KPI(Key Performance Indicator)とは?
KPIは、企業や組織の目標管理における「重要業績評価指標」のことで、最終目標(KGI)を達成するための中間指標として設定されるものです。目標管理には、KGI(Key Goal Indicator:最終目標)、CSF(Critical Success Factors:重要成功要因)、KPI(Key Performance Indicator:需要達成度指標)の3つが含まれ、それぞれが異なる役割を果たします。
たとえば、KGIが「年間1億円の売上」であれば、売上を達成するために必要な商談数や受注率が個人のKPIとして設定されるでしょう。このようなKPIをうまく活用することで、目標達成に向けた進捗状況を把握し、計画が適切に進んでいるかを確認できるようになります。
KGI(Key Goal Indicator)とは?KPIとの違いは?
KGIは、日本語で「重要目標達成指標」と訳され、最終的な達成目標を具体的な数値で表したものです。KGIは期間内に「何をどれだけ達成するか」を明確に設定します。
「業界シェアで優位になる」という抽象的な目標ではなく、前述のように「年間1億円の売上」といった具体的な数値をKGIとして設定します。成果指標として組織活動のKGIを示し、達成するにはKPI(中間指標)の達成が不可欠です。このように、KGIとKPIは相互に関連して、目標達成の基盤を支えます。
CSF(Critical Success Factor)とは?KPIとの違いは?
CSFは、KGIを達成するために必要不可欠な成功の鍵となる要素を指します。日本語では「重要成功要因」と呼ばれ、KPIやKGIと異なり、定性的に検討されることが特徴です。CSFは数値化されるわけではなく、達成目標を具体化するための基盤の役割を果たします。
たとえば、「年間1億円の売上」というKGIなら「毎月コンスタントに売上を上げる」という目標がCSFです。このCSFを具体的な数値に落とし込むとKPIは「毎月850万円の売上」などとなり、その進捗を測定できるようになります。
これから見るべき人的資本KPIとは 人的資本経営に求められる人事データ活用のポイントを解説
KPIと個人目標
組織の目標を達成するためには、経営層と社員が互いに理解し合うことが重要です。そのため、KPIを個人目標にまで具体的に落とし込むことが必須です。しかし、実際には多くの企業で個人のKPI設定が十分に行われていないことが課題でしょう。
個人目標が組織全体のKGIやKPIとしっかり結びついていると、社員はKPIを「自分の目標」として捉えやすくなります。また、企業全体の目標や部門・チームのKPIとのつながりを社員が正しく理解し、それを自分の行動に反映できるようになると、モチベーションが向上し、主体的な取り組みが生まれるようになります。
KPIのアクションプランとは
KPIのアクションプランは、 KPIを達成するために必要な具体的な行動計画を意味します。これは、戦略マップで定めたKGI(最終目標)やKPI(日々の指標)を実現するための具体的な手段です。アクションプランを設定することで、部門長やチームメンバーが目標に向けて共通の理解を持ち、効果的に連携できるようになります。
さらに、社員の目標管理においては、KPIを個人目標に関連付けることで、取り組みの質を向上させることが可能です。KPIを達成するためには、事前にしっかりと計画を立て、計画通りに実行することが成功の鍵といえます。
個人目標のKPIのアクションプランへの設定方法
個人目標のKPIをアクションプランに設定するには、管理者や部門構成メンバーとの連携が必須です。基本の流れは、組織全体の目標を経営層が設定し、それを各部門に伝達します。その後、部門目標をもとにセクションマネージャーが部下に意図を共有し、部下が具体的な行動プランとして個人目標を策定します。
KPI設定シートにはアクション項目や実施スケジュールの詳細を記載しましょう。また、KPI設定シートとアクションプランシートを別々に管理し、両者の関係性を明確にする方法もあります。
KPIを個人目標にするメリット
ここからは、KPIを個人目標に設定することで得られるメリットを4つにまとめて解説します。
個人目標や行動、目標達成プロセスの明確化
KPIを個人目標に設定することで、目標達成までの過程が数値化され、段階的な目標が明確になるメリットがあります。目標達成までの最短ルートを明確にすれば、具体的な行動をしっかり理解しやすくなるでしょう。また、クリアすべき内容が明示されるため、業務遂行の安心感も得られます。
さらに、KPIツリーを活用すれば、KGI達成に向けた個人の行動プロセスがより明確化され、個人目標が組織目標と一体化する形で設定可能です。
評価基準の統一が公平な評価に役立つ
KPIを個人目標の評価基準として活用することで、公平に評価されやすくなるメリットもあります。KPIをMBO(目標による管理)評価に取り入れると、数値を用いた共通認識が得られ、評価に対する納得度が向上するでしょう。定量的な目標設定により、進捗や達成度が測定しやすく、統一基準での評価が実現します。
ただし、KPIのみで評価を行うにはリスクがあるため、数値以外の要素を取り入れることが重要です。そうすれば、バランスの取れた評価を下せます。
業績評価シート記入例を紹介!業績評価の手順や注意点も解説
社員の自発性が育ち、自主的な能力開発につながる
KPIを個人目標に設定することで、受け身ではなく積極的に取り組む姿勢が生まれます。個人目標が会社のKPIとリンクしている場合、成果を出す優秀な人材の育成につながるでしょう。
また、目標達成が評価や業績に直結するため、自尊心が高まり、モチベーションが向上しやすくなることが期待できます。さらに、現状より少し高めに目標を設定すれば、スキル向上への意欲が高まり、自主的な能力開発が促進されやすくなります。
チーム全体のモチベーション向上や組織力強化
KGIとKPIを共有して全員が理解を深めれば、プロジェクトの目的や進め方が明確になり、社員のやる気を引き出しやすくなります。
さらに、目標や進捗を全員で共有すれば、遅れが発生した際も即座に状況を把握でき、迅速に協力体制を構築することが可能です。そうすれば、組織としての結束力が一層高まるでしょう。また、KPIを個人目標に加えてチーム目標として設定すれば、メンバー全員が同じ方向に進みやすくなり、KGI達成率の向上とメンバーのモチベーションアップにもつながります。
これから見るべき人的資本KPIとは 人的資本経営に求められる人事データ活用のポイントを解説
KPIを設定するデメリットと注意点
KPI達成を重視しすぎると、社員の努力やチームへの配慮といった定性的な要素が評価されにくくなる可能性が高まるでしょう。評価の偏りは、社員のパフォーマンスの低下やモチベーションの喪失につながるリスクも伴います。
そのため、KPI設定時には定性的な要素を評価に含める仕組みを併用することが重要です。不明確なKPIは社員に混乱を与え、目標達成を妨げたり意欲を低下させたりする原因にもなります。明確かつ適切な設定が不可欠です。
また、KPIを個人レベルで細かく設定するよりも、部門単位やKGIの理解を優先する方が、管理が容易で効果的な場合もあります。
KPIの具体例を解説
KPI導入前に具体例を知っておくことで、KPIの設定の仕方や基準が理解しやすくなり、効率的に導入できるでしょう。各部署や職種ごとに適切なKPI設定をすることが重要です。
営業職のKPI具体例
営業職では、売上に関するKPIが多く設定されており、企業の収益に直結するため重要な役割を担っています。部署全体および個人単位でKPIを設定することで、具体的な目標が明確になり、営業活動の効率と成果を高めることが可能です。
たとえば、売上金額、顧客単価、新規顧客獲得数、新規リード数、見込み顧客の人数、商談数、受注数、受注率、アポイント数、架電数といった指標がKPIの具体例として挙げられます。
人事職のKPI具体例
人事職は担当業務が幅広いため、設定するKPIも分野ごとに異なります。たとえば、人材採用に関するKPIとしては、応募者数、選考通過率、辞退者数・率、内定承諾率、採用充足率、1人当たりの採用コスト、採用後の在職率や在職期間、採用手法ごとの費用対効果などが挙げられます。
一方、人材育成のKPIでは、スキルテストの合格数、研修コスト、研修満足度、管理職やリーダーの輩出数が代表例です。また、人材管理においては、新卒・中途比率、外国人社員比率、非正規雇用比率、女性管理職比率などが含まれます。
そのほか、労働生産性に関するKPIとして、人件費、1人当たりの生産高、人員構成、正社員と非正規雇用の人件費率などもあります。
マーケティング職のKPI具体例
マーケティング職では、商品やサービスを販売するための戦略立案が主な役割となり、プロジェクトや施策ごとにKPIの設定が異なります。特に昨今注目されるWebマーケティングでは、PV数や回遊率といったオンライン特有の指標も重要です。
KPIの具体例としては、受注数、受注率、申込み数、新規顧客数、コンバージョン数(CV)、コンバージョン率(CVR)、商談数、名刺交換数、アポイント数、購入単価などが挙げられます。
Web関連なら、ユニークユーザー数(UU)、ページビュー数(PV)、回遊率、クリック率(CTR)、顧客獲得単価(CPA)、SNSエンゲージメント率なども設定されるでしょう。
これから見るべき人的資本KPIとは 人的資本経営に求められる人事データ活用のポイントを解説
個人目標のKPI設定と運用手順、管理
ここからは個人目標の管理制度の運用手順、KPIの設定方法と運用手順について解説します。以下のステップに沿って進めるとスムーズです。
1.組織のKGIの設定と共有
最初のステップは、最終目標(KGI)を明確にします。まず組織全体の明確な目標を策定し、最終的な目的を具体化することが必要です。経営層が経営目標を策定し、ゼネラルマネージャーに伝えることで、組織全体の方向性が定まります。
このプロセスにより、適切なKPIを設定するための基盤が構築され、個人目標が組織の目標と整合性を持つように調整できるでしょう。
2.チームのCFS・KPI設定と共有
2番目のステップは、最終目標(KGI)のもとでチーム全体の目標達成プロセス(CSF)と、そのプロセスを測る具体的な数値指標(KPI)を決定することです。
まず、各部門で事業や部門ごとの経営目標を設定し、その目標に沿ったチーム全体のCSFとKPIを策定します。これにより、チーム全体が一貫した方向性で動くことが可能となり、個人レベルでのCSFやKPIのズレを防げるでしょう。
3.個人のCFS・KPIを設定・運用
3つ目のステップは、中間管理職が部下に組織目標の意図を正確に伝えたうえで、個人目標の設定を求めることを指します。チーム全体のCSF・KPIをもとに、各メンバーの役割や得意・不得意を考慮して、個別のCSF・KPIを設定します。この際、目標が定性的な要素だけでなく、具体的で定量的な指標を含んでいるかどうかの確認が必要です。
また、目標は簡単すぎず、挑戦可能な範囲で設定することで、本人の成長とモチベーションを維持しやすくなります。
4.進捗確認と軌道修正を遂行
最終ステップは、設定した目標をもとに業務を進め、KGI(最終目標)の達成に向けて成果を出すことです。そのためには、定期的に進捗状況を確認し、PDCAサイクルの「チェック(C)」と「改善(A)」をしっかり回すことが欠かせません。
業務を進めるなかで予想外の問題や環境の変化、目標設定が誤る場合もあります。そのため、上司が定期的に進捗を確認し、相談しやすい環境を整えることが重要です。週1回や月1回のミーティングや1on1を実施し、目標の達成状況を確認し、必要に応じて修正を加えます。
さらに、評価とフィードバックも重要なプロセスです。社員が自己評価を行った後に、上司が客観的な視点で評価を加え、現状や改善すべき点を共有します。この際、単なる評価で終わらせず、改善点を次回の目標設定に生かすことで、成功体験を積み重ね、モチベーションを高めることがポイントです。
KPIと個人目標設定の注意点とコツ
KPIを個人目標に設定する際に注意すべき点と、成功するためのコツを解説します。
KPI設定はSMARTの法則を意識する
KPIを個人目標に設定する際は、SMARTの法則を活用しましょう。SMARTの法則は、経営学者ピーター・ドラッガーが提唱したもので、目標を達成しやすくするための指針となるフレームワークです。
SMARTは以下の5つの要素から成り立っています:
- Specific(具体的な):目標を明確にする。
- Measurable(測定可能な):進捗や結果を数値で測定できる。
- Achievable(達成可能な):現実的に達成可能な範囲で設定する。
- Relevant(関連性のある):組織やチームの目標に関連している。
- Time-bound(期限が明確な):期限を設けて進行状況を管理する。
この法則に従うことで、目標が明確で現実的かどうかを簡単に確認できます。また、設定したKPIが誰にでも分かりやすい内容であることも重要です。SMARTの5つの基準に基づいて目標を考えることで、適切で実効性の高いKPI運用が実現できます。
SMARTの法則を活用した目標の立て方とは?活用する際のポイントについても解説
PDCAのC(チェック)を明確にする
KPIの達成率を向上させるには、PDCAサイクルのC(チェック)を事前に明確にしておくことが重要です。PDCAでは特にC(チェック)とA(改善)が成功のポイントですが、多くの場合P(計画)とD(実行)で止まりがちです。そのため、KPIごとに進捗確認のタイミングや方法を計画段階で設定しておく必要があります。
そうすれば、アクションプランの進捗を適切なタイミングで評価でき、PDCAサイクルの効果向上が期待できるでしょう。また、KPIは「見える化」するだけでなく、施策内容との関連性を確認し、次の改善に生かすことで、目標達成への道筋がより確かなものになります。
まとめ
KPIを積極的に活用し、目標管理を進める取り組みが注目されています。KPIを個人目標に落とし込む具体的な方法を知り、注意点に配慮すればより効率的に遂行でき、効果的な結果が見込まれるでしょう。
「タレントパレット」は、個人目標のKPI設定をはじめ、幅広い人事課題の解決をサポートします。人事戦略の効果を最大化するためのツールとして、活用してみてください。
人的資本経営の詳しい情報はこちら