法
メンタルトレーニングには、日常的に実践できるものが数多くあります。以下に、効果的なトレーニング手法を紹介します。
リラックスできる状態をつくる
心身をリラックスさせる練習は、メンタルトレーニングの基本です。たとえば、仕事とプライベートを区分けして心を落ち着かせる時間を意識的に設けると、メンタルをコントロールしやすくなります。自身に合ったリラックス方法を見つけ、日常的に実践できるようになるとよいでしょう。
頭の中をノートに書き出す
感情や考えをノートに書き出すうちに、モヤモヤした気持ちを整理できます。文字として視覚化することで、状況をより客観的に捉えられるためです。目標や課題も具体的に書き出してみると、より建設的に考えられるようになるでしょう。
思い込みを客観視する
思い込みは、ネガティブな感情を引き寄せる場合があるため気をつけなくてはいけません。たとえば、業務で失敗した際に、「同僚に大きな迷惑をかけてしまった」と思うあまり、人間関係が歪んでしまった経験をもつ人もいるでしょう。自身の思い込みに気がつけると、公平な判断ができるようになり、メンタルを保てるようになります。
成功した人の真似をする
優れた成果を上げている人の行動パターンを真似ることは、メンタル強化への効果的なアプローチとなります。たとえば、職場の実力ある先輩について、仕事の進め方や周囲との関わり方を観察して模倣するうちに、自身に足りないものが見えてくるでしょう。先輩と同じようなやり方を自然にできるようになると、自信が養われ、メンタルが強化されます。
瞑想をする
瞑想は、自分自身と静かに向き合い、内面を見つめ直す貴重な機会となります。日常の喧騒から一時的に離れて心を静めることで、普段は気づかない感情や思考パターンに気づけるためです。また、不安や恐れといったネガティブな感情に悩まされがちな人は、瞑想により新しい視点を得られ、前向きな気持ちが芽生える可能性があります。
否定の言葉を控える
メンタルを強化したい人は、日常的な言葉遣いにも注意してください。「でも」や「だって」といった否定的なニュアンスを持つ言葉は、無意識のうちに気持ちを沈ませます。ネガティブな気持ちが湧き上がったときは、「そうですね」「確かに」などの前向きな言葉でいったん受け止め、ポジティブな思考へ切り替えるように心がけましょう。
セルフトークをする
心の中でつぶやく「セルフトーク」は、メンタルトレーニングに効果的です。ポジティブな言葉で自身に働きかけると、自己暗示の効果が期待できます。また、怒りや悲しみなどネガティブな感情が湧いたときには、「今の自分は怒っている」「悲しんでいる自分がいる」と心のなかで言語化してみましょう。感情を客観視できると、メンタルを安定させやすくなります。
目標を設定する
メンタルを強化するためには、明確な目標設定が重要です。具体的なゴールを定めることで、行動の意味が明確になり、継続するためのモチベーションが生まれます。理想とする人物を見つけ出すことも、目標設定として効果的です。日頃からその人物の振る舞いや言動をイメージすると、前向きな考え方や行動を自然に身につけていけるでしょう。
生活習慣を見直す
メンタルの調子と生活習慣には、密接な関係があります。不規則な生活を続けると、体に蓄積された疲労やストレスが、メンタルヘルスに影響を及ぼしかねません。睡眠時間の確保と、一定の時間に寝起きする習慣は、心身のリズムを整える基本となります。規則正しい生活習慣を意識的に取り入れて、メンタルを整えましょう。
メンタルトレーニングに必要なメンタルヘルスケア
社員のメンタルヘルスケアを行い、メンタルトレーニングの成果を高めましょう。メンタルヘルスケアの方法を解説します。
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メンタルヘルスケアとは
ビジネスシーンにおけるメンタルヘルスケアは、社員の心の健康を守るため、働く環境を継続的に改善していく取り組みです。社員1人ひとりのメンタルに配慮することは、企業にとって大きな意味を持ちます。社員の満足度が向上すると、仕事へのモチベーションが高まり、結果として生産性の向上につながっていくためです。
ヘルスケアの教育をする
メンタルヘルスケアの教育をする際は、基礎知識を習得してもらうところから始めましょう。社員の意識をメンタルトレーニングに向けさせるには、ヘルスケアの重要性や取り組むメリット、具体的な方法を理解してもらう必要があります。eラーニングやオンライン研修など、さまざまな方法でヘルスケアの教育が可能です。
働きやすい環境をつくる
働きやすい職場づくりには、人間関係やオフィス環境など、さまざまな要素の見直しが必要です。近年、職場環境におけるストレスは深刻な社会問題となっており、多くの人が影響を受けています。ストレスの要因は個人によって大きく異なるため、社員の声に耳を傾け、具体的な改善点を探っていきましょう。
まとめ
メンタルトレーニングを継続的に実践すると、十分にパフォーマンスを発揮できるようになります。自社でメンタルヘルスケアを進めていく際は、基礎知識の教育と働きやすい環境づくりの両面から取り組みましょう。
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