エンゲージメントサーベイが低い場合の解決策とは?原因や効果を高めるメリットを解説


エンゲージメントサーベイが低い場合の解決策とは?原因や効果を高めるメリットを解説

エンゲージメントは、近年の企業経営において注目されている概念の1つです。エンゲージメントが低いと、生産性や定着性の低下といった問題が生じやすくなるため、改善できるよう対策しなければなりません。本記事では、エンゲージメントとは何か、エンゲージメントサーベイの概要、エンゲージメントサーベイの結果が低い場合の解決策などを解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメントには、どのような意味があるのでしょうか。まずはエンゲージメントの意味や、日本企業におけるエンゲージメントを確認しておきましょう。


エンゲージメントの意味

エンゲージメント(Engagement)には、誓約・契約・婚約などの意味があります。企業の人事分野におけるエンゲージメントの意味は、社員が働いている企業に対して感じる愛着心や帰属意識などです。エンゲージメントの高さや低さは企業経営に影響を与えるといわれており、近年はさまざまな企業から注目を集めています。


日本企業のエンゲージメントは低い?

日本は世界の中でもエンゲージメントが低い国だといわれています。アメリカの調査会社「ギャラップ社」が2022年に実施した調査では、日本企業で熱意のある社員は全体の5%にとどまりました。この調査は129カ国を対象としており、日本は全体の128位と世界的に見ても低い水準となっています。日本のエンゲージメントの低さは、世界全体の割合と比較しても目立つため改善が必要です。


※参考:ニッセイ基礎研究所|日本の従業員エンゲージメントの低さを考える


エンゲージメントが重視される背景

エンゲージメントが重視される理由は、労働力の不足や人材の流動化、働き方の多様化などが挙げられます。


労働力の不足

近年、日本では少子高齢化が進み、労働力不足が問題となっています。労働力が不足すれば企業経営に大きな影響を与えかねないため、企業にとって労働力の確保は大きな課題です。離職を防止し、労働力を確保するためにも、社員のエンゲージメントを高めることが求められています。


人材の流動化

多くの日本企業では、これまで終身雇用や年功序列の制度を採用してきました。しかし、近年は終身雇用や年功序列に対する考え方が変化してきています。より良い環境で働くために転職を希望したり、実際に転職したりする人が少なくありません。社員が離職する可能性は従来よりも上がっているため、企業はエンゲージメントを高めて定着につなげる必要があります。


働き方の多様化

働き方に対する考え方も変化しており、働き方は多様化しています。たとえば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、リモートワークが普及し、出社をせずに仕事をする社員が増えました。社員の仕事に対するモチベーションを上げるためには、企業が多様な価値観に寄り添い、エンゲージメントを高めることが求められます。


エンゲージメントが低い企業の特徴

エンゲージメントが低い企業には、いくつかの特徴があります。どのような特徴があるのでしょうか。


社員のモチベーションが低い

エンゲージメントが低い企業の社員は、モチベーションが低い傾向にあるのが特徴の1つです。社員のモチベーションが低いと生産性が下がり、仕事の成果も出しにくくなります。仕事の成果が出ないため、モチベーションがさらに下がるといった、負のスパイラルに陥るケースも珍しくありません。


ネガティブな姿勢で仕事に取り組む社員がいると、周囲の社員にも悪影響を与えます。


離職する社員が多い

エンゲージメントが低い社員は企業への帰属意識が薄く、離職する可能性も高まります。待遇や条件に不満があると社員のエンゲージメントは下がりやすく、離職する社員が増える恐れがあるため注意が必要です。


ただし、待遇や条件に満足していても、仕事にやりがいを感じられない場合は、転職してしまうケースがあります。


コミュニケーション不足

社内のコミュニケーションが不足している企業では、エンゲージメントも下がる傾向にあります。1人で取り組む業務よりも、複数人のチームで取り組む業務の方が多いため、コミュニケーションが取りづらければ、業務はスムーズに進みません。思うように業務が進まなければ、仕事に対するモチベーションも下がってしまいます。


人事評価が不公平

これまでの成果や努力が正しく評価されていないと感じると、社員のエンゲージメントは下がってしまいます。いくら努力をして企業に貢献しても、認めてもらえなければ意欲が低下し、努力をやめてしまうかもしれません。これまで行ってきた努力が認められる達成感は、業務へのモチベーションの要素の1つとなります。


エンゲージメントを低下させる原因

エンゲージメントを低下させる原因はさまざまです。具体的には、勤務時間制度やオーバーコンプライアンスなど、働く環境が考えられます。


勤務時間制度

多くの日本企業では、勤務時間に比例した賃金制度を採用しています。業務の量や内容に関係なく、「〇時から〇時まで働くことで賃金が発生する」という制度です。勤務時間制度の場合、実際にこなした業務の量が少なくても、決められた時間業務をすれば賃金は発生します。


一方で、効率的に業務を進めても、決められた時間は職場にいなければなりません。業務を早く終わらせるメリットがないため、生産性を高める工夫がされず、エンゲージメントも下がってしまいます。


オーバーコンプライアンス

オーバーコンプライアンスとは、過剰な法令遵守という意味です。細かいルールを設定したり、業務に関する手続きを過剰に増やしたりする企業の姿勢を指します。企業はトラブル防止のために規制を厳しくしますが、オーバーコンプライアンスに陥ると、業務の手間が増えるため、生産性が上がりません。


制限が多くなるほど社員の挑戦意欲は奪われてしまい、新しい価値の創出を妨げるだけでなく、モチベーションも低下させてしまいます。


複雑な組織形態

組織形態が複雑になるにつれて業務は細分化され、自分が取り組んでいる業務以外の内容や状況が見えづらくなります。過剰に細分化が進めば、社内での連携も取りづらくなり、スムーズな意思決定ができません。


また、業務を進めるうえで必要なコミュニケーションに伴うストレスが増加し、チームワークが悪化する可能性もあるでしょう。複雑な組織形態によりさまざまな問題が生じ、仕事の達成感も得られなくなるためエンゲージメントが下がります。


職能型の人事制度

職能型の人事制度は、日本型雇用とも呼ばれる制度です。職能型の人事制度では、過去の実績を含めた社員個人の能力に焦点を当てて人事評価を実施します。与えられた仕事をいかにこなせるかが重要であり、汎用的な能力を持つ人が評価されやすい仕組みです。


そのため、専門的なスキルを高めたいと考える人材からすると、エンゲージメントは下がってしまうでしょう。職能型の反対はジョブ型(職務型)といい、現時点でのポジションに必要なスキルや適性を評価します。


エンゲージメントサーベイの内容

エンゲージメントサーベイとは、組織のエンゲージメントを評価するために実施する、アンケート調査のことです。エンゲージメントの現状を把握するのに適した調査ですが、企業に合った設問を作らなければ効果のある施策につながりません。他の企業の実施例などを参考に設問を作ると、本当に自社に必要な結果が得られないからです。


設問内容が多すぎたり、世代や役職に合った設問でなかったりすると、回答する社員の工数が増えて回収率が下がることもあるでしょう。エンゲージメントサーベイの詳細は、このあと詳しく紹介していきます。


エンゲージメントサーベイの概要

エンゲージメントサーベイはどのように測定し、何に役立てられるのでしょうか。

ここでは、エンゲージメントサーベイの概要を解説します。

下記記事では、エンゲージメントサーベイについてより詳しく解説しています。


【徹底解説】エンゲージメントサーベイとは?自社で調査する必要性や注意点を理解しよう


エンゲージメントの測定方法

自社のエンゲージメントを測定する場合は、エンゲージメントサーベイが役立ちます。社員の愛社精神や仕事に対するやりがいなどを数値化して、客観的に把握できるからです。


エンゲージメントサーベイの実施方法は、企業が独自でアンケートを作成して調査を実施する方法と、エンゲージメントサーベイサービスを利用する方法があります。いずれの場合も社員がいくつかの質問に対して回答し、結果をもとにエンゲージメントの状態を分析するのが基本です。


エンゲージメントサーベイでできること

エンゲージメントサーベイを実施することで、エンゲージメントの状況や自社課題の優先順位、離職の兆候などが把握できます。企業に対する社員の期待と現状のギャップが可視化され、優先して取り組むべき課題の洗い出しが可能です。


また、定期的に実施して、次第にエンゲージメントが低下している社員を早期発見できれば、離職する前にヒアリングや面談をして対処できます。


エンゲージメントサーベイの頻度

エンゲージメントサーベイは、質問の数と頻度によって「センサスサーベイ」と、「パルスサーベイ」の2種類に分けられます。


センサスサーベイは年に1度など中長期スパンで実施し、質問数も多くすることで、社員のコンディションをより詳しく把握できます。パルスサーベイは、質問数が少ないものの、月に1度など短期スパンで実施するため、比較的リアルタイムに近いデータを収集できます。


エンゲージメントサーベイの流れ

エンゲージメントサーベイはどのような流れで行うのでしょうか。ここからは、エンゲージメントサーベイの流れを解説します。


実施目的・質問項目の決定

まずはエンゲージメントサーベイを実施する目的を明確にし、自社で達成したい目標を洗い出します。その上で目的に合った質問項目を決定していきましょう。たとえば、社内コミュニケーションを活性化させたい場合は、人間関係に関する質問項目を多めにするなどです。


実施・結果分析

エンゲージメントサーベイを実施する前に、実施の目的や回答するメリット、回答により不利益が生じることはない点を社員にしっかり伝えます。社員が調査に対して不信感を持っていると、率直な回答が得られず、実施する効果が薄まってしまうからです。


実施後は回答内容から自社の現状や課題を分析し、優先順位の高いものから対応策を検討していきます。


施策実施・効果測定

調査によって得られた分析結果をもとに人事施策を立案し、実行に移しましょう。施策を実施する際は現場の協力を得られるよう、社員に対して内容を丁寧に説明することが重要です。施策は期間を決めておき、一定期間効果を測定したら見直しやブラッシュアップを行います。


エンゲージメントサーベイの結果が低い場合

エンゲージメントの結果が低かった場合は、以下のような対策を取ってみましょう。


働きやすい環境を整備

働きやすい環境の整備は、エンゲージメントを高める方法の1つです。働く環境が整えば、社員のモチベーションを高めやすくなります。社員が各自のライフスタイルに合わせて働けるように、リモートワークやフレックスタイムを導入しましょう。仕事と家庭の両立が難しい社員がいる場合は、短時間勤務の適用を検討するのも1つの手段です。


人事評価を見直す

人事評価を見直し、業務のやりがいを実感しやすい体制を作ることも大切です。社員の能力や適性に合わせて配属する他、努力や成果が公平に評価される仕組みを整えましょう。これまで取り組んできた業務が公平に評価されることで、社員の仕事に対するモチベーションのアップも期待できます。


ビジョンを浸透させる

企業のビジョンを社内全体に共有し、浸透させることも重要になります。社員が企業のビジョンをしっかり理解して共感できていれば、目的意識を持って業務に取り組めるようになるからです。ビジョンは研修や説明会などを実施して、できるだけ具体的に説明しましょう。研修は新入社員だけでなく、社員や管理職も対象とします。


コミュニケーションを活性化する

社内の人間関係は、業務のパフォーマンスに大きな影響をおよぼします。問題が発生したときや他の人の意見を聞きたいとき、気軽に同僚や上司に相談できなければスムーズに業務を進められません。社内コミュニケーションに課題がある場合は、少人数ミーティングや社内SNSの導入など、コミュニケーション活性化のための施策を検討しましょう。


エンゲージメントサーベイの結果を分析して施策に生かす

エンゲージメントサーベイにより収集できた結果をうまく分析すれば、企業の成長につながります。これまでの変化や施策の効果が出ているのかなどを把握するためには、時系列で結果をモニタリングするのが効果的です。


なお、エンゲージメントサーベイは記名式で行うと、適切な分析や効果を上げる施策の検討をしやすくなります。回答は自由記入にするのではなく、選択式にして、その選択肢を選んだ理由を記入してもらうのがおすすめです。


記名式にする際は、社員が安心して取り組めるよう、回答を閲覧する人や集計結果の公開時期と方法、範囲、回答結果の使い道などを事前に周知しておきましょう。


エンゲージメントサーベイを継続する

社員の最新コンディションを把握するためにも、エンゲージメントサーベイは定期的に継続して実施することも大切です。継続することで結果の変化が見えやすくなり、人事施策の効果やトラブルの予兆を把握できるようになります。


マネジメント層にも必要な範囲で情報を開示し、エンゲージメントサーベイの結果について話し合ったり、施策実施に関する研修を開いたりすることも有効です。経営層も現場も一体となり、改善のサイクルを回していきましょう。


従業員エンゲージメントを用いて魅力的な会社の作り方を考える


エンゲージメントを高めるメリット

エンゲージメントを高めると、生産性や定着率、顧客満足度が上がるメリットがあります。


生産性が向上する

エンゲージメントが高い社員が多くなると、社内が活性化してパフォーマンスが向上する点がメリットです。仕事に対するモチベーションが高い社員が多くなれば、周囲にもポジティブな影響をおよぼす好循環が生まれやすくなります。その結果、企業全体の生産性も高まり、業績アップにもつながるでしょう。


定着率が高まる

エンゲージメントが高まり社員が愛社精神を持つと、仕事にやりがいを持って取り組めるようになる上に、社員の離職が減少し、定着率が高まります。離職率が下がれば、新たに社員を採用するためのコストも発生しません。また、費用をかけて教育した社員が離職してしまい、投資が無駄になってしまうような事態も減らせます。


顧客満足度が上がる

社員のエンゲージメントが高まると、顧客満足度の向上にもつながります。社員のモチベーションが高まり、質の高い商品やサービスを提供できるようになるからです。顧客満足度が上がれば企業に対するイメージもアップし、リピーターの獲得にも役立ちます。


まとめ

企業におけるエンゲージメントとは、社員が企業に対して持つ愛社精神や帰属意識のことを指します。エンゲージメントを把握するには、社員に対してアンケート調査を行う、エンゲージメントサーベイを実施するのが効果的です。エンゲージメントが低いという結果が出た場合は、働く環境を整備したり人事評価を見直したりして対策を立てましょう。


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