労務費とは製品の生産にかかる人件費!5つの内訳や計算方法について解説


労務費とは製品の生産にかかる人件費!5つの内訳や計算方法について解説

労務費は製品の製造や利益に大きな影響を与えるので、特に製造業では重要な管理項目です。本記事では人件費との違いや労務管理の内訳、計算方法について解説しています。労務費の管理に悩んでいる方や、いつも人件費と混同してしまう方は、ぜひ参考にしてみてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

「労務費と人件費の違いを知りたい」「労務費の求め方が分からない」といったお悩みを抱えていませんか。

労務費は、企業活動における大切な管理項目の1つです。特に建設業や製造業では、労務費が企業におけるプロダクトの生産や利益に与える影響は大きいため、正確に管理する必要があります。さらに働き方改革の促進によって、より適正な管理が求められるようになりました。

そこで本記事では、以下の内容を解説します。

労務費の内訳
算出方法
労務費率について

労務費と人件費・外注費との相違点も理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

労務費とは?人件費や外注費との違いも解説

?人件費

労務費は建設や製造分野で非常に大切な管理項目なので、正しく理解する必要があります。この章では、労務費について以下の3つのポイントで説明します。


  • 労務費とは
  • 人件費との違い
  • 外注費との違い


労務費と人件費・外注費の相違点に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。


労務費とは


労務費は主に建設業や製造業で発生する人件費の1つで、製品造りに要する労働力です。雇用形態に関係なく、プロダクト製作に携わる社員の給料や手当はすべて労務費に当てはまります。そのため「製造部門に所属する社員の人件費」と考えると分かりやすいでしょう。


労務費は「労働力の消費」として生じる費用と考えられており、材料の消費と同様に扱うので製造原価に算入されます。プロダクトの生産に生じる人件費は、原価管理にとって大切な費用です。


人件費との違い


人件費は給料や賞与など社員に支給される経費を意味し、一般管理費・労務費・販売費の3つが含まれています。営業・販売に携わる社員の人件費は販売費、管理業務に生じる費用は一般管理費です。アパレルメーカーで例えると、服の製作者に払う労賃は労務費です。


一方で販売員の給与は販売費に、店主の給料は一般管理費に当てはまります。労務費はプロダクト生産の担当者に生じる給料・賞与のみに限られるのに対し、人件費は社員に関わる費用全般に当てはまるので適用範囲が異なります。


外注費との違い


労務費は、以下の5つの項目から構成されています。この章では、各内訳を詳しく説明します。


  • 賃金
  • 雑給
  • 従業員賞与手当
  • 退職給付費用
  • 法定福利費


労務費に含まれる費用について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。


賃金


賃金とは、製品造りに携わる社員の労働に対する報酬を意味します。現場で勤務するスタッフのほかに、現場監督や事務員も対象です。役員が現場に出ているケースでは、役員報酬と賃金を分けて計上しなければならないため気を付けましょう。


賃金の中には、時間外労働や休日出勤などの割増賃金分も入っています。また、賃金は正社員や契約社員に支払われる月給制の給料のみが当てはまり、アルバイトやパートの分は含まれません。


休日出勤について詳しく知りたい方は、別記事「法定休日出勤」をあわせてご確認ください。


雑給


雑給は、プロダクトの製作に従事するアルバイトやパートタイマーなどの臨時雇用者に対して払う労賃です。時給で勤務する社員のみが雑給に該当し、割増賃金が生じる場合はそのまま計上します。例えば、日雇いで1日のみ現場で働くスタッフの給料も雑給に含まれます。


また、製造以外の社員に対して払う労賃は対象外です。正社員や契約社員の給料とは、区別して管理するので注意しましょう。


従業員賞与手当


従業員賞与手当とは、プロダクト製作を担当する社員に対して払う賞与や各種手当です。賞与は年3回以下の支給で、あらかじめ金額が決まっていない手当を指します。臨時で支給される結婚祝い金や災害見舞金などは、従業員賞与手当に当てはまりません。


賞与の支給は法律で義務づけられているわけではありませんが、就業規則などで規定している場合は支払う必要があります。各種手当には、通勤手当や扶養手当・家族手当・家賃補助が該当します。残業手当は賃金や雑給として判断されるので、従業員賞与手当に当てはまりません。


退職給付費用


退職給付費用は、製品造りに携わる社員の退職に備えて積み立てておく費用を指します。役職や勤続年数に応じて、積み立てる金額を変える企業もあります。製造に携わらない社員の分は、労務費として認められていません。


退職金制度を導入している企業にとって、退職金は費用が生じていると捉えます。社員の在籍期間が長くなるほど退職給付の支払額は増えるため、必要な積立金を見積もって備えておきます。

関連記事:会社都合退職と自己都合退職の違い! 解雇におけるデメリットや注意点を解説

法定福利費


法定福利費は、以下のような各種保険料の企業負担分を指し、プロダクトを造る担当者の分のみが含まれます。


  • 雇用保険料
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 労働保険料
  • 介護保険料
  • 労災保険料
  • 子ども・子育て拠出金


企業の負担は増えますが、社員が安心して勤務するために必要な費用です。なお社員旅行などの福利厚生は、社員の健康やモチベーション維持を目指して企業独自に導入するため、法定福利費に含まれません。


関連記事:労務管理の重要性とは?就業規則・労働時間などを管理して業務改善を目指そう

労務費の種類


労務費は、直接労務費・間接労務費の2つに分類されます。それぞれ算定方法が異なるため、まずは内容を理解しておく必要があります。


この章では、直接労務費・間接労務費の各特徴を詳しく説明するので、1つずつ見ていきましょう。


直接労務費


直接労務費とは、直接工へ支払われる労賃です。製造業において、プロダクト製作に直に関与する担当者を直接工といい、正社員のみならず契約社員やパート・アルバイトも含みます。


労務費に当てはまる業務は、機材の組み立てやラインでの検査などです。例えば、機材の加工業務だけを行った場合に払う労務費が、直接労務費に当てはまります。


仮に清掃などの間接的な業務を依頼したときは、間接労務費として計上します。このように、直に携わる業務以外は間接労務費と判断されるため、注意して勘定しましょう。


間接労務費


間接労務費とは、直接労務費に当てはまらない費用のすべてです。機械の修理や清掃など、プロダクト造りに間接的に携わるスタッフを間接工といい、間接労務費の割合を大きく占めています。間接労務費には、以下のような内容があります。

項目

内容

間接作業賃金

直接工が製品造りに直に関与しない業務を行なったときに生じる賃金

間接工賃金

間接工が受け取る給料

手待賃金

作業ができない状況のときに支払われる賃金

休業賃金

社員の休業時に生じる有給休暇や休業手当などの賃金

給料

現場の監督者や事務員に対して払う労賃

従業員賞与手当

賞与・住宅手当・通勤手当などの各種手当

退職給与引当金繰入額

社員の退職時に支給される退職給与引当金の繰入額

福利費

健康保険料・厚生年金保険料・労働保険料などの企業負担分


直接工が行う間接的なタスクや各種手当・手待賃金などは、間接労務費と判断されます。直接工に関係した内容がすべて直接労務費になるわけではないので、注意しましょう。


【種類別】労務費の計算方法


労務費は、直接労務費と間接労務費を別々に勘定する必要があります。この章では、以下2つの算定方法を説明します。


  • 直接労務費の求め方
  • 間接労務費の求め方


企業の利益を勘定するのに必要な方法なので、ぜひ参考にしてみてください。


直接労務費の算出方法


直接労務費の勘定を行うには、まず「賃率」から求めます。賃率とは、1時間あたりに生じる賃金です。同時に複数の生産を担当する社員もいるため、直接作業時間で賃金を割って製品ごとにかかった費用を勘定してから、直接労務費を求める流れが一般的です。


賃率は、以下のように算定が可能です。


賃率=直接工の賃金÷直接作業時間


賃率を算出したら、製造に要した時間とかけて直接労務費を求めます。


直接労務費=賃率×製造に要した時間


直接労務費を算出するには、製品造りに直に関与した時間が必要なので、記録しておきましょう。直接工が、間接的な業務を担当するときもあるので注意が必要です。


間接労務費の算出方法


間接労務費とは、直接労務費に当てはまらないすべての費用です。直接労務費と労務費が分かっている場合は、引き算で簡単に勘定できます。労務費の勘定方法は、以下のとおりです。


間接労務費=労務費-直接労務費


間接労務費は、直接労務費に含まれないすべての項目を合算して勘定することも可能です。しかし、直接工が間接的な業務をしたときは、間接労務費に加算しなければなりません。合算の抜け漏れが不安な場合は、引き算の方が正確な算定が可能でしょう。


労災保険料を算出するには労務費率の計算が必要


建設業などにおいて労災保険料を勘定するには、労務費率を知っていなければなりません。一般的な計算式とは求め方が異なりますので、しっかり押さえておく必要があります。


この章では、労務費率の定義や数値・労災保険料の勘定方法について説明します。


労務費率とは


労務費率とは、建設業において労災保険料を勘定するときに使われる値を表します。厚生労働省が、以下のように労務費率を定めています。

事業の種類

労務費率

水力発電施設・ずい道等新設事業

19%

道路新設事業

19%

舗装工事業

17%

鉄道又は軌道新設事業

24%

建築事業

23%

既設建築物設備工事業

23%

機械装置の組立て又は据付けの事業(組立て又は取付けに関するもの)

38%

 機械装置の組立て又は据付けの事業(その他のもの)

21%

その他の建設事業

24%

引用元:厚生労働省|令和4年度の労災保険率について


厚生労働省は3年に1度「労務費率調査」を行って建設業における賃金実態を調査し、労務費率を定期的に更新しています。労災保険料の勘定には最新の労務費率を把握する必要があるため、定期的に確認しましょう。


労災保険料の算出方法


建設業などにおける労災保険料は、以下の計算式で算定できます。


労災保険料=賃金総額(請負金額×労務費率)×労災保険率


一般的には「賃金総額×労災保険率」で求められますが、建設業などでは複数の請負によって事業が行われるケースも多く、正確な人数や作業時間の把握が困難です。賃金総額が求めにくいため、一般的な計算式で労災保険料を勘定するのは容易ではありません。そのため、賃金総額の代わりに労務費率を使用した算定が認められています。


工事内容によって労務費率が細かく定められているため、担当する事業の数値を確認して正しく計算しましょう。

労務費のまとめ


労務費は、主に建設業や製造業で生じる人件費の1つで、プロダクトを造り出すためにかかる労働力を指します。労務費を正確に把握することで製品にかかっているコストを見直せるので、しっかりとした管理が求められています。


また、労務費は直接労務費と間接労務費の2つの種類があります。直接労務費は製品を生産するために必要な労働力に直接かかる費用であり、間接労務費は製品生産に間接的に関わる費用です。労務費率や労災保険料の算出に必要になるため、適切な管理が求められます。


労務管理部門は、労務費の管理以外にも職場環境の整備を行うなど業務が多岐にわたるので、負担増加の可能性があるでしょう。システムツールの利用は、業務の効率化を目指す上で有効な手段です。タレントパレットには、以下のような労務管理の業務をカバーできる機能があります。


  • 各種手続きがオンラインで完結
  • 人事評価シートのシステム化
  • 健康診断やストレスチェックの管理
  • 研修やeラーニングの受講管理
  • 社員へのアンケート作成


労務管理の負担を減らし生産性を上げたい企業は、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。



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