経営戦略とは?その必要性や分析方法/策定方法などをわかりやすく解説


経営戦略とは?その必要性や分析方法/策定方法などをわかりやすく解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

経営戦略は、企業の目的や目的のためのシナリオにあたるもので、企業において経営目標を達成する上で欠かせません。この記事では、なぜ経営戦略が必要なのか、経営戦略をどのように活用するのかなどを分かりやすく解説していきます。

そもそも経営戦略とは

「経営戦略」は簡単に言えば、経営の目的や目標に対するシナリオのことです。「売り上げをアップさせたい」「顧客満足度を向上させたい」「生産性を向上させたい」など、各企業には達成したい目的や目標があることでしょう。その目的や目標を、実現するプロセスの全体像が経営戦略です。

「経営戦略」は、軍隊用語の「management strategy」から来ています。経営戦略にはさまざまなデータに基づくシミュレーションや、リスクマネジメントなども、必要になるでしょう。

戦略と戦術は似て非なるもの

一方で、経営戦略を達成するためのアクションプランは「経営戦術」と表現します。

「戦略」は、目標を達成するためにどのような考え方・体制・プロセスを実践していくのかを表す言葉です。それに対し、「戦術」は戦略を実現させるために、「どのような手段や施策で臨むのが最適なのか」を、具体的に表すものです。

経営戦略は、長い期間をかけて実現したい内容が組み込まれますが、経営戦術には、短い期間で効果が出る方法が含まれます。経営戦術によって生み出された要素が積み重なり、経営戦略の実現へと繋がっていきます。

経営計画とも異なる

経営戦略や経営戦術とよく似た言葉に、経営計画があります。経営計画は、企業の持続的な成長を目標とした、ビジョンや定義などを表すものです。経営戦略や経営戦術が、達成したい目標に合わせてコミットしているのに対し、経営計画は、経営の方向性を明確にするという意味合いが強くなります。

経営計画があれば、経営戦略や経営戦術で達成したい目標の方向性が、経営計画とマッチしているかどうかを確認できます。目標の方向性と経営計画の方向性が合致していれば、根拠のある経営戦略や経営戦術が生まれ、従業員と経営層の信頼関係も高まるでしょう。

経営計画も、経営戦略や経営戦術を実現していくのに不可欠な要素です。

経営戦略が必要である理由

経営戦略を練るにも時間と労力が必要です。しかし、現代の日本は、低価格で高品質の製品を大量生産・大量販売していた高度成長期とは異なります。生き残るためには、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)や自社の強み(商品の価値やブランディング)を有効活用できる経営戦略が必要不可欠です。

力技や場当たり的な経営が続くと、目まぐるしく変化するニーズや組織変化の流れに対応できなくなるでしょう。こうした変化に対応するためにも、市場の中での自社の立ち位置を把握し、成長が必要なポイントを明確にする経営戦略が必要です。加えて、目標を達成するために組織体制を整え、従業員のモチベーションアップも図っていかなければなりません。

広い視野と柔軟性のある経営戦略を立てることができれば、市場の変化やニーズにも対応しやすくなり、成長と持続を両立することができるでしょう。

経営戦略理論と経営戦略フレームワークとは



経営戦略を構築するためには、基本的な考え方の理解が必要不可欠です。経営戦略理論とフレームワークは、敬遠戦略の考え方として頻繁に取り上げられます。

経営戦略理論とは

経営理論とは、経営戦略を遂行するために行った過程も含めて研究する学問・学術を指します。平たく言えば、経営戦略の勉強のことです。新しい経営手法の考案をしたり、他の企業に成功事例を伝えて、経営環境の変化を促したりすることも経営理論の一部です。

たとえば、『世界標準の経営理論』(入山章栄著:ダイヤモンド社、2019)の「ビジネス現象と理論のマトリクス」では、戦略として活用できる理論として、下記のような理論を解説しています。

SCP理論とそれをベースにした戦略フレームワーク
リソース・ベースド・ビュー(RBV)
ゲーム理論
リアル・オプション理論
ダイナミック・ケイパビリティ理論
意思決定の理論
資源依存理論
組織エコロジー理論
レッドクイーン理論

経営理論は、さまざまな状況を仮定したり、目的に合わせた方法を提案したりと、新しい視点も加えながら、経営戦略を練る参考になります。

フレームワークとは

ビジネスにおけるフレームワークとは、共通して活用できる考え方や意思決定、分析、問題解決、戦略立案などの枠組みを指します。

たとえば、問題や課題を要素分解し広げていき、最適な解決策を見いだす「ロジックツリー」。また、ある結論を頂点に設定し、その根拠を細分化し、ピラミッド状に図式化していく「ピラミッドストラクチャー」などがあります。企業戦略に役立つフレームワークとしては、「STP分析」や「AARRRモデル」、「クロスSWOT分析」、「AISAS」などが代表的です。

こうしたフレームワークは、目的や目標をポイントとして固定し、関連するパターンを定型化することによって、誰でも「何が必要で何が課題となっているのか」を論理的に導くことができます。関係のない要素が入り込みにくく、戦略を考案する際に方向性を見失いにくいのが、フレームワークを活用するメリットでしょう。

経営戦略に関するフレームワークに関しては、下記記事で詳しく解説しています。
「経営戦略フレームワーク」については、こちらの記事をご確認ください。

経営理論×フレームワークの重要ポイント

『世界標準の経営理論』の著者、入山章栄氏は、「多くのMBAの教科書では、フレームワークと理論(の浅い解説)がごちゃ混ぜになっており、経営理論とは関連のないフレームワークも数多くある」と述べています。

経営理論とフレームワークの活用は、経営戦略を練る上で欠かせないものです。しかし、経営学者が理論を紹介しているものだけを勉強しても、内容は断片的・表層的であることが多く、実践的でないことも多いようです。

経営理論は「なぜ?(Why)」には答えるものの、実践的なところまで踏み込んだものは多くありません。フレームワークはいわば方法の型にあたるため、「なぜ?(Why)」までは答えないのです。経営理論だけ取り入れても有効的に使うことはできず、闇雲にフレームワークだけ当てはめても、思考が閉じ込められてしまいます。

経営理論とフレームワークを活用する際は、「フレームワークに落とし込まれた理論(=実践できる理論)」と、「経営理論から落とし込まれたフレームワーク(=なぜそう言えるのかがはっきりしている)」であるかどうかがキーポイントとなるでしょう。

経営戦略の構成要素・4つ


実際に経営戦略を立てるためには、「どこで」「なにを」「どのように」を明確にしておく必要があるでしょう。ここでは、経営戦略を構成する4つの要素を紹介します。

事業領域(ドメインの定義)

事業領域は「どこで」にあたる要素で、企業の「現在」および「将来」の活動(生存)領域を表しています。平たく言えば、自分がどこで戦っていくかを明確にする要素です。

具体的には、どの顧客層を狙うのか、どのような機能(価値)を提供し、どのような技術を提供するのかを考えます。たとえば、同じ技術や機能を持つ製品でも、一般の人をターゲットにするのか、企業をターゲットにするのかで、戦略の方向性も変わり、おのずと事業領域も変わってくるでしょう。どの領域なら自社が戦い抜いていけるかを判断する必要があります。

資源展開

資源展開は「なにを」にあたる要素で、主に経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をどのように蓄積・分配していくかを表しています。経営資源の、なにを蓄積する必要があるのか。蓄積した資源のどれを分配していけば、企業の成長や業績アップにつながるのか。これらを考えることも、経営戦略を立てるために必要です。

競争優位性

競争優位性は、「どのように」にあたる要素です。事業領域(ドメイン)で、資源展開をするにあたって、どのような方法であれば、競合他社より優位に立てるのかを表しています。

たまたま商品が売れたが、理由が分からない状態では、競争優位性を確立して経営戦略を立てることは難しいでしょう。競争優位性を考えるにあたっては、顧客が「なぜ(Why)」自社の製品を選ぶのか、選択される価値を生み出す資産は「なに(What)」かなど、自社の強みがどこにあるのかを明確にし、優位性の根拠を確立することが大切です。

相乗効果(シナジー)

事業領域、資源展開、競争優位性に加えて、相乗効果も経営戦略を立てる上で含めておきたい要素です。相乗効果(シナジー)は、複数の事業および機能(営業・生産・開発)が、どのように影響し合っているのかを表しています。

単純な例でいえば、ひとつの加工製品を製造する過程で出た、ふたつの副産物を使って、用途の異なる商品として製造・販売するような場合です。これによって、コストを無駄なく活用できるでしょう。各事業・各部署の間で相乗効果を生み出せれば、さまざまなメリットも生まれ、経営戦略上、魅力的な選択肢が広がっていきます。

経営戦略における代表的な戦略

ここからは代表的な経営戦略を3つ取り上げます。それぞれの違いを確認して、自社に必要な戦略の方向性を見極めていきましょう。

全体戦略

全体戦略は、力を注ぐ事業を見極め、将来的にどう成長するのかという中長期的な戦略です。全社戦略、成長戦略、企業戦略と呼ばれることもあります。「企業としてどの方向に向かうのか」という経営理念にも似た考え方が含まれるため、経営計画とも重なる点が多いでしょう。

通常は、全体戦略を基に事業戦略が練られますが、事業戦略の内容が全体戦略へ反映されることもあります。事業戦略の内容を上手く組み込めば、単なる上から下への指示ではなく、双方向の視点を取り入れた戦略へと精錬されていくでしょう。

事業戦略

事業戦略は、事業レベルで実現するための目標を想定した経営戦略のことで、事業における具体的なモデルになります。「事業としてどの方向を目指すのか」が含まれるため、経営戦術と重なる点が多いでしょう。

事業戦略は、ライバル企業との競合に対応する必要もあるため、いかに優位に立てるかにスポットがあてられます。そのため、部署ごとや事業部ごと、あるいは関東や関西など、地方別に事業戦略を分けるケースも少なくありません。

機能戦略

機能戦略は、機能レベル(現場レベル)で方向性を定める経営戦略です。営業や人事、生産開発やマーケティングなど、ピンポイントでの戦略を指します。機能戦略は事業戦略が前提となりますが、事業戦略の実現、強いては全体戦略の実現のためにも、整合性が必要不可欠です。

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競合企業に対する経営戦略

3つの基本的な経営戦略は、自社目線のものが中心ですが、競合企業にスポットを当てた戦略もあります。それぞれ、どのような目的と効果があるのかを見ていきましょう。

価格戦略

価格戦略は、コストリーダーシップ戦略とも呼ばれ、価格の面で競合企業より優位に立つための戦略です。

価格戦略には、新商品の開発や仕入れにかかるコストの見直しや、販路を拡大、人件費の削減なども含まれます。

ブルーオーシャン戦略

ブルーオーシャン戦略とは、いままでになかった新しい市場を生み出し、新しい領域で事業を展開する戦略です。競合他社が存在しないため、「価格戦略」と「差別化戦略」を同時に実現できるメリットがあります。

ブルーオーシャンの対義語はレッド・オーシャンです。これは、あらゆる競合がひしめき合い、競争の激しい血みどろの市場……、という少し怖い意味です。既存の商品やサービスで競争性優位の確保が難しいときは、ブルーオーシャン戦略を視野に入れてみましょう。

多角化戦略

多角化戦略とは、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を活用し、新しい分野・市場を切り開いていく戦略です。経営学者のイゴール・アンゾフによる理論「ンゾフの成長マトリクス」のひとつでもあります。

現代は、不安定な世界情勢・経済状況にあるため、人々の多様化するニーズに応えられる企業でなければなりません。安定した経営・成長を実現するためには、人々のニーズに応える形で、今までになった商品・サービスを創造していく必要があるでしょう。

価格戦略を成功させるためには、ある程度の資金的余裕や徹底したコスト管理が必要です。資金に余裕のない中小企業の場合、価格戦略のリスクが大きいケースもあります。

差別化戦略

差別化戦略は、付加価値戦略とも呼ばれ、自社商品やサービスの強みを活かし、競合企業との差別化を図って、優位に立つことを目的とした戦略です。

高級ファッションブランドは、差別化戦略の良い例でしょう。また、現在有名なブランドでないとしても、SNSや動画サイトなどを上手く活用すれば、一気に注目を集められるかもしれません。

今までにないアイデアや工夫、他のメーカーにマネできないオリジナリティ、「あったらいいのに」に共感する商品など、自社独自の要素があれば、差別化戦略は成功しやすいでしょう。

集中戦略

集中戦略は、経営リソースを特定の地域や顧客に絞って投入する戦略です。価格戦略と差別化戦略のいずれかをブーストする役割があります。

たとえば、コスト削減を売れ行きの悪い商品に絞ったり、価格を下げるためのリソースを、売れ行き好調の商品の値下げに割いたりするのが、集中戦略です。


経営戦略事例

経営戦略にはさまざまな種類があるため、市場における自社の立ち位置や顧客のニーズ、経営資源の見極めが必要です。ここでは、実際に経営戦略が成功した事例を紹介します。

また経営戦略の事例については、下記記事でも取り扱っていますので、ぜひご覧ください。
「経営戦略事例」については、こちらの記事をご確認ください。

普段着ブランドとして差別化戦略を成功させた「ユニクロ」

大手ファッションブランドのユニクロは、さまざまな経営戦略を立てています。特に、「ファッション性よりも普段着としての着心地の良さ」を追求した差別化戦略は、大きく成功していると言えるでしょう。

「オシャレは我慢」という言葉があるように、ファッション性の追求はときに着心地の良さを犠牲にしなければなりません。ユニクロは、そうしたトレンドや見た目よりも、シンプルでありながら快適に着られることを第一にして、顧客のニーズに応えています。

女性にターゲットを絞った「スターバックス・コーヒー」

スターバックスは、「喫茶店=男性がコーヒーを飲みつつ一服(喫煙)する場所」というイメージからの差別化を図った良い例でしょう。

スターバックスの第1号店は、アメリカ・ワシントン州のシアトルで1971年にオープンしました。日本にやってきたのは1996年8月です。その後、2000年には117店舗、2010年には877店舗、現在では1,792店舗にまで拡大しています(2022年12月末時点・スターバックス公式サイトより)。

スターバックスは、日本進出3号店から全面禁煙を貫いており、外観や内装、メニューの仕様なども「おしゃれ感」を重要視しています。特に女性客が利用しやすい空間作りにこだわり、差別化戦略を進めてきました。

喫煙する客層も逃さないよう、喫煙席などを設ける喫茶店との、差別化、ブランド化を図って成功してきた事例と言えるでしょう。

商品価値を上手く利用した「ケンタッキー・フライド・チキン」

ケンタッキー・フライド・チキンは、複数の集中戦略で成功した事例です。

集中戦略のひとつは、「フライドチキンへの特化」です。ファストフード店に限ったことではありませんが、食品小売業において、メニューの豊富さは大きな武器になります。メニューの数が少なければ、飽きられてしまうことは、想像に難くないでしょう。加えて、今や、コンビニでも気軽にフライドチキンが買える時代です。わざわざケンタッキーでフライドチキンを買うのは、コスパが悪いと感じる若者も少なくありません。

そこで、ケンタッキーは、お買い得感のあるセット商品で新規の客を引き寄せる一方、期間限定商品で既存のファンも逃さない集中戦略を立てました。加えて、「今日、ケンタッキーにしない?」というフレーズのCMで、日常化戦略も進めています。

ケンタッキーの集中戦略が成功したのは、顧客層の分析と、多面的なニーズの捉え方による、柔軟な商品価値のアピールにあるのかもしれません。

まとめ

経営戦略は、企業が達成したい目的や目標を達成するための手段です。さまざまな要素を含めて検討し、根拠に基づいた戦術成果を積み重ねていく必要があります。経営戦略の把握はもちろん、目まぐるしく変化する顧客のニーズの見極めも必要です。経営理論とフレームワークを、実際的な方法で活用しながら、経営戦略に成功した事例からも学ぶ必要もあるでしょう。

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