労働生産性の基礎知識|計算式から具体的な改善方法まで解説


労働生産性の基礎知識|計算式から具体的な改善方法まで解説

労働生産性の向上は、企業の業績にかかわる重要な課題です。しかし、生産性との違いや計算式などについてよく知らない場合もあるのではないでしょうか。この記事では、労働生産性に関する基礎知識を網羅的に解説しています。労働生産性の向上に取り組む際の参考にしてください。


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労働生産性とは何か

労働生産性は、労働に対する成果の度合いを示す指標です。基本的な概念や計算方法について解説します。


労働生産性の基本的な概念

労働生産性とは、労働者1人当たり、または労働時間1時間当たりに生み出される成果(売上、付加価値、生産量など)を数値で表した指標です。これにより、企業が労働をどれだけ効率的に活用しているかを評価できます。


たとえば、少ない労働時間で大きな成果を達成している場合、労働生産性が高い状態です。労働生産性の向上は、企業の成長や競争力を高めるために欠かせません。


労働生産性を計算する方法

労働生産性の計算には、「労働生産性=成果÷労働投入量」という式を使います。この計算式は、労働者1人当たり、もしくは労働時間当たりにどれだけの成果を生み出したかを表したものです。


「労働生産性が向上する」とは、同じ労働投入量でより多くの成果を上げる、または労働投入量を減らして同じ成果を維持することを意味します。


労働生産性の計算方法は2つある

労働生産性の計算方法は、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類です。それぞれの計算方法や特徴を解説します。


物的労働生産性|生産量で測る計算方法

物的労働生産性は、生産物の量や数で労働効率を測る方法です。製造業のように、目に見える成果がある業種でよく使われます。


計算式は「物的労働生産性=生産量÷労働者数」または「物的労働生産性=生産量÷(労働者数×労働時間)」です。


この方法は、物価の変動や技術の進歩などに影響されず、純粋な労働効率を評価できます。金額ではなく物量で労働生産性を把握したい場合に向く方法です。


物的労働生産性の計算例

物的労働生産性は、生産量を労働投入量で割って計算します。たとえば、10人の社員が2時間で50個の商品を生産した場合の労働生産性は以下の通りです。


労働生産性

=生産量÷(労働者数×労働時間)

=50個÷(10人×2時間)

=2.5個


付加価値労働生産性|粗利をもとにした計算方法

付加価値労働生産性では、企業が新たに生み出した価値である付加価値をもとに労働の効率を測ります。計算式は「労働生産性=付加価値額÷(労働者数×労働時間)」です。


一般的に、付加価値は売上から原材料費や外注費などの諸経費を引いた粗利で計算されます。付加価値労働生産性は、企業の収益性や競争力を分析するために幅広い業種で使用されます。


付加価値労働生産性の計算例

5人の労働者が40時間働き、50万円の売上があったとします。外部購入費用として10万円かかった場合の計算例は以下の通りです。


付加価値額

=売上高-外部購入費

=50万円-10万円

=40万円


付加価値労働生産性

=付加価値額÷(労働者数×労働時間)

=40万円÷(5人×40時間)

=5,000円/人・時間


労働生産性の向上が重要な企業課題である理由

労働生産性は経営に直接影響を与える指標であり、その向上は企業にとって重要な課題です。労働生産性が向上すると、企業利益が増える一方、コスト削減が期待できます。経営の効率化は企業の財務を強化し、競争力を高めるからです。また、質の高いサービスを迅速に提供できることで顧客満足度も向上し、顧客獲得につながります。


人材活用で労働生産性を向上させる方法

労働生産性を向上させる施策は、大別するとハード面とソフト面の2つです。ここでは人的資本や組織文化などのソフト面を改善して労働生産性を高める方法を解説します。


適材適所の人材配置

適材適所の人材配置は、企業の生産性向上に大きく寄与します。各社員の役割や責任を明確にすることは、無駄な業務を減らし、職務への意識を高めるうえで効果的です。社員は自分の役割に集中でき、組織全体の効率が向上します。


効果的な人材配置を実現するには、社員に対応する人材データを一元的に管理することが重要です。たとえば、スキルや経験年数、資格などの情報をまとめて管理することで、最適な異動シミュレーションが可能になります。


人材データを活用し、適切な配置を行うことで、企業はより多くの付加価値を生み出すことができるでしょう。


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人事評価の公平性を高める

人事評価への納得感が増し、社員のモチベーションが向上することで、労働生産性の向上につながります。そのためには、評価の基準を明確にし、全社員に共有して人事評価の透明性を高めることが重要です。


具体的な方法の1つに、評価者の育成があります。人事評価は個人の主観が入りやすいため、評価のブレを防ぐために評価者のスキルを向上させる必要があるためです。


また、評価制度の定期的な見直しも欠かせません。働き方や業務の変化に応じて評価制度を調整することで、公平で納得のいく評価を実現できます。


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効率的な勤務形態への更新

長時間労働は社員の健康に悪影響を及ぼし、労働生産性の低下を招く可能性があります。残業による疲労で社員のパフォーマンスが下がり、さらに残業が増えるという悪循環に陥るケースもあるでしょう。こうした状況を改善するには、労働時間を適正に管理する仕組みやITツールの導入が効果的です。


また、テレワークやフレックスタイムなど、柔軟な勤務形態を導入して労働生産性を高める企業もあります。社員が自分のライフスタイルや業務内容に合った方法を選べると、結果として本来の能力を発揮しやすい傾向があるためです。


人材育成の強化

労働生産性を向上させるためには、スキルアップを目的とした研修の充実が重要です。社員のスキルアップによって組織全体の労働生産性が向上し、結果的に企業の競争力を強化できます。


施策を実施する際は、OJTによる実践的な学びや、専門的な知識を持つ講師による外部講習、eラーニングを活用した自主学習など、色々な方法を組み合わせることが大切です。


社員が現在どのような成長段階にあるか把握しながら、人事育成施策を実行するとよいでしょう。


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風通しのよい組織を作る

労働生産性を向上させるためには、風通しの良い組織を作ることが重要です。社員が安心して意見を発言できる環境を整えることで、建設的な議論が活発になり、効率的な問題解決が進むようになります。


また、社会的感受性を高める社内文化を育てることも労働生産性に寄与します。相手の気持ちや望みを察知する力を持つ社員が多いと、コミュニケーションがスムーズになり、チームワークが強化されるためです。チームワークは、相乗効果で生産性を高める基盤となります。


業務改善で労働生産性を向上させる方法

日々の業務を効率化すれば、自ずと労働生産性も向上できます。代表的な方法は、業務改善とICT活用、設備投資の3つです。


業務プロセスの見直し

業務の3M(ムリ・ムダ・ムラ)を見直すと、労働生産性の向上が期待できます。社員に協力してもらい、全社的に業務の棚卸しをして状況を把握していきましょう。


状況を把握できたら、ボトルネックとなっている業務の見直しや、業務の平準化・標準化、業務フローの最適化などを進めます。コア業務以外の対策では、アウトソーシングの活用も効果的です。


ITツールの導入・更新

ITツールやシステムの導入により、手作業や単純作業を自動化することで、業務効率化やDXを目指せます。たとえば、人事部がタレントマネジメントツールを導入すれば、社員のスキルやパフォーマンスのデータを一元管理でき、分析・管理業務の労働生産性が向上するでしょう。


こうしたITツールは、客観的なデータに基づく意思決定も促進します。過去の経験や勘に頼ることなく、迅速かつ正確な意思決定が可能です。


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機械やオフィス設備などの導入・更新

設備投資によって労働生産性を高める方法も効果的です。具体的には、ロボットや自動化設備の導入を通じて、生産ラインの自動化や無人化を進める方法があります。


また、照明や空調、換気、防音などのオフィス設備を整えることで、社員が快適に働ける環境を提供し、間接的に労働生産性を高める方法も有効です。


企業が労働生産性の向上に取り組むメリット・目的

企業が労働生産性の向上に取り組むと、業績向上のほかにも多くの効果を見込めます。


企業の競争力を高められる

労働生産性の向上を実現すると、少ないコストで高品質な商品やサービスを提供できるようになります。結果として、価格面や品質面で他社との差別化を図り、市場での競争力を高めることが可能です。


競争力が高まれば収益は伸びます。そこで得た資金を設備や人材に投資して労働生産性を高める好循環が生まれるケースも少なくありません。


コストを削減できる

労働生産性を高めることで、社員の労働時間を短縮し、人件費を削減できます。また、無駄な作業や非効率なプロセスを見直すことで、たとえば水道光熱費や資材などのコスト削減も可能です。このようにして削減されたコストを新たな投資に回すことで、企業の成長を促進できます。


限られた人員で大きな成果を上げられる

労働生産性を高めることは、人材不足の解消につながります。たとえば、ITツールやロボット、AIなどによって人の業務を代替できれば、限られた人員でも従来以上の成果を上げることが不可能ではありません。


このメリットは、労働力不足が進む日本では特に大きいといえるでしょう。企業の競争力を維持しつつ、持続可能なビジネス運営を目指せます。


長時間労働の是正やワークライフバランスの改善を実現できる

労働生産性が高まると、定められた業務を就業時間内に完了できるようになり、残業や休日出勤を減少させられます。社員のワークライフバランスが改善されると、リフレッシュの時間や自己啓発の時間などが取れるため、パフォーマンス向上も期待できるでしょう。


働き方改革以降、長時間労働の是正やワークライフバランス向上は、多くの企業で喫緊の課題となりました。この課題に、企業の競争力を確保しながら取り組めます。


離職率の低下や優秀な人材の確保につながる

労働生産性が高い職場を目指すプロセスでは、社員が能力を発揮しやすい職場環境を整え、スキルアップの機会を与えることになります。こうした施策は、社員のモチベーションや従業員満足度を高める施策とほぼ変わりません。


したがって職場の労働生産性の向上施策は、優秀な人材の定着や離職率低下のための施策と平行して取り組めるでしょう。施策の結果、社員が生き生きと働けるようになると、それが企業の魅力となり、採用活動にも好ましい影響を与えます。


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データでみる労働生産性

自社の労働生産性を評価する際には、国や業種別の平均値や傾向を知っておくことが欠かせません。国や公益団体のデータを交えて解説します。


国別の労働生産性

2022年の日本の時間当たり労働生産性は、OECD加盟38カ国中30位でした。労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、52.3ドルです。


この調査において、日本は1970年以降、最も低い順位に落ちました。労働生産性の改善は急務といえるでしょう。


なお、他国の状況を幾つか挙げると、2024年に名目GDPで日本を抜いたドイツは11位(87.2ドル)、隣国の韓国は33位(48.8ドル)、アメリカは9位(89.8ドル)でした。


※参考:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2023」


都道府県別の労働生産性

日本の都道府県別の労働生産性では、2015年の従業員数1人当たり名目付加価値額の調査があります。調査によると、トップは東京都の1,080万円でした。首都圏近郊の県や、名古屋周辺も全国平均より高くなっています。


労働生産性は地域の産業構成や公的支援によって異なるため、傾向は一概に説明できません。しかし一般的には、経済が自立している地域は非営利の公的活動が少ないため、労働生産性が高くなる傾向にあります。


出典:公益財団法人 日本生産性本部「地域別に見た労働生産性」


業種別の労働生産性

業種別の労働生産性の場合、日本においては、金融・保険業、不動産業、電気・ガス業などが高い労働生産性を示しています。これらの業界は資本生産性(生産のために購入した機材などが効率的に使われている割合)と、企業集約度(社員1人当たりに対する企業の資本)が高いことが共通です。


※参考:中小企業庁「中小企業の生産性分析」


事業規模別の労働生産性

日本の事業規模別の労働生産性をみると、業種によって傾向が異なります。まず、製造業では、中小企業よりも大企業が高い労働生産性を持っている状態です。一方、非製造業では、中小企業が大企業を上回る業種が少なくありません。理由としては、設備投資の規模や効率性が影響していると考えられます。


自社の労働生産性を活用するためのステップ

労働生産性を経営や業務に活用していくには、「現状把握→ボトルネックの発見→施策の実施とKPIの設定」という段階を踏むことが必要です。各ステップを解説します。


現状を可視化する

はじめに必要になることが現状把握です。事業所や部署ごとに売上や利益、作業時間などを集計し、労働生産性を計算します。労働生産性には基準となる数値がないため、同じ方法で定期的に集計し、自社のデータを比較していきましょう。


前年、前期、前四半期といった異なる期間で比較分析すると、現在の労働生産性がどの程度向上しているかを可視化できます。


ボトルネックを発見する

現状を把握できたら、無駄な業務や重複している業務など、労働生産性を下げているボトルネックを探し出します。たとえば、人材活用の分野であれば「適材適所の人材配置ができていない」「社員の成長段階に合った研修ができていない」といった要因が見つかるかもしれません。


こうしたボトルネックの発見にはITツールの活用が効果的です。たとえば、社員に関するデータを一元化できるITツールがあれば、人材に関するあらゆるデータをリアルタイムで総合的に分析できます。


具体的なKPIを設定する

労働生産性の改善を実施する際は、具体的なKPI(中間目標)を設定しておくとよいでしょう。労働生産性の改善はKGI(最終目標)に近い目標ですので、個々の改善策の評価には不向きであるからです。


たとえば、人事関連であれば従業員満足度や、業務と能力のマッチング率などがKPIの候補となるでしょう。施策ごとにKPIを設定し、定期的にモニタリングすることで、組織全体のパフォーマンス向上を図れます。


まとめ

労働生産性は企業活動の効率を測るうえで重要な指標です。業務プロセスの見直しやITツールの導入など、自社に合った方法で改善していきましょう。


労働生産性について課題をお持ちであれば、株式会社プラスアルファ・コンサルティングにお任せください。HR企業としてタレントマネジメントツール「タレントパレット」を提供しており、大企業をはじめとして数多くの導入実績があります。コンサルティングの知見もあるため、労働生産性についての課題解決についてもご相談ください。


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