目標管理シートとは
目標管理シートとは、社員自らが決めた目標を記し、進捗確認に活用するツールのことです。目標管理シートを使うと、社員やチームが設定した目標について、達成するまでの進捗を可視化できます。また、目標管理シートには評価基準が明確に記載されているため、活用すると公平な人事評価へとつながるでしょう。
社員自らが目標を設定してセルフマネジメントをする制度を、目標管理制度(MBO)と呼びます。目標管理制度での目標管理シートの活用方法について、以下で詳細を確認してみてください。
※参照:目標管理制度(MBO)とは|実施するうえで注意したい4つのポイント | タレントマネジメントラボ
目標管理シートの定義
目標管理シートは、社員自らの意思に基づいて基本項目や目標を数値化して記載したものです。企業側は、社員ごとの目標に対する達成度や進捗などを評価します。なお、記載の際は抽象的な表現を避け、誰が見ても同じ内容をイメージできるように徹底しましょう。
目標管理シート作成の目的
目標管理シート作成の目的は、企業と社員の目標達成力を高めることです。業務における目標が明確になれば、社員は主体的に動けるようになります。いわゆる指示待ちの社員が減れば、組織や企業としての目標を効率よく達成できるでしょう。また、自ら設定した目標を実現するためにも、社員はモチベーション高く働けると期待されます。
目標設定に必要なフレームワーク
フレームワークは思考の整理に役立ちます。目標設定に役立つフレームワークを紹介するので、参考にしてください。
ベーシック法
目標設定で使われる基本的なフレームワークがベーシック法です。ベーシック法では、以下の4つのステップで順番に目標や達成までのプロセスを作成します。
・目標項目
・達成基準
・期限設定
・達成計画
また、目標項目は以下の4つのいずれかに該当します。
・強化
・改善または解消
・維持または継続
・開発
ランクアップ法
目指すレベルが高いと判断されるときは、ランクアップ法を使って社員に目標設定をさせましょう。ランクアップ法は、以下の6つの観点から目標を設定します。
・改善:課題を克服すること
・代行:上司や先輩と同じレベルまでスキルアップすること
・研究:特定のテーマを深く学び理解すること
・多能化:スキルの幅を広げること
・ノウハウの普及:獲得した専門知識やスキルを整理・体系化し、周囲に広めること
・プロ化:特定の専門分野におけるプロレベルまでスキルを高めること
多くの場合、ランクアップ法はベーシック法と組み合わせて使われます。ランクアップ法で成長の方向性を決め、ベーシック法で具体的な計画を立てると、目標を達成できる可能性が高まるためです。
SMARTの法則
SMARTの法則は、経営学者のピーター・ドラッカーによって提唱されました。SMARTの法則は、以下の5つの要素で成り立っています。
・S(specific):見る人によって受け止め方が変わらない、具体的な目標を記載する
・M(measurable):進捗状況を測定可能な目標を設定する
・A(achievable):現実的で達成見込みのある目標を設定する
・R(relevant):経営目標と関連する目標を設定する
・T(time-bound):期限が明確な目的を設定する
SMARTの法則を使うと、誰でも明確にイメージできる目標を設定できます。
目標管理シートに記載する項目
目標管理シートに記載する項目は5つあります。概要や記載のポイントを押さえて、分かりやすく記載しましょう。
目標設定
前述のSMARTの法則にあるように、目標設定は数値化が重要です。数値化すると、明確な目標基準が分かり、社員自身も目標のレベルを把握できます。たとえば「売上を前年比の10%以上にする」「顧客満足度調査で80%以上の顧客に満足したと回答してもらう」など具体的な数値を挙げましょう。
評価基準
評価基準を定めると、目標達成へのモチベーションが高まります。可能な限り目標を数値化したうえで、社員と相談しつつ評価基準を決めましょう。
「目標の数値を達成したらS評価」「達成できなくても◯以上であればA評価」というように、複数の基準設定をおすすめします。段階的に評価基準を設定すると、たとえ目標達成が難しい状況下でも、社員はモチベーションを維持できるでしょう。
達成期限
目標の内容によって異なりますが、月単位、四半期単位、上期・下期単位、あるいは年単位で達成期限を設定してください。定期的に進捗を確認すると、達成が困難な目標を把握でき、必要に応じて計画を修正できます。
また、達成期限に基づいて具体的なスケジュールを立てておけば、先延ばしせず目標達成に向けて着実に取り組めるでしょう。
達成基準
達成基準は、目標達成度を1.0~10.0の数字や、A~Eのアルファベットなどで示したものです。目標達成までのプロセスの明確化が必要な職種は、少なくありません。達成基準により目標までの道のりを逆算できると、日々の業務を具体化できます。また、達成基準を用いると、チームメンバー間の意思疎通がスムーズになり、協力体制の強化にも役立つでしょう。
成果指標
成果指標は、目標を達成するために取り組む行動です。シンプルな行動を複数設定しておくと、行動しやすくなるうえに、成果を振り返りやすくなります。成果指標の例は、以下の段落で詳しく紹介するため参考にしてください。
達成できなかった成果指標があれば、振り返りが必要です。上手くいかなかった理由や課題を社員と上司で確認し合い、次の目標に向けた方向性を設定しましょう。目標管理シートにコメント欄を設けておくと、目標達成に向け話し合った内容を記録できます。
【職種別】目標シートの書き方
目標管理シートの書き方を職種別に解説します。目標設定と成果指標の例を挙げるので、参考にしてください。
営業職
毎月の売上や成約率などのように、営業は比較的目標を数値化しやすい職種です。目標達成に向け、行動や取り組みを具体化しましょう。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 新規顧客獲得数を前年比◯%アップ |
成果指標 | ・1日あたりの訪問数を◯件増やす ・1日あたりの電話営業を◯件増やす ・見込み客へのメルマガを1か月あたり◯件増やす ・展示会やセミナーへ四半期単位で◯回訪問する |
新規顧客獲得数などの目標を数値化する際は、直近のデータを参考に現実的な目標を定めましょう。
技術職
技術職には、システムエンジニアやプログラマー、製造スタッフなどが該当します。良品率のように数値化できるものもありますが、一般的に技術職は目標の数値化が難しい職種です。納期短縮やスキルアップ、良品率などを重視して目標を設定しましょう。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 納期を遵守する |
成果指標 |
・出勤後毎朝、スケジュールを確認する ・スケジュールに影響するトラブルが起きた際は、その日のうちに迅速にマネージャーに相談する ・要件定義の際に納期遅延につながるリスクを洗い出す ・タスクに応じて適切なリソースや日数を割り振る |
企画・マーケティング職
企画・マーケティングの分野は、目標を数値化しやすい職種といえます。企業が掲げる目標と照らし合わせつつ、SNSの登録者数やコンバージョン率のように、客観性の高い目標を設定しましょう。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 公式サイトからのサービス契約者数を前年比〇%増アップ |
成果指標 |
・1か月あたりの公式サイトへのコンテンツ投稿数を◯件増やす ・自社SNSに毎日投稿し、公式サイトへの流入を狙う ・サービスを紹介する動画を、1か月ごとに最低1件は公式サイトに投稿する |
サービス職
サービス職は、商品の売上や顧客数のように、目標を数値化しやすい職種です。ただし、サービス職では、目標数や難易度に対して、過度な目標を立ててしまうケースが少なくありません。業務の負担にならないように、適切な目標を設定しましょう。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 担当売場の売上を前年比◯%アップ |
成果指標 |
・店頭に立ち、毎日◯人に声をかける ・店内で、毎日◯人に試食や試着を進める ・陳列の見直しを毎月最低1回は実施する |
管理部門・バックオフィス職
管理部門やバックオフィス業務は、数値目標の設定が難しい職種です。社員の業務効率化や満足度、経費削減の状況などについて、具体的に目標として記載しましょう。定性的な目標設定になりがちなため、企業と社員の目標に齟齬が生じないように注意してください。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 電気代を前年比◯%ダウン |
成果指標 |
・1週間に1度はノー残業デーとして、定時後消灯する ・エアコンの設定温度を夏は◯度以上、冬は◯度以下とする ・◯週間に1度のタイミングで空調のフィルターを掃除する ・パソコンのディスプレイの明るさを◯%まで落とす |
管理職・マネージャー
管理職・マネージャーの場合、個人よりもチームや部署としての目標を設定することが重要です。たとえば「部署全体の売上を10%アップさせる」といった目標を掲げるとよいでしょう。
また、社員個々のノウハウをチーム内で共有する、経験不足の社員をフォローする体制を整えるなど、環境整備に関する内容も目標の対象にしましょう。以下に、目標設定と成果指標の例をまとめました。
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目標設定 | 目標達成した部下の数を前年比◯人アップ |
成果指標 |
・毎月1度はノウハウ共有会を開く ・毎月◯度、全てのチームメンバーと1on1ミーティングを実行する ・フィードバックの質を高める研修に、◯月◯日までに参加する |
目標管理シート作成のポイント
目標管理シート作成のポイントを解説します。組織と社員の認識にズレのない、現実的な目標を設定しましょう。
組織の目標とのすり合わせをする
目標管理シートを記載する際に、企業と社員の目指す方向を一致させましょう。社員が独断で設定した目標は、企業の成長にはつながらない可能性があります。目標の数値化やプロセスの検討については、上司や管理者、人事担当者などの確認やアドバイスが必要です。
適切な数の目標を設定する
目標管理シートに記載する目標数は、3~5個が適切と考えられています。また、1つの目標に対して3個ほどの成果指標を設定しましょう。目標の数が多すぎても、遂行できない場合があります。一方、目標が少なすぎても、達成感を得られない社員が不満を募らせるかもしれません。作成した目標管理シートを見て、過不足のない目標数になっているか確認しましょう。
難易度が高すぎない目標を設定する
本人から見て難易度が高すぎる目標を設定すると、業務へのモチベーションが上がらないリスクがあります。一方、低すぎる目標でも、やりがいを感じなければモチベーションは上がらないでしょう。社員個々の実力や勤務年数などを踏まえ、全体のバランスを見ながら目標を設定してください。
目標が負担にならないようにする
目標は、達成できる見込みがあることが前提です。業務への負担やプレッシャーを与えてしまうと、本来の実力が発揮されない場合があります。特に目標のノルマ化は、社員の成長の妨げとなりがちです。不必要なストレスを与えかねないためやめましょう。上司や担当者には目標設定の本質を理解させ、社員の成長に向けた適切なフォローを促してください。
目標管理シート作成のメリット
目標管理シートを作成するメリットについて解説します。また、人材マネジメントについて詳しく知りたい人は、以下の資料も参考にしてください。
現状把握ができる
目標管理シートは、日々の業務に追われる社員が、仕事の現状を把握しつつ目標を見失わないための重要なツールです。なぜ成果が振るわないか分からず、評価内容に納得できなければ、社員は不満を募らせるでしょう。目標管理シートを常に見られるようにしておくと、目標と現状とのギャップが分かり、成果を出せている部分や改善点を冷静に把握できます。
目標を具体化できる
目標管理シートで数値目標や目標達成までのプロセスを明確にすると、具体的な計画を練ったうえで行動に移せます。取り組みを行動に移すためには、数値と行動をセットにして具体的な目標を設定することが重要です。やるべきことが定まっていて、業務量や負担を明確にイメージできると、社員は高いモチベーションで行動できます。
公平な評価につながる
成果を数値で示せる職種の場合は、公平な評価により社員の不満解消が可能です。目標管理シートを見て、評価に至った理由や原因を振り返ると社員自身の納得感が高まります。目標管理シートにはコメント欄を用意しましょう。評価の経緯をフィードバックとして記載しておくと、今後の目標設定の目安になります。
人材育成につながる
目標管理シートは、人材育成にも役立ちます。たとえば、達成できた目標からは強みやスキルを、できなかった目標からは課題や改善点などを把握可能です。また、目標管理シートは、社員が自発的に作成します。目標設定・振り返りを通じて社員がキャリアを意識するようになると、人材育成の効果が高まるでしょう。
目標管理シート作成の注意点
目標管理シートを作成した後は、定期的な見直しと修正が必要です。適切に目標管理シートを活用するための注意点を解説します。
定期的に進捗状況を確認する
上司や担当者は、目標管理シートの進捗状況を定期的に確認しましょう。状況を客観的に観察して、目標から逸脱していたり予期せぬ事態が発生していたりした場合は、軌道修正が必要です。また、社員と定期的に面談する機会を設けてください。適切なフィードバックは、社員のモチベーションの維持に役立ちます。
目標の修正を定期的に行う
社員個々のレベルに見合った目標を設定できているか、常に確認しましょう。社員が懸命に努力しても、難易度が高すぎる目標は達成が困難です。目標を達成した社員は、成功体験を得られます。成功体験を積み重ねていくうちに自信が芽生え、成長が促進されるでしょう。定期的に状況を確認し、目標の内容を社員に合うレベルに調整してください。
まとめ
目標管理シートは、社員自らが目標を決め、目標達成までの進捗状況を確認・管理するためのツールです。目標管理シートは誰が見ても分かるように明確に記載しましょう。目標はできる限り数値化し、達成見込みのある社員個々のレベルに合うものを設定することが重要です。
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