こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
物事に筋道を立て、矛盾のないよう論理的に組み立てていく思考法をロジカルシンキングといいます。問題解決能力や提案力の向上など、ビジネスシーンで役立つことが多い思考方法の1つです。
本記事では、ロジカルシンキングの概要や他の思考法との違い、メリット・デメリット、実践方法について解説します。
ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングは日本語では「論理的思考」とも呼ばれています。情報や物事を「根拠」と「結論」に分け、矛盾なく筋道を立てて結論を導く思考法です。
ロジカルシンキングを行う際は、客観的な視点で物事を捉える必要があります。主観的に物事を捉えると、先入観や余計な感情により正しく事象を捉えられない可能性があるためです。物事の因果関係を適切に把握し、要素分解していくためには、バイアスに囚われない客観的な視点が欠かせません。
また、ロジカルシンキングで導き出された考えや意見は、矛盾なく筋道が通っていることが求められます。様々な視点から分析し、解決策を検討しなければなりません。無理や無駄のない合理的な考え方をベースに理論を展開する手法です。
MECEとの関連性
ロジカルシンキングの基本となる考え方がMECEです。「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略語で、「漏れなく、ダブりなく」と訳されることも多く、必要な要素を重複することなく網羅した状態を指します。
ロジカルシンキングを行う際は、課題を的確に整理しなければなりません。課題や前提に漏れや重複があると筋道を立てて物事を考えることが難しくなり、どこかで矛盾が生じ論理が破綻する可能性が生じます。論理破綻を起こさないために、ロジカルシンキングを行う際は、MECEを活用しましょう。
MECEには2つのアプローチ方法があります。1つはトップダウンアプローチです。最初に全体像を把握し、その後に細部を見ていく手法を指します。全体像が明確な場合に効果的なアプローチ方法です。もう1つはボトムアップアプローチ。最初に各要素を拾い上げ、グループ化しながら全体像を導き出す手法です。全体像が不明瞭な場合に利用できます。
ロジカルシンキングを実践するにあたってはフレームワークになぞらえて進めていく方法があります。それでは、フレームワークにはどのような種類があり、どのように活用すれば良いのでしょうか。詳しくはこちらの記事から。
「ロジカルシンキングフレームワーク」については、こちらの記事をご確認ください。
ロジカルシンキングと似た言葉の違い
ロジカルシンキングの他にも、ラテラルシンキングやクリティカルシンキングといった思考法があります。それぞれの違いについて見ていきましょう。
ラテラルシンキングとは、角度を変えて自由に物事を見ることで、新しい発想を生み出すための思考法です。ロジカルシンキングのような論理的思考を垂直思考といいます。ラテラルシンキングは直感的な思考方法なので、垂直施行に対し「水平思考」ともいわれているのです。
例えば、これまで当たり前と思われていた前提を疑い、「他にもあるのでは?」と考えることで新しい発想を導き出します。ロジカルシンキングは既存の概念を元に深く掘り下げますが、ラテラルシンキングは既存の概念には囚われることなく自由な発想で思考を巡らせる手法です。
クリティカルシンキングは前提を疑って思考を巡らす手法で、批判的思考と訳されています。論理的に思考を巡らせる点はロジカルシンキングと同様です。基本的に、ロジカルシンキングの場合は前提条件を検証し直すことはありません。一方、クリティカルシンキングは与えられた前提条件を検証するところから始める点が大きく異なります。
ロジカルシンキングは論理的な思考方法を表す言葉です。対して、クリティカルシンキングはあらゆる事象に対して客観的な視点を持ちながらよく検討することを意味します。クリティカルシンキングについて詳しく知りたい方はこちらの記事から。
「ロジカルシンキングクリティカルシンキング」については、こちらの記事をご確認ください。
ロジカルシンキングの種類と手法
ロジカルシンキングはどのように行えば良いのでしょうか。ここでは、種類や手法について代表的なものを5つ解説します。
帰納法
帰納法とは多くの実例の中から共通点を導き出して結論を求める手法です。できるだけ数多くの実例を挙げることが求められます。実例の中に1つでも誤ったものが入ると、正しい結論を導くことが困難になるため注意が必要です。
共通点から結論を導き出すためには、発想力や想像力が必要になります。
演繹法
演繹法は誰もが正しいと考えているルールや一般論と観察事項を結びつけて、そこから結論を導き出す思考方法です。代表的なものにアリストテレスが提唱した三段論法があります。「大前提」「小前提」「結論」の三段階で展開するものです。
例えば、演繹法では次のような論理が成り立ちます。
- 「大前提」電化製品を動かすには電気が必要
- 「小前提」パソコンは電化製品である
- 「結論」ゆえにパソコンを使うには電気が必要
前提の捉え方や、2つの前提の結びつけ方に誤りがあると理論が破綻するため注意しましょう。
弁証法
弁証法は、Aと相反するBという意見があったときに、どちらも排除せず新たな解決案を導き出す思考法です。1つ目の意見をテーゼ、相反する意見をアンチテーゼといいます。
ビジネスの場では弁証法によって新商品や新アイデアを導き出すことも少なくありません。
例えば、「テレビゲームは楽しいからずっとやっていたい」というテーゼに対し「テレビゲームばかりしていると運動不足になる」というアンチテーゼが生じたとします。このときに「テレビゲームをやめて運動すれば良い」というのではなく「運動できるテレビゲームを作ろう」という考え方が弁証法になるのです。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、問題解決や原因究明などに用いられるもので、左側に解決したい問題や原因などを書き、右側に要素を1つずつツリー状に書き出す手法です。
主に問題解決・原因究明・要素分解・目標達成の際に活用します。
要素分解することで、問題点の全体像が把握しやすくなる点がロジックツリーを作成することのメリットです。多くの要素が出てくるため、どれから先に手を付ければ良いか優先順位を付けやすくなります。
ロジックツリーを作成する際はMECEを意識して作成しましょう。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、ピラミッドの形をしたフレームワークです。結論を主張し、説明・説得したいときに用います。最も重要な結論を頂点に置き、下に根拠を書き込んでいきましょう。
論理と根拠をセットにして説明していく手法で、ピラミッドの階層が下にいくほど、根拠が増え結論が強固になります。ロジカルシンキングを展開するのに適したフレームワークです。
ロジカルシンキングのメリット
ロジカルシンキングのメリットについて見ていきましょう。
客観的視点・分析力の向上
ロジカルシンキングを展開するときは事実とそれ以外とに分解します。主観やバイアスは事実と異なるため、ロジカルシンキングを展開する場合は「事実」とは切り離しておかなければなりません。
そのため、ロジカルシンキングを身につけると、主観を入れず、客観的視点で物事を見ることが可能になるでしょう。
ロジカルシンキングで多くの問題を分析し適切な対応策などを導き出すと、論理的に問題を深堀りして関係性を見定める力が付くため、分析力の向上にもつながります。
問題解決能力や提案力の向上
問題解決のためには、問題を見極めて問題が発生した要因を特定しなければなりません。論理的フレームワークを活用しながら思考することで、問題発生箇所を的確に見つけられるようになるでしょう。
ロジカルシンキングはバイアスや主観を用いることなく、客観的な視点で論理を展開する手法です。身につけると、誰もが納得する筋道を立てた説明が可能になるでしょう。上司や顧客を説得する力が身につくと、提案力向上につながります。
コミュニケーション能力の向上
ロジカルシンキングを身につけると、客観的に自分の意見を話せるようになります。より的確に自分の意見を相手に伝えられるようになるでしょう。加えて、論理的に話を組み立てられるようになるため、相手の意見や考えを理解する能力も向上します。
自分の意見を伝え、相手の話もより深く理解できるようになるため、コミュニケーション能力の向上も期待できるでしょう。
ロジカルシンキングのデメリット
ロジカルシンキングには多くのメリットがありますが、デメリットが全くないわけではありません。ここでは、ロジカルシンキングのデメリットについて解説します。
集めた情報に左右される
ロジカルシンキングは情報を集めてロジックを構築していきます。集めた情報に偏りや誤りがあると、正しい理論が展開できないため注意が必要です。
ロジカルシンキングを行うためには、できるだけ多くの正しい情報を集めなければなりません。
例えば、先に仮説を立てて事例を集める際に、「仮説を正しいと証明するための事例」ばかり集めてしまうことがあります。これでは正しい理論を展開することは困難です。
偏りを無くすためには、幅広い事例を集めるよう意識しなければなりません。
手法が限定されている
ロジカルシンキングは思考の展開方法に決まった型や手法があります。そのため、思考を巡らせる際にそれ以外の方法を試さなくなる点はデメリットです。
ロジカルシンキングでは問題が解決できない、思ったような結論が導き出せない、といった場合はロジカルシンキングの手法にこだわらず、他の手法でも思考を巡らせてみると良いでしょう。
結論と現実が乖離することがある
ロジカルシンキングは論点を単純化する手法です。そのため、場合によってはロジカルシンキングで導き出した結論が、現実とかけ離れてしまうことがあります。
現実はそれほど単純でないこともあるでしょう。論理的に導き出した結論が、実践でも可能かどうか検討してみなければなりません。
ロジカルシンキングは前提条件を検討しないため、そもそも前提が誤っていた場合、論理が正しく展開できないケースがあります。
全ての事象をロジカルシンキングのみで解決できるわけではありません。場合によっては、他の手法と組み合わせることも検討してみましょう。
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ロジカルシンキングの実践方法
ロジカルシンキングはどのように実践していけば良いのでしょうか。ここでは、ロジカルシンキングの実践方法について解説します。
仮説を検討する
ロジカルシンキングを実践する場合、仮説検証が有効です。
まず、何かに対する仮説を立てます。例えば、ある問題を解決するにはどうすれば良いか悩んでいる場合、それに対して1つの仮説を立てます。仮説を検証するためには多くの事例を集めなければなりません。集めた情報を元に検証を行い、仮説が正しいかどうかを証明しましょう。
仮説が間違っていた場合は、新たな仮説を立て再度検証を行います。仮説に基づいて情報収集するため、無駄なく効率良く情報を収集できるでしょう。
仮説検証を行うことで、仮説を立てる力、情報収集力、検証力などの向上につながります。なお、検証するために、検証可能で具体的な表現で仮説を立てるようにしましょう。
インプットからアウトプットまでの流れを繰り返す
ロジカルシンキングを鍛えるためには、日常的に情報をインプット・アウトプットすることが大切です。
世の中には多くの情報が溢れています。自分が手に入れた情報を周囲の人に話す、SNSに投稿するなどの手法でアウトプットしてみましょう。その際、情報に余計なバイアスを入れないためにできるだけ客観視することを心がけましょう。人に分かりやすく伝えるためには、情報を「必要なもの」と「不要なもの」に分けて整理するなど、工夫する必要があります。
インプット・アウトプットを日々繰り返すことで、ロジカルシンキングに必要な客観視の方法や情報を論理的に整理する力が身につきます。
話し方から変えていく
普段の話し方を変えることでも、ロジカルシンキングが身につきます。必要な言葉のみを使い、簡潔に話すよう意識してみましょう。ロジカルシンキングを行う際は、不要な情報を削ぎ落とし、必要な情報だけで論理を組み立てなければなりません。普段の会話でも、いらない情報を削ぎ落とし、結論から伝えることを意識してみましょう。
ロジカルシンキングは、相手に対して説得力のある説明ができるようになる手法です。相手にとって、分かりやすい言葉を利用しなければこちらの言いたいことは伝わりません。説得力向上のためにも、相手が理解しやすい言葉を利用する習慣を身につけると良いでしょう。
その他のロジカルシンキングの鍛え方として、例題を通して考え方を培っていくという手法もあります。ロジカルシンキングの例題について、 詳しくはこちらからどうぞ。
「ロジカルシンキング例題」については、こちらの記事をご確認ください。
ロジカルシンキングの注意点
ロジカルシンキングは多くのメリットがありますが、万能ではありません。ここでは、ロジカルシンキングを採用する際に把握しておきたい注意点について解説します。
結果に固執しない
ロジカルシンキングはあくまでも考え方の1つでしかありません。論理的思考で導き足した答えは正論なことが多いですが、結果にこだわり押し通そうとするあまり、人間関係にひびが入るケースがあります。
課題解決方法としては論理的に正しくとも、相手が感情的に受け入れられないこともあるでしょう。 ロジカルシンキングで導き出した結果にこだわるあまり、コミュニケーションがおろそかになると本末転倒です。
ロジカルシンキングは手段の1つでしかありません。最終的な目的によっては、導き出した結論を相手に伝えないことも検討しましょう。
現実に即していない前提条件を立てる可能性がある
ロジカルシンキングを有効に活用するためには、現実に即した前提条件を立てなければなりません。誤った前提条件で仮説を立てると、現実的な結論に結びつかないことがあります。
こうしたことを防止するためには、事前に前提条件に誤りがないことを確認しておきましょう。
スピーディーな決定や行動には向かない
ロジカルシンキングを活用すると、情報収集や分析に時間がかかる場合があります。「情報が手元にない」「分析に時間がかかる」といったケースでロジカルシンキングを採用すると、すぐに行動を起こすことができません。
分析にかける時間を短縮できるようであれば問題はありませんが、情報収集をする時間もなく、すぐに何かを決定しなければいけない場合は、ロジカルシンキング以外の手法を検討しても良いでしょう。
ロジカルシンキングを企業文化として取り入れる方法
ロジカルシンキングはビジネスの場において大変役に立つ思考法の1つです。企業文化として取り入れたいと考える担当者の方もいるでしょう。ここでは、企業文化として取り入れる方法について解説します。
考えの言語化を促す
ロジカルシンキングを鍛えるためには、自分自身の考えを言語化する必要があります。頭の中にある考えをきちんと言葉で表現すると、自分の思考を整理できます。
自分自身の考えを言語化するために、業務内容や従業員の考えを言葉で表現しアウトプットする場を設けましょう。例えば、「業務内容をメールで上司に報告する」「今日のチームの進捗情報をメンバー全員で共有する」などが考えられます。このように、従業員が言語化したものを管理者がチェックする体制を整えると、ロジカルシンキングの定着が近づくでしょう。
フレームワークを取り入れ実践する
ロジカルシンキングを鍛えるためには、フレームワークを取り入れると良いでしょう。ロジックツリーやピラミッドストラクチャーなどのフレームワークを活用する課題を出します。それに基づいて問題解決や課題解決などの行動まで行ってもらい、その結果や活用方法に対してフィードバックを行いましょう。
実際にビジネスの現場で多くの従業員がフレームワークを活用することで、ロジカルシンキングが定着するでしょう。
研修によって考え方を身につける
ロジカルシンキングについての研修を行い、体系的に学ぶことも検討してみましょう。研修は短期間で、多くの知識を学ぶことが可能です。
研修プログラムには、「ロジカルシンキングとは何か」といった基本を学ぶものから、「フレームワーク思考」「ビジネス現場での具体的な実践方法講座」といった実践的なものまで、など様々な種類があります。自社の規模や体制にあった研修プログラムを活用してみましょう。
また、ロジカルシンキングを社内に定着させるためには、内容を理解し社内の教育や制度を変えていく必要があります。ロジカルシンキングを身につける研修にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しくはこちらの記事から。
「ロジカルシンキング研修」については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
ロジカルシンキングとは、物事に筋道を立て論理的に組み立てていく思考方法です。
主な手法には、多くの事例から共通点を見つけ出す帰納法、一般論と観察対象を結びつけて結論を導き出す演繹法、矛盾する2つの意見があった場合にどちらも排除せずより新たなアイデアを導き出す弁証法があります。
情報を整理するには、ロジックツリーやピラミッドストラクチャーなどのフレームワークを利用してみましょう。
問題解決力や分析力の向上につながるためメリットの多いロジカルシンキングですが、万能ではありません。場合によってはロジカルシンキングだけに囚われず、他の思考方法も活用してみましょう。
タレントパレットは多くの人材データを一元管理できるシステムです。採用管理・労務管理だけでなく、人事データ分析、人事評価、人材育成、スキル管理、研修管理、健康管理など多くのことに利用できます。また、ロジカルシンキングなどの研修を行う場合は、研修受講履歴を本人と紐づけて残すことが可能です。社内の研修やその成果を個人の記録として残せるシステムをお探しでしたら、タレントパレットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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